明けて平成21年(2009)。
「今年のエトはウシで・・・」 と例によって、俗説軽々とメディアが報じています。
エトとは 「干支 [かんし] 」 のこと、つまり 十干 [じっかん] (天干) と 十二支(地支) のことです。
従って 今年の干支は、 「己丑 [つちのとうし、き(こ)ちゅう] 」 です。 また 十二支の 「丑」 は、動物の 「牛」 とは専門的には直接関係はありません。
更に、干支は旧暦(太陰太陽暦)ですから、年始は2月4日(立春) からで、2月3日(節分)までは、まだ 「戊子 [つちのえね、ぼし] 」 年です。
----- これらのことは、さておくとして。
まず、今年の干支 「己丑」 には、どんな深意があり、どのように方向づけると良いのでしょうか。
「己 [き・こ] 」 の文字は、糸の乱れを正して治めるという意味があります。
また、己 [おのれ] を正しくして筋道を通すこと、「起」 に通じることから 奮い起つことでもあります。
一方、「丑 [ちゅう] 」 は、赤ん坊が手を伸ばす・手で取るというところから、始める・つかむ という意味があります。
また結ぶ、統率する意味があるとされています。
この2つが合して、己丑となると、筋道(紀律・道義)を正して、物事の乱れを治めていく年といえましょう。
(以上、安岡正篤干支学による。 『干支新話』、 関西師友協会刊)
さて、この干支を易の64卦になおして(翻訳して)みましょう。
己丑は、「坤為地 [こんいち] 」 です。
己も丑も陰、坤為地は純陰(老陰) ・ 陰の極致の卦です。
陰というのは、(分化発展してゆく力の陽に対して)、統一し含蓄する力、分かれたものを統一し それを根元に含蓄しようとする働きです。
『易経』 に 「君子は徳を厚くし、物を載 [の] す」 (坤・大象)とあり、“母なる大地”、“柔順の貞” の意味です。
「積善の家には必ず余慶(=慶福)あり、積不善の家には必ず余殃 [よおう] (=災禍)あり」 (坤・文言伝) ともあります。
真儒協会は、平成19年 「丁亥 [ひのと・い] 」 = 「火水未済 [かすいみさい] 」(未完成、準備万端ととのったり)に機をみて発足しました。
平成20年 「戊子 [つちのえ・ね] 」 = 「山水蒙 [さんすいもう] 」(啓蒙、くらきをひらく)を経て、「坤為地」 の本年を迎えた訳です。
年頭、感慨深いものがあります。
次に、九性(星)気学では、本年は 「九紫 [きゅうし] 火性」 です。
易の八卦 [はっか] でいうと 「離」 であり 「火」 です。
政界は不安定・不活発、経済も不況・格差の拡大で社会は複雑な様相を呈する傾向が考えられます。
芸術・美的なものと 科学・技術的なものの相待も考えられます。
「離」 は “はな [離] れ” ・ “つ [麗] く” の同時的意味があります。
例えば、離職・離別があるから 次の就職・出合いがあるのです。
『易経』 に、「重明以て正に麗 [つ] けば、すなわち天下を化成す。」 (離為火・彖 [たん] 伝) とあります。
真なるもの、正しきものに麗いて、学術・文化の光で照らせば、世の中を大いに化し成すことができます。
「紫」 については、『論語』 に 「紫の朱を奪うを悪 [にく] む。」 (陽貨) とあります。
朱(赤)は正色(五色思想)であるのに紫の流行に地位を奪われてしまったとの意です。
一昨年の世相を示す文字は 「偽」 でした。
邪はいつも正に勝ちやすく、世の中は不正にして勝つ者が多いものです。
そうあらぬように、いましめなければなりません。
ちなみに我国では、紫はインペリアルカラー [高貴な色] です。
紫から赤味が失われれば、紫ではなくなってしまいます。
“赤味 = 真正なるもの” を大切にしなければなりません。
ところで、昨年 平成20年の世相をあらわす文字は 「変」 でした。
政治・経済・社会ともマイナス変化の年でした。
アメリカでは、大統領選挙でオバマ氏が 「変革」 [Change] をとなえて登場し、本年1月早々大統領に就任いたしました。
確かに、自然と人間の世界は大いなる変化 すなわち 「変易」 ・ 「無常」 です。
しかし、現在は “未来に向かって足早に、後ずさりしている” ような変容混迷ぶりです。
“変わらぬもの” ・ “不易なるもの” の価値を見直さなければなりません。
正月は 「一 [いつ] 」 に止まる月、と書きます。
「一」 なるもの、人間界における 「不易」 は、「徳」 でしょう。
孔子の 「一貫 [いつもってつらぬく] の道」、 孟子の「揆一 [きいつ] 」 です。
それは、忠恕(まごころと思いやり)の道、正しい筋道のことです。
真儒協会は、この 「一」 なるもの、「不易」 なるもので蒙 [くら] きを啓 [ひら] く活動を、
本年 「己丑・九紫火性」 (坤為地・離為火)の真義をふまえて充実させてゆきたいと思います。
新年、ようやくホームページを立ち上げることができました。
遅々としておりましたのは、ひとえに私の筆が進まなかったからです。
本年は、陰の統合・含蓄に順 [したが] って、儒学についての研究・論稿・講習内容等を整理・編集して、まとめてゆきたいと思っております。
ブログ 「儒学に学ぶ」 では、定例講習・各種セミナーのレジュメ [要約] を掲載してまいります。
また、この個人ブログを 「儒灯」 と名付けて、四書五経を中心に 「儒学からの言霊 [ことだま] 」、 「儒学随想」 等、多面的に発表してまいりたいと思っております。
これは、ひとえに私個人の精進如何 [しょうじんいかん] にかかっている訳です。
自らを励まして、モチベーション [やる気] を高めて、----- 格調高く いえば 「浩然 [こうぜん] の気」 (孟子) を養って、活学執筆してまいりたいと思います。
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