(こちらは、前のブログ記事の続きです。)
《 2.むかしの中国の思想 》 : 易の思想的基盤・背景 (東洋源流思想)
A. 大〔太〕極 (たいきょく、=「皇極」)
──易の根本・創造的概念、宇宙の根源、万物の起源、
神〈自然〉の摂理〔せつり〕
・ 陰陽以前の統体 ──
1) 「無」(晋の韓康伯)、
2) 「陰陽変化の理」(朱子)、
3) 「陰陽分かれぬ混合体」(清の王夫之)
参考:『荘子』北極星の意
ビッグバン(=特異点)/ヒモ宇宙/ブラックホール/
道/無/分子─原子─陽子/
ウルマテリー〔原物質・原子極〕(原子物理学、独・ハイゼンベルグ等)/
神ありき ・・・
「天(之)御中主神・〔あめのみなかぬしのかみ〕」(神道・〔しんとう〕)/
易神 = 造物主
☆ 太極マーク (図示略)
陰陽に分かれるモトの状態を表しています
☆ 韓国国旗(大極旗・テグキ) (図示略)
中央に対極マーク、四方に易の四象
(4つの易象、天・地、水・火)を配置しています
※ 参考──万物の根源 《 タマゴが先かニワトリが先か? 》
・ 科学 ── ビッグバン〔137億年前〕 (宇宙物理学)、
ウルマテリー(原子物理学)・・・極微の世界(ミクロコスミック)において
大極が発見されようとしている。
天文学的研究(マクロコスミック)においては未だ大極に至ってはいない。
・ 宗教 ── 神話、聖典 ・・・ etc.
・ 儒学=易 ・・・ 「太極」 / 道教(老荘) ・・・「無」 /
仏教 ・・・「空(くう)」
○ 「無極にして大極」 (近思録) ・・・ 朱子は 大極 = 有 と考える
○ 「是の故に易に太極あり。是れ両儀を生ず。両儀四象を生じ、四象八卦を生ず。
八卦吉凶を定め、吉凶大業(たいぎょう)を生ず。」 (繋辞上傳)
○ 「太初(たいしょ)に言(ことば)あり、言は神と共にあり」 (旧約聖書)
○ 「天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時、
高天原(たかまのはら)に成れる神の名は、
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、
次に高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、
次に、神産巣日神(かむむすひのかみ)。」 (古事記・冒頭)
○ 「道は一を生じ、一は二を生ず。」 (老子) ・・・ 道は無と考える
易(の中に潜む) 神 “シン”
= 天地の神、人格神的なものではなく神秘的な作用の意
※参考─汎神論(はんしんろん)
○ 「陰陽測(はか)られざるをこれ神(しん)と謂う。」
「故に神は方(ほう)なくして易は体(てい)なし。」 (繋辞上伝)
○ 「※鬼神を敬して之を遠ざく。」 (論語・雍也)
※鬼神=死者の霊魂や人間離れした力
B. 天の思想 と 天人合一観 : (大宇宙マクロコスムと小宇宙ミクロコスム)
● 中国思想・儒学思想の背景観念、 天=大=頂上
・ 形而上の概念/モノを作り出すはたらき/「造化」の根源/
“声なき声、形なき形” を知る者とそうでない者
「神」〔しん〕 ・・・・ 不可思議で説明できぬものの意
天 = 宇宙 = 根源 = 神
cf.「 0 」(ゼロ・レイ)の発見・認識、 「無物無尽蔵」(禅)、
松下幸之助氏の“根源さん”(社〔やしろ〕の中は?)
・ 敬天/上帝/天(天帝)の崇拝/ト〔ぼく〕占(亀ト)/
天人一如〔てんじんいちにょ〕/天と空〔そら〕
・ 崇祖(祖先の霊を崇拝)/“礼”の尊重
・ 太陽信仰 ・・・・ アジアの語源 asu 〔アズ〕 =日の出づるところ
── ユーロープの語源 ereb 〔エレブ〕 =
日のない日ざしの薄いところ“おてんとう様”、
“天晴〔あっぱれ〕”、天照大御神
ex. 天命・天国・天罰・天誅・天道・天寿・北京の「天壇」
「敬天愛人」(西郷隆盛)、「四知」(天知るー地知るー我知るーおまえ知る)
「天地玄黄」(千字文) ・・→ 地黄玄黒
○ 「天行は健なり、君子以て自強して息〔や〕まず」 (『易経』 乾為天・大象)
─── “龍(ドラゴン)天に舞う”
○ 「五十にして天命を知る」 孔子の “知命” (『論語』)
○ 「天の我を亡ぼすにして戦いの罪にあらず・・・」 (『史記』・「四面楚歌」)
◎ 天賦人権論〔てんぷじんけんろん〕
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず・・・」
(福沢諭吉・『学問のすすめ』)
◎ 易性革命〔えきせいかくめい〕
「天子の姓を易〔か〕え天命を革〔あらた〕める」
・・・ 天命は天の徳によって革る
革命思想・孟子
C. 陰陽相対〔相待〕論 (陰陽二元論)
・・・ 易学に由来する。 易は、陰陽 と 中 の理法。
明治期以降、陰陽(五行)説を軽視 ・・→ 復権
─── 以下、この部分は、[ 第3講 ] にて扱います
D. 変化の思想 (易の三義【六義】) ) : 〔 Principle(Classic) of Changes 〕
《 ある朝、グレゴール・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、
自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変っているのを発見した。
彼は鎧のように固い背を下にして、仰向けに横たわっていた。 》
Franz Kafka Die Verwandlung,1916 (カフカ・『変身』)
“易” = 変化 Change “蜴”(カメレオン)
“ The Book of Changes ” (変化の書・『易経』)
※ 2008.12 世相を表す文字 「変」 (2007「偽」)
2009.1 「変革」をとなえて、オバマ新米大統領登場・就任
cf. 漢字検定協会・理事長父子 逮捕!
1)。 「 変易 」 ・・・ か〔易〕わる
易の名称そのものが変易の意義をもつ、生成変化の道、
天地自然は大いな る変化、変易。 自然と人生は大いなる「化」
ex.── 季節・昆虫の変態・無常/お化け(女性の化粧)/
“大化の改新”(645)
◎「結局最後に生き残る者は、最も強い者でも最も賢い者でもない。
それは変化し続ける者である。 」 (チャールズ・ダーウイン)
ex.── (一かけらの石=隕石 の衝突により)強大な恐竜は絶滅し、
弱小な哺乳類が栄えている)
・ イノベーション=「革新」
・ 「日新」: 「湯の盤の銘に曰わく、苟〔まこと〕に、日に新た、
日々に新たに、又日に新たならんと。」 (『大学』)
cf.“日進月歩”
・ 「維新」: 「詩に曰わく、周は舊〔旧〕邦なりといへども、
その命、維〔こ〕れ新たなり。」 (『大学』、詩=『詩経』・大雅文王篇)
ex. ── “松下電器”、五坪の町工場から従業員一万人・売り上げ一千億に進化発展
・ 松下幸之助氏の「変易」
(変革・イノベーション、テレビブラウン管技術の輸入)と「不易」なるもの
cf.“Panasonic パナソニック”: 一万五千人 人員削減(半分国内)、
ソニー:一万六千人、NEC:二万人 (09・2/4)
・ 「革命」 (Revolution) と 「進化」 (Evolution)
2)。 「 不易 」 ・・・ 不レ易・かわらぬもの
変化の根柢に不変・永遠がある、不変の真理・法則の探求、 “千古不易”、
“千古不変”、“真理不変”、“一〔いつ〕なるもの”、“永遠なるもの”
変わらぬ物の価値、 目立たぬが確かな存在
・ 自然界の法則 & 人間界の徳(仁)、芸術の世界での「美」 ── 本質的なもの
ex.── “ 不易〔フエキ〕 糊〔のり〕”:
「硼酸〔ほうさん〕またはサルチル酸のような防腐剤と香料とを入れて
長く保存できるようにした糊」 (広辞苑)
“パーマ” 〔 parmanent wave 〕
“(日清)チキンラーメン”: 1958年誕生、ロングヒット商品、
カップメン、カップヌードルの発明
□「化成」: 変化してやまない中に、変化の原理・原則を探求し、
それに基づいて人間が意識的・自主的・積極的に変化してゆく。
クリエーション(創造)
ex.── 「三菱化成」(化学合成ではない)=「化し成す」(「離」卦)
※ 参考 ── 変わらぬもの
◎ “松に古今の色なし”
○ 「松樹千年翠〔みどり〕 不入時人意(時の人の心に入らず)」
「松柏〔しょうはく〕千年青」 (『広燈録』など)
○ 「子曰く、歳〔とし〕寒うして然る後松柏の彫〔しぼ〕むに後るるを知る。」
松柏 = まつとかや = 君子の節操 (『論語』子罕第九)
○ 「 ── 難いかな恒〔つね〕有ること 」 (述而第七)
3)。 「 簡易 」 〔かんえき・かんい〕 ・・・
(中国流で易簡、 Purity ピュアリティー / Simplity シンプリティー)
変化には複雑な混乱ということがない。平易簡明、無理がない
ex. ─── “簡易郵便局”、“簡易保険”、“簡易裁判所”
※参考 ── 茶道 “ Simple is beste ” シンプル・イズ・ベスト
○ 「自然は単純を愛す」 (コペルニクス)
○ 「自然は常に単純であり、何らの自家撞着〔じかどうちゃく〕をも持たない」
(ニュートン)
○ 「真理は単純なり」 : 道元は中国から何も持ち帰らなかった。
目はヨコに鼻はタテに附いているとの認識を新たにしてきた。
(あたりまえのことを、当たり前と認識する)
4)。 「 神秘 」 ・・・・
易は「イ」、「夷〔えびす・イ〕」に通じ、感覚を超越した神秘的なものの意。
自然界の妙用「神秘」、奇異。
◎ 「希夷」の雅号 ・・・ 聞けども聞こえず見れども見えず(五官・五感をこえて)、
それでいて厳然として微妙に、神秘に、存在するもの。
5)。 「 伸びる 」 ・・・・ 易〔の〕ぶ、延・信
造化、天地万物の創造、進化でどこまでも続く、伸びる、発展するの意。
○ 「悪の易〔の〕ぶるや、火の原を焼くが如く ・・・」
6)。 「 治める 」 ・・・・ 修 ・ 整
天地の道を観て、人間の道を治めるのが易。
○ 「世を易〔か・変〕えず」 ── 「世を易〔おさ・治〕めず」と読むと良い。
(「乾」・文言伝 初九)
E.「中(ちゅう)」の思想 : (『中庸』・中道・中徳・中の説…中の学問・弁証法)
■ 《 中庸 入門 》 ( by 『易経』事始 )
‘ (I am the sun god, Apollo. )
Think of the responsibility I have !
The skies and the earth must receive their share of heat.
If the chariot goes too high, the heavenly homes will burn.
If it goes too low, the earth will be set on fire.
I can not take either of these roads.
There must be some balance.
This is true of life, itself.
The middle course is the safest and best. ’
〔 Phaёthon “ Popular Greek Myths”〕
《大意》
「(私は、太陽の神・アポロである。)
私が担っている責任の重さを想ってもみよ!
天と地には、それぞれ相応の熱を与え得ねばならぬのだ。
もし、(太陽の2輪)馬車の運行する道筋があまり高すぎれば、
天の御殿が燃えてしまうだろう。
低きにすぎれば地上は火事となるだろう。
私は、そういう(2つの極端な)道をとるわけにはいかぬのだ。
それなりのバランスというものをはからねばならぬのだ。
このことは、人生そのものにも当てはまる。
中庸の道こそが最も安全で、また善き道なのだ。
〔 パエトン・『ギリシア神話』 〕
○ 「そこで、この陰陽相対性理法によってものごとの進化というものが行われるのですが、
この無限の進化を『中』という。だから易は陰、陽、中の理法であり学問である。」
(『易とはなにか』、安岡正篤)
○ 「中行にして咎无(とがな)し」 (『易経』・夬九五)
○ 「子日く、中庸の徳たる、其れ至れるかな。民鮮(すく)なきこと久し。」
(『論語』・雍也第6)
(中庸ということの道徳としての価値は、最高のものであるなあ。
しかしながら世が末世になって、中庸の徳の鮮ないことはもう久しいことだなあ。)
・ 易は、「 中=むすび 」である。
易の最も重視するものが “時中(時に中す)” = 中道に合致すること。
※ 時中=中節
・ 東洋の儒教、仏教、老荘─(道教) ・・・は、すべて中論
・ 西洋の弁証法(論理学の正・反・合) ──
ヘーゲル弁証法、アウフヘーベン(止揚・揚棄)
● 中=「むすび(産霊)」 ・ 天地万物を生成すること
○ 「天地因ウン〔いんうん〕として、万物化醇す。
男女精を構(あ)わせて〔構=媾精〕,万物化生す。
易に曰く、三人いけば一人を損す。
一人行けば其の友を得、と。致一なるを言うなり。」 (繋辞下伝)
(天地も男女も二つ対〔ペアー〕であればこそ一つにまとまり得るとの意)
※参考 ・・・ 日本の「国学」、神道(しんとう)、随神(かんながら)の道
── 天御中主神 〔あめのみなかぬしのかみ〕;天の中心的存在の主宰神
● 中=なか・あたる、「ホド(程)」、ホドホド…あんばい(塩梅・按配)する、
良いあんばい、調整、いい加減=良い加減=中道・中庸、
中庸は天秤〔てんびん〕=バランス=状況によって動く
♪“ホドの良いのにほだされて…”(「お座敷小唄」)
“千と千尋の神隠し”の「中道」行き電車、
“ヴントの中庸説”、 入浴の温度、 飲み物(茶・酒)の湯加減、
スポーツ競技での複数審査員の合算評点法 ・・・ etc.
1) 静的(スタティック・真ん中)なものではなく、動的(カイネティック、ダイナミック)
2) 両方の矛盾を統一して、一段高いところへ進む過程、無限の進化
例 ─「中国」、「中華」、「黄中」、
「心中〔しんじゅう、心・中す、=情死〕、「折中」
※ 参考 ─“中(なか、あたり)”さん〔人名〕、大学・中学・小学、「中学」は違う!
◎ 中庸参考図 (棒ばかり)
(この続きは、次のブログ記事に掲載しております。)
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