儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

十翼

むかしの中国から学ぶ 第2講 「易占と易学」 (その2)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)


《 1.易とは何か? 》

「易」の語の誤解・誤用

  ・命学     【九性気学/四柱推命 ・・・ 】
  ・相学     【家相/手相/姓名学 ・・・ 】 
  ★卜〔ぼく〕学 【易学・周易】 
  ・心理学    【心理鑑定】


「易」の字義

1. 日月(にちげつ)説 … 日と月、下の字(脚)は勿で月ではない
     参考 ── 明、“冐” 〔ボウ、ボク、マイ、おか・す〕

2. 蜥易(せきえき)説 …「蜴」(とかげ)、トカゲ〔蜥蜴・石竜子〕は変化する 
     参考 ── カメレオン、ヒラメ、カレイ (蝪─トウ、つちぐも)


易〈占〉・易学・易経・周易

── 君子の学・帝王学/約3,500年程前の中国/儒学の経書(四書五経)/
変化の学(トカゲ)〔ザ・ブック・オブ・チェインジズ/ ドクトリン・オブ・チェインジズ、 
クラッシック・オブ・チェインジズ〕/
東洋思想の源流/イメージ(右脳思考)/
“占” と “思想・哲学” の両面/超心理学/ユング心理学 

『易経』は ・・・千古不易の書、東洋の偉大な英知の集積、経書 ── 「温故知新」

「易学」は ・・・行き詰まるということがない、クリエート、非常に難しい、楽しい、
          適切な本が少ない、独学が困難で入門が大切
          中年以降から学ぶに良い (「五十易を学べば ・・・・ 」


 ※ 参考  

○ 「易は永遠の真理であり、人間の最も貴重な実践哲学といってもよろしい。
 ところがたいへん難しい。手ほどきが大事であります。
 その手ほどきも、変な手ほどきをされるとうかばれない。正しい手ほどきがいる。」
  (安岡正篤) 

 
○ 「神(シン)にしてこれを明にするは、其の人に存す。
 黙してこれを成し、言わずして信なるは、徳行に存す。」
 (『繋辞上傳』)

 〔易の神秘にして明察な効用を十分に発揮させ得るかどうかは、
 一にかかって利用者の人格如何に在る。
 もし徳行の優れた人ならば、易が教えを垂れずとも、
 おのずと卦の説く徳が心中に形を成すだろうし(=黙而成之)、
 易の占いによるお告げを待たずして、
 その人の直感はぴたりと易の理に符号するものである。
 (清の王夫之) ──本田 斉 訳〕 

 → 易が中(あ)たるためには、その人に徳が必要である


○ 「易の書たるや遠くすべからず。」  (『繋辞下傳』八)  
 〔易の書物としての本質は、人生日用から遠いものとしてはならない〕


◆ 「先天八卦」 と 「後天八卦」 : 易理・八卦の象意を示す図、易と五行の数理

  ─── 河図(かと)【竜馬】と洛書(らくしょ)【神亀】───
  ─── 伏羲(ふつぎ)八卦と文王八卦 ───


・ 「河図洛書」

 ○ 「河は図(と)を出(いだ)し、洛は書を出す、聖人これに則る。」
   (繋辞上傳) 

 ○ 「子曰、鳳鳥至らず、河、図を出さず。吾れ已(や)んぬるかな。」
   (論語・子罕篇)

 ○ 「古者(いにしえ)包犠〔伏羲氏の天下に王たるや、
  仰いでは象を天に観、俯しては法を地に観、鳥獣の文と地の宜(ぎ)とを観、
  近くはこれを物に取り、是に於て始めて八卦を作り、
  以て神明の徳を通じ、以て万物の情を類す。」 
   (繋辞下傳)


   (龍馬/神亀 イラスト 略 )


   河図 略】   円=天  方=地  


   洛書方陣・十五方陣 
           
         image_20110605_2


・ 「先天八卦図」

 ○ 「天地位を定め、山沢気を通じ、雷風相い薄(せま)り、
  水火相い射(いと)わずして八卦相い錯(まじ)わる。」 (説卦傳)


・ 「後天八卦図」

 ○ 「万物は震に出ず。震は東方なり。巽に斉(ととの)う。
  巽は東南なり。斉うとは万物の?斉するを言うなり。
  離は明なり。万物皆相い見る。南方の卦なり。
  聖人南面して天下に聴き、明に響(むか)いて治むるは、
  蓋し、これをここに取れるなり。
  坤とは地なり。万物皆養を致す。故に坤に致役すと曰う。
  兌は正秋なり。万物の説(よろこ)ぶところなり。
  故に兌に説言(えつげん)すに曰う。
  乾に戦うとは、乾は西方の卦なり、陰陽相い薄(せま)るを言うなり。
  坎とは水なり。正北方の卦なり。労卦なり。
  万物の帰するところなり。故に坎に労すと曰う。
  艮は東北の卦なり。万物の終りを成すところにして
  始めを成すところなり。故に艮に成言すと曰う。」 (説卦傳)


 『易経』  = 「易経本文」 & 「十翼」 → 『易経』 の二重性

“ What is the science of divination ? ”
 〔易学:占の科学〕


“ What is The Book of Changes ?”
 〔易経:変化の書〕


 I・CHING ” ── 易(経)の二重性 を考える  ( by.高根 )


 「易」・「易占」といえば、本来、古代中国の英知として大成された
「易学(周易・易経)」のことです。
が、巷間〔ちまた〕では、運命学や占法全般を指す場合がほんどです。

「易(易学)をやっている」と言うと、
「観てちょうだい」と両の手を広げて差し出す・・・という場面は、
私も幾度となく体験したところです。

 誤用のことばの使い方でも、それが多数を占め市民権を得れば、
本来の語と併用の語として(社会的・国語的に)認知されます。

(逆に、用いられない ことばの用法は、
辞書の中にのみある“死語”となってゆきます。)


 私たちは、“易・易学”の語を、本来の用法である
『易経』・「周易」を指すものとして用います。

易(経)は、東洋の源流思想であり、儒学経書(五経)の筆頭、
帝王(リーダー)の学です

私は、“東洋のバイブル”が 『論語』なら、
“東洋の奇(跡)書”と呼びたく思っております


・ Pointo  (内容・本質) 
     ──  易占 (易筮〔えきぜ〕) & 思想・哲学 (義理易)

「易道は深し、人は三聖を易〔か〕へ、世は三古を経たり。」
(『漢書』・芸文志)

※伏犠〔ふつぎ〕・文王─周公旦・孔子 ・・・ 4(3) 聖人

“ 伏犠が卦を画し、文王が彖〔たん〕を作り、
周公が爻の辞をかけ、孔子が十翼を著した。” ( 通説 )

古〔いにしえ〕の聖人が原型をつくり、
多くの(孔子門下の)賢人が肉付けし(「十翼」)、
多くの年月を経て『易経』として完成したと、(私には)思われます。 

占筮書(ト・ぼく学)から「経書〔けいしょ〕」(思想・哲学 → 義理易)への
融合・止揚〔アウフヘーベン・中す〕がなされました。 

“機にして妙なる”体系の書物の完成です。


  cf. 全体医療 ・・・ 精神と肉体、分離は西洋流・統合は東洋流。

         「泰」・「否」卦 ・・・“健全なる精神、健全なる肉体に宿る”・
                 “  ───  宿らぬ”の象。


・ Pointo  (形式・方法)
     ── 辞〔じ〕 と 象〔しょう〕 :

「書は言を尽くさず、言は意を尽くさず。」(繋辞上伝) ですので、
それ(64卦・384爻)を ものごとを象〔かたど〕る“〔しょう〕”と、
解説する言葉 “”とによって深意・奥義を表示しています

 ・ 辞 ・・・ 「言霊」〔ことだま〕(文字・文章)の体系、左脳・右脳
         ※ 「数霊」〔かずたま〕、「色霊」〔いろたま〕

 ・ 象 ・・・ イマジネーション、右脳(的思考)

 cf. 1)右脳と左脳(的思考)
    2)象と辞の一体化 ・・・『易経』本文は、象と辞が一体化した“物語”
    3)象占〔しょうせん:漢易〕 と 辞占〔じせん:宋易〕
    【3易聖】 ・・・ 新井白蛾(象) 「古易館」・『古易断』 /
              真勢中州(象) 「復古童」/ 高島呑象(辞) 『高島易断』
    【現代易】 ・・・ 加藤大岳(辞占の中に象も観る)


・ Pointo  (構成内容)
     ─── 易経本文 と 十翼〔じゅうよく〕

 ・ 易経本文 ・・・易哲学の物語    ・十翼 ・・・易学思想


さらに「易経本文」に、孔子及びその門下の数多が(永年にわたって)著わした
「十翼」(10の解説・参考書)が合体します。

辞と象の、さらに易本文と十翼の融合合体が、
『易経』の真面目〔しんめんもく〕であり 
“奇書”の“奇書”たるゆえん
でありましょう。

『易経』の真義を修めることにより、個々人から国家社会のレベルにいたるまで、
兆し” ・ “
” を読み取り、生々・円通自在に変化に対応できるのです。


 
十翼 〔じゅうよく〕 とは

・ 古代中国の学者達の手による、儒家の易(「易経」本文)についての
 10の解釈(解説・参考)書のこと。
 儒学の経典・経書となります。( “四書五経” )

・ 「易経」本文と十翼を合わせて経書・『易経』となります。
  ( 五経の筆頭 )
 占筮と思想・哲学の二面性を持つ“東洋の《奇書》”の誕生です。

・ 象辞を文王・周公の作とすることから、
 十翼を孔子の作とするのは当然の妙案ではありますが、非学的です。
 孔子及びその門下の数多が、永年にわったって著わしたと考えられます

・ 「伝」とは衍義〔えんぎ〕・解説の意です。 


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(この続きは、次のブログ記事に掲載しております。)


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第二十三回 定例講習 (2009年9月21日) 後編


前の記事(前編)の続きです。


易経   ( by 『易経』事始 Vol.2 ) & ( by 「十翼」 )

§.易の思想的基盤・背景 (東洋源流思想)  【 ―(4) 】

C. 陰陽相対〔相待〕論(陰陽二元論) ・・・続き

◆ 陰陽の象意例 (左が陽、右が) *陰は凶で、陽は吉であるということではない
 ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ―― 西  ・ ―― 
 ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ―― 
 ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ―― 
 ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ――   ・ ―― 
 ・行動 ―― 思索  ・主人 ―― 家族  ・目上 ―― 目下  ・先生―― 生徒
                             (「現代易学講座・上級編 1」 参照)

人間

・ “徳” 性=【人間の本質的要素】〔   〕と “才能・技能”=【人間の属性的要素】(    )
・ 君子タイプ〔    〕と 小人タイプ(    )
   cf. 西郷隆盛は、徳が才に勝っている君子タイプ ←→ 勝 海舟は、才が徳に勝っている
       小人タイプとも言われている
・ 感情・情緒・情操〔    〕と 知識・知性・知能(    ) 
・ 愛〔    〕と 敬【敬愛】(    )   
・ 金を使う(    )と 金を蓄える〔    〕
・ 男女で “おしゃれ” するほう(    )と “おしゃれ” でないほう〔    〕 

身体

・ 【人体】の酸性(    )と アルカリ性〔    〕  cf.PH 7より上
・ 心臓(    )と 末端【末梢】血管
・ 動脈(    )と 静脈〔    〕
     cf. 酢は体をアルカリ性にする(利尿作用)、腎臓・肝臓のはたらきを助ける
        (アルコール分解)

動物

・ ツメ〔爪〕の数と陰陽 ―― 馬【   】(   ) ・ 牛【   】〔   〕 ・
            鼠【   】〔    〕 ・ 人【   】(   ) ・ パンダ【   】〔   〕
            龍 ―― 中国【   】 ・ 朝鮮【   】 ・ 日本【   】
[   ] 、 龍(   )と 虎(   )、 虎(   )と 豹〔   〕
     ―― “大人虎変”(「革」卦五爻辞) と “君子豹変”(「革」卦上爻変)
・ 竜馬(   )、ペガサス(   )、「龍のごとき駿馬にまたがり ・・・」(『将門記』)

 ※ 参考  ―― 「登竜門」 “六・六〔ろくろく〕転じて九・九〔くく〕となる”
   ・ 龍のウロコ【9×9=81枚】(   )と龍の逆鱗〔げきりん〕【1枚】(   )
                  《1枚 ・・・“逆鱗〔げきりん〕に触れる” 「韓非子」》 
   ・ 鯉〔こい〕のウロコ【6×6=36】〔   〕

 ※ 研究 : 雄をあらわす漢字と雌をあらわす漢字を組み合わせてつくった動物名

     ・麒麟 〔きりん〕   ・鳳凰 〔ほうおう〕   ・鴛鴦 〔えんおう〕       
     ・翡翠 〔ひすい〕   ・鯨鯢 〔げいげい〕

                                          (次回に続く)


§.「十翼」 : 雑 卦 伝  【 ― (1) 】

「雑卦伝」は、「十翼」の第10翼です。 
64卦を“対卦”(爻の陰陽が対応=裏卦) & “反卦”(上下反対=賓卦)のペアにしています。 
(※ 8つの卦は例外) 
卦の性格や意義を一言で、漢詩のような平明な言葉で対照的に説いています。
 (易)簡にして明、分かり易く、そしてリズム感にあふれを含んでいます

順序は、「序卦伝」と異なり錯綜・雑然としてバラバラです。 “雑卦”といわれるゆえんです。
それは、孔子が自分の考えで順序を錯雑させた(孔頴達・『周易正義』)とも言われています。
が、「雑卦伝」の成立は、儒学(=『易経』)が官学化された前漢以降と考えられます。  
多分に、64卦を朗誦しておおよその性格を記憶するために作られたと思われます


( あお字下線字が韻 )

《 乾は剛、坤は。/ 比は楽しみ、師はう。/ 臨・観の義は、或いは与え、或いはむ。/ 屯は見〔あら〕われて(而も)、そのを失わず。蒙は雑にしてわる。/ 震はこるなり。艮はまるなり。/ 損益は盛衰のめなり。/

大畜は時なり。无妄はいなり。/ 萃は聚〔あつ〕まりて、升はらざるなり。/ 謙は軽くして、豫はるなり。/ 噬コウ〔ゼイコウ〕は〔くら〕う。賁は无〔な〕きなり。/ 兌は見われて、巽は〔ふく・ふ〕するなり。/ 随は故〔こと〕无きなり。蟲は則ち飭〔ととの〕うるなり。/

剥は〔らん・ただるる〕なり。復は〔かえ・もど〕るなり。/ 晋は〔ひる〕なり。明夷は〔やぶ・そこな(わ)・ちゅう(する)〕るるなり。/ 井はじて、困は相〔あいあ〕うなり。// 

咸は速やかなるなり。恒は久しきなり。/ 渙はるるなり。節はまるなり。/ 解はなり。蹇は〔むずかし〕きなり。/ ケイ〔ケイ〕はなり。家人はなり。/ 否・泰は其類を反するなり。/ 大壮は則ち止まり、遯は則ち退くなり。/

大有は衆〔おお〕きなり。同人はしむなり。/ 革は故〔ふる〕きを去るなり。鼎はしきを取るなり。/ 小過は過ぐるなり。中孚はなり。/ 豊は〔こ・こと・ふるき〕多きなり。親寡〔すくな〕きはなり。/ 離は上りて、坎はるなり。/ 小畜は寡きなり。履は〔お〕らざるなり。/ 需はまざるなり。訟はしまざるなり。/

    この章、錯簡と見て改める : 宋の蔡淵、元の呉澄、明の何楷 )

大過はクツガ〔くつが〕えるなり。頤は養うことしきなり。/ 既済はまるなり。未済は男〔だん〕のまるなり。/ 帰妹は女〔じょ〕のりなり。漸は女帰〔とつ〕ぐに男を待ちてくなり。/ コウ〔コウ〕は遇〔あ〕うなり。柔、に遇うなり。/ 夬は決なり。剛、を決するなり。/ 君子の道長じ、小人の道うるなり。 》 
                                      ( 次回に続く )


                                         

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