第72回 定例講習 特別講義 レジュメ
《 あらまし 》
平成26年(2014)春、4月。
年度当初の真儒協会・定例講習(第72回)が、
例年どうり“特別講義”の形式で行われました。
本年、「甲・午〔きのえ・うま/こう・ご〕」年は、私(盧)にとりましては、
“還暦”を迎える“節目〔ふしめ〕”の年でもあります。
そのあらましをご報告いたします。
■1.易占例・解釈研究 ≪“大学入試の合否”≫
新年度の時節にふさわしく、
“大学入試の合否”の“易的〔えきてき〕”を廻〔めぐ〕る解釈を、
振り返って紹介・解説いたしました。
私と嬉納〔きな〕女史とが 【雷水解】 の2爻と5爻を得るという
非常に興味深い占例の解説です。
(※ 2卦とも同じ卦を得る確率は、4096分の1です!)
■2.3.特別講義 ≪ 「易と動物(Part1)」 / 「易と植物(Part1)」 ≫
“特別講義”は、会長の私(盧)が「易と動物(Part1)」 、
副会長の嬉納禄子〔きなさちこ〕女史が「易と植物(Part1)」のテーマで、
プロローグ〔序論〕的に講義をいたしました。
この“易と動・植物”という研究テーマは、
今までの永きにわたって誰もが手がけていないテーマであり、
『易経』への斬新〔ざんしん〕な“切り口”・視点といえます。
私にとりましても、「易経物語」執筆のためのベースになるものだろうと想っております。
また、“ティーブレイク”を利用して、恒例の“「干支色紙」授与”を行いました。
今年の十二支(私の十二支ということでもあります)=「午」を「馬」の文字で、
私が、藤原行成〔ゆきなり:「三蹟の一人」〕風で書いたものです。
受講生全員に好みの色紙を選んでもらい、その場で筆〔ふで〕記名し授与いたしました。
―― 善き年度始めの講習でした。特別講義のレジュメは以下のとおり。
§1。 易占例・解釈研究レジュメ ≪“大学入試の合否”≫
春という時節柄、“大学入試の合否”の易的を廻る解釈を紹介したいと思います。
易占例・解釈研究 ――― 癸苅亜 斃訖絏髻曄。迦 & 5爻
(※ 2卦とも同じ卦を得る確率は 4096 分の 1 です)
◆立筮〔りつぜ〕&解釈 : A.盧秀人年 B.嬉納禄子 / 略筮・(擲占〔てきせん〕法)
○易的: 「(大阪在住)○○君の、 W 大学(東京)合格の可否?」
○得卦: A.【雷水解 ☳☵】 5爻 にて【沢水困】に之〔ゆ〕く (先天卦【火地晋 ☲☷】)/
H.26.1.3 (PM.5:30)
B.【雷水解 ☳☵】 2爻 にて【雷地預】に之〔ゆ〕く (先天卦【火地晋 ☲☷】)/
H.26.2.24 (PM.3:30)
○卦辞: 「解は西南に利ろし。行く所なければ、それ来り復〔かえ〕って吉。
行くところあり(あれば)、夙〔はや〕くするときは吉なり。」
2爻辞: 「田〔かり〕して三狐〔さんこ〕を獲〔え〕、黄矢を得たり。貞しければ吉なり。」
5爻辞: 「君子維〔こ〕れ解くことあり(あれば)、吉なり。小人に孚〔まこと〕あり。」
● 卦辞の解釈 → 「西南」の方位の意味は太古の中国(黄河流域)からみて
西南の平坦な住み心地の良い所という意味です。
ですから、現代この場合は(大阪からみた四国ではなく)
「東京」(W大)をさすと考えられます。
「行く所なければ ・・・」は、東京のW大を受験して不合格であれば、
もとの平穏な位置=大坂 に復〔かえ〕って落ちつく
(関西の“すべりどめ”の大学に籍をおき、再度上京W大を目指す)のがよろしいと解せるでしょう。
「行くところあり(あれば)・・・」は、行く所=W大 に合格するでしょう(するならば)、
速〔すみ〕やかに(入学手続きなど)進んでいって目標を成就させれば、
善きこと・よろしきを得て吉ということです。
□ 象による解釈 → 【坎〔かん〕☵】は、“艱難” であり“冬”であり“寒”です。
【震☳】は、“活動”であり“春”であり“出発”です。
したがって、坎・冬の苦しさから脱して春の雪解け・春の到来の象、
下卦【坎☵】の“艱難”は消えてなくなったことを示しています。
また、【坎☵】の“艱難”を脱して新しい船出・出発するべき象でもあります。
(※引用資料参照のこと)
cf.包卦(坤中に離)は、【坤☷】=母のもとから【離☲】=「はな」れ
「つ」く(=上京す)とも解せましょう。
○ 先天卦の解釈: 先天卦【火地晋 ☲☷】は、地上の太陽、進むの意(三吉卦)です。
cf.(父方の)祖母の守り
(2爻「玆〔こ〕の介〔おお〕いなる福〔さいわい:介福〕をその王母に受く」)。/
高杉晋作・安倍晋太郎・安倍晋三(現総理)の名前の「晋」
●□ 2爻辞と象の解釈: (例えれば)狩りに出て三匹(多数)の狐を獲得し、
その上に狐を射た黄矢(黄銅の矢)をも失わずに取り戻したようなものです。
「狐」は【坎〔かん〕☵】の象。
「三」は下卦【坎☵】が【坤☷】の3陰を1陽が貫いた象であることから。
「黄矢」の「黄」は下卦中爻の陰爻の土の色、「矢」も【坎☵】の象。
そして、このような善き結果を得られるのは、この九二が中庸の徳をもっていて、
真面目にしっかりと堅実な行ない(=受験対策の学習)をしていたからなのです。
(本人は気学・九性学で“五黄土性”の人。
「矢」が【坎☵】の象なのは【坤☷】の3陰を1陽が貫いた象であることからですが、
この“貫くもの”・“一貫するもの”は志望がW大オンリーであったこと、
志望大学に対する“志・まこと”とも考えられます。)
―― したがって、3つの学部に合格すると推測されます。
黄矢は多額のお祝金でしょうか?
(黄=お金と解し、矢=貫き動く“陽なるもの”と解し)出費した多額の受験関連費用が、
応援してくれる人達のご祝儀で(出費が)みな戻って来るの意でしょうか。
5爻辞と象の解釈: 六五は、柔徳の君〔きみ〕です。
自力では小人を排除し難いですが、よく九四・九二の陽剛なる応援者と相比し、
相応じ、小人達(初・三・上爻)を解き去らしめるのです。
小人達もその徳に信服し、柔順に孚〔まこと〕(誠意)をもって退いてゆくのです。
さて今回の場合は、親身な先生(九四)や先祖・親類・支援者(九二)の剛強な支援を得て
艱難(=小人=入試)を克服すると考えられます。
―― してみると、(艱難=初・三・上爻の陰) 3つの学部に合格ということでしょうか?
解釈・判断のPoint.
Point.1 (得)卦の意
A.問題が氷解(解決)する B.流れる・白紙に戻る(解消) /
(A.悩みが解ける・解決の意 と B.解約・解消の相反する二意があり、
解釈は難しいものがある卦です。が、もともと大きな課題をかかえている、
チャレンジしているのですから A の意と考えられます。)
※ 先天卦【火地晋 ☲☷】の意 (地上の太陽、進む、で吉の意)
Point.2 2爻の場合も 5爻の場合も“中庸・中徳”を得ています
Point.3 互卦〔ごか〕が【水火既済 ☵☲】
(互卦〔ごか〕は、含まれているもの、可能性です。
【既済】は、完成・調う の意。
「済」は“なス”・“なル”=成し遂げる、出来上がる の意です。)
Point.4 賓卦〔ひんか〕が【水山蹇 ☵☶】 = (【蹇 ☵☶】の賓卦が【解 ☳☵】)
(蹇難の時、善処努力し【蹇】を克服し、蹇難が解消され【解】になったとみます。
朱子の『本義』に「険に居りて能く動けば、即ち険の外に出ずるなり。
解の象〔しょう〕なり。」とあります。)
cf.《占例》 入学(学習開始)の是非を易的にして、
【蹇】5爻 を得たことがあります。
(5爻は「大いに蹇〔なや〕むも朋〔とも〕来る」とあり、
助力を得て吉・善しの判断です。が、)
“行き悩む”で蹇難を克服打開できない場合もあるということです。
学習希望・検討者に対して、先生・学校からみれば
(=賓卦:180度回転させた卦)【解】になります。
つまり、“流れる・白紙に戻る”、解約・解消の凶の意の場合です。
結果は、学習希望・検討者が、入学を取り止められました。
Point.5 之卦〔しか/ゆくか〕の「2爻【雷地予 ☳☷】」&「5爻【沢水困 ☱☵】」の解釈
(之卦〔しか/ゆくか〕は近未来、つまりこの場合
合格したその後は?ということです。
*2爻変の【預】卦には3義が考えられます。
1.あらかじめす 2.遊び楽しむ 3.怠ける です。
念願の志望大学に合格すると、余裕ができて楽しむ〔「預楽」〕ことができます。
がしかし、“手の舞い足の踏む所を知らず”(『礼記』)とばかり有頂天になり、
過度の遊びに享楽し、本来なすべきことを疎〔おろそか〕にしがちです。
目前の山・カベを超えたら見える景色=次のステップをよく観て、
いろいろな計画・準備をスタートせねばなりません。
*5爻変の【困】卦は、くるしむ・なやむ で“艱難辛苦〔かんなんしんく〕”の意です。
が、しかし、その【困】は“艱難汝〔なんじ〕を玉にす”
(=“Adversity make a man wise.”)です。
大きな人物になるための“こやし”にほかなりません。
具体的な【困】の内容としては、次の二つが考えられます。
1.合格すれば、同時に経済的困難がスタートすると考えられます。
入学金・授業料などの大学納付金、
上京に伴う交通旅費・新しい住まい・生活などへの
(一般ピープルにとっては)莫大な費用への資金繰りが必要となってきます。
2.上京・入学すれば、事故・体調不良をはじめ
諸トラブルに気をつけなければならないというものです。 補注)
★ ∴ 判断: A ・・・ 合格 / B ・・・ 合格
◇結果: (すべり止め受験)関西の某大の1学部と
志望校の東京・W大 の2学部、計3学部に合格しました。
最終的に入学することを決めた志望学部の受験では、
大問の解答欄を書き間違える(設問6つほどの解答をズラして書いてしまう)という
信じ難い大きなケアレスミスをおかしてしまいました。
が、それにもかかわらず幸運にも合格いたしました。
―― 合格・入学祝い金は望外にたくさんいただきました。
補注)
後日談: ○○君は、入学上京して1ヶ月経〔た〕たないうちに、
自転車でバイクと衝突するという大きな交通事故に遭いました。
が、ラッキーにも命に別状はありませんでした。
参考資料 ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 p.37引用≫
40. 解 【雷水かい】 は、とける・ちらす。 包卦(坤中に離)
● 春の雪解け。
(1)悩みが解ける・解決 と (2)解約・解消の二意があり解釈は難しい。
「渙」も散らすの意。
■ 1)雷(震)と水(坎)で、雷雨の象。=巣籠りの虫が這〔は〕い出し、啓蟄〔けいちつ〕。
2)下卦の坎は艱難・冬・寒、上卦の震は活動・春・スタートの意。
3)「蹇」の処置よく 「蹇」の外に出た象。
4)坎の冬の苦しさから脱し 春到来の象。
5)坎水の険難凌いで(解消して)、その外に動く(新たなスタート)の象。
○ 大象伝 ;「雷雨作〔おこ〕るは解なり。君子以て過を赫〔ゆる〕し罪を宥〔なだ〕む。」
(雷雨起こり、天地の閉塞を解消して新たに生命が活動・生長する。
このように、君子は時機をみて 過失をおかした者を赦〔ゆる〕し、
罪をおかした者も寛大な処置をとり、
人心を一新 のびのびとするようにはかるのです。)
cf. 「稲妻〔イナズマ〕」: 古代人は、雷によって陰陽交流し、稲が実ると考えました。
※ この続きは、次の記事に掲載いたします。
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