儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

易学

謹賀丙申年 <後編>

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)


《 干支の易学的観想 / 【火天大有 ☲☰】&【天山遯 ☰☶】卦 》

※(→ 資料参照のこと)

次に(やや専門的になりますが)、十干・十二支の干支を
易の64卦にあてはめて(相当させて)解釈・検討してみたいと思います。


昨年の干支、「乙・未」は【風地観☴☷】卦でした。

精神性重視、心眼で深く観る、“観光”といった意でした。

今年の「丙・申」は【火天大有〔たいゆう〕☲☰】卦、
先天卦は【天山遯〔とん〕☰☶】となります。

【火天大有】卦は、大いに有〔たも〕つ、大いなるものを有つの意です。

易では(陰陽のうち)“陽”を“大”としますので
“陽”を有つの意とも考えられます。

「仲(冲)天の太陽」の象で、豊かな盛運の時を表しています。

2爻には「大車以て載〔の〕す」

上爻には
「天よりこれを祐〔たす〕く。吉にして利ろしからざるなし」
との辞があります。


しかるに、盛大・盛運な時と申しますのは、
凋落〔ちょうらく〕・衰運への可能性を孕〔はら〕んでいます。

十干・「丙」でも述べましたように、
“陽極まれば陰”で盛大・盛運に楽観し油断すると逆転してしまいます。


【大有】は、下卦【乾☰】の上に【離☲】があります。

5爻の“陰”は【離☲】の中爻ですから、最高の明智・明徳です。

つまり、【乾☰】の“陽剛” を「智〔知と徳〕」をもって有〔たも〕つのです。

社会のレベルでは文化と経済の、
個人レベルでいえば“文武両道”のバランスが大切です。


「天祐〔てんゆう〕」・“天恵” は最強で有難いものです。

『易経』384爻〔こう〕の中で最良でしょう。

「子曰く、祐とは助なり。」(繋辞上伝)とありますように、
それは“天助”に他なりません。

そして、その“天助”は、自然現象としてばかりではなく、
(具体的には)人からの協力・助力という形をとって現れもいたします。

「易」(=東洋源流思想)では、“天の思想”と“時”の理解が重要です。

“天”と“天の時”をよくよく認識して、
“天に応じて時じく行う”
ことが肝腎なことです。


加えて、指導者〔リーダー〕の活動の指針として、
順天休命(大象)が述べられています。

「君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、
天の休〔おお〕いなる命に順〔したが〕う。」
 

すなわち、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、
善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。

このようにして、天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。

このことは、為政の道ばかりでなく、
個々人のレベルにおける“修身の道”もまた然りではないでしょうか。


次に、先天卦の【天山遯】卦は、解脱〔げだつ〕達観の卦です。

引退・隠居の意、現職を辞して新規事スタートの意、でもあります。

春は一般に、異動・変化の時(=【震】☳)です。

「時と與〔とも〕に行うなり」(彖伝)とありますように、
時をはかって(時のよろしきを得て)退くことが肝要です。

また、自分の世界=“壺中〔こちゅう〕の天を持つことが大切です。

若者風にいえば“アナザースカイ”ですね! 

もちろん、実際に山奥に隠遁〔いんとん〕するわけにはゆきませんので、
駁雑〔ばくざつ〕な俗世の中に在っても
そういった精神世界を持つ、ということです。

私には、「易」老子の世界があり、
「美(への探究)」の世界があります。

おかげで、行き詰まり窮することがないし、
逆境辛苦の中にあっても致命傷を負わず心穏やかに過ごせています。


★参考資料 ≪ 高根:「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.15・33 抜粋引用≫

 − − − − − − − − − − − − − − − − − − − 

No.14.大有 【火天たいゆう】  は、大いに有〔たも〕つ
     
 3大上爻〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦
 高根流 日の7(8)卦 〔(離火)・升・晋・豊・大有・旅・賁・明夷〕

 ● 中天の太陽、天佑あり、順天休命(大象)
   易は、“陰”を小とし“陽”を大とする。
   大有は、陽を有つ意(=盛大)。
   (大いに有つと、大いなるものを有つの意)

  ・2爻:「大車以て載〔の〕す。」 ・・・ 
     A)ロールスロイスに財宝を山と積むように ── 。
     B)重荷を積んでゆくようにすれば ── 。 「積中不敗」(象伝)
     cf.「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」
        (徳川家康)
  ・上爻:「天よりこれを祐く。」 ・・・ 天の配剤、384爻中の最良

 ■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。
  1)日、天上に輝く象。
  2)1陰 5陽卦 :
      5爻の1陰の天子は、大有の主爻。また、離の主爻
      陽位に陰爻あるは柔和な徳。離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。
      他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。心を1つに集めている象。
   離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。
    なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です

 ○ 大象伝;「火の天上に在るは大有なり。
       君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」

    (離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。
    この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、
    善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。
    このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。
    〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)


 − − − − − − − − − − − − − − − − − − − 


33. 遯 【天山とん】  は逃れ退く。

 精神性3卦 (観・无妄・遯)、
 大卦(大巽)、消長12卦 (7月)

 ● 解脱〔げだつ〕達観、「時と與〔とも〕に行うなり」(彖伝)、
   孤高、天国、壺中〔こちゅう〕の天

    cf.朱晦庵〔しゅかいあん〕 = 朱子(朱熹)が自ら「遯翁」と号す 
    ※ 明夷は地中に追いやられ、遯は高地にいる 

 ■ 山の上に天。
  1)乾の君子が高地(艮山)に隠遯している象。
  2)また、二陰の小人(初爻と2爻)が勢いを増して陽の君子が押されていく、
    が 「天地否」には至らぬ)象。

   * 2爻と5爻が正応。

 ○ 大象伝;「天の下に山あるは、遯なり。
       君子以て小人を遠ざけ、悪〔にく〕まずして厳しくす。」

    (山は天に迫ってそびえていますが、山高くとも天にとどかずです。
    この象にのっとって、君子は、小人を遠ざけるのに、憎しみをもってではなく
    自然に近づくことが出来ないように、自分を厳正にすることが大切です。)

 − − − − − − − − − − − − − − − − − − − 


《 おわりに 》

 人生には、3つの“坂”があると言われます。

“上り坂”・“下り坂”・“ま坂〔マサカ〕”  注1) 
がそれです。

時代・社会のレベルにおいても個々人のレベルにおいても然〔しか〕りです。

易学的に解せば、“上り坂”は“陽の時”、“下り坂”は“陰の時”とも言えましょう。

“ま坂”には吉凶両極の場合があるわけですが、
吉事の“ま坂”「天祐」とも言えましょう。

今年の私の年筮は、【沢水困☱☵】の得卦で(動爻:5爻乾の坤変により)
【雷水解☳☵】の動卦〔どうか〕でした。(中筮・擲銭〔てきせん〕法による) 

この三難卦の一つ【困】卦を、“艱難〔かんなん〕汝〔なんじ〕を玉にす”  注2) 
で【大有】同様才智・力量ある人には吉、と捉え
自らを励まし励まし乗り切って、問題解決・氷解の【解】卦に至るつもりです。

人生の3つの“坂”と吉凶両極の“ま坂”に想いを馳〔は〕せながら、
「天の休〔おお〕いなる命〔めい〕に順〔したが〕って」、
“陽”を有〔たも〕つ年にしたいものと想っております。


注1) 

「まさか」は、本来“よもや・いくらなんでも”とんめいった意味で、
(打ち消し・反語などの語を伴って)予期しない仮定を表す副詞です。
「まさかの時」は、万一の場合をさします。
“ま坂”はゴロ合わせで、人生の予期しない奇想天外の出来事を指すのでしょう。

“ま坂”でふと思い浮かびましたのは。
人生ずっと“上り坂”であった羽柴(豊臣)秀吉が、
中国(=毛利)に遠征し対峙していた時、
“本能寺の変”で織田信長が明智光秀に討たれた状況です。
信長という巨大な後ろ盾を失い、大敵毛利を前方に光秀を後方にして
絶体絶命の大ピンチであったともいえます。大凶です。
反対に、一転して主君の仇・光秀を討ち、信長後継者の筆頭となり
一気に天下取りに躍り出て天下を統一いたします。むろん大吉です。
“ま坂”の時とその“ま坂”の吉凶は測り難いものです。


注2)

‘Adversity make a man wise.’
(逆境は、人を賢くする。) 

神はその人(の能力)にみあった試練(苦労)を与えるものです!


( 以 上 )

謹賀甲午年  その3

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

《 干支の易学的考察 / 【雷火豊☳☲】・【火天大有☲☰】卦 》

次に(やや専門的になりますが)、今年の干支を易の64卦になおして(翻訳して)
解釈・検討してみたいと思います。


昨年の干支、癸・巳は【水火既済】卦でした。

今年の「甲・午」は【雷火豊☳☲】卦、先天卦は【火天大有☲☰】となります。

【雷火豊】卦は、中天に輝く太陽、豊大に富むの意です。

先天卦の【火天大有】も太陽が天上に輝く象〔しょう・かたち〕で、
“大いに有〔たも〕つ”・豊かで盛運の意です。  ※(→資料参照のこと

【豊】卦大象伝には、「君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」
(君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)とあります。

【大有】大象伝には、「順天休命」;
「君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(君子は、悪に対しては刑罰をもってこれを防ぎ止め、
善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。

このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。
〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)


≪参考資料:高根 「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.46・15 引用≫

55. 豊 【雷火ほう】  は、

 ● 豊大に富む、人生のまっさかり

  ※ 「豐」の字義 : 豆の字は 神前に供物を捧げる器具、
    上部は 山に木がたくさん茂っている象で、山のようにお供えを盛っている形です

 ■ 卦象は下卦離火・上卦震雷。

  1)雷がとどろき、稲妻が光る象。 (音と光で豊大の極)

  2)十分に出来た女性(離の中女)が立派に出来上がった男性(震の長男)に寄り添った象。

  3)卦徳では、離は文(明徳・明知)、震は武(活動・行動)にて“文武両道”・盛大。

  ○ 大象伝 ;「雷電みな至るは豊なり。君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」

     (雷鳴と電光が共に至るのが豊の卦象です。
     このように、君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
     上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)


14. 大有 【火天たいゆう】  は、大いに有〔たも〕つ

                      3大上爻〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦

 ● 中天の太陽、天佑あり、順天休命 (大象)

  易は、陰を小 陽を大とする。大有は、陽を有つ意(=盛大)。
  (大いに有つと、大いなるものを有つの意)

  ・2爻:「大車以て載〔の〕す。」 ・・・ 
      A)ロールスロイスに財宝を山と積むように ── 。
      B)重荷を積んでゆくようにすれば ── 。 「積中不敗」(象伝)

       cf.「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」(徳川家康)

  ・上爻:「天よりこれを祐く。」 ・・・ 天の配剤、384爻中の最良

 ■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。 
   
  1)日、天上に輝く象。

  2)1陰 5陽卦 :5爻の1陰の天子は、大有の主爻。また、離の主爻
    陽位に陰爻あるは柔和な徳。離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。
    他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。心を1つに集めている象。

   離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。
    なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です

  ○ 大象伝 ;「火の天上に在るは大有なり。君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、
         天の休〔おお〕いなる命に順う。」

     (離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。
     この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、
     善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。
     このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです
     〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)


私、想いますに、平成の今わが国は、真の“豊かさ”とは何か?
“豊かな社会”とは何か?
 を省みる必要があります。

まず、一般にいわれている“経済的豊かさ”についても、
ほんとうに豊かな社会といえるのか疑問です。

例えば、(900兆円を超す)借金大国、少子(超)高齢社会の進展、
少子なのに父の収入だけでは生活できない、
ワーキングプアー・ニート・フリーターの増大、
(年間3万人を超す)自殺者、(経済的)格差社会 ・・・ etc. 

そして、何よりも“心の貧しい国”〔マリア・テレサ〕です。

例えば、拝金主義・利益至上主義・利己主義の蔓延、
道徳の忘却、思いやり(=“仁”・“恕”・“愛”・“慈悲”)のなさ、
いじめの日常化、親子・家庭関係の崩壊、教育の形骸・貧困化 ・・・ etc.  
─── こころ・精神の“豊かさ”の再生が確かに望まれています。


英語の“RICH/リッチ”にも、
(1) たんに“貨幣〔かね〕持ち”という意味と 
(2) “(精神的・智的)豊かさ”の二つの意味がありましたね。

(“POOR/プアー”にも同様に、(1)たんに“貨幣〔かね〕がない”という意味と 
 (2)“(精神的・智的)貧しさ”の二つの意味があります。)


易象〔えきしょう〕の【離・火
(【雷火豊☳☲】卦の【離・火】、【火天大有☲☰】卦の【離・火】)も、
明知・文化文明であると同時に
中身が(“陰”で)空虚・虚偽・見かけ倒しの二つの意味があります。

心しておきたいことだと想います。


( 以上 )


水【坎】 に想う  (その9)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

《 孫子 と 「水」 ・・・ 「兵形象水」 》 


孫武は、春秋時代の兵法家で兵法の創始者、
「兵家〔へいか〕」の開祖として有名です。

その著書『孫子』十三編は、兵書の枠を超えて広く永く愛読・研究されています。

例えば、『三国志』で有名な曹操は、
『孫子』を熟読研究の上注釈まで加えています。

わが国においても、八幡太郎義家が雁行〔がんこう〕の乱れから伏兵を悟った話、
武田信玄の“風林火山”の旗さしものが
『孫子』・「軍争編」から採られたものであったりしたこと、
などよく知られています。

「兵形象水」には、理想的戦闘態勢が、水のように形を持たず、
変化に対して流動的・柔軟に変化するものであることが述べられています。

想いますに、『孫子』の兵法は、変化への対応ということで易とも重なります。

“水”をその思想的象とすることで黄老思想とも重なってまいります。


○「夫兵形象水、水之行〔形〕、避高而趨下、兵之形〔勝〕、避実而撃虚。 | 
水因地而制流〔行〕、兵因敵而制勝、故兵無常勢、(水)無常形。
能因敵変化而取勝者、謂之神。 | 
故五行無常勝、四時無常位、日有長短、月有死生。」

■ 夫〔そ〕れ兵の形は水に象〔かたど〕る、水之行〔こう/≒形〕は高〔こう〕を避けて
下〔か〕に趨〔はし/おもむ・き〕り、兵の形〔≒勝〕は実〔じつ〕を避けて虚を撃つ。 | 
水は地に因りて流れ〔≒行〕を制し、兵は敵に因りて勝を制す。
故に兵に常の勢無く、(水に)常の形無し。
能〔よ〕く敵に因りて変化して(敵の変化に因りて)勝を取る者、之を“神〔しん〕”と謂う。 | 
故に五行〔ごぎょ〕に常の勝なく、四時に常の位なく、日に長短有り、月に死生有り。

《 大意 》
そもそも軍隊の形(配備)は、水の(一定の形がない)形をお手本とします。
水の流れは(千変万化し)高いところを避けて低いところへと向かってゆき、
(同じように)軍隊の形は(千変万化し)敵の堅陣を避けて
スキのある手薄な箇所を攻撃する(ような形をとります。) 
水は地形(の高低)に従って流れの方向を定めますし、
軍隊は敵(の情勢)に応じて(その時の)勝利の方策を決めます。
ですから、軍隊には(敵に対して)決められた態勢というものがなく、
また(水に)定められた形はなく、(さまざまな地形によって変化し)
うまく敵情のままに従って変化して勝利を勝ち取ることができるのです。
そのようなものを(人知を超えた)“神〔しん〕”というのです。
そこで、木・火・土・金〔ごん〕・水の五行〔ごぎょう〕においても
(相生相剋〔そうしょうそうこく〕の関係で)一つだけでいつでも勝つというものはなく、
春・夏・秋・冬の四季にも一つだけでいつでも止まっているものはなく、
日の出ている時間にも長短があり、月にも満ち欠けがあるのです。

■参考  ◎ 【 易学 と 孫子 】

   ( *孫子=孫武  *夫概〔ふがい〕= 呉の将軍、呉王・闔閭〔こうりょ〕の弟 )

夫概: 「ところで何をしていた?」
孫武: 「『周易』を読んでいたところです。この家にありましたので。」
夫概: 「『周易』!周の天子が書いた易学の書だな。
    まさか、それで占いでもするつもりか?」
孫武: 「ああ、いえ。退屈しのぎに目を通していただけです。」
夫概: 「易学の書にか!『周易』とは、てっきり占いの書かと思っていた。
    他に何か役に立つのか?」
孫武: 「はい。 『周易』の“易”という字は、そもそも、
    トカゲ〔蜥蜴〕の皮の色の変化を指します。

    “周”という字は、天地のあらゆるものを包み込むことを意味します。
    『周易』とは、伏〔ふくぎ〕・神農・黄帝・文王らの英知〔えいち/叡智〕の結晶です。
    その教えは、単に占いのみに止まりません。
    兵法にも大いに関係します。
    得るところが、実に多いのです。
    どうしたらもっと巧みに兵を動かせるかといったことから、
    勝機を得る策に至るまで学べます。
    ですから、何度読んでも飽きることはありません。」
夫概: 「改めて聞くと興味深い話だ。
    では、ひとつ、私の将来を占ってはもらえぬか ・・・ 」

 (DVD:「孫子兵法大全」・第19話/郢落城 より)


《 日本文化 の 「水」 》

山崎正和〔まさかず〕氏は、「水の東西」(『混沌からの表現』所収/PHP研究所) の中で、
水の東西文化比較論を述べています。

その中で、日本と西洋(欧米)の水について、
典型的具体例として日本の「鹿〔しし〕おどし」と西洋の「噴水」を挙げて、
次のような水の対比で東西の文化を捉えています・・・


※ この続きは、次の記事に掲載いたします。


「儒学に学ぶ」ホームページはこちら
http://jugaku.net/

メールマガジンのご登録はこちら



にほんブログ村 哲学・思想ブログ 儒教・儒学へ

にほんブログ村

むかしの中国から学ぶ 第6講 「世界の占い・実践」  (完結編)

●吹田市立博物館・講演 『 むかしの中国に学ぶ /【全6講】 』

 第6講 §.「 世界の占い・実践 」 (完結編)


cover_20110619



── 最終講は、運命学全般・主な占法について、
具体的・ビジュアル(視覚的に)にポイントを紹介いたしました。

実践体験学習として易学(周易)/気学(九性学)/心理学(心理鑑定)を
ダイジェストで扱いました。

“たかね易学鑑定研究所”の用具・資料の一部を披露し、
またスタッフの皆さんにお手伝いをお願いいたしました。


── 全6回の講議を終えるにあたり、
“晩年を輝かせましょう”との内容であいさつし結びといたしました。 

そして、博物館館長による過分の感謝のお言葉をいただき、
盛大な拍手のうちに閉講となりました。


《 §.元〔はじめ〕に 》

・運命学/占 : 命学・卜〔ぼく〕学・相学・そして心理学(心理鑑定)

 ◆ 命 学 / 四柱推命〔しちゅうすいめい〕
 ◆ 卜 学 / 易学・周易
 ◆ 相 学 / 気学・九性(星)学〔きがく・きゅうせいがく〕
 ◆ 心理学 / 心理鑑定


「あたるも八卦〔はっけ〕、あたらぬも八卦」 : 八卦見 = 易者
    → “易学”が ではなく、易者に当たり外れが多い、の意

・占術や占具にパワーがあるにではなく(重要なのではなく)、
 占う人の才徳のいかんによります


≪※占具・道具の紹介≫

ex.

数珠〔じゅず〕 ・・・ 水晶・紫水晶(アメジスト)/菩提樹の実と根/
            27×4= 108 コ

(霊)水晶 ・・・ “地球の卵”・10億年前/月のパワー/
          【仏教】 → 七宝の一つ・仏像の額〔ひたい〕・数珠/
          【欧・中世】 → パワーストーン・ダイヤより貴重・アーサー王の“エクスカリバー”


【 易占 】

◆易占 / 立筮〔りつぜ〕 の方法

[ 立筮法 と 用具 ]
 略筮(三変)/中筮(六変)/元乃筮〔げんのぜい〕(四変)/本筮(十八変)
   cf.梅花心易(邵康節〔しょうこうせつ〕)/“無刀取”・「名人伝」
 ○サイコロ/コイン/筮竹〔ぜいちく〕/イーチンタロット/数珠〔じゅず〕/雑誌のページ/
  算木(象〔しょう〕と変化を視覚化、イメージ)/水晶(霊水晶、精神集中と雰囲気)


[ 占的〔せんてき/=易的〕(略筮) ]
 1 抽象的でなく具体的にしぼり込むこと → YES./NO.がはっきりするように
 2 時期は限定し、絞り込むこと → 結婚できるか? =年内に・・・数年のうちに・・・
 3 複数の比較・優劣は、A・B・C・D・・・ 個々に卦を出し比較検討すること

  《注意》
   ・精神を集中し無心となること → 願かけは ダメ!
   ・再度(再三)行わないこと → オミクジではありません!


[ 立筮 の 実践 ]
 1 筮竹〔ぜいちく〕 *易占の王道、(特に関西では)扱える先生は殆どいない
 2 イーチン・タロット *“グローバル時代”、海外での普及の可能性大
 3 サイコロ ・・・ (八面サイ・八面体 と 六面体)
 4 コイン 【擲銭法〔てきせんほう〕】 ・・・ コイン〔硬貨〕6枚 (5枚と1枚)


■ サイコロ 【八面サイ・八面体 と 六面体】
image_20110619_1


■ コイン 【擲銭法〔てきせんほう〕: コイン6枚(5枚と1枚)】
image_20110619_2



《 配布資料など 》

◆【卜 学】 ・ 易占  
  易の仕組み(八卦易理図・易占64卦一覧)/オリジナル易経64卦分類/易経64卦一言
  タイトル/易経64卦一行ポイント要約
  ≪*実践≫ ── 筮竹〔ぜいちく〕による立筮〔りつぜ〕デモンストレーション/
           上記演習用紙を用いて、サイコロとコインによる立筮演習と解釈演習!

◆【命 学】 ・ 四柱推命 
  四柱推命易学鑑定書参考例(たかね易学鑑定研究所編)

◆【命 学】 ・ 気学・九性(星)学 
  陰陽五行相生・相剋〔ごぎょうそうしょう・そうこく〕図/五行九性学一覧(星の特性・相性)/
  平成23年九性(本命・月命・傾斜)早見表/気学運勢の盛衰と易の八卦/
  “運勢の盛衰グラフ”(10ケ年の盛衰リズム・各月の盛衰リズム・ラッキー色)/
  辛卯〔かのとう〕・七赤金星〔しちせききんせい〕方位図/今年のあなたにとってよい方位


≪*実践≫ ── 自分の九性(星)を出し、性格・相性・運勢・色・方位などを鑑定してみましょう!

◆【心理学】 ・ 心理鑑定 

○ “心理鑑定”とは? ・・・ “こころの時代”/“いやしの時代”/
                テラピー(セラピー・療法)/心理学の発達・科学性(診断・鑑定)/
                命・卜〔ぼく〕・相学 → 第六感〔シックスセンス〕

○ “キトラ古墳壁画と「十二支」”
 ・「十二支」(天 干 地 支 /えと)〔文字・記号〕 → 動物のイメージ  → 〔動物〕 → 
   → 個性・性格〔キャラクター〕・心(的)状態 ≒ Personality〔パーソナリティー〕

        cf.ペルソナ 〔仮面〕
 ex.「丙・午〔ひのえ・うま〕」の女性はジャジャ馬(四柱の日柱の誤解も重なる)/
    午(≒馬)年生まれは足が速い・・・、
    子(≒鼠)年生まれはチョコマカする・・・、
    巳(≒蛇)年生まれは執念深い・・・ etc.

   子(ね) ・ 丑(うし) ・ 寅(とら) ・ 卯(う) ・ 辰(たつ) ・ 巳(み) ・ 
   午(うま) ・ 未(ひつじ) ・ 申(さる) ・ 酉(とり) ・ 戌(いぬ) ・ 亥(い)

   鼠 ・ 牛 ・ 虎 ・ 兎 ・ 龍 ・ 蛇 ・ 
   馬 ・ 羊 ・ 猿 ・ 鳥 ・ 犬 ・ 猪

   マウス/カウ・ブル/タイガー/ラビット/ドラゴン/スネーク/
   ホース/シープ/マンキー/バード/ドッグ/ワイルドボア


≪*実践1≫ ── 「動物による深層心理(願望)分析」;

   次の5匹の動物(ペット)で、手放す順位をつけてください。
   また、そのようにした基準(理由)は何ですか?
   【 牛(  ) ・馬(  ) ・虎(  ) ・羊(  ) ・猿(  ) 】

   A: 牛=(財産・金)/馬=(仕事)/虎=(プライド・名誉)/
      羊=(恋人・配偶者)/猿=(子ども)


≪*実践2≫ ── 「過小評価・過大評価」;

   (部屋のイラストの線描きしていない空白部分に) 
   一円玉が線に重ならず何個置けますか? 描き込んで下さい。
   遠近的に部屋の中にあると考えずに直接画面上に置くと考えてください。
  

   A: ゼロ、1個も置けません。
      だれしも、一円玉は実際の大きさより過小評価しているものです。
      (逆に、五百円は実際の大きさより過大評価しているものです。)


≪*実践3≫ ── 「もうひとりの自分」;

   (二人のほぼ同じ少女のイラストが線描きしてあります) 
   あなたに双子のきょうだいがいたとしたらたら? 洋服の色をぬりわけましょう。

   A: 双子のきょうだいの服と色の差が大きいほど、
      隠された人格・願望(もうひとりの自分)がいると考えられます。


≪*実践4≫ ── 「木の絵を描いてください」〔バウムテスト〕;

   (四角い縦長のワクのみ示してあります) 
   自由な色使い・大きさ・レイアウトで描いてください。

   A: さまざまな深層心理・潜在意識の読み取りが考えられます。
      参考例として、“たかね研究所”作成の理想的人間像パネルイラストを
      示しながら概説いたしました。


《 むすびに 》 ── 少子高齢社会を善く生きる

1.易学・易占は、脳の活性化・老化防止 / 右脳思考・平行思考 / 精神修養 
   ★人間の学(徳育の学)

2.「子曰く、我に数年を加して、五十以て易を学べば(以て易を学ぶことを卒〔お〕えしめば)、
  以て大過なかるべし。」
(『論語』・述而第七)
   ─── 晩年に学ぶ(まねぶ)にふさわしい、至れる学

3.「易に通ずる者は占わず。」 (荀子〔じゅんし〕) ・・・ * 高根の境地




§.吹田博物館講義 :  お わ り に  

《 万博市民展 〜千里から上海へ〜 》 関連イベント   H.23.6
─── むかしの中国から学ぶ ───

● 講師 : 真儒協会会長   高根 秀人年

 第1講  「 孔子 と 論語 」
 第2講  「 易占 と 易学 」
 第3講  「 陰陽相対(待) 」
 第4講  「 五行 (中国医学) 」
 第5講  「 英語でABC論語カルタ 」
 第6講  「 世界の占い・実践 」
 


〜〜〜〜〜〜〜〜 晩 年 を 輝 か し ま し ょ う 〜〜〜〜〜〜〜〜

● 「温故而知新」 (『論語』・為政第2) 
 ── 中国の古典を温め・温〔たず〕ね、古〔いにしえ〕と対話して現代に活かしましょう!

■ 三学:「少〔わか〕くして学べば、則ち壮にして為すことあり
      壮にしてして学べば、則ち老いて衰えず
      老いて学べば、則ち死して朽ちず」 
(佐藤一斎・『言志晩禄』)
 → *老いて学べば、則ち寿〔いのちなが〕し

● 「知者は楽しみ、仁者は寿〔いのちなが〕し (『論語』・雍也第6)
 ── 晩年を“輝かす”!

□「人間はおわりが来ることを心配することはない。
 常にいまだかって始めを持たなかったということを戒めよ」
 (ニューマン枢機卿)

「元亨利貞 〔げんこうりてい: おおいにとおるていによろし〕」 (『易経』・乾 卦辞)

── 元気〔もとはじまりの気〕、はじめよ! 

◆ 「多逢勝(聖)因 縁尋機妙 〔たほうしょういん えんじんきみょう〕」 (仏典) 
  cf.一期一会

◎ 「たたけよ さらば開かれん。」 (『聖書』)

晩年を“輝かす”── 門をたたく。 求め学ぶ、始めましょう! 

そして、「自強不息 〔じきょうふそく: 君子、自ら勉めて息まず〕」 (『易経』・乾 大象)

*真儒協会HP./高根ブログ → “儒学に学ぶ”・“儒灯”、「たかね易学研究所」 ほか


 ( 以 上 )


image_20110619_3



「儒学に学ぶ」ホームページはこちら
http://jugaku.net/

メールマガジンのご登録はこちら


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 儒教・儒学へ

にほんブログ村


むかしの中国から学ぶ 第2講 「易占と易学」 (その4)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)


《 3.易学/易のしくみ(理〔ことわり〕) 》


 A.八卦・八象  


 ( ※ 「先天八卦」 変 「後天八卦」 原理図 ── 略 ── )

 八卦〔はっか/はっけ〕・八象〔はっしょう〕

image_20110605_6

 

★ 「八卦」・「八」 の言葉      
“あたるも八卦、あたらぬも八卦”/“ハッケヨイ!ハッケヨイ!”/
“八卦見”=易者/“八俣〔やまた〕のおろち”/“大八島国”(『古事記』)/
“口八丁、手八丁”/“八百万〔やおよろず〕”/“八百屋〔やおや〕” ・・・


1.乾  【けん/】 (六白金性/星) : 
    父、全陽、剛健〔ドラゴン〕・虎・駿馬。


2.兌  【だ/】  (七赤金性/星) : 
    少女、悦楽、角の長い動物・羊(象形から)

     ・ 流水「坎」の下をふさいでせき止めた象。
     ・ 陰が2陽の上に乗って悦んでいる象(肩車)。
     ・ 兌の字義 ・・・口を開いて顔にシワがある形から。
     ・ 口の意、口を開いて男心をそそる意。
                cf.「天沢履」=“女子裸身の象


3.離  【り/】  (九紫火性/星) : 
    中女、明智、蛍・雉・孔雀・かに・・・

     ・ 乾の中爻に1陰の太陽が麗〔つ〕く、
       南天に沖する太陽とも1陰を太陽の黒点ともとる。
     ・ 中虚(中爻の陰)からビン・鳥の巣、陰を柔として亀・かに・貝など
         cf.「風沢中孚」=大離で “まこと、タマゴ”


4.震  【しん/】 (三碧木性/星) : 
    長男、振動小龍・仔馬・音の出るもの(携帯電話・インターネット)・・・。

     ・ 1陽が2陰におさえられ怒気を発する(雷)、
       発奮の気・春雷、早春の2陰の冷たさを払い除こうと躍動する。


5.巽  【そん/】 (四緑木性/星) : 
    長(大)女、伏入、蛇・豚・蝶・トンボ・・・。
     ・ 乾の天に1陰が伏入(巽〔たつみ〕風)、寒気は陰で重いから下から入ってくる。
     ・ 画象は、座卓・和机・木製ベット・・・。


6.坎  【かん/】 (一白水性/星) : 
    中(次)男、陥険・鼠・魚・・・。
     ・ 字は「土を欠く」 。 
     ・ 坤地に1陽の水が流れている。
         cf.算木画象 → タテ「川」の字、「水」の字?(by 高根)
     ・ 土が欠けている象を穴、1陽が2陰に挟まれている象からも陥る。


7.艮  【ごん/】 (八白土性/星) : 
    少年(男)、停止(ストップ)、犬・鹿・昆虫。
     ・画象は、大地(坤地)にそびえる山脈の尾根の象。 山、カベ。
     ・股を開いた象。
         cf. 「地山謙」=“男子裸身の象


8.坤  【こん/】 (二黒土性/星) : 
    母、全陰、柔順(牝)牛・豹・猫・・・。


 B.易経 64 卦   (by たかね)

☆☆ 易の仕組み ☆☆
 「易に太極 (たいぎょく) あり。 これ両儀 (りょうぎ) を生ず。 
  両儀は四象 (ししょう) を生じ、四象は八卦 (はっか) を生ず。」
    (繋辞伝) 

 ( ※ 説明図 ── 略 ── )

 ( ※ 易占六十四卦・一覧 / 『易経』・【乾為天】本文 ── 略 ── )


 C.卦の解釈  

 ── 卦の考察・解釈・判断 ──

 ○ 「それで、町のいわゆる易占家というものは、
  易というものをまことに簡単に取り扱いますけれども、
  これは実は非常に難しいものである。
  というのは、人間というものは難しいものであり、
  したがって人生というものは難しいものですから、
  それに応じて、易というものはやはりちゃんと具体的・理論的に
  よくできておるものなんです。」         

 ○ 「ですから、すくなくとも本卦、互卦、綜卦、錯卦、之卦の
  この五つをみなければ、本当の易にならんというぐらい厄介な ── 
  厄介というよりも周到、到れり尽くせりの理法を含んでいるんです。」 
    (安岡正篤・『易とは何か』 p.128,pp.131〜132)


 ■ 爻(こう)の知識理解

  ・ 初爻/二爻/三爻/四爻/五爻/上爻〔初六(しょりく)・初九(しょきゅう)/
   六二(りくじ)・九二(きゅうじ)/六三(りくさん)・九三(きゅうさん)/
   六四(りくし)・九四(きゅうし)/六五(りくご)・九五(きゅうご)/
   上六(じょうりく)・上九(じょうきゅう)〕

    ※ 陰の数は6(六・りく)、2+4=6 。
       陽の数は9(九・きゅう)、1+3+5=9。

  ・ 貴賤の位/ 爻の定位〔正位・不正位〕/ 中〔中正・不中〕/ 
   応(爻)と比(爻)/ 承と乗 ・・・・・

    ex.── 63 「水火既済」 ☵☲ と 64 ☲☵ 「火水未済」


 ■ 時・時の流れ(卦・爻とも)

  ・ 時間─四次元的発想、変化=変易─無常

    ( ※ 以下、今回は 略 )



《 4.易占 ・ 立筮〔りつぜ〕 の実際 》


☆ 略筮  (三変)/中筮(六変)/元乃筮〔げんのぜい〕(四変)/本筮(十八変)

    cf.梅花心易(邵康節〔しょうこうせつ〕)

 ( ※ 略筮の実演披露 )


image_20110605_7



《 §.むすびにかえて 》


・ 干支〔かんし/えと〕の易学的考察 
     *(詳しくは、高根ブログ 【儒灯】 「 謹賀辛卯年 」参照のこと)
       http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/51184930.html


  干支 = 十干 & 十二支
  今年の干支を易の64卦になおして(翻訳して)解釈・検討 :
  平成23年度干支 = 辛・卯〔かのと・う〕 → 【沢風大過】 (沢と風)


・ 【沢風大過】 : 
  【大過】 は、大(=陽)が過ぎるの意です。 
  「過」は“不及”の反対、過食・過飲・過労・過色 ・・・・ 。
  草木を養育すべき水沢が、大いに過ぎて滅失させます
  (水も多すぎると植物を腐らせます)。
  すなわち、本来良いものも 過ぎるとダメということ =「中庸です。
  互卦〔ごか=含まれているもの、可能性〕は、
  全陽の【乾為天】にて剛にして健の意です。
  『易経』に「棟撓〔むなぎたわ〕む」(卦辞)とあります。
  棟木は屋根を支える横木です。
  「顛〔くつが〕えるなり」(雑卦伝)ともあります。
  (国)家、まさに倒壊の危機です!

    cf.大(=陽)は、太陽 ・ 原子力(福島第一原子力発電所事故 ’11.3.11〜)

・ 先天卦 → 【水沢節】 (水と沢) : 【節】=節操・志節・節義
  現今〔いま〕、「節」は「恥」と共に地に堕〔お〕ちて忘れられた感があります。


( 以 上 )



(この続き、第3講 「 陰陽相対(待) 」 は次のブログ記事に掲載しております。)


「儒学に学ぶ」ホームページはこちら
http://jugaku.net/

メールマガジンのご登録はこちら


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 儒教・儒学へ

にほんブログ村

第二十回 定例講習 (2009年5月24日)

第二十回 定例講習 (2009年5月)

 

孝経    ( 五刑章 第11 )

  “ 子曰く、五刑の属三千、而〔しこう〕して罪 不孝より大なるは莫〔な〕。君を要〔よう〕する者は、上〔かみ〕を無〔な(なみ)〕みす。聖人を非〔そし〕る者は、法を無みす。孝を非る者は、親を無みす。これ大乱の道なり。”
 
《大意》 孔先生がおっしゃいました。「むかしから刑罰には、五刑といって5種類あって、その罪悪を細かく分けると数限りない〔三千〕ほどある。それらの数多〔あまた〕の中でも、親不孝以上の大罪はないのだよ。 主君に、不敬にも強要〔むりじい〕し、おびやかし自分に従わせようとする者は、長上を長上とも思わず、ないがし〔蔑〕ろにする非道の者だね。 聖人を非難する者は、聖人によって作り上げられた規範〔きはん=礼法〕を無視するわがまま者だね。 (もっとひどいのは、人倫の大本である)孝道を非難するような者は、親を親とも思わない人でなしの者だね。 このような(三悪の)人は、社会を大乱に導く原因となるのだよ。」

● 前10章の 「下と為りて而て乱すれば則ち刑せらる。」・「猶〔な〕お不孝たるなり。」を受けて、不孝と刑罰について説明しています。

・ 「五刑」 =墨(黥・げい)〔ぼく:いれずみ〕、劓〔ぎ:はなきり〕、剕〔ひ:足筋たち〕、宮〔きゅう:男女生殖器を使えなくする〕、大辟〔たいへき:死刑〕 ・・・古代の刑罰は身体を傷つける肉刑に特徴があります。

cf.  司馬 遷〔せん〕は、友人の李陵〔りりょう〕を弁護して(7代皇帝)武帝の怒りにふれ、「宮刑」により去勢されます。しかし彼は、その屈辱を乗り越えて、父のあとを継いで14年を費やし『史記』・全130巻、52万6千5百字余、を完成させました。(BC.96) 中国「24正史」の第一です。

なお、中国史上に登場する「宦官〔かんがん〕」は、刑罰によってではなく、自ら(幼年期に親が)宮廷(後宮)に仕えさせ出世させるために去勢するものです。

・ 「於」=ヨリ、比較を表す助字         ・ 「三千」=非常に多いの意

○ 「天地の性、人を貴しと為す。人の行〔おこない〕は、孝より大なるは莫し。」(聖治章 第9)

カラスでさえ ※“反哺〔はんぽ〕の”ありといいます。世に孝より尊い美徳はなく、不孝より重い罪悪・背徳はありません。(※ 「慈烏反哺以報親」 梁の武帝・孝思賦、哺は口中にある食物)

 “孝治主義”・・・孝道を教学の指針とし、孝をもって国を治める

論語   ( 孔子の弟子たち )

「 孔子は、詩・書・礼・楽を以て教う。 弟子は蓋〔けだ〕し ( 三千 )。身、六芸に通ずる者 ( 七十二人 )。 」  (『史記』・孔子世家)

「 徳行には 顔淵 ・ 閔子騫 ・ 冉伯牛 ・ 仲弓、 言語には 宰我 ・ 子貢、 政事には 冉有 ・ 季路、 文学には 子游 ・ 子夏。 」  (先進第 11 −3)
〔 がんえん ・ びんしけん ・ ぜんはくぎゅう ・ ちゅうきゅう、 さいが ・ しこう、 ぜんゆう ・ きろ、 しゆう ・ しか 〕

・ “四科十哲”(孔門の十哲、十大弟子)
孔子が昔、艱難をともにした門人を追憶し、それを聞いた弟子が4つのジャンルに分けて記したものです。

後世、「徳行(徳の高さと立派な実践)」 ・ 「言語(思想・言論)」 ・ 「政事(政治的手腕)」 ・ 「文学(学問・教養)」を孔門の四科といい、このメンバーを孔門の十哲といいます。

しかしこれは、当時 “陳蔡” に従ったものだけのことで、弟子の ベスト10 というわけではありません。例えば、孔子の後継となる 曾子は入っていません。(年が若かった、孔子と46歳差)

※ 『マンガ 孔子の思想』 (講談社 +アルファー文庫)のマンガキャラクターは、非常によく人物のイメージが捉えられていると感心しています。お薦めの本です。

・孔子(儒家) の後継
    A 忠恕〔ちゅうじょ〕派 (仁の重視)
       曾子 ―― ※ 子思 ―― 孟子      ※孔子の孫、『中庸』を著す
    B 礼学派 (礼の重視)
       子游・子夏 ―― 荀子 ・・・・ 法家 (李斯〔りし〕・韓非子)

    
cf. 尊称;  ・孔子 − 至聖    ・孟子 − 亜聖   ・顔子 − 復聖         
         ・曾子 − 宗聖     ・子思(子) − 述聖 
          ※ 「子」は男子の尊称

 

本学   ( 『中庸』 2 )

§ 易卦にみる中庸(中論)の例   ( by. 『易経』事始 Vol.2 )

● 卦象 ・・・ 中正(中徳)―― 2爻・5爻 を(まん中の意)、陽爻にとって陽の位・陰爻にとっての陰の位 を正位 (初爻から陽・陰・陽・陰・陽・陰、「水火既斉」)、中で正位つまり 2爻が陰・5爻が陽の場合

● 卦意 ・・・ 以下 例

【沢雷随 17】 
「随」は、つきしたがう(時・事・人)ということです。したがうことの真義は、天地自然の法則にしたがうことです。それは時々刻々の、時の変化・推移(=変易・無常)に適切にしたがうことです。動くことが、臨機応変、時のよろしきに適〔かな〕うことが中庸を得ることです。 これが、易(儒学思想)の真面目です。

【離為火 30】
「離」は、はな〔離〕れ、つ〔麗・附〕くということです。万事に中庸を得て、慎重に正しくついてこそ、物事は「化成」(生じ変化し成る)するのです。

【水沢節 60】
「節」は、竹のふし。すべてにほど(程・バランス)・ほどあいを保って、のり・きまり(=数度・規範)を守ることです。〔節度・節操〕。そして、行いが、時のよろしき(ころあい)に適うように適度の区切り・締めくくりがあることが大切です。〔節目〕
この「節」を守ることは、天地自然の法則に適うことであり、易(儒学思想)が最
も尊重している時中(時に中〔あた〕る)こと、即ち中庸に合致することです。竹のふしから芽がでるように、中庸から新たなものが生み出されるのです。
                                                                                                                                                                    
【風沢中孚 61】
「中孚」は、まこと・信にあたるということです。まこととは、限りない創造力。中〔あた〕るとは、道理に適う、一致することです。つまり、こころ根が偏らず中庸に適うことです。これが、易(儒学思想)の極致である中正の道のことです。


§ 考察 : 中庸の美と日本の美 

・ “日本的美”(国風文化=平安時代) ・・・・
派手さを半分に押さえた上品さこそ、さりげなく優美  ― 極端な個性美と対照
例 ― 古語「なまめかし」〔生めかし〕、「なまめく」は優雅だ・優美だとし、容姿
ばかりでなく人柄の上品さなども表す、男女共通の最高の誉め言葉
 *「なまめかしき尼」は“色っぽい”の意でははない!

・ “裏まさりの美学 ”
・ “侘〔ワ〕び・寂〔サ〕び ”
・ “ Contrast and Gradation ”〔対比と漸増〕
・ “美” の原理 ―― 変化〔バラエティー〕の要素 と 統一〔ユニティー〕の要素
                                                   etc.

易経    ( by. 『易経』事始 Vol.2 )

§ 易の思想的基盤・背景 (東洋源流思想)  【 ―(1) 】

A 大〔太〕極(たいきょく、=「皇極」)                       
――易の根本・創造的概念、宇宙の根源、万物の起源、神〈自然〉の摂理〔せつり〕

・ 陰陽以前の統体  ――  1)「無」(晋の韓康伯)、2)「陰陽変化の理」(朱子)、3)「陰陽分かれぬ混合体」(清の王夫之) 
参考 : 『荘子』北極星の意

ビッグバン(=特異点)、ヒモ宇宙、ブラックホール、道、無、分子―原子―陽子
ウルマテリー〔原物質・原子極〕(原子物理学、独・ハイゼンベルグ等)、
神ありき 「天(之)御中主神・〔あめのみなかぬしのかみ〕」(神道・〔しんとう〕)、  
易神 ・・・・ 造物主

大極マーク、韓国国旗

※ 参考――万物の根源          《 タマゴが先かニワトリが先か? 》

・ 科学――ビッグバン(宇宙物理学)、ウルマテリー(原子物理学)・・・極微の世界(ミクロコスミック)において大極が発見されようとしている。天文学的研究(マクロコスミック)においては未だ大極に至ってはいない。          
・ 宗教――神話、聖典 ・・・ etc.
・ 儒学=易 ・・・「太極」 / 道教(老荘) ・・・「無」 / 仏教 ・・・「空(くう)」

○ 「無極にして大極」 (近思録) ・・・ 朱子は 大極 = 有 と考える
○ 「是の故に易に太極あり。是れ両儀を生ず。両儀四象を生じ、四象八卦を生ず。八卦吉凶を定め、吉凶大業(たいぎょう)を生ず。」 (繋辞上傳)
○ 「太初(たいしょ)に言(ことば)あり、言は神と共にあり」 (旧約聖書)
○ 「天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時、高天原(たかまのはら)に成れる神の名は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次に高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、次に、神産巣日神(かむむすひのかみ)。」 (古事記・冒頭)
○ 「道は一を生じ、一は二を生ず。」 (老子) ・・・ 道は無と考える

■ 易(の中に潜む)神 “シン”
 =天地の神、人格神的なものではなく神秘的な作用の意  
  ※参考―汎神論(はんしんろん)

○ 「陰陽測(はか)られざるをこれ神(しん)と謂う。」「故に神は方(ほう)なくして易は体(てい)なし。」(繋辞上伝)
○ 「※鬼神を敬して之を遠ざく。」(論語・雍也)  ※鬼神=死者の霊魂や人間離れした力
        
                                            (以 上)

「儒学に学ぶ」ホームページはこちら → http://jugaku.net/


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 儒教・儒学へ
にほんブログ村

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ
にほんブログ村

Archives
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ