儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです。 『論語』、『易経』を中心に、経書の言葉を活学して紹介して参ります。 私個人の自由随筆、研究発表などのほか、真儒協会が毎月行っております定例講習についても掲載しております。

特別講義

第83回 定例講習 特別講義  その3

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

§2.【火地晋 ☷】 

○ 青年 《長生》/地上進み行く太陽 (10代後半〜)  
  晋=進む / 人生の上り坂


★参考資料  ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 p.34引用≫

No.35.晋 【火地しん】 は、すすむ

三吉卦、遊魂八卦、
盧流 日の7(8)卦 〔(離火)・升・晋・豊・大有・旅・賁・明夷〕

● 地上(真上)の太陽、中年壮年、昼、晋(すすむ)・進め(5爻)、 
  4爻 大ネズミ登場(鼫鼠;〔せきそ〕、 384爻のうち最悪人の意)


cf. 人名 ・・・ 安倍晋三 (元・現)総理・安倍晋太郎 父子、 高杉晋作

■ 地(坤)上の太陽(離)にて、太陽が地を照らしている象。
  臣下が、大明・明徳の天子(君主)に 付き従う象意。


○ 大象伝;
「明 地上に出づるは晋なり。君子以て自ら明徳を昭〔あきら〕かにす。」
(離明の太陽が、昇り進んで 地上を照らしています。この象のように、君子は、自らが持っている明徳を輝かせるよう努めるのです。)

cf. 「大学の道は 明徳らかにするにあり」 (『大学』)



§3.【雷火豊 ☳】  

○ 壮年 《冠帯・建禄》 /豊大な太陽 (30代半〜40代後半)
  /人生の盛り


★参考資料  ≪◎ブログ【儒灯】 「謹賀甲午年」: 2014.3. より ≫

昨年の干支、癸・巳は【水火既済】卦でした。

今年の「甲・午」は【雷火豊☳☲】卦、先天卦は【火天大有☲☰】となります。

【雷火豊】卦は、中天に輝く太陽、豊大に富むの意です。

先天卦の【火天大有】も太陽が天上に輝く象〔しょう・かたち〕で、
“大いに有〔たも〕つ”・豊かで盛運の意です。  ※(→資料参照のこと

【豊】卦大象伝には、「君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」
(君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、
上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)とあります。

【大有】大象伝には、「順天休命」;
「君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、天の休〔おお〕いなる命に順う。」
(君子は、悪に対しては刑罰をもってこれを防ぎ止め、
善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。

このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。
〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)


私、想いますに、平成の今わが国は、真の“豊かさ”とは何か?
“豊かな社会”とは何か?
 を省みる必要があります。

まず、一般にいわれている“経済的豊かさ”についても、
ほんとうに豊かな社会といえるのか疑問です。

例えば、(900兆円を超す)借金大国、少子(超)高齢社会の進展、
少子なのに父の収入だけでは生活できない、
ワーキングプアー・ニート・フリーターの増大、
(年間3万人を超す)自殺者、(経済的)格差社会 ・・・ etc. 

そして、何よりも“心の貧しい国”〔マリア・テレサ〕です。

例えば、拝金主義・利益至上主義・利己主義の蔓延、
道徳の忘却、思いやり(=“仁”・“恕”・“愛”・“慈悲”)のなさ、
いじめの日常化、親子・家庭関係の崩壊、教育の形骸・貧困化 ・・・ etc.  
─── こころ・精神の“豊かさ”の再生が確かに望まれています。


英語の“RICH/リッチ”にも、
(1) たんに“貨幣〔かね〕持ち”という意味と 
(2) “(精神的・智的)豊かさ”の二つの意味がありましたね。

(“POOR/プアー”にも同様に、(1)たんに“貨幣〔かね〕がない”という意味と 
 (2)“(精神的・智的)貧しさ”の二つの意味があります。)


易象〔えきしょう〕の【離・火☲】
(【雷火豊☳☲】卦の【離・火☲】、【火天大有☲☰】卦の【離・火☲】)も、
明知・文化文明であると同時に
中身が(“陰”で)空虚・虚偽・見かけ倒しの二つの意味があります。

心しておきたいことだと想います。



★参考資料  ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 p.46引用≫

No.55. 豊 【雷火ほう】 は、

盧流 日の7(8)卦 〔(離火)・升・晋・豊・大有・旅・賁・明夷〕

豊大に富む、人生のまっさかり
※ 「豐」の字義 : 豆の字は 神前に供物を捧げる器具、
  上部は 山に木がたくさん茂っている象で、山のようにお供えを盛っている形です

■ 卦象は下卦離火・上卦震雷。
1)雷がとどろき、稲妻が光る象。 (音と光で豊大の極)
2)十分に出来た女性(離の中女)が
  立派に出来上がった男性(震の長男)に寄り添った象。
3)卦徳では、離は文(明徳・明知)、震は武(活動・行動)にて
  “文武両道”・盛大。

○ 大象伝 ;
「雷電みな至るは豊なり。君子以て獄を折〔さだ〕め、刑を致す。」

(雷鳴と電光が共に至るのが豊の卦象です。このように、君子は、まず下卦の明徳・明知をもって〔訴訟の〕正邪曲直を正し裁定し、上卦震の行動をもって罪有る者には刑罰を執行するのです。)
 



§4.【火天大有☰】

○ 中年 《帝王》 /沖(冲)天の太陽 (50代半〜60代前半)
  /人生のまっ盛り


★参考資料  ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 p.15引用≫

No.14. 大有 【火天たいゆう】  は、大いに有〔たも〕つ

3大上爻  〔大有・大畜・漸〕、帰魂8卦
盧流 日の7(8)卦 〔(離火)・升・晋・豊・大有・旅・賁・明夷〕

● 中天の太陽、天佑あり、順天休命 (大象) /人生のまっ盛り
易は、陰を小 陽を大とする。大有は、陽を有つ意(=盛大)。
(大いに有つと、大いなるものを有つの意)

・ 2爻 : 「大車以て載〔の〕す。」・・・
      A)ロールスロイスに財宝を山と積むようにーー。
      B)重荷を積んでゆくようにすればーー。 「積中不敗」(象伝)
       cf. 「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くが如し。・・・ 」(徳川家康)

・ 上爻:「天よりこれを祐く。」・・・天の配剤、384爻中の最良

■ 下卦 乾天の上に、上卦 離火(=太陽)。

1) 日、天上に輝く象。
2) 1陰 5陽卦 :5爻の1陰の天子は、大有の主爻。
  また、離の主爻。陽位に陰爻あるは柔和な徳。
  離の明徳と中庸の徳を兼備し、正応・正比。
  他の 5陽の剛健な賢臣たちが随従している象。
  心を1つに集めている象。

 離の中爻の陰は、離の主爻であり中徳を持つ。
  なぞらえれば、離=炎 の中心は、虚にして暗く燃えていない、陰です

○ 大象伝 ;
「火の天上に在るは大有なり。君子以て悪を遏〔とど〕め善を揚げて、
天の休〔おお〕いなる命に順う。」

(離火が、乾天の上にあるのが大有です。離の明知・明徳と乾の断行です。この象にのっとって、君子は、悪に対しては 刑罰をもってこれを防ぎ止め、善に対してこれを称〔たた〕え揚げ賞し登用するのです。このようにして、 天の真に善にして美しい命に順うようにつとめるのです。〔為政の道ばかりでなく、修身の道もまた然りです。〕)



§5.【火山旅 ☶】  

○ (初)老年  《衰》  /移りゆく太陽 (60代後半〜)
  / 覚(悟)りへの道程・“うつろう精神のともしび”(盧)


No.56. 旅 【火山りょ】 は、旅立ち

盧流 日の7(8)卦 〔(離火)・升・晋・豊・大有・旅・賁・明夷〕

● 修行の旅、行かねばならぬ旅、孤独な旅人  ※「旅」=進む道の意
  芸術・学術・医術など精神的のことは吉

cf.  杜甫、松尾芭蕉〔ばしょう〕・『奥の細道』、 留学 ・・・・ 空海ら(遣唐使節)
   坂本竜馬 :“人の言うにまかせよ、我行く道は我のみぞ知る”

■ 下卦 艮山で上卦 離火。 
1)山上の火が燃え移って一ヶ所に止まらぬ象。
2)山をめぐって太陽が移り進む象。
3)豊が幽居の象であるのに対して、旅は郷里を離れた外遊の象。
4)下卦艮から上卦離に向かうから、朝から日のある中〔うち〕に旅行する象。
5)止まって(艮)明に麗く(離)から、日暮れになれば、灯火・明らかな館に宿泊する象。
  だから、「小しく亨〔とお〕り、貞なれば吉。」(卦辞)

○ 大象伝 ;
「山上に日あるは旅なり。君子以て明らかに慎んで刑を用いて獄を留めず。」

(艮山の上に離火があり、燃え移り久しくは留まらないのが旅の卦象です。また、離の明知・明察と艮の断行を意味しています。これにのっとって、君子は、刑罰には明察をもって 慎重の上にも慎重を期し、裁くべきは裁き 訴訟を留めておくようなことはせず、断行するのです。)

cf.(2009現在) 死刑判決確定後の再審請求により(DNA鑑定などで)、無罪(冤罪)となる場合が問題となっています。また、長い期間の審議・裁判も問題です。(高根)



※ この続きは、次の記事に掲載いたします。


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第83回 定例講習 特別講義  その2

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

“日の易卦”  ―― ライフステージ・《十二運》

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【地風升 ☷☴】  

○ 誕生(幼少年)/昇る太陽  
  《養
〔よう〕

升=昇る/「階〔きざはし〕に昇る」/日の出/
(天照大神〔アマテラスオオミカミ〕)天の岩戸開き/
明/「明明徳」/白・素/ファーストスター
cf.ヘミングウェイ『日はまた昇る』、
   “朝の来ない(日の昇らない)夜はない”


【火地晋 ☷】  

○ 青年/地上進み行く太陽 (10代後半〜)  
  《長生
〔ちょうせい〕   

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晋=進む/地上の太陽/
善きも悪しきも、ともに進むの意なので注意


【雷火豊 ☶】  

○ 壮年/豊大な太陽 (30代半〜40代後半)  
  《冠帯
〔かんたい〕・建禄〔けんろく〕》 

人生の真っ盛り/“犬にも盛んなる時あり”


【火天大有☰】  

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○ 中年/沖(冲)天の太陽 (50代)  
  《帝王
〔ていおう〕》 


【火山旅 ☶】  

○ (初)老年/移りゆく太陽 (60代)  
  《衰
〔すい〕》 

山々を移りゆく太陽(/移りゆく陽ざし)


【山火賁 ☶】  

○ 晩年/ 沈む太陽 (60代後半〜)  
  《病
〔びょう〕 

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“超高齢社会”とその進展(日本、中国も)

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【地火明夷 ☷】  

○ 死絶と胎/暗黒時代  
  《死〔し〕・墓
〔ぼ〕・絶〔ぜつ〕》《胎〔たい〕
 
暗黒時代・地球のウラ(の太陽)/
(天照大神〔アマテラスオオミカミ〕)天の岩戸がくれ/
終始・始まり/“循環の理”/黒・玄/
西洋;“暗黒時代”から “ルネサンス”へ(死んでから再生・復活)




§1.【地風升 ☷☴】  

○ 誕生(幼少年) 《養》 /昇る太陽  ※ 升=昇る

♪♯♭
 “日の出”の“元の気”に想う   ≪ 「朝だ元気で」 ≫ 

朝こそすべて、夜型人間 朝早起き 「早起きは三文の得」
教育の職場も残業でダラダラと遅くなっていますが、“朝早く”にすべきです。
  のぼる=昇る・登る・上る

♪ ≪ 「朝だ元気だ」 ≫ ♭  詩:八十島 稔 / 作曲:飯田 信夫

【戦後改訂版】                     
朝だ朝だよ  朝日がのぼる
空にまっかな  日がのぼる
みんな元気で  元気で起きよ
朝はこころも  からりと晴れる
あなたもわたしも  君らも僕も
ひとり残らず  起きよ朝だ


【戦前の原曲】
朝だ朝だよ  朝日がのぼる
燃ゆる大空  がのぼる
みんな元気で  元気で起〔た〕てよ
朝はこころ  きりりとしめて
あなたもも  君等も僕も
ひとり残らず  そら起て朝だ


cf.「春はあけぼの*。やうやう白くなりゆく、
   山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」
   (『枕草子』)

→ *部に「いとをかし」が省略されているとして
  「春は明け方がすばらしい」と訳すのが一般的です。


★参考資料  ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 p.40引用≫

癸苅供ァ‐ 【地風しょう】 は、のぼる  

3吉卦 (晋・昇・漸)、
盧流 日の7(8)卦 〔(離火)・升・晋・豊・大有・旅・賁・明夷〕

高根流 “日の卦”

順を追って昇り進む、昇天、先祖を祭って開運、「南征して吉」 (卦辞)
  5爻辞 「貞しければ吉なり。階〔きざはし〕に昇る。」(女性 “玉の輿”)

下卦 巽風で、上卦 坤地 
1)巽風はまた木、木が地中から生長・大きくなる象。向上発展。
2)また、地中の巽木は 木の根であり芽です。3・4・5爻に震があり、
  その芽が 震の伸長発展の気をもって 上に昇り進む〔生長していく〕象。
3)卦徳、下卦巽は謙遜、上卦坤は柔順。
  謙遜に柔和して正道に従って高位に昇る(出世する)ことが出来ます。

・2爻と3爻、中庸の徳あり、正位正応

○ 大象伝 ;
「地中に木を生ずるは升なり。君子以て徳に順〔したが〕い、小を積みて以て高大なり。」

(坤地の中に巽木が生じて生長発展して大きく上昇していく象。このように、君子は、〔木が時に従い、天に従って生長することを悟り〕自ら慎んで、徳を修め徳に従うことに心がけ、小さな善事・小さな才徳を積み重ねて高大なものに到達するように努めるのです。)


※ この続きは、次の記事に掲載いたします。


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第83回 定例講習 特別講義  その1

《 あらまし 》

平成27年(2015)春、4月。

年度当初の真儒協会・定例講習(第83回)が、
恒例どおり“特別講義”の形式で行われました。

本年、「乙・未〔きのと・ひつじ/おつ・いつ、び・み〕 は、
私(盧)にとりまして、“還暦”を経てふた回り目の暦の初年度です。

“(運)命学”にいう “運気最高潮の大運〔たいうん:10年運〕”を生きている自負、
歳重〔としがさ〕ねの想いも新たに、気力充実の講義をいたしました。


“特別講義”は、会長の私(盧)が 1.「“日の易卦”に人生を想う」
副会長の嬉納禄子〔きなさちこ〕女史が 2.「易と植物(Part供法廖
のテーマで、講義をいたしました。

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また、“ティーブレイク”を利用して、
恒例の“「干支色紙」の授与”を行いました。

今年の十二支の「未」を「羊」の文字で
私(盧)が、藤原行成〔ゆきなり〕の風〔ふう〕で書いたものです。

受講生全員に好みの色紙を選んでもらい、
その場で筆〔ふで〕記名し授与いたしました。

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熱心に学ばれた二名の方には、記念の額装書色紙の贈呈も行いました。

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―― 善き年度始めの講習でした。

“特別講義” レジュメは以下のとおりです。



◎真儒協会第83回定例講習:特別講義

平成27(2015).4.26 

「 “日の易卦”に人生を想う 」

―― 【離 ☲】=日・太陽/
    “日の易卦”=(【升】)・【晋】・【豊】・【大有】・【旅】・【賁】・【明夷】/
    少子化・♪「朝だ元気だ」/超高齢社会・♪「 夕日 」♪「かなりや」/ ―― 

真儒協会会長: 盧 秀人年

《 はじめに 》  

月(陰)が沈み太陽(陽)が昇る、太陽(陽)が沈み月(陰)が昇る。

これは、なんと日常的にして壮大な、自然の陰陽の交代と循環なのでしょう! 

新しい視点として、
この自然界(太陽)の“時の推移・廻り”を象〔しょう/かたち〕とする易卦と
現代の“人生の段階〔ライフステージ〕”を重ねて想いを馳〔は〕せてみたいと思います。


64卦で【離 を含む卦は、
上卦で 8卦( 14【大有】・38【睽】・30【離火】・21【噬嗑】・50【鼎】・64【未済】・56【旅】・35【晋】 )、
下卦で 8卦( 13【同人】・49【革】・30【離火】・55【豊】・37【家人】・63【既済】・22【賁】・36【明夷】 ) です。

30【離火】は、重卦〔じゅうか〕ですのでダブっています。

それらの中で、太陽の運行と人生の段階〔ライフステージ/ライフサイクル〕
を結びつけて“日の易卦”といたしました

すなわち、【晋】・【豊】・【大有】・【旅】・【賁】・【明夷】 がそれです。

これらに、“日が昇る(日の出)”の意味で、
人生行路のスタートとしての【地風升】を加えました。

(※【離火】は“太陽=日”そのものです)

→ 【升】 → 【晋】 → 【豊】 → 【大有】 → 【旅】 → 【賁】 → 【明夷】 →


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《 【離為火】=太陽/日》

【離火 ☲】

たかね研究 : 「美しい国 日本」(安倍晋三 政権)・・人の徳と「離」の文化
      cf. 「美」・・・美〔よ〕い(美子〔よしこ〕)/【離火】も
          太陽の動き(変遷)を若干描いてはいる


★参考資料  ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.29‐30引用≫

癸械亜ァ[ゲ弌 擇螳戮】  は、麗〔り〕。

8重〔じゅん〕卦、重離

● 火また火、つき離れる、太陽、聡明・美、九紫火性、“日はまた昇る”
     ・・・日の昇らぬ明日はない
   ※ 火は何かに“ついて”初めて炎上する(cf.発火の3要素:モノ・酸素・温度)
    人も何に(正しき)に、誰につき従うかが大切
       ex.秀吉→ 今川義元から織田信長へと離れついた
   ・ 「日月は天に麗〔つ〕き、百穀草木は土に麗く。重明以て正に麗けば、
     すなわち天下を化成す。」
 (太陽・月は天につき、あらゆる穀物草木は
     土についています。離卦は、火であり明であり重離・重明です。
     君臣共に明智をもって、正しいものにつくことによって、天下のあらゆるものが
     化育され生長するのです。〔天下万民も教化・育成されるのです。〕)
   cf.“人の心の火の用心” (真瀬中州) / “一灯照隅。万灯照国”
     (安岡正篤・関西師友協会) / 文化・文明の源は「火」と「石のかけら」 (高根)
 ※ 2つの徳性(安岡氏):(1)明暗、心を明るく (2)清潔、浄不浄 
                    ・・・ 心に(の)太陽を!離の徳?(高根)

■ 火また火、重離、重明。
   1) (坎水と逆に)2爻と5爻が陰(柔順中正)。
     炎の中心は暗い(温度も低い、燃えていないガス状態) 
      ―ー 心を空しくして明を継ぐ。
     2爻の美徳 ---- 陰位に陰爻で正しく中庸の徳あり、「柔、中正に麗く」(彖伝)
   2) “雉 網中に罹〔かか〕るの象”(白蛾)
       ・・・内卦の離を雉とし外卦の離は網とする。雉も網も離の象。

○ 大象伝 ;
「明 両〔ふた〕たび作〔おこ〕るは離なり。大人以て明を継ぎ、四方を照らす。」

(“日はまた昇る”で、太陽は明日も昇る。上・下卦共に聡明・明らかな象です。徳のある大人・君子は、この象にのっとって、先人代々の明徳を継承しその明徳を日々新たにして、四方を(徳の光で)明るく照らす万民の光となるのです。)

   「明」を継ぐに「明」をもってするの美   cf. 「明明徳」

 ( 補 )
  ・ 「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。今、女性は月である。
    他に依って生き、他の光によって輝く、
    病人のやうな蒼〔あお〕白い顔の月である。 ・・・・・」 
     (平塚らいてう、『青鞜』発刊の辞 1911.)
  ・ 「文明とは人の身を安楽にして心を高尚するをいうなり。」 (『文明論之概略』)
  ・ 「文明とは正義のひろく行われることである。
    豪壮な邸宅、衣服の華美、概観の壮麗ではない。」 (『代表的日本人』)


★参考資料  ≪盧:「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.30‐31引用≫

 研究 :   と  /  と  / 一白 と 九紫

《 水と火 》
1) 五行思想では相剋の関係“水剋火”(水で火を消す)。
  その場合、火のパワーが強すぎると(「焼け石に水」で)水で消えない。
  あるいは水が蒸発してしまい“剋”が逆転する。 
    (・・・ 命学・九星気学・四柱推命など)
2) 易の中論だと、水と火(正・テーゼと反・アンチテーゼの異質・対立するもの)を、
  統一・止揚して(アウフヘーベン・中す)、新たなるもの(合・ジンテーゼ)を生み出す。
   〔ヘーゲル弁証法〕
  ex. 水と火で、ごはん・料理ができる。男と女で、子供がうまれる。


《 坎と離 》

・ 坎=水は智恵、離=火は聡明  / ・ 坎離は陰陽逆=中男と中女
・ 坎は耳(の穴)・鼻(の穴)・肛門・性器、離は目=視覚・明らか(離火は両眼)
cf. 「渾沌〔こんとん〕の死」(『荘子』) ・・人には7穴(体は9穴)ある。
   渾沌は“のっぺらぼう”。1日に1つずつ穴をあけてやったところ、7日で死んだ。
    ――無為自然の本性は、人知を加えると死んでしまう。

【考察】 アマテラスオオミ神は、イザナギの命(男神)の左目(左は陽)から生まれた
     太陽神(陽・離・中女)。 ・・・「
     そのスサノオの命は、イザナギの命の鼻(の穴)から生まれた。・「
   cf. 鼻の外形は盛り上がっているので =艮=山の象 / 
      (フルへッヘンヘンド=うずたかい=鼻、『蘭学事始』)
   ※ 邪馬台国の女王は「卑弥呼」、そのが政治を代行した。
      この史実(『三国志』魏志倭人伝)と我国の『古事記』の話とを
      併せて考えてみたい。


《 一白水性と九紫火性 》
・ 気学宿命星「一白水性」 : 命式干支(四柱・日干支)に「壬」・「癸」、「子」・「亥」 
    のある人。  動く人多し。 “転石、苔を生ぜず。” / 
    「駅馬」 ・・・移動性は大吉 / 家相6帖と6帖の通し間を嫌う ・・・
    6=坎、6・6→「坎為水」
・ 気学宿命星「九紫火性」 : 命式干支に「丙」・「丁」、「午」・「巳」のある人。
    美的な世界(芸能・美術・デザイン・キレイ系・・・)の人
    新しい時代の資格としては、インテリアC・カラーC・福祉住環境C ・・・。/
     “離れつく”は、「T・P・O (時・所・場合)が大切。
※ ちなみに、私(高根)は、本命星 一白・月命星 九紫で水・火の二面性を持っています。


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第50回 定例講習【特別講義】のあらまし (第2回)

※この記事は、第50回 定例講習【特別講義】のあらまし (第1回) の続きです。

第50回 定例講習(‘12.4.22 ) レジュメ
─── 【特別講義】 あらまし ───    (第2回)


◇以下、【損・益】の卦・思想について、ポイントをいくつか説明してみましょう。

( →詳しくは 《参考資料》 参照のこと。 )


まず、一言確認しておきますと。

易においては、 「陽」を以て余り有るものとし、「陰」を以て不足なるものとします

そして、上卦は為政者(政府)・指導者〔リーダー〕・金持ちであり、
下卦は大衆・一般ピープル・貧しい人々
、と考えます。

(両者の)相対的関係では、主体を下卦の大衆・一般ピープル・貧しい人々を基準に考えます

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 【益】   《上を損して下を益す》 

もと、【天地否 ☰☷/乾・坤】であったものが、
上卦【☰/乾】の4爻〔こう〕の一陽が下がって
下卦【坤】の初爻に一陽(入れ替わって)生じ
震】となった象〔しょう・かたち〕です。

上の有余しているものから(減らし)下の不足しているところへ、
一陽を益し与えています。

【否】の塞〔ふさ〕がっている時(代)にあって
上より下に与え、皆が“悦び活気づき、巽順にして大いに活動します(=震の象意から)”。

ex.企業活動: 寄付・利益還元・社会貢献・フィランソロピー・メセナ ・・・

※(4爻と初爻の移動関係は、 “応爻”の関係ということです。
小成卦=八卦を上卦と下卦の順で左右・横に並べるとその対応関係がよく解かります。)

【益】彖伝〔たんでん〕: 

 「益は、上を損して下を益す
 民 説〔よろこ〕ぶこと疆〔かぎ〕りなし。
 上より下に下る。その道大いに光〔あきら〕かなり。
 ・・・・・ 益は動きて巽〔したが〕い、
 日に進むこと疆〔かぎ〕りなし。
 天は施し地は生じ、その益すこと方なし。
 およそ益の道は、時と偕〔とも〕に行わる。」


 【損】   《下を損して上を益す》  

もと、【地天泰 ☷☰坤・乾】の安泰の時にあって、
下卦【乾】3爻〔こう〕の一陽を減〔へ〕らして
上卦【坤】の上爻に益した象です。

公共のため社会のために誠をもって自ら進んで減らし損するのです。

損すべきときに損するに値する損をする、時幾が大切です

正しい損=投資はやがて反〔かえ/=返〕ってきます。

自分の代でなくとも、子・孫の代にも反ってきます。
“情〔なさけ〕は、人のためならず”です。

ex.寄付・税金を納める・ボランティア(勤労奉仕)・国家会社に仕える、正しい投資 ・・・

【損】彖伝〔たんでん〕: 

 「損は、下を損して上に益し、その道上行す。
 損して孚〔まこと/= 誠心〕あれば、元吉にして咎〔とが〕なし。
 ・・・・・ 剛を損して柔を益すに時あり。

 大象伝: 「君子以て忿〔いか〕りを懲らし欲を塞〔ふさ〕ぐ。」


◆◇ 次に以下、『老子』のなかで、「損・益」について述べられているものを拾ってみますと。

《 42章 》

○「故物或損之而益、或益之損。」

■ 故に物は或いは之を損して益し、或いは之を益して損す

《 大意 》
まことに、ものごとは、(『※『易経』の【損・益】の卦に教えているように
それを損する(減らす)ことによってかえって益する(益す・増やす)ことがあり、
(逆に)それを益する(益す・増やす)ことによって
かえって損する(減らす)ことがあるものなのです。


《 77章 》

○「天之道、其猶張弓与。高者抑之、下者挙之、有余者損之、不足者補之。 |
 *天之道、損有余而補不足。人之道則不然、損不足以奉有余。」

■ 天の道は、其れ猶〔な〕お弓を張るがごときか。
  高き者は之を抑〔おさ〕え、下〔ひく〕き者は之を挙げ、
  余り有る者は之を損じ、足らざる者は之を補う。 |
  *天の道は、余り有るを損じて、而〔しか〕して足らざるを補う
  人の道は則ち然らず、足らざるを損じて、以て余り有るに奉ず

《 大意 》
天の道(自然なあり方)は、あたかも弓に弦〔つる〕を張るようなものでしょう。
上の端(高い上弭〔うわはず/末弭:うらはず〕)は下にひっぱり、
下の端(下の下弭〔もとはず/本弭:もとはず〕)は上に持ち上げます。
余り過ぎたら減らし、足らなければ継ぎ足し補います。
(それでこそ、立派に調整ができるのです。) |
天の道は、このように、余り過ぎたものを減らして
足りないものを(=ホドよく、中和させる)補うのです

(しかしながら) 人の道(=やり方)は、そうではありません。
足りない方をさらに減らして取り上げ、
それを有り余っている者にさし上げる(たてまつる)ということなのです
。 補注) ※

*“It is the way of heaven to take from
those who have too much, 
and give to those who have too little.
But the way of man is not so.”
(Kitamura adj. p.252)

*この章は、共産主義(中国)にも資本主義にも利用されてきました。
ここに老子の思想のスケールの大きさが感じられます。
そして、所詮小さな“主義”を振り回すのみで、不平等を好み、
人の道は則ち然らず」で現在に到っています。


■ 補注)

現代的に例えてみますと。
貧しい人からの収奪(搾取?)・税金の徴収。
金持ちに「金」が集まる→金が金を生む(利子や地代)。
“持てる者と持てない者と”の格差の広がり。
(東京大学合格者の8割は金持ち・・・ )
社会的「衡平」: 累進課税”の制度。
社会保障諸政策(生活保護、児童・子ども手当、高校授業料無償化、
国立大学授業料低所得家庭への無償化 etc.)


★  盗夸
 
  ◆ 「盗〔とう〕の夸〔おご〕り(盗夸〔とうか〕)、道に非ざるかな」(53章)
   “盗人〔ぬすっと〕のぜいたく(盗人のリーダー〔親分〕)” 、
   みちを踏み外すことはなはだしいものです。


《 81章 》

○「聖人不積。既以為人、己愈有。既以与人、己愈多。」

■ 聖人は積まず。既(ことごと・尽/すで・に)く以て人の為〔た〕めにして、
  己〔おのれ〕は愈々〔いよいよ〕有り。既く以て人に与えて、己は愈々多し。

《 大意 》
聖人は、モノを蓄〔た〕め込んだりしません(/心に知を積め込まず空虚〔から〕です)。
何もかも他人〔ひと〕のために出し尽くしながら、
それでいてかえって自分がますます持つ(充実する)ことになります。
何もかもすべて、他人に与えていながら、
それでいてかえって自分はますます(心が/精神的にも物質的にも)豊かです

(*“ ── he is richer still.”)

平成日本の(経済的)格差社会/社会的“中庸”の実現/福祉国家・社会の実現

「高い席にいるものは、貨幣〔かね〕を出せ!安い席にいるものは、拍手を送れ!」

( ヨーロッパの古諺 )

≪参考資料≫

《 41 & 42 のペア 》

41. 損 【山沢そん】 は、へらす 

包卦(乾中に坤)。

● “損益の卦”、上経の“泰否の卦”と好一対、賓卦 「益」、 「遜」にも通じへりくだり奉仕する、“損して得とれ”、“ Give and Take ”―― まず与える 易は損が先、 正しい投資

5爻 「十朋〔じっぽう〕の亀〔き〕」(神占をするための高価な霊亀)登場、元吉

cf. 貝原 益軒・・・ 84歳で死ぬ1・2年前に 「益軒」を名のる、それまでは「損軒」

■ 沢は地表面が減損したものですから、沢が深いほど山は高い。
1)地天泰であったものが、3爻の一陽を減らして上爻に益した象。即ち、内を損して外を益した象。 
2)外、私の心を去って動ぜず(艮山)、内、悦んで(兌沢)修養努力する象。

○ 大象伝 ;「山下に沢あるは損なり。君子以て忿〔いか〕りを懲〔こ〕らし欲を〔ふさ〕ぐ。」
(沢は地表面が減損して、それが山となっている、自然の理です。そこから君子は、損することの道理を悟り、自分を抑え怒らぬように節制し、私欲・欲望を抑え 塞ぎ止めるようにするのです。)


42. 益 【風雷えき】 は、ます・ふやす

包卦(乾中に坤)

● 益する道、損(正しい投資)があって益あり、  賓卦 「損」
「損して已〔や〕まざれば必ず益す」(序卦伝)、 2爻 「十朋の亀」、永貞吉

■ 1)動いて(震雷)従う(巽風)象。   2)上より下にくだる。 「否」の4爻と初爻が入れかわったもので、上を損じて下を益すの象。 
3)雷(震)の裏卦が風(巽)で、陽陰共存の象。

○ 大象伝 ;「風雷は益なり。君子以て善を見ればすなわち遷〔うつ〕り、過ちあればすなわち改む。」
(風と雷は、互いに助け益します。そのように 君子は、自分の徳義が益するように、善いと見れば就〔つ〕き従って動き、自分に過失があれば勇気をもって改めるのです。)

cf. 『論語』より ; 「利に放〔よ〕りて行へば怨み多し。」 (里仁第4)
「君子は義に喩〔さと〕る。小人は利に喩る。」 (里仁第4)
「過〔あやま〕っては則ち改むるに憚〔はばか〕ること勿〔なか〕れ。」(学而第1、子罕第9)
 



≪ 【損・益】の深意 ── 現代的意義を考える ≫

 易の賓卦・反卦の【損・益】卦、
五行思想の相剋〔そうこく〕関係【水】と【火】、陰・陽の相対関係を、
矛盾・対立するものとして(弁証法的に)捉えるのは、西洋的かもしれません。

私が想いますに、今一つの考え方として、
両者がペアで協力してはたらくという捉え方ができるのではないでしょうか。

東洋的視点とも言えましょう。

それは、車の両輪やコイン(紙幣)の裏表などと例えるよりは、
「呼吸」のような関係に似ていると想います。── といいますのは・・・



※ この続きは、次の記事に掲載いたします。


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