※この記事は、謹賀壬辰年 (その2) の続きです。

《 干支・九性の易学的考察/ 【水山蹇】・【地雷復】卦・「兌・沢」 》

 次に(やや専門的になりますが)、今年の干支・九性を
易の64卦になおして(翻訳して)解釈・検討してみたいと思います。

 昨年の干支、辛・卯は【沢風大過】卦(‘11.2月“儒灯”参照のこと) 
http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/51184930.html

今年の「壬・辰」は、水山蹇】卦となります。

(以下、高根 「『易経』64卦奥義・要説版」/
第14・15回〔上経〕 第18・19回〔下経〕
定例講習:「易経」64卦 No.24、39 参照のこと)

◆第14回〔上経〕
http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/50753370.html 

◆第15回〔上経〕
http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/50754546.html

◆第18回〔下経〕
http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/50692222.html

◆第19回〔下経〕
http://blog.livedoor.jp/jugaku_net/archives/50699504.html


○「蹇は、西南に利ろし。東北に利ろしからず
 大人〔たいじん〕を見るに利ろし。貞にして吉。」
  (【蹇】卦辞)

【水山蹇】の「蹇」は、寒さで足が凍えて動けなくなっていることを
象〔かた〕どっている字です。

足止めストップ、3大難卦の一つです。

「西南に利ろし。東北に利ろしからず。」と卦辞にありますのは、
東日本大震災と福島第一原発事故に対する復興の困難さ、
関西(経済)充実の重要さを暗示しているようで“機妙”です。

ただ、“契機(かなめ)”である頼り託すべき大人〔たいじん〕
(リーダー・エリート)がいるかどうかが解決のカギということでしょう。


○「王臣蹇蹇たり。躬〔み〕の故〔こと〕に匪〔あら〕ず。」
  (【蹇】2爻)

そして、“蹇蹇匪躬〔けんけんひきゅう〕”
(みのことにあらず : 自分の名誉や富貴のためではないの意)
とありますように、為政者・指導者は天下国家のために
身を削って光を灯〔とも〕さねばなりません。

君子以て身に反〔かえ〕りて徳を修む。」(大象伝)とあるように、
ただわが身に反〔かえ〕って 省みて、
ますます徳を修めることで解決をはかるのです。


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≪参考資料:高根 「『易経』64卦奥義・要説版」 pp.36-37 引用≫

39. 蹇 【水山けん】  は、足の不自由・行き悩む。

    3(4)難卦、包卦(坤中に離)

 ● 寒さに足が凍えて進めない、足止めストップ、
   「西南に利ろし」(卦辞)、「難〔むずかし〕きなり」(序卦伝)

 cf. 『蹇蹇録〔けんけんろく〕』 (陸奥宗光〔むつむねみつ〕) ── 
     “蹇蹇匪躬〔けんけんひきゅう〕”
     (みのことにあらず : 自分の名誉や富貴のためではないの意)。
      「四面楚歌」( 『史記』 ・“時利あらずして騅〔すい〕ゆかず” 〕。
     “艱難〔かんなん〕、汝を玉にす

 ■ 自然界では、手前に艮の山、向こうに水の険難、
   2・3・4爻も坎を形づくり険難が重なっている形。
   前途の坎険に対して、艮の足止めストップするのがよい。
 
   「険(上卦の坎)を見て能く止まる(下卦の艮山)、知なるかな。」
   (彖伝〔たんでん〕) 
   また、坎を冬とし 艮を山とするので、冬山で行き悩むの象。

 ○ 大象伝 ;
   「山上に水あるは蹇なり。君子以て身に反〔かえ〕りて徳を修む。」
   (艮山の困難の上に 更に坎水で、上下共に行き悩む。
   このような時に、君子は、ただわが身に反〔かえ〕って 省みて、
   ますます徳を修めることで解決をはかるのです。)

 cf.「行なひて得ざるものあれば、皆反りこれを己にもとむ」
    (『孟子』・離婁上)
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 次に、今年の「壬・辰」/【水山蹇】卦の先天卦をみてみますと、
地雷復】卦となります。

【地雷復】卦は、かえる・くり返すの意です。

一陽来復(福)」の出典で、冬からやっと春の兆しが見えてきたということです。


 西洋史でいえば、「復」=ルネサンス (仏・英) Renaissance (伊)リナシメント 
/ 再生・文芸復興の意です。

中世“暗黒時代”から復活、近代への幕開けでした。

日本史でいえば、「復」=「明治の維新」。  ※注1) 
幕府の引退、近代日本の世界史上への躍進でした。


 【復】卦を象〔しょう〕で解釈してまとめてみますと次のとうりです。

2)に要注目です。

■ 下卦 震雷、上卦 坤地。(「剥」の綜卦)
 1)“一陽来復”:12消長卦、1陽5陰卦。
   「剥」の1陽が剥がれ尽くされ、坤地となった大地に1陽が戻ってきた象。
 2)リーダー〔指導者〕のいない民衆(坤地)の中に、
   1陽のリーダー・君子が戻ってきた。復活、新しい局面が拓けていく。
 3)“地を掘って宝を得るの象”(白蛾) ・・・地は外卦坤、
   宝は内卦震の象。掘るは震の動から。


※注1)
「維新」といえば、橋下大阪市長〔前・大阪府知事〕の率いる
“大阪維新の会”が、昨年の選挙で大躍進。
猪突日の出の勢いです。
国政への躍進を着々と進めています。
それはそれでよいことですが、「維新」ではないでしょう。
それは【沢火革】卦、革命・破壊です。
「維新」は『大学』にある言葉で、日新・漸進的で、新旧が調和しています。
幕末〜明治の改新が、“明治革命”と言われず
“明治維新”と称されている所以〔ゆえん〕をよく考えたいものです。
今、「維新」の語が安っぽく利用され、大衆は扇動されています。
また、時代のヒーローとなっている橋下氏が、
「リーダー〔指導者〕のいない民衆(坤地)の中に戻ってきた、
1陽のリーダー・君子」であるかどうかも、疑問です。


 さて、更に、今年の九性・「六赤金性」を易学の
八卦〔はっか/はっけ =小成卦〕でいうと、「兌〔だ〕」です。

64卦(=大成卦/重卦)では、【兌為沢〔だいたく〕】が相当します。

「兌」の象意〔しょうい〕を考えながら、
具体的活学の一例を政界の動きと現状に求めてみましょう。

昨年の九性・「七赤金性」と同一ですので、
昨年の年頭ご挨拶を再掲いたしておきます。


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1)兌は、社交・交流。
  
  まず、国内的に中央政府のいい加減さ、中央と地方の正常な交流が課題です。
  
  大阪都構想・中部都の構想など、“わけのわからぬもの”が
  “ひょいひょい”と出てきております。
  地方の反乱、独自勝手の動きがますます活発になってまいります。

  外交に関しても、中・露・朝・米に対する“宥和政策”の限度を超えた
  軟弱外交・懺悔外交のツケは目に余るものとなってまいりました。
  日本の内外の社交・交流状況は、末期的状況です。

  そして、それと認識出来ない国民が実に多いことがその重篤さを示しています。
  ── 為政者(指導者/リーダー)に“時中”(時じく中す)が全く欠けている、
  そんな為政者を市民・国民が選ぶが故だと考えます。

2)兌沢は、沢〔さわ〕・小川ですので、
  水のように潤し、水の流れのように軽やかに如才なく課題を処理したいもの

  中央政界では、政界再編成への動きも活発化するでしょう。
  国会は“ねじれ”状態にあり、
  与党・民主党は野党との対立の調整は不可欠です。

  菅VS小沢の対立もあり、そもそも民主党内部の調整が出来ていません。

3)兌は口=演説(弁舌)=講習。
  
  4月には統一地方選挙です。
  菅内閣、“有言実行”を唱え“支持率 1%になってもやる!”との言。
  (何を言い、何をやろうというのでしょうか?) 
  “口先だけ”の総理・内閣・政党 ・・・すぐに退陣やむなしでしょう。

  加えて、鳩山・元総理の “舌禍〔ぜっか〕”もいまだに相変わらず報じられています。
  今時の政治家は、大臣・総理でも 『孝経』一つ学修していないのではないでしょか?

  “有言実行”・“口先だけ”・“舌禍”の語で、久々に思い起こしました。

  『孝経』に、「択言択行」が説かれています。 
  卿大夫章第4 : 「口に択言なく、身に択行無し
            言〔こと〕 天下に満ちて口過なく、
            行い 天下に満ちて怨悪無し。」

  《口から発する(公の)言葉は、(全部が善き言で)
  ピック・アップ〔拾い出す/よりわける〕すべきいい加減な悪言・雑言がなく、
  自身の行いも、ピック・アップするような不徳・不道なる
  自分勝手な行いをしないように。
  (そうすれば、人の長たる者や大臣が、)言葉をどれだけ世の中全体に広く使おうとも、
  口過=舌禍 :口舌による過失〕 事件が起きることもないし、
  何をどれだけ世の中全体に広く行おうとも、
  人々(市民・国民)から怨み憎まれることはないのです。》

  また、『易経』・「兌為沢」では、 

  大象伝 : 「麗沢〔りたく :麗は附くの意〕は兌なり。君子以て朋友講習す。」 

  《沢が2つ並んでいるのが兌の卦です。
  お互い和悦の心を持って、潤し益し合うのです。
  このように、君子は、朋友とお互いに講習し〔勉学にいそしみ〕
  潤沢し合って向上し合うように心がけねばなりません。》

4)兌=金(貨幣)=経済、西方金運です。

  わが国経済界は、不況脱出に向けて変則的・変動的対応が必要です。
  国際的にもグローバル化(グローバリズム:米を中心とする世界の経済的交流)が
  進展してくるでしょう。

5)兌=笑い・悦びの意味ですが、見通しは暗いようです。

  本来【兌為沢】は、“笑う少女”の象ですが、多くの男性は苦笑いのようです。
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その後(昨年)の政界の変動を付言しておきますと。
平成23年(2011)9月、野田佳彦内閣が成立しました。

民主党政権3人目の総理です。
“松下政経塾”の一期生です。

“ヤジ”と罵声の中、所信表明演説(9.13)で、
“和と中庸〔ちゅうよう〕の政治”(『中庸』)を掲げ、
(『大学』の8条目)“ 正心 誠意”を標榜〔ひょうぼう〕しました。

これは、かつて安倍晋三総理が “(人徳・仁徳の)美しい国、日本” と
日本のビジョンを示したことと同様に立派なことだと思います。

ただ如何〔いかん〕せん、他の議員・マスメディア・
国民知識人の浅薄さをや ・・・ 。

野田総理はすぐに訪米して、オバマ大統領と会談(9.20)。
“I can do business with him.”
(彼となら仕事ができそうだ)と言われました。

前の2人の総理(菅・鳩山)よりはまだマシ、ということでしょうか。

年明けて、現在は消費税UP! に向けてひた走りです。

(“どじょう〔泥鰌〕”と“(人)龍”ではイメージが違いすぎて少々困惑いたしますが、)
この野田総理は、「リーダー〔指導者〕のいない民衆(坤地)の中に、
1陽のリーダー・君子が戻ってきた。復活、新しい局面が拓けていく。」という、
“(人)龍”になれますことでしょうか?


《 辰 → 龍(竜) 》

「辰年」は、一般に「龍〔たつ〕年」と言われ、
動物の“龍(竜)〔りゅう/*漢学者はリョウと発音します〕”に擬〔なぞら〕えられます。

ただし、龍は他の十二支の動物とは異なり想像上の霊獣です。

しかも、はるか古〔いにしえ〕より洋の東西を問わず存在し、
人々に広く知られています・・・


※ この続きは、次の記事に掲載いたします。
   (・・・「登龍門」・「逆鱗」・「龍と雲」 ほか)



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