vol.3の続きです。
《 29 & 30 のペア 》
29. 坎水 【かん為すい】 は、みず。
8重(純)卦、3難卦、習坎
● 水また水、水はなやみ、移動・☆智恵、気学一白水性、弁護士・法律家、盗人、
“知識の泉” 、 a walking dictionary [encyclopedia]〔生き字引〕、
・ “坎とは陥〔おちい〕るなり”(序卦伝) ・・・いかにして艱難辛苦を処理していくかという
“意志の原則”― 「艱難、汝を玉にす」
・ 「険の時用大なるかな」(彖伝) ・・・険をその時々に適応して用いることは、
大いに重要・必要なことである。
cf. 黒田如水(官兵衛:秀吉の軍師)、横山大観の「生々流転」(水の循環を描く)
cf. 「知者は水を楽〔この〕み、仁者は山を楽〔この〕む。
知者は動き、仁者は静かなり。」 (『論語』・擁也第6)
cf. 「君子の交わりは淡きこと水の如し、
小人の交わりは甘きこと醴〔れい/あまざけ〕の如し。」(『荘子』)
cf. 「水魚の交わり」(『三国志』、劉備と孔明)
■ 習坎(重なることを習という)、水また水。
1) 険難重なる象。
2) 2爻 と 5爻が、各々2陰に落ち込んでいる象。 しかし、この象は内に信実あり。
陰の肉体の中に、中庸の徳を持った陽の精神がしっかりと宿っている象でもある。
○ 大象伝 ;「水シキ〔しき〕りに至るは習坎なり。君子以て徳行を常にし、☆教事を習う。」
(水がしきりに流れくる象が習坎〔坎為水〕の卦です。君子は、この不変・不休の象 〔常久なる象〕にのっとって、艱難辛苦の中に在っても、〔むしろ、、その苦労の中で自分を磨き上げ〕徳義・徳行をいつも自分のものとして、学問の修養についても怠りなく反復〔習い習{かさ}ねる〕努力して息〔や〕むことがないのです。)
☆ たかね研究 :
・ 知 と 智 ・・・知は 矢と口で他を傷つける、
(シブ)柿を日に干すと甘く変わるように「日」を加えたものが 「智」。
→ 水(坎)=知 プラス 日(火・離)
・ 学 習 ・・・「学ぶ」は、“まねるーまねぶーまなぶ”/
「習」は、習(なら)い習(かさ)ねる。
学を重ねる。善き習慣は、“習い性となる”(習慣は第2の性)。
・ 学問修養 ・・・江戸5代将軍綱吉(“犬公方”)、儒学の修養・振興
(日本儒学の発展/ 湯島聖堂/ 生類憐れみの令 ・・・)
30. 離火 【り為か】 は、麗〔り〕。
8重〔じゅん〕卦、重離
● 火また火、つき離れる、太陽、聡明・美、九紫火性、“日はまた昇る”
・・・日の昇らぬ明日はない
※ 火は何かに“ついて”初めて炎上する(cf.発火の3要素:モノ・酸素・温度)
人も何に(正しき)に、誰につき従うかが大切
ex.秀吉→ 今川義元から織田信長へと離れついた
・ 「日月は天に麗〔つ〕き、百穀草木は土に麗く。重明以て正に麗けば、
すなわち天下を化成す。」 (太陽・月は天につき、あらゆる穀物草木は
土についています。離卦は、火であり明であり重離・重明です。
君臣共に明智をもって、正しいものにつくことによって、天下のあらゆるものが
化育され生長するのです。〔天下万民も教化・育成されるのです。〕)
cf. 人の心の火の用心”(真瀬中州) / “一灯照隅。万灯照国”
(安岡正篤・関西師友協会) / 文化・文明の源は「火」と「石のかけら」(高根)
※ 2つの徳性(安岡氏):(1)明暗、心を明るく (2)清潔、浄不浄
・・・ 心に(の)太陽を!離の徳?(高根)
■ 火また火、重離、重明。
1) (坎水と逆に)2爻と5爻が陰(柔順中正)。
炎の中心は暗い(温度も低い、燃えていないガス状態)
―ー 心を空しくして明を継ぐ。
2爻の美徳 ---- 陰位に陰爻で正しく中庸の徳あり、「柔、中正に麗く」(彖伝)
2) “雉 網中に罹〔かか〕るの象”(白蛾)
・・・内卦の離を雉とし外卦の離は網とする。雉も網も離の象。
○ 大象伝 ;「明 両〔ふた〕たび作〔おこ〕るは離なり。大人以て※明を継ぎ、四方を照らす。」
(“日はまた昇る”で、太陽は明日も昇る。上・下卦共に聡明・明らか奈象です。徳のある大人・君子は、この象にのっとって、先人代々の明徳を継承しその明徳を日々新たにして、四方を(徳の光で)明るく照らす万民の光となるのです。)
※ 「明」を継ぐに「明」をもってするの美
( 補 )
・ 「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。今、女性は月である。
他に依って生き、他の光によって輝く、
病人のやうな蒼〔あお〕白い顔の月である。 ・・・・・」
(平塚らいてう、『青鞜』発刊の辞 1911.)
・ 「文明とは人の身を安楽にして心を高尚するをいうなり。」 (『文明論之概略』)
・ 「文明とは正義のひろく行われることである。
豪壮な邸宅、衣服の華美、概観の壮麗ではない。」 (『代表的日本人』)
☆ たかね研究 : 水 と 火 / 坎 と 離 / 一白 と 九紫
《 水と火 》
1) 五行思想では相剋の関係“水剋火”(水で火を消す)。
その場合、火のパワーが強すぎると(「焼け石に水」で)水で消えない。
あるいは水が蒸発してしまい“剋”が逆転する。
(・・・ 命学・九星気学・四柱推命など)
2) 易の中論だと、水と火(正・テーゼと反・アンチテーゼの異質・対立するもの)を、
統一・止揚して(アウフヘーベン・中す)、新たなるもの(合・ジンテーゼ)を生み出す。
〔ヘーゲル弁証法〕
ex. 水と火で、ごはん・料理ができる。男と女で、子供がうまれる。
《 坎と離 》
・ 坎=水は智恵、離=火は聡明 / ・ 坎離は陰陽逆=中男と中女
・ 坎は耳(の穴)・鼻(の穴)・肛門・性器、離は目=視覚・明らか(離火は両眼)
cf. 「渾沌〔こんとん〕の死」(『荘子』) ・・人には7穴(体は9穴)ある。
渾沌は“のっぺらぼう”。1日に1つずつ穴をあけてやったところ、7日で死んだ。
――無為自然の本性は、人知を加えると死んでしまう。
【考察】 アマテラスオオミ神は、イザナギの命(男神)の左目(左は陽)から生まれた
太陽神(陽・離・中女)。 ・・・「離」
その弟スサノオの命は、イザナギの命の鼻(の穴)から生まれた。・「坎」
cf. 鼻の外形は盛り上がっているので =艮=山の象 /
(フルへッヘンヘンド=うずたかい=鼻、『蘭学事始』)
※ 邪馬台国の女王は「卑弥呼」、その弟が政治を代行した。
この史実(『三国志』魏志倭人伝)と我国の『古事記』の話とを
併せて考えてみたい。
《 一白水性と九紫火性 》
・ 気学宿命星「一白水性」 : 命式干支(四柱・日干支)に「壬」・「癸」、「子」・「亥」
のある人。 動く人多し。 “転石、苔を生ぜず。” /
「駅馬」 ・・・移動性は大吉 / 家相6帖と6帖の通し間を嫌う ・・・
6=坎、6・6→「坎為水」
・ 気学宿命星「九紫火性」 : 命式干支に「丙」・「丁」、「午」・「巳」のある人。
美的な世界(芸能・美術・デザイン・キレイ系・・・)の人。
新しい時代の資格としては、インテリアC・カラーC・福祉住環境C ・・・。/
“離れつく”は、「T・P・O (時・所・場合)が大切。
※ ちなみに、私(高根)は、本命星 一白・月命星 九紫で水・火の二面性を持っています。
( 以 上 )
続き 「下経」 は、第十八回 定例講習の記事をご覧下さい。
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