先日、日経新聞にこんな記事が公開されていたのですが、

その中の、
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「5年間で負けたのはたった1日」――。発端は同社が上場に向けて3月に開示した資料だった。2009年から13年末まで、取引を行った1238日で損失が出たのがたった1日という勝ちっぷりに驚きが広がった。
 

通常の取引では考えられない勝率の高さが「何かカラクリがある」との疑念をよび、
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・・・この部分に反応して、

そんなに勝てるなんて、絶対勝てる情報を持っててインチキをしてるに決まってる、、みたいに

単純に勝率が高いから怪しい、、的なコメントをみました。


この理屈で叩かれると、

1年に一回くらいしかポートフォリオをリバランスしたり組み替えないロングオンリーの人から見たら、

日次より短い時間で勝負しているシステムトレーダーも、


『月次や週次で勝ち過ぎだ!』


・・・なんて似たような理屈で叩かれそうで他人事ではなく、ちょっと怖かったので、

今回は少しだけインチキではない可能性を書いてみます。



確かに1238日のうち1日しか負けない(日次勝率≒99.92%)と聞くと、

百発百中で予測を当ててるように思い込んでしまうこともあるのかもしれないのですが、

叩いてる人の殆どは、この会社がHFT(1日に沢山取引する)の会社だってことを無視してる気がします。
(HFTの記事なのに・・・)


例えば以下のようなリターン分布のトレード戦略があったとします。

記事1



これは以前に書いたこの記事のExcelのRand関数で作成したリターン分布なのですが、

期待値の部分を+0.01%(毎回100万円分のトレードしたら長期的には毎回100円儲かる)

に変えた分布になっていて、

見て分かるとおり、ほぼ50%のトレードは負けてる分布です。



これで見ると個々のトレードでは半分くらいは負ける可能性が高いのですが、

このリターン分布のトレードを毎日1万回、それを1238日繰り返したと仮定すると、こうなります。

期待値+0.01%
回数:1238
日次勝ち:1013
日次負け:0225
日次勝率:81.83%
1日平均利益:+100.83%

まぐれかも知れないので、

同じ手順(期待値0.01%で毎日1万回&それを1238日)を30回繰り返して平均してみました。

こんな感じになります。

記事2


・・・何度やっても、だいたい勝率82%前後の結果になり、日次期待値も+100%前後になります。


期待値を0.01%~0.04%と変えて、

同じように(日次10000回・1238日を30回)繰り返すとこんな感じになり、、、


記事3


・・・負け数は期待値が僅かでも高くなると指数関数的に下がり、

期待値+0.04%(100万円のトレードで平均400円の利益)

を繰り返すだけで、平均負け数は1回未満(上記記事と同じような勝率)になります。


期待値+0.03%でも、1日のトレード回数20000回、
期待値+0.02%でも、1日のトレード回数30000回、
期待値+0.01%でも、1日のトレード回数100000回、

記事4

・・・これくらい回数をやれれば、ほぼ99.9%の勝率になります。



ホントにインチキしているのかもしれないけれど、

インチキしなくても1238日で1日しか損しないっていうのは、

努力や工夫次第で現実にありえないとは言いきれないってことは、

単純に勝率が高いって理由だけでインチキだと叩いてる人に理解してもらえないと、

頑張ってシステム作ってる側としては、ちょっと怖い。