2023年6月17日(土)
別府市の神楽女湖(かぐらめこ)(海抜約550m)はハナショウブの名所として知られています。毎年6月上旬から7月上旬にかけて約80種、約1万5千株(30万本)のハナショウブが咲き乱れ、周囲の爽やかな高原風景と合わせて訪れる人々の目を楽しませます。
神楽女湖のハナショウブと由布岳・鶴見岳 ※2019/6/18撮影(再掲載)
神楽女湖は車で訪れることのできる観光地ですが(ただし、期間中は臨時駐車場から往復1.5kmほど歩く必要がある)、隣の志高湖(しだかこ)の駐車場にとめて 小鹿山(おじかやま)・大将軍山 などと組み合わせて周回されるハイカーも多いです。
私もコロナ以前は梅雨時期になると毎年のように神楽女湖を訪れていました。今回は久しぶりに神楽女湖のハナショウブを見に行きたいと思ったのですが、これまでと趣向を変えて別府の市街地から“一気登山”でハナショウブを見に行くことにしました。“一気登山”と言っても高温多湿の時期なので舗装された市道を歩くのみですし、小鹿山などのピークを踏む予定もありませんが、トータルの標高差は600mを超えるため結構きつそうです。
本日の行程:東別府駅→浜脇温泉→田の口→鍋→隠山→岳の脇→リンゴ園→神楽女湖→志高湖→鳥居バス停
10:00 大分駅から大分交通バスに乗って東別府駅前バス停で下車(運賃は500円)
同区間をJRの電車で移動すると280円で済みますが、この時間帯のJRは混雑しがちなので確実に座れるバスを選択。中型の低床車なのでエアライナーのような快適さはありませんが、かつての別大電車を偲びながらのんびり移動するのも悪くありません。
現在地はこちら
地理院地図
10:02 まずは東別府駅を表敬訪問
現在の日豊本線東別府駅は1911年(明治44年)に豊州線浜脇駅として開業しました(1934年(昭和9年)に東別府駅に改称)。駅舎は2003年(平成15年)に別府市の有形文化財に指定されており、明治時代の雰囲気を現代に伝えています。
漆喰壁を白熱灯が照らす東別府駅の改札口周辺
東別府駅は2022年3月に無人駅化されましたが、別府鉄道OB友の会(JR退職者)の皆様が交代で平日朝の時間帯に駅舎管理の業務に携わられており、美しい状態がキープされています。
駅舎に向かって右手に建つ 停車塲建設記念碑
浜脇駅開業の翌年(明治45年6月)に建立されたもので、停車場開設に尽力した松田源治代議士を称えたものです。前面左下に「致堂書」とありますが(碑面の“至支”は致の異体字)、致堂は当時文部大臣であった長谷川純孝のこと。長谷川は薩摩の出身であり「致堂」の雅号は西郷隆盛から与えられたものとのことです。
※参考文献 別府史談 (別府史談会編) 2013年 第26号 東別府駅
10:04 東別府駅からスロープを下るとすぐに東町温泉があります。
二階が浜脇1丁目2区自治公民館となっており、別府でよくある公民館(集会所)一体型の温泉です。まさに“駅前温泉”と称すべき立地であり、表の看板に書かれている通り「電車の待ち時間にちょっと一(ひと)風呂」といった楽しみ方もできます。逆コースならここで温泉に入ってから帰途に就くことができそうです。
ちなみに日豊線では亀川駅から大分駅まで6駅連続で“駅前温泉”(徒歩3分以内の場所にある廉価な日帰り温泉)が存在しています。
10:07 線路沿いの道を西へ進むと秋葉神社がありました。
創建は鎌倉時代の貞応2年(1223年)とのこと。鳥居の柱に「明治43年」と刻まれていたので豊州線浜脇駅開業の前年だな、と思って調べてみると、線路敷設に伴って移設された際に建立された鳥居であることが判明。さらに後述する県道51号別府挟間線のバイパス工事に伴って現在地に再移設されたこともわかりました。
10:09 日豊線(もとの豊州線)・県道51号浜脇高架橋・秋葉神社 の位置関係
800年の時と二度の移設を経て浜脇の地を見守り続ける秋葉神社
10:18 秋葉神社の先に日豊線を跨ぐ歩道橋があったので登ってみました。
この橋は山手にある旧浜脇中学校への通学路として架けられたようですが、鶴見岳(右奥)・立石山(その手前)・向平山(左奥)を望む好立地です。
10:19 下りの白が通過して約20秒後に上りの青が通過。惜しい。
当初は歩道橋を渡って山手に向かう計画でしたが、大分駅で食料の調達ができなかったので(9時半前はコンビニとパン屋ぐらいしか開いていない)、予定を変更して浜脇モールに立ち寄ることにしました。
10:27 浜脇モールの中心に建つ浜脇温泉(左)と湯都ピア浜脇(右)
南部地区再開発事業にともなって建設された浜脇モール内に1991年(平成3年)にオープンした市営の温泉施設で、浜脇温泉は普段使いの共同浴場(200円)、湯都ピアは多彩な風呂のあるスーパー銭湯的施設(700円)です。再開発前の浜脇には昭和初期に建てられた浜脇温泉と浜脇高等温泉がありましたが、現在でも温泉の2クラス制が引き継がれているのはおもしろいところ。逆コースならここで温泉に入って「なべさんラーメン」で締めるのも良さそうです。
現在地はこちら
地理院地図
浜脇モール内に掲示された再開発前の浜脇高等温泉と浜脇温泉の写真
余談ながら別府駅前高等温泉もかつては並湯(100円)と高等湯(300円)を選択できましたが、現在では「あつ湯」「ぬる湯」(各250円)に区分されています。
浜脇モール内にある杏樹・ゴトー饅頭店さん
最近、こうした和菓子屋さんを見るとつい立ち寄ってしまいます。創業は明治43年(浜脇駅開業の前年)とのこと。今日の行動食はここで決まり。
ゴトー饅頭店の 甘酒万十・タンサン万十・石垣もち
神楽女湖で食べましたが、それは美味しかったです。餡は「こしあん」「つぶあん」を選べるのがいいですね。他におはぎや赤飯などもあったのでリピートしたいところです。
10:31 浜脇モールを出発
10:35 再開発地区を抜けると戦前の面影を残す町並みが広がります。
今日は神楽女湖・志高湖まで登るため体力を温存する必要がありますが、このあたりは改めてじっくりと歩いてみたいエリアです。
10:36 意図的なのか、たまたまなのか、郵便ポストも以前のままでした。
10:37 河内(こうち)川が朝見川に合流する地点に架かる西町橋
ここから河内川沿いに山手に入っていくことにします。
現在地はこちら
地理院地図
10:39 河内川沿いを進むと日豊線が見えてきました。ややっ、行き止まりか !?
10:40 線路に突き当たって右に進むとすぐに河内踏切がありました。
これを渡って山手に進み、左上に見える教会のような建物をめざします。
10:44 歴史のありそうな教会ふうの建物の下の急坂を登っていきます。
この道はストリートビューに対応しておらず、もしかして私道?と不安になりましたが、あとで調べてみると市道田の口本線登口線という公道でした。
また、後日調べたところ、教会のような建物は1948年(昭和23年)に建設された旧小百合愛児園(創設は1935年)の建物で、1990年(平成2年)の閉園(大分市の分園と統合して移転)後は修道院として使用されてきましたが、2021年(令和3年)以降は閉鎖されているようです。
10:46 急坂を登るにつれ、別府市街地を一望できるようになりました。
10:47 振り返ると北方向に別府の中心市街地が望まれました。
10:48 河内踏切から8分で市道浜脇観海寺線に上がりました。
この市道は別府市街地南側の山の中腹をトラバースする道で、浜脇から河内・朝見浄水場・ラクテンチを経て杉乃井ホテルまで続いています。狭隘区間が続くため運転の苦手な方にはお勧めしませんが、朝見浄水場~ラクテンチ以外の区間は別府一周遊歩道ルートに組み込まれているため、近隣のハイカーにはおなじみの道です。
なお、神楽女湖を目指す場合はここを直進して、宝満寺の横から市道田ノ口~隠山線に入ります。
現在地はこちら
地理院地図
市道浜脇観海寺線に出たところに建つ田の口バス停
かつては亀の井バスの内成線が通っていましたが、2022年8月末をもって廃止されました。翌9月1日から2023年9月29日まで別府市コミュニティバスの実証運行が行われています。亀の井バス時代は土日祝日の運行もあり私も登山で何度か利用しましたが、コミュニティバスだと平日のみの運行なので、観光客の利用は厳しそうです。
10:55 市道田ノ口~隠山線に入っても厳しい登り坂が続きます。
まだ行程の10分の1程度しか消化していないのに、照りつける日射しと蒸し暑さのせいで熱中症になりそうです。本当に神楽女湖・志高湖まで登ることができるのか、はなはだ不安です。
10:57 左手(南側)の視界が開けると高崎山の姿が見えてきました。
河内川の谷を挟んで県道51号を走る車の姿も見えています。浜脇から神楽女湖に向かう際は県道51号~市道河内本線を歩いたほうが近いのですが、そちらは6年前に歩いたので、今回は別ルートを選択しています。
11:01 振り返れば浜脇の町並みと別府湾
中央やや右寄りに見える建物は2021年3月に閉校した浜脇中学校の校舎と体育館です(浜脇中学校は山の手中学校と統合して別府西中学校となる)。
11:02 鍋地区に入ると棚田が現れます。
数十年前は内成棚田に匹敵するほど美しい棚田風景が見られた場所ですが、現在では半分ほどが耕作放棄地となっており、残った棚田も水田から畑地に転用された場所が多いです。
11:09 田の口から鍋地区までの市道は1車線の細道
地元車以外の通過車両はなく、のんびりと歩くことができます。
11:12 田の口バス停から1.2kmで市道河内本線と合流
ここから先は隠山・枝郷方面への生活道路となるため、それなりに交通量が多くなります(数分に1台程度ですが)。
現在地はこちら
地理院地図
11:15 市道は階段状になった河内(こうち)川に沿って高度を上げていきます。
上流部(このあたり)と下流部(市街地)では人工的な姿の河内川ですが、中流部では河内渓谷を形成しており「裳裾の滝」という滝もあるようです(本行程では近くを通っていません)。
11:17 柳3号橋のそばに建つ知恵地蔵
ここでお参りがてらに給水休憩をとります。ちょうど軽トラで来られたお父様と談笑。お父様曰く「そげえ飲みよったら酔うでぇ」。ほんと、焼酎でも混ぜて気合を入れなければやってられないような暑さです。
11:19 隠山地区へ向かう道中は高い石積みを持つ棚田が広がります。
別府と言えば誰しも温泉町のイメージを抱くと思いますが、市内には農水省の「日本の棚田百選」に選ばれた内成棚田をはじめ、堂面棚田や大所棚田・天間棚田・東山棚田などが存在する棚田の町でもあります。このあたりの石積みは日出町の山田湧水付近の棚田を彷彿させる立派なものです。
11:26 柳(やなぎ)公民館の前を通過
現在地はこちら
地理院地図
柳公民館前には隠山(かくれやま)地区のことを紹介した案内板があり、江戸時代に建立された西国三十三体観音像、法花寺のご本尊であった薬師如来像、隠れ山地区と柳地区の境にあって347段の参道をもつ金毘羅様、隣の柳地区にある市指定の大クヌギのことなどが記されています。
11:27 沿道に咲くアジサイに励まされて高度を上げていきます。
11:28 西国三十三体観音像・山王社五輪塔の入口
ちょっと見学してみようと入りかけたのですが、遠そうだったので引き返しました。ここは冬から春のシーズンに再訪したいです。
11:30 沿道に建つ大乗妙典一石塔
暑さでバテてしまっていたからか、建立年を確認するのを忘れてしまいました。
11:36 隠山地区を過ぎて東九州道の下まで来ると道がフラットになり、桜並木が現れました。
このあたりの標高は約270m。桜の木陰に入ると一気に涼しくなり、バテた体に生気が蘇ってきました。当地に高速道路(当時は大分自動車道と呼ばれていた)が開通したのは1992年(平成4年)12月のこと。桜並木はその頃に植えられたものでしょうか。
11:40 高速道路の下に造られた四角いトンネルをくぐります。
ここはクールダウンのできるポイントとして大いに期待していましたが、トンネル内は湿気がこもって蒸し暑く、あまり快適ではありませんでした。
現在地はこちら
地理院地図
トンネルから標高約450mの“峠”までの1.5km区間が本行程一番の正念場。市道からの展望はなく、竹藪や杉林の中を黙々と登るのみ。ただし、身体が登り坂に順応したためか、惰性で足が前に出るようになりました。志高湖まで行けば冷たいビールが待っているはず。
12:03 “峠”付近は人工林の伐採が行われて6年前と雰囲気が大きく変わっていました。
12:07 “峠”を越えると右手に水田が広がります。
息苦しいほどの森の中を30分近く歩いてきただけに、この光景にはホッとさせられますし、早苗を揺らす風にクールダウンが進みます。
12:08 左手に溜池を見ると、再び樹林帯のダラダラ登りが始まります。
12:20 田の口バス停から5kmで市道田ノ口~隠山線の終点に到達
ここで市道朝見枝郷(あさみえだごう)~合棚後畑(あわせだなうしろばた)線に合流します。この道は朝見浄水場からリンゴ園・枝郷公民館を経て県道52号の旧後畑バス停までを結ぶ延長11kmの市道です。ただ、ここから朝見浄水場までの区間は狭隘で未舗装部分もあるので一般車両はまず通りません。今歩いてくた市道田ノ口~隠山線が枝郷と別府市街地を結ぶ生活道路として機能しています。
現在地はこちら
地理院地図
ここから朝見方面へ歩いた記録(2017/10/3)→志高湖から小鹿山を経て朝見、別府駅へ (後編)
12:21 市道朝見枝郷~合棚後畑線を50mほど進むと少年自然の家「おじか」への道が分岐します。
分岐点にはカスミザクラの大木が立っています。
カスミザクラは桜の野生種のひとつで開花と同時に葉が出ます。山桜と似ていますが、開花は山桜より遅いそうです。葉に短い薄い毛があるので「ケヤマザクラ」とも呼ばれています。ここを歩くのは今回で3度目ですが、なかなか開花期に当たりませんね。
正午を回ったので、少年自然の家「おじか」で昼食にしましょう。
少年自然の家「おじか」について、別府市HPより以下に引用します
別府市立少年自然の家「おじか」は阿蘇くじゅう国立公園の南東に接し、別府市街地から見ると南西の奥、標高550mの高台にあります。「おじか」の名称は背後にある標高728mの小鹿山に由来しています。この小鹿山の山頂に立つと眼下には別府市街地が広がり、東には野生のサルで有名な高崎山や大分臨海工業地帯、別府湾をはさんで遠く国東半島が遠望できる別府市屈指の景勝の地となっています。また、総面積約20万㎡にもなる敷地は、山や谷、林など起伏に富んだ大自然に恵まれており、敷地外のオリエンテーリングのコースとして、志高湖・神楽女湖や由布川峡谷を設定することもできます。
12:22 と思ったら、少年自然の家「おじか」は休所中でした。
同HPによると 施設の老朽化及び新型コロナウイルス感染症の影響で現在の施設での利用が困難であることから、令和2年10月11日から一時休所中です。 とのこと。
神楽女湖へはここから「おじか」の下を通って1.7kmほどですが、ゲートに 進入禁止 と書かれているので どうしたものか。志高湖と小鹿山・神楽女湖を周回するハイキングコースは敷地内を通るので入っても問題なさそうですが、進入禁止の文字を見た後でゲートを通過するのもアレなので、リンゴ園を迂回して神楽女湖を目指すことにしました(歩行距離は3.2km)。昼食は神楽女湖までお預けです。
12:40 「おじか」分岐から1.2kmで神楽女湖への近道が右鋭角方向に分岐します。
ここは「おじか」のオリエンテーリングコースに含まれているので期待したのですが、草に埋もれていました。休所中なので草刈りも行われていないのでしょう。今日はヤブコギ装備で来ていないので、このままリンゴ園経由で歩くことにします。
現在地はこちら
地理院地図
12:44 さらに0.2kmで別府リンゴ園の前を通過
今はシーズン外なので閉園中でしたが、獣害対策の爆音機が稼働していたので今年も栽培が行われているようです。秋には買い物に立ち寄ってみたいですね。
12:46 リンゴ園の先の変則四差路を右折して市道志高~野尾原太郎丸線に入ります。
この道は志高湖と由布川峡谷・挟間方面を結ぶ主要ルートなので交通量が多いです。また、この変則四差路では一時停止の取り締まりが行われることがあります。
現在地はこちら
地理院地図
12:57 リンゴ園から0.8kmで左手に誕生記念の森の石碑とカスミザクラの案内板があります。
石碑の建立は2000年(平成12年)。誕生記念の森にはヤマザクラが多数植樹されており、その奥にあるはずのカスミザクラの木は判別できませんでした。
12:58 市道の右側にも誕生記念の森の石碑が建立されています(こちらの建立は2002年)。
誕生記念の森は別府市の事業として整備されたもの、市民を対象に子どもの誕生記念植樹を行った場所のようです。
13:03 リンゴ園から1.3kmで神楽女湖入口に到着(臨時有料駐車場は0.2km先の左側)
ここから神楽女湖へのルートは2本ありますが、南側の未舗装路を歩くことにします。
現在地はこちら
地理院地図
13:07 林間の道を進んでいくと観光客で賑わう神楽女湖が見えてきました。
水面に映る小鹿山(標高728m)が美しいです。
神楽女湖周辺で存在感を放つヤマボウシの花
13:10 神楽女湖に架かる八つ橋を渡ってショウブ園へ
今日は市街地から自分の足で歩いてきただけに、ハナショウブと対面した際の感動もひとしおです。
現在地はこちら
地理院地図
八つ橋の上から眺めた由布岳と鶴見岳
神楽女湖と言えばハナショウブのイメージですが、この湿原風景も見どころのひとつ。九州にいながら信越か南東北の山にいる気分にさせてくれます。
ハナショウブは期待通りに満開です
ベストシーズンの晴れた土曜日とあって園内は花を楽しむお客さんたちで盛況です。カメラをどちらに向けても人が写り込みますが、最近のスマホやPCは画像の修正機能があるので、人が途切れるタイミングを待つ必要がありません。便利な時代になったものだと感じます。
ハナショウブと小鹿山
別府駅あたりから見上げるとかなり高い山ですが、神楽女湖からの比高は約180mなので、大和三山 程度のかわいらしさです。
名前は忘れましたが黄色いハナショウブ
5月に平地で咲くキバナショウブとは別の品種で、葉の色も黄色っぽいのが印象的です。
白系の花も多く植えられています。
ショウブ園の奥側は見本園となっており、ひと畝ごとに異なる品種が植えられています。
江戸系・伊勢系・肥後系・古種のほか外国系の品種もあって飽きません。素人には数千種類の品種の区別がつきませんが、愛好家の方なら一発で品種を当てられるのでしょう。
ショウブ園の入口近くが最も花の密度が高かった気がします。
13:25 神楽女湖を辞して志高湖へ向かいます。
なお、今シーズンは神楽女湖に仮設トイレが設置されていませんのでご注意ください。
13:29 駐車場へ戻る道から分かれて志高湖への近道(遊歩道)に入ります。
現在地はこちら
地理院地図
13:33 遊歩道の階段部分を迂回する道
遊歩道の奥でクヌギの伐採作業が行われているため、関係車両の通行のため仮設の作業道ができていたのでした。
13:37 伐採されたクヌギはシイタケ栽培の原木に使われます。
伐採→半年ほど自然乾燥→玉切り(約110cmの長さに切る)→駒打ち(シイタケ菌の植え付け)→伏せこみ(原木を組んでふた夏ほど寝かせる) の工程を経て原木をホダ場(栽培場所)に移動させることになります。
13:38 神楽女湖ショウブ園から約13分で志高湖との峠に着きました。
ここから北へ階段を0.1kmほど下れば待望の志高湖に到着です。
13:42 志高湖の東端から眺めた由布岳と鶴見岳
志高湖の駐車場や主要施設は西岸にありますが、初めて訪れる方はぜひ東岸まで足を延ばしてこの景色を眺めてほしいものです。ただし、現在は湖の南岸を通る道が通行止めとなっているため一周することはできません(小鹿山登山・神楽女湖周回は問題ありません)。
現在地はこちら
地理院地図
久々に訪れた志高湖ですが、梅雨の晴れ間の週末とあって、湖北側の道沿いはオートキャンプの車とテントで大盛況。こんなに賑やかだったっけ?と戸惑いながら管理棟の売店をめざします。
13:55 志高湖を半周して西岸に到達
このあたりもキャンパーや観光客でいっぱいでしたが、白鳥さんたちは人慣れしているようで、マイペースで寛がれていました。涼しい季節ならここで昼食にするもの良いでしょうが、今日はとにかく暑いので売店へ直行します。
13:56 東別府駅を出て約5時間で志高湖の管理棟(売店)に到着
志高湖キャンプ場は2022年4月より管理者が全国でキャンプ場を手掛けるRECAMP(リキャンプ)に変わっています。
現在地はこちら
地理院地図
売店でバドワイザーを売っていたので買ってみました。
食堂はないようなので、売店横のベンチで乾杯。外国のビールは薄いかなという先入観がありましたが、これだけ歩いてきて旨くないはずがありません。一気に飲み干しました。
----------
さて、ビールを飲んでしまえばあとは帰るのみ。往路を引き返す気力はありませんし、最初からバスで帰るつもりだったので、1.4km先の鳥居バス停をめざします。
14:10 志高湖畔バス停に立ち寄る別府駅西口行きのバスは土日祝日は2本のみ(昼と夕方)。
市道志高~野尾原太郎丸線は交通量が多いため、はねられないよう注意が必要です。なお、途中までは別府東山ハイキングコースもありますが、夏草のシーズンなので車道を選択した次第です。
14:14 鶴見岳を望む東山小中学校前バス停を通過
14:26 県道11号別府一の宮線(通称「やまなみハイウェイ」)の志高湖入口交差点に到着
前方に見えるのは御嶽権現社の参道の鳥居で、鳥居バス停の名前もここからきています。若い頃は志高湖にテントを張って鶴見岳を往復したりしていましたが、あの頃は元気だったなあと思います。
現在地はこちら
地理院地図
14:28 志高湖売店から19分で鳥居バス停に到着
亀の井バスの湯布院線(別府駅西口~由布院駅前バスセンター) が発着しており、土日祝日は鉄輪経由の観光快速「ゆふりん」が加わります。土日祝日の場合、湯布院線と「ゆふりん」を合わせておよそ30分間隔で運行されていますが、一部時間帯のみ本数が多くなります。
コロナ禍明けの旺盛なインバウンド需要で、これだけの本数をもってしても「ご乗車できない状況があり、大変ご迷惑をおかけして・・・」となるケースもあるようですが、幸いなことに、これから乗る便は前の便の15分後。30分間隔の時間帯より座れる確率は高いと思います。
14:31 鳥居バス停から別府駅西口行きに乗車
事前の読み通り車内は比較的空いていて、別府駅まで快適に乗車することができました。車内はインバウンド客と国内からの観光客が半々といった感じ。
14:56 別府駅西口で下車。鳥居からの運賃は490円でした。
----------
今回は梅雨の晴れ間を利用して別府市街地から神楽女湖・志高湖まで車道を登ってみましたが、湿度と日射しのせいで想像した以上にハードな行程となりました。神楽女湖に着いた時はハナショウブの美しさより無事に到達できたことに感動しましたし、志高湖に着いた時は湖岸のアジサイの花そっちのけでビールののどごしに感動しました。
さて、別府の浜脇周辺は町歩きの楽しいエリアですし、登ったことのない山も多数あるので、冬枯れの季節に再訪したいと思います。
別府市の神楽女湖(かぐらめこ)(海抜約550m)はハナショウブの名所として知られています。毎年6月上旬から7月上旬にかけて約80種、約1万5千株(30万本)のハナショウブが咲き乱れ、周囲の爽やかな高原風景と合わせて訪れる人々の目を楽しませます。
神楽女湖のハナショウブと由布岳・鶴見岳 ※2019/6/18撮影(再掲載)
神楽女湖は車で訪れることのできる観光地ですが(ただし、期間中は臨時駐車場から往復1.5kmほど歩く必要がある)、隣の志高湖(しだかこ)の駐車場にとめて 小鹿山(おじかやま)・大将軍山 などと組み合わせて周回されるハイカーも多いです。
私もコロナ以前は梅雨時期になると毎年のように神楽女湖を訪れていました。今回は久しぶりに神楽女湖のハナショウブを見に行きたいと思ったのですが、これまでと趣向を変えて別府の市街地から“一気登山”でハナショウブを見に行くことにしました。“一気登山”と言っても高温多湿の時期なので舗装された市道を歩くのみですし、小鹿山などのピークを踏む予定もありませんが、トータルの標高差は600mを超えるため結構きつそうです。
本日の行程:東別府駅→浜脇温泉→田の口→鍋→隠山→岳の脇→リンゴ園→神楽女湖→志高湖→鳥居バス停
10:00 大分駅から大分交通バスに乗って東別府駅前バス停で下車(運賃は500円)
同区間をJRの電車で移動すると280円で済みますが、この時間帯のJRは混雑しがちなので確実に座れるバスを選択。中型の低床車なのでエアライナーのような快適さはありませんが、かつての別大電車を偲びながらのんびり移動するのも悪くありません。
現在地はこちら
地理院地図
10:02 まずは東別府駅を表敬訪問
現在の日豊本線東別府駅は1911年(明治44年)に豊州線浜脇駅として開業しました(1934年(昭和9年)に東別府駅に改称)。駅舎は2003年(平成15年)に別府市の有形文化財に指定されており、明治時代の雰囲気を現代に伝えています。
漆喰壁を白熱灯が照らす東別府駅の改札口周辺
東別府駅は2022年3月に無人駅化されましたが、別府鉄道OB友の会(JR退職者)の皆様が交代で平日朝の時間帯に駅舎管理の業務に携わられており、美しい状態がキープされています。
駅舎に向かって右手に建つ 停車塲建設記念碑
浜脇駅開業の翌年(明治45年6月)に建立されたもので、停車場開設に尽力した松田源治代議士を称えたものです。前面左下に「致堂書」とありますが(碑面の“至支”は致の異体字)、致堂は当時文部大臣であった長谷川純孝のこと。長谷川は薩摩の出身であり「致堂」の雅号は西郷隆盛から与えられたものとのことです。
※参考文献 別府史談 (別府史談会編) 2013年 第26号 東別府駅
10:04 東別府駅からスロープを下るとすぐに東町温泉があります。
二階が浜脇1丁目2区自治公民館となっており、別府でよくある公民館(集会所)一体型の温泉です。まさに“駅前温泉”と称すべき立地であり、表の看板に書かれている通り「電車の待ち時間にちょっと一(ひと)風呂」といった楽しみ方もできます。逆コースならここで温泉に入ってから帰途に就くことができそうです。
ちなみに日豊線では亀川駅から大分駅まで6駅連続で“駅前温泉”(徒歩3分以内の場所にある廉価な日帰り温泉)が存在しています。
10:07 線路沿いの道を西へ進むと秋葉神社がありました。
創建は鎌倉時代の貞応2年(1223年)とのこと。鳥居の柱に「明治43年」と刻まれていたので豊州線浜脇駅開業の前年だな、と思って調べてみると、線路敷設に伴って移設された際に建立された鳥居であることが判明。さらに後述する県道51号別府挟間線のバイパス工事に伴って現在地に再移設されたこともわかりました。
10:09 日豊線(もとの豊州線)・県道51号浜脇高架橋・秋葉神社 の位置関係
800年の時と二度の移設を経て浜脇の地を見守り続ける秋葉神社
10:18 秋葉神社の先に日豊線を跨ぐ歩道橋があったので登ってみました。
この橋は山手にある旧浜脇中学校への通学路として架けられたようですが、鶴見岳(右奥)・立石山(その手前)・向平山(左奥)を望む好立地です。
10:19 下りの白が通過して約20秒後に上りの青が通過。惜しい。
当初は歩道橋を渡って山手に向かう計画でしたが、大分駅で食料の調達ができなかったので(9時半前はコンビニとパン屋ぐらいしか開いていない)、予定を変更して浜脇モールに立ち寄ることにしました。
10:27 浜脇モールの中心に建つ浜脇温泉(左)と湯都ピア浜脇(右)
南部地区再開発事業にともなって建設された浜脇モール内に1991年(平成3年)にオープンした市営の温泉施設で、浜脇温泉は普段使いの共同浴場(200円)、湯都ピアは多彩な風呂のあるスーパー銭湯的施設(700円)です。再開発前の浜脇には昭和初期に建てられた浜脇温泉と浜脇高等温泉がありましたが、現在でも温泉の2クラス制が引き継がれているのはおもしろいところ。逆コースならここで温泉に入って「なべさんラーメン」で締めるのも良さそうです。
現在地はこちら
地理院地図
浜脇モール内に掲示された再開発前の浜脇高等温泉と浜脇温泉の写真
余談ながら別府駅前高等温泉もかつては並湯(100円)と高等湯(300円)を選択できましたが、現在では「あつ湯」「ぬる湯」(各250円)に区分されています。
浜脇モール内にある杏樹・ゴトー饅頭店さん
最近、こうした和菓子屋さんを見るとつい立ち寄ってしまいます。創業は明治43年(浜脇駅開業の前年)とのこと。今日の行動食はここで決まり。
ゴトー饅頭店の 甘酒万十・タンサン万十・石垣もち
神楽女湖で食べましたが、それは美味しかったです。餡は「こしあん」「つぶあん」を選べるのがいいですね。他におはぎや赤飯などもあったのでリピートしたいところです。
10:31 浜脇モールを出発
10:35 再開発地区を抜けると戦前の面影を残す町並みが広がります。
今日は神楽女湖・志高湖まで登るため体力を温存する必要がありますが、このあたりは改めてじっくりと歩いてみたいエリアです。
10:36 意図的なのか、たまたまなのか、郵便ポストも以前のままでした。
10:37 河内(こうち)川が朝見川に合流する地点に架かる西町橋
ここから河内川沿いに山手に入っていくことにします。
現在地はこちら
地理院地図
10:39 河内川沿いを進むと日豊線が見えてきました。ややっ、行き止まりか !?
10:40 線路に突き当たって右に進むとすぐに河内踏切がありました。
これを渡って山手に進み、左上に見える教会のような建物をめざします。
10:44 歴史のありそうな教会ふうの建物の下の急坂を登っていきます。
この道はストリートビューに対応しておらず、もしかして私道?と不安になりましたが、あとで調べてみると市道田の口本線登口線という公道でした。
また、後日調べたところ、教会のような建物は1948年(昭和23年)に建設された旧小百合愛児園(創設は1935年)の建物で、1990年(平成2年)の閉園(大分市の分園と統合して移転)後は修道院として使用されてきましたが、2021年(令和3年)以降は閉鎖されているようです。
10:46 急坂を登るにつれ、別府市街地を一望できるようになりました。
10:47 振り返ると北方向に別府の中心市街地が望まれました。
10:48 河内踏切から8分で市道浜脇観海寺線に上がりました。
この市道は別府市街地南側の山の中腹をトラバースする道で、浜脇から河内・朝見浄水場・ラクテンチを経て杉乃井ホテルまで続いています。狭隘区間が続くため運転の苦手な方にはお勧めしませんが、朝見浄水場~ラクテンチ以外の区間は別府一周遊歩道ルートに組み込まれているため、近隣のハイカーにはおなじみの道です。
なお、神楽女湖を目指す場合はここを直進して、宝満寺の横から市道田ノ口~隠山線に入ります。
現在地はこちら
地理院地図
市道浜脇観海寺線に出たところに建つ田の口バス停
かつては亀の井バスの内成線が通っていましたが、2022年8月末をもって廃止されました。翌9月1日から2023年9月29日まで別府市コミュニティバスの実証運行が行われています。亀の井バス時代は土日祝日の運行もあり私も登山で何度か利用しましたが、コミュニティバスだと平日のみの運行なので、観光客の利用は厳しそうです。
10:55 市道田ノ口~隠山線に入っても厳しい登り坂が続きます。
まだ行程の10分の1程度しか消化していないのに、照りつける日射しと蒸し暑さのせいで熱中症になりそうです。本当に神楽女湖・志高湖まで登ることができるのか、はなはだ不安です。
10:57 左手(南側)の視界が開けると高崎山の姿が見えてきました。
河内川の谷を挟んで県道51号を走る車の姿も見えています。浜脇から神楽女湖に向かう際は県道51号~市道河内本線を歩いたほうが近いのですが、そちらは6年前に歩いたので、今回は別ルートを選択しています。
11:01 振り返れば浜脇の町並みと別府湾
中央やや右寄りに見える建物は2021年3月に閉校した浜脇中学校の校舎と体育館です(浜脇中学校は山の手中学校と統合して別府西中学校となる)。
11:02 鍋地区に入ると棚田が現れます。
数十年前は内成棚田に匹敵するほど美しい棚田風景が見られた場所ですが、現在では半分ほどが耕作放棄地となっており、残った棚田も水田から畑地に転用された場所が多いです。
11:09 田の口から鍋地区までの市道は1車線の細道
地元車以外の通過車両はなく、のんびりと歩くことができます。
11:12 田の口バス停から1.2kmで市道河内本線と合流
ここから先は隠山・枝郷方面への生活道路となるため、それなりに交通量が多くなります(数分に1台程度ですが)。
現在地はこちら
地理院地図
11:15 市道は階段状になった河内(こうち)川に沿って高度を上げていきます。
上流部(このあたり)と下流部(市街地)では人工的な姿の河内川ですが、中流部では河内渓谷を形成しており「裳裾の滝」という滝もあるようです(本行程では近くを通っていません)。
11:17 柳3号橋のそばに建つ知恵地蔵
ここでお参りがてらに給水休憩をとります。ちょうど軽トラで来られたお父様と談笑。お父様曰く「そげえ飲みよったら酔うでぇ」。ほんと、焼酎でも混ぜて気合を入れなければやってられないような暑さです。
11:19 隠山地区へ向かう道中は高い石積みを持つ棚田が広がります。
別府と言えば誰しも温泉町のイメージを抱くと思いますが、市内には農水省の「日本の棚田百選」に選ばれた内成棚田をはじめ、堂面棚田や大所棚田・天間棚田・東山棚田などが存在する棚田の町でもあります。このあたりの石積みは日出町の山田湧水付近の棚田を彷彿させる立派なものです。
11:26 柳(やなぎ)公民館の前を通過
現在地はこちら
地理院地図
柳公民館前には隠山(かくれやま)地区のことを紹介した案内板があり、江戸時代に建立された西国三十三体観音像、法花寺のご本尊であった薬師如来像、隠れ山地区と柳地区の境にあって347段の参道をもつ金毘羅様、隣の柳地区にある市指定の大クヌギのことなどが記されています。
11:27 沿道に咲くアジサイに励まされて高度を上げていきます。
11:28 西国三十三体観音像・山王社五輪塔の入口
ちょっと見学してみようと入りかけたのですが、遠そうだったので引き返しました。ここは冬から春のシーズンに再訪したいです。
11:30 沿道に建つ大乗妙典一石塔
暑さでバテてしまっていたからか、建立年を確認するのを忘れてしまいました。
11:36 隠山地区を過ぎて東九州道の下まで来ると道がフラットになり、桜並木が現れました。
このあたりの標高は約270m。桜の木陰に入ると一気に涼しくなり、バテた体に生気が蘇ってきました。当地に高速道路(当時は大分自動車道と呼ばれていた)が開通したのは1992年(平成4年)12月のこと。桜並木はその頃に植えられたものでしょうか。
11:40 高速道路の下に造られた四角いトンネルをくぐります。
ここはクールダウンのできるポイントとして大いに期待していましたが、トンネル内は湿気がこもって蒸し暑く、あまり快適ではありませんでした。
現在地はこちら
地理院地図
トンネルから標高約450mの“峠”までの1.5km区間が本行程一番の正念場。市道からの展望はなく、竹藪や杉林の中を黙々と登るのみ。ただし、身体が登り坂に順応したためか、惰性で足が前に出るようになりました。志高湖まで行けば冷たいビールが待っているはず。
12:03 “峠”付近は人工林の伐採が行われて6年前と雰囲気が大きく変わっていました。
12:07 “峠”を越えると右手に水田が広がります。
息苦しいほどの森の中を30分近く歩いてきただけに、この光景にはホッとさせられますし、早苗を揺らす風にクールダウンが進みます。
12:08 左手に溜池を見ると、再び樹林帯のダラダラ登りが始まります。
12:20 田の口バス停から5kmで市道田ノ口~隠山線の終点に到達
ここで市道朝見枝郷(あさみえだごう)~合棚後畑(あわせだなうしろばた)線に合流します。この道は朝見浄水場からリンゴ園・枝郷公民館を経て県道52号の旧後畑バス停までを結ぶ延長11kmの市道です。ただ、ここから朝見浄水場までの区間は狭隘で未舗装部分もあるので一般車両はまず通りません。今歩いてくた市道田ノ口~隠山線が枝郷と別府市街地を結ぶ生活道路として機能しています。
現在地はこちら
地理院地図
ここから朝見方面へ歩いた記録(2017/10/3)→志高湖から小鹿山を経て朝見、別府駅へ (後編)
12:21 市道朝見枝郷~合棚後畑線を50mほど進むと少年自然の家「おじか」への道が分岐します。
分岐点にはカスミザクラの大木が立っています。
カスミザクラは桜の野生種のひとつで開花と同時に葉が出ます。山桜と似ていますが、開花は山桜より遅いそうです。葉に短い薄い毛があるので「ケヤマザクラ」とも呼ばれています。ここを歩くのは今回で3度目ですが、なかなか開花期に当たりませんね。
正午を回ったので、少年自然の家「おじか」で昼食にしましょう。
少年自然の家「おじか」について、別府市HPより以下に引用します
別府市立少年自然の家「おじか」は阿蘇くじゅう国立公園の南東に接し、別府市街地から見ると南西の奥、標高550mの高台にあります。「おじか」の名称は背後にある標高728mの小鹿山に由来しています。この小鹿山の山頂に立つと眼下には別府市街地が広がり、東には野生のサルで有名な高崎山や大分臨海工業地帯、別府湾をはさんで遠く国東半島が遠望できる別府市屈指の景勝の地となっています。また、総面積約20万㎡にもなる敷地は、山や谷、林など起伏に富んだ大自然に恵まれており、敷地外のオリエンテーリングのコースとして、志高湖・神楽女湖や由布川峡谷を設定することもできます。
12:22 と思ったら、少年自然の家「おじか」は休所中でした。
同HPによると 施設の老朽化及び新型コロナウイルス感染症の影響で現在の施設での利用が困難であることから、令和2年10月11日から一時休所中です。 とのこと。
神楽女湖へはここから「おじか」の下を通って1.7kmほどですが、ゲートに 進入禁止 と書かれているので どうしたものか。志高湖と小鹿山・神楽女湖を周回するハイキングコースは敷地内を通るので入っても問題なさそうですが、進入禁止の文字を見た後でゲートを通過するのもアレなので、リンゴ園を迂回して神楽女湖を目指すことにしました(歩行距離は3.2km)。昼食は神楽女湖までお預けです。
12:40 「おじか」分岐から1.2kmで神楽女湖への近道が右鋭角方向に分岐します。
ここは「おじか」のオリエンテーリングコースに含まれているので期待したのですが、草に埋もれていました。休所中なので草刈りも行われていないのでしょう。今日はヤブコギ装備で来ていないので、このままリンゴ園経由で歩くことにします。
現在地はこちら
地理院地図
12:44 さらに0.2kmで別府リンゴ園の前を通過
今はシーズン外なので閉園中でしたが、獣害対策の爆音機が稼働していたので今年も栽培が行われているようです。秋には買い物に立ち寄ってみたいですね。
12:46 リンゴ園の先の変則四差路を右折して市道志高~野尾原太郎丸線に入ります。
この道は志高湖と由布川峡谷・挟間方面を結ぶ主要ルートなので交通量が多いです。また、この変則四差路では一時停止の取り締まりが行われることがあります。
現在地はこちら
地理院地図
12:57 リンゴ園から0.8kmで左手に誕生記念の森の石碑とカスミザクラの案内板があります。
石碑の建立は2000年(平成12年)。誕生記念の森にはヤマザクラが多数植樹されており、その奥にあるはずのカスミザクラの木は判別できませんでした。
12:58 市道の右側にも誕生記念の森の石碑が建立されています(こちらの建立は2002年)。
誕生記念の森は別府市の事業として整備されたもの、市民を対象に子どもの誕生記念植樹を行った場所のようです。
13:03 リンゴ園から1.3kmで神楽女湖入口に到着(臨時有料駐車場は0.2km先の左側)
ここから神楽女湖へのルートは2本ありますが、南側の未舗装路を歩くことにします。
現在地はこちら
地理院地図
13:07 林間の道を進んでいくと観光客で賑わう神楽女湖が見えてきました。
水面に映る小鹿山(標高728m)が美しいです。
神楽女湖周辺で存在感を放つヤマボウシの花
13:10 神楽女湖に架かる八つ橋を渡ってショウブ園へ
今日は市街地から自分の足で歩いてきただけに、ハナショウブと対面した際の感動もひとしおです。
現在地はこちら
地理院地図
八つ橋の上から眺めた由布岳と鶴見岳
神楽女湖と言えばハナショウブのイメージですが、この湿原風景も見どころのひとつ。九州にいながら信越か南東北の山にいる気分にさせてくれます。
ハナショウブは期待通りに満開です
ベストシーズンの晴れた土曜日とあって園内は花を楽しむお客さんたちで盛況です。カメラをどちらに向けても人が写り込みますが、最近のスマホやPCは画像の修正機能があるので、人が途切れるタイミングを待つ必要がありません。便利な時代になったものだと感じます。
ハナショウブと小鹿山
別府駅あたりから見上げるとかなり高い山ですが、神楽女湖からの比高は約180mなので、大和三山 程度のかわいらしさです。
名前は忘れましたが黄色いハナショウブ
5月に平地で咲くキバナショウブとは別の品種で、葉の色も黄色っぽいのが印象的です。
白系の花も多く植えられています。
ショウブ園の奥側は見本園となっており、ひと畝ごとに異なる品種が植えられています。
江戸系・伊勢系・肥後系・古種のほか外国系の品種もあって飽きません。素人には数千種類の品種の区別がつきませんが、愛好家の方なら一発で品種を当てられるのでしょう。
ショウブ園の入口近くが最も花の密度が高かった気がします。
13:25 神楽女湖を辞して志高湖へ向かいます。
なお、今シーズンは神楽女湖に仮設トイレが設置されていませんのでご注意ください。
13:29 駐車場へ戻る道から分かれて志高湖への近道(遊歩道)に入ります。
現在地はこちら
地理院地図
13:33 遊歩道の階段部分を迂回する道
遊歩道の奥でクヌギの伐採作業が行われているため、関係車両の通行のため仮設の作業道ができていたのでした。
13:37 伐採されたクヌギはシイタケ栽培の原木に使われます。
伐採→半年ほど自然乾燥→玉切り(約110cmの長さに切る)→駒打ち(シイタケ菌の植え付け)→伏せこみ(原木を組んでふた夏ほど寝かせる) の工程を経て原木をホダ場(栽培場所)に移動させることになります。
13:38 神楽女湖ショウブ園から約13分で志高湖との峠に着きました。
ここから北へ階段を0.1kmほど下れば待望の志高湖に到着です。
13:42 志高湖の東端から眺めた由布岳と鶴見岳
志高湖の駐車場や主要施設は西岸にありますが、初めて訪れる方はぜひ東岸まで足を延ばしてこの景色を眺めてほしいものです。ただし、現在は湖の南岸を通る道が通行止めとなっているため一周することはできません(小鹿山登山・神楽女湖周回は問題ありません)。
現在地はこちら
地理院地図
久々に訪れた志高湖ですが、梅雨の晴れ間の週末とあって、湖北側の道沿いはオートキャンプの車とテントで大盛況。こんなに賑やかだったっけ?と戸惑いながら管理棟の売店をめざします。
13:55 志高湖を半周して西岸に到達
このあたりもキャンパーや観光客でいっぱいでしたが、白鳥さんたちは人慣れしているようで、マイペースで寛がれていました。涼しい季節ならここで昼食にするもの良いでしょうが、今日はとにかく暑いので売店へ直行します。
13:56 東別府駅を出て約5時間で志高湖の管理棟(売店)に到着
志高湖キャンプ場は2022年4月より管理者が全国でキャンプ場を手掛けるRECAMP(リキャンプ)に変わっています。
現在地はこちら
地理院地図
売店でバドワイザーを売っていたので買ってみました。
食堂はないようなので、売店横のベンチで乾杯。外国のビールは薄いかなという先入観がありましたが、これだけ歩いてきて旨くないはずがありません。一気に飲み干しました。
----------
さて、ビールを飲んでしまえばあとは帰るのみ。往路を引き返す気力はありませんし、最初からバスで帰るつもりだったので、1.4km先の鳥居バス停をめざします。
14:10 志高湖畔バス停に立ち寄る別府駅西口行きのバスは土日祝日は2本のみ(昼と夕方)。
市道志高~野尾原太郎丸線は交通量が多いため、はねられないよう注意が必要です。なお、途中までは別府東山ハイキングコースもありますが、夏草のシーズンなので車道を選択した次第です。
14:14 鶴見岳を望む東山小中学校前バス停を通過
14:26 県道11号別府一の宮線(通称「やまなみハイウェイ」)の志高湖入口交差点に到着
前方に見えるのは御嶽権現社の参道の鳥居で、鳥居バス停の名前もここからきています。若い頃は志高湖にテントを張って鶴見岳を往復したりしていましたが、あの頃は元気だったなあと思います。
現在地はこちら
地理院地図
14:28 志高湖売店から19分で鳥居バス停に到着
亀の井バスの湯布院線(別府駅西口~由布院駅前バスセンター) が発着しており、土日祝日は鉄輪経由の観光快速「ゆふりん」が加わります。土日祝日の場合、湯布院線と「ゆふりん」を合わせておよそ30分間隔で運行されていますが、一部時間帯のみ本数が多くなります。
コロナ禍明けの旺盛なインバウンド需要で、これだけの本数をもってしても「ご乗車できない状況があり、大変ご迷惑をおかけして・・・」となるケースもあるようですが、幸いなことに、これから乗る便は前の便の15分後。30分間隔の時間帯より座れる確率は高いと思います。
14:31 鳥居バス停から別府駅西口行きに乗車
事前の読み通り車内は比較的空いていて、別府駅まで快適に乗車することができました。車内はインバウンド客と国内からの観光客が半々といった感じ。
14:56 別府駅西口で下車。鳥居からの運賃は490円でした。
----------
今回は梅雨の晴れ間を利用して別府市街地から神楽女湖・志高湖まで車道を登ってみましたが、湿度と日射しのせいで想像した以上にハードな行程となりました。神楽女湖に着いた時はハナショウブの美しさより無事に到達できたことに感動しましたし、志高湖に着いた時は湖岸のアジサイの花そっちのけでビールののどごしに感動しました。
さて、別府の浜脇周辺は町歩きの楽しいエリアですし、登ったことのない山も多数あるので、冬枯れの季節に再訪したいと思います。