近影遠影  一昨日の、このブログにも書いた高橋一清さんの『近影遠影 あの日 あの人』が発売される。松江市内では、9月7日には店頭に並ぶ。
 
 表紙カバーのデザインは著者ご本人によるもので、元文藝春秋社編集者としての経験と力が投入され、無駄がなく簡にして要を得たとでもいうように、内容が的確に表現されていると思う。高橋さんの著書『編集者魂』、『作家魂に触れた』などの表紙カバーもそうだが、リアルでないのが本の品格を高めている。

 表紙カバーの裏には本書に扱われた人達の100名を超える名が連ねられている。小林秀雄、川端康成などの作家はもとよりだが、ジャンヌ・モロー、昭和天皇、田中角栄、山口淑子、バーナード・リーチ、坂本九、ファイサル国王(第3代サウジアラビアの国王)などなどの名前が所狭しと書かれ、高橋さんの人脈、また取材の幅広さがうかがえる。

 毎日新聞に約2年に亘って連載されたもので、それぞれの人ごとに多彩なエピソードが書かれている。それも、高橋一清さんしか知らない、語ることのできない内容だから、読者は頁を捲る手を休めることはできまい。
 さらに、精彩を添えるのは、写真である。毎日新聞連載の時には、人物の写真が入っていたが、この単行本では著者が撮影したもの、著者だけが持つ写真に限られている。
 圧巻は19頁にある写真で、「中央がジャンヌ・モロー、右が筆者、左の後ろ姿は小森和子さん(撮影・飯窪敏彦)」と説明がある。筆者というのは当然だが高橋一清さんで、若いときの姿だ。飯窪さんは、ジャズコルネット奏者で、早稲田大学文学部を出て、文藝春秋新社に入社した写真部員である。17頁に「文藝春秋写真部の飯窪敏彦さんは均整のとれた脚に注目、ベンチに掛け脚組した一瞬を見逃さなかった。」とある。そのジャンヌ・モローの脚の「一瞬」とはどういう情景だったのか、高橋さんに聞いてみたいくらいだ。文芸とは関係がないけれども、そういう知られざる逸話も興味深い。「これが読まずにいられるか」という本である。

『近影遠影』お話会 9月17日には、『近影遠影 あの日あの人 本をめぐるお話し会』が開かれ、これは高橋さんが主宰される松江文学学校の講座も兼ねている。2枚目の画像が、そのチラシで、クリックすれば拡大して読める。
 となれば、当日の参加者は『近影遠影』も手に入れることができると思うが、早く読まれたい方はそれまでに書店に行かれるのではなかろうか。読んだ上で聞く、高橋さんのお話はまた格別であろう。

 高橋一清さん著『近影遠影』の発刊については、9月6日付けの毎日新聞に記事が掲載された。