スピーチの極意   十箇条
  1.スピーチの目指すところを明確にする
  2.エピソード、具体例を盛り込んだ原稿を作り、全文暗記すること
  3.力を抜き、心静かに平常心で臨むこと
  4.タイムキーパーを立てること
  5.トップバッターとして登場するのは極力避けること
  6.聴衆が静かになるのを待って始めること
  7.しっかりと前を向き、左右を向いて、
      会場全体を見渡しながらかたりかけること
  8.言葉はゆっくり、声は腹から出すこと
  9.導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的にしめくくること
10.最後まで、決して泣かないこと

原田マハ著「本日は、お日柄もよく」という本にスピーチの極意10箇条が書いてあった。

何気なくよった本屋でジャケ買いをした本である。












この本は、冒頭主人公のOL二ノ宮こと葉が幼馴染 厚志の結婚式に参列した時に
伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞を聞き感動をしたシーンから始まる。

新郎の厚志は 大手広告代理店勤務という設定で、牛丼チェーン吉原家の担当。
このスピーチの前に彼の会社のクライアントである吉原家の社長が祝辞をしているといった状況

このスピーチがすごい……ひこ込まれてしまった。


・・・以下抜粋・・・

「宴たけなわではございますが、
ここで、もうひとつ祝辞を頂戴いたします」

司会者の声が響いた。

新郎新婦が席に着くタイミングで、
立ち上がったひとがいる。

「新郎の知人で、新郎が大変尊敬されている
『言葉のプロフェッショナル』、久遠久美さまです。
久遠さま、よろしくお願いします」

私は顔を上げて、壇上を見た。

あのひとだ。

マイクの前に立ち、
係りの人にスタンドの高さを調節してもらっている。
マイクに手をやり、黙っている。
メモは持っていない。

ざわざわ、ざわざわ、歓談が続いている。
なかなか話し出さない。
ざわ、ざわ、ざわ。

会場の声が、やがて波が引くように静まった。

まだ話さない。

なんだろ、あのひと?
スピーチするのに、黙りこんじゃってる。

不審な空気が広がったのか、
やがて会場は、水を打ったようにしんと静まり返った。

「あれは、二カ月ほどまえのことだったでしょうか。
ある夜、厚志君が『相談がある』と言って、
私に電話をしてきました」

ぎょっとした。
なんだかすごい始まり方だ。

スピーチというより、告白みたいじゃないか。

私は思わず身を乗り出した。
と、周りを見ると、
お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも身を乗り出している。

妙齢の美人が「相談」ときた。
興味が湧かないはずがない。

おばあちゃんだけが、びしっと背筋を伸ばしたまま、
姿勢を崩していない。
ただし、目はつぶらずに、まっすぐ壇上をみつめている。

「『実は好きな人ができた。
会社でアルバイトをしている子で、まだ二十歳そこそこ。
すごくかわいくて、とってもいい子で、
みんな彼女を狙っている。

だから僕は考えた。
結婚しちゃえばいいって。

それって、早すぎますか?』

厚志君はそう言ってきたのです。

私はすぐさま答えました。

『それのどこが相談なの?
もう決めてるじゃない』って」

どっと会場が沸いた。

お父さんもお母さんも、笑っている。
お兄ちゃんは腕組をして、しょうがねえなあ、という苦笑の顔だ。
おばあちゃんは、ぷっと噴き出して、着物の袖で口もとを押さえた。

笑い声が収まるのを待つように、
一拍おいてから、彼女は続けた。

「世の中に、早ければ早いほどおいしいものが、みっつあります。

一、 ボージョレ・ヌーヴォー(ふむふむ)。

二、『吉原家』の牛丼(爆笑)。

三、結婚(ほお〜)。

今日は、会場にこのみっつが勢ぞろいしていますね。
大変、幸先がいい。

そう思いませんか、皆さん?」

拍手が起こった。
うまい、と私は今度こそ膝を打った。

『吉原家』の社長は、満足そうにうなずいている。
新郎新婦も一緒になって、盛んに拍手している。

「そして、年月を重ねれば重ねるほど、
深いうまみが増してくるものが、みっつあります。

一、愛情(おお〜)。

二、人生(おお〜)。

そして三、結婚です」

もう一度、拍手が起こった。

それが収まるのをまたもや待って、
続ける。

「新郎のご両親は、残念ながら、一昨年、昨年と、
この日を待たずに他界されました。

私は縁あって、新郎の父上、衆議院議員、今川篤郎先生と
懇意にさせていただいておりました」

そう聞いて、急に納得した。
このひとは、今川のおじさんの関係者、だったんだ。
秘書だったのかもしれない。
そういわれると、そんな感じがする。
頭の回転が速く、いかにも切れそうな政策秘書。

「奥様を亡くされた先生に、生前一度だけ、
失礼を承知でうかがったことがあります。

『ご結婚なされて、一番よかったことはなんでしたか?』

先生は、あの独特のシブい声で、
それでもたまらなくお優しい口調でおっしゃいました。

『深いうまみのある人生を、
あいつと一緒に味わえたことかな』

そして、こうもおっしゃいました。

『一度、厚志にも言ってやらなくちゃな。
ときにしょっぱくても苦くても、
人生の最後のほうで、一番甘いのが、結婚なんだ。
お前もさっさと体験してみろ、いいもんだぞ、って』」

会場が、しんとなった。

厚志君は、じっと前を見据えている。
その目が、ほんのりと潤んでいるのがわかる。

「はたしてお父さまが、厚志君にその言葉を伝えたかどうか、
私にはわかりません。

けれどこうして、
いっぱいの愛情と豊かな人生を分かち合うために、
厚志君は恵里さんとともに、ここに座っている。

お父さまに代わって、申し上げたいです。

『どうだ厚志、結婚ってなかなかいいもんだろ?』」

あたたかな笑い声が起こる。
厚志君と恵里ちゃんは、顔を見合わせて笑った。

その拍子に、恵里ちゃんのつややかな頬を、
涙がひとすじ、伝って落ちた。

「お父さまも愛されたフランスの作家、
ジョルジュ・サンドは言いました。
あのショパンを生涯、苦しみながらも愛し続けた
彼女の言葉です。

『愛せよ。
人生において、
よきものはそれだけである』

本日は、お日柄もよく、
心温かな人々に見守られ、
ふたつの人生をひとつに重ねて、
いまからふたりで歩いていってください。

たったひとつの、
よきもののために」

おめでとう。

最後の言葉が、彼女の口から離れた瞬間。
あたたかな、実にあたたかな拍手が、
会場を埋め尽くした。

恵里ちゃんは、白い手袋の指先で涙を拭っている。
厚志君が、その肩をそっと抱いている。

お父さん、お兄ちゃんは、夢中で手を叩いている。
お母さんは、ナプキンで鼻を押さえている。
おばあちゃんは、ていねいに、いつまでも、
静かな拍手を送っている。

私は……私は、
情けないことに、
さっきつけ直したマスカラがまた落ちてしまうほど、
泣いていた。


・・・・・・・・
 
冒頭から心を奪われた。
食い入るようにこの本を吸い込まれていき
1日で読んでしまった。



■ポイント抜粋


・出だしの一分でお祝いを四回も言ってる。
 で、また聴衆の耳が離れる。
 なんだこいつ、おんなじことばっか
 言ってるよ、ってね(p13)


・フレーズの冒頭に、「えー」とか「あー」とか
 付けるのは、しゃべるのに
 自信がない証拠(p14)


・檀上に上がって、まず五秒待つ。
 会場が静かになるのを。
 五秒で無理なら、十秒。(p80)


・原稿はきっちり仕上げる。
 けれど、決して読まない・・
 棒読みになったとたん、
 聴衆の関心が薄れるから(p91)


・スピーチライターの心得として、
 もっとも初歩的で、かつ難しいこと。
 人の話を聞けなかったら、
 スピーチライターにはなれないわけよ(p163)


〜以下抜粋〜
 久美は、この十箇条の基本となる「静」の考え方をこと葉に教えていくシーン抜粋

 まず、心を平静にして思い浮かべる。このスピーチの目指すところはどこにあるのか。

それは、スピーチをする場や状況によってさまざまだ。披露宴のときは、新郎新婦を祝って。

弔事ならば、故人を偲び、遺族を思いやって。国会の演説ならば、国民全体の気持ちを代弁しなければならない。

 それから、スピーチに向かうとき。必要以上に力を入れたり、

虚勢を張ったりする必要はない。力を抜き、心静かに平常心で臨む。

 そして、壇上に上がって、まず五秒待つ。会場が静かになるのを。五秒で無理なら、十秒。

それでもダメなら十五秒。十五秒というのは、けっこう長い。たいてい、聴衆は十五秒以内に静まる。

だから、壇上に上がってすぐに始めずに、五秒間隔で静かになるのを待つ。

 スピーチの導入部も、あくまで静かに始める。はじめ方はさまざまだが、「ただいまご紹介にあずかりました」とか

「ひとことお祝いを述べさせていただきます」というような、無駄な枕詞は極力避ける。

いきなりエピソードから始めてもいい。結論を先に言ってしまってもいい。

とにかく、最初のフレーズがどんなふうに聴衆の耳に届くか。それでそのスピーチの印象が決まる。

聴衆を煽る激しい言葉や、あまりにも力強いフレーズは避ける。あくまでも、静かに、けれど心を打つ入り口を作る。

 原稿はきっちり仕上げる。けれど、決して読まない。

どれだけすぐれた原稿であっても、棒読みになったとたん、聴衆の関心が薄れるから。必ず全文暗記すること。

とはいえ、あまり複雑で長い原稿は覚えられないから、短くまとめること。

その中で、自分でも覚えやすいエピソードを交えるといい。言葉を贈る自分も、贈られる側も、一生忘れないようなエピソードを――。

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ビジネスでも同じなのではないか……。
プレゼンテーション、メールなどなど

一瞬で相手のハートを盗む!と尊敬する上司がよく言っていた。
毎度、毎日会えない中で どうやったら一瞬で相手のハートを盗めるか?というような事を
よくおっしゃていた。


一瞬でハートを盗めるかどうか?

相手に興味を持ってもらえるかどうか?

私などまだまだであるが
大事なのは 自分の言葉で伝える事なのではないか?と
ある時に気づき それを実践してきた。


こんな私でも人様の前で講演をする事がある
その時に意識しているのは

相手に何かを伝える時には、具体的なエピソード中心で
自分だけの体験を伝える事

自分の言葉で伝える事

そう思ってきた。

この本を読んで いいスピーチとは
自分だけの言葉を使う事 という事だと解釈した。

また人様の前で喋りたくなってきたなあ………。