aamall

2006年08月17日

生来的犯罪人説

ロンブローゾは、骨相学、観相学、人類学、遺伝学、統計学、社会学などの手法を動員し、人間の身体的・精神的特徴と犯罪との相関性を検証した。彼は処刑された囚人の遺体を解剖、頭蓋骨の大きさや形状を丹念に観察した。解剖された頭蓋骨は383個にのぼる。また、刑務所や精神病院で3,839人の受刑者の容貌や骨格を、兵士のそれと比較した。こうした多大な労力を費やした末に、彼は「犯罪者には一定の身体的・精神的特徴(Stigmata)が認められる」との調査結果を得た。

ロンブローゾは身体的特徴として「大きな眼窩」「高い頬骨」など18項目を、また精神的特徴として「痛覚の鈍麻」「(犯罪人特有の心理の表象としての)刺青」「強い自己顕示欲」などを列挙した。彼によれば、これらの特徴は人類よりもむしろ類人猿において多くみられるものであり、人類学的にみれば、原始人の遺伝的特徴が隔世遺伝(atavism)によって再現した、いわゆる先祖返りと説明することができる。また、精神医学的見地からは悖徳狂と、病理学的見地からは癲癇症と診断される。そしてこれらの特徴をもって生まれた者は、文明社会に適応することができず犯罪に手を染めやすい、即ち将来犯罪者となることを先天的に宿命付けられた存在であると結論付けた。これが「生来的(生来性)犯罪人説」である。こうした彼の立論の背景には、当時流行していた ダーウィニズムへの傾倒があった。発表当初は、犯罪者の約70%が生来的犯罪人であるとしたが、激しい批判を考慮してか、のちにその数値を約35 - 40%に下方修正した。

『犯罪人論』には犯罪者の身体的特徴の実例が多数記載されていたが、その中には「禿頭」という項目はなかった。ここから、「ハゲに悪人はいない」という俗説が生まれた。

ロンブローゾは『天才論(L'uomo di Genio、1888年)』において、カエサルやムハンマド、ナポレオンなど多くの著名人に癲癇の症状があったと指摘、天才と癲癇との関連性を説いた。「天才と狂人は紙一重」という言葉はここから生まれたものである。



jusen_erudition at 15:35│Comments(0)TrackBack(0)clip!◇ 犯罪心理学 

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