住鬼「自動車産業への夢は誰が見る」 住宅ジャーナル2005年1月号より木工日記

2005年08月01日

グランド・ラピッツ(ミシガン州)発 山教授のeーmailハウジングレポート――55




グランド・ラピッツ(ミシガン州)発 
山教授のeーmailハウジングレポート――55

Green Buildingの設計事務所
限りある資源を後世に残す

山正人



 今回のテーマとしては、グリーンビルディングのデザインで特化している、地元の設計事務所であるIntegrated Architecture(IA)に焦点を当て、その特徴を検討してみると同時に、グリーンビルディングの今後のビジネスの可能性を考えてみることにします。

 この設計事務所の基本は、サスティナブルデザインを提供することを前提に、設計士やエンジニアの全員が全米グリーンビルド協会の認定するLEED(Leadership in Energy & Environmental)の資格を取得しているか、または取得準備のため研修中です。全てのプロジェクトはLEEDの基準に従って、顧客の要望に合わせて設計されます。IAはグリーンデザイン分野において全米のリーダーとしてランクされています。


サスティナブルデザインを完成


 この設計事務所の大きな特徴でもあるサスティナブルデザインは、次の5項目のガイドラインに従っています。
 ー然との調和を考えた建物の場所の構築
 極力、自然な地形の破壊や変形を避け、動植物への影響も考慮して、ヒートアイランド減少を削減する。また、交通機関としては、自転車や公共交通機関を優先できるように考える。

 環境に順応する資材の利用
 リサイクルされた資材、再生可能な材料、オゾン破壊の恐れのない冷却材、VOC発生の心配のないペイント、カーペット、接着剤などの使用を考慮する。
 
 水の保全
 節水型の便器使用や造成による治水工事などは極力回避する。
 
 ぜ然な太陽光と外気の取り込み
 太陽光を取り入れると同時に、各部屋からも外の景色が眺められるように工夫する。また、窓は開けられるように工夫する。
 
 ジ率の高い空調設備
 通常の基準値を上回る空調効果を実現させ、代替エネルギーの活用を検討し、Energy Star認証マーク付の器具を選択する。

 ここ注目すべき新しい設計とデザインの考え方に、Intellisys Processがあります。設計の初期段階から、顧客のみならず、建設工事を請け負う全てのエンジニアが、デザインや設計に参加します。このようにすることによって建設準備、建設工事、入居まで一貫した考え方で、より効率の良い、理想的な建物を完成し、入居者に最高の満足度を達成させることが可能になります。


 IAの設計にたいする姿勢は次のように理解できます。現状ではまだ豊富にある資源でも、将来には保障されていない。人口増加に伴って、森林、農地、きれいな水、石油などの資源の永続的に減少する必然は、今、我々が何をすべきかの決断を迫っている。IAは、サスティナブルデザインに特化することを選択することで、自然環境に対してプラスの効果となると確信しているのです。そのために、IAの設計士や技術者は、全員がLEEDの認定資格獲得、または少なくともLEEDの教育を受けることで、サスティナブルデザインを提供するすることによって、自然を保護するだけでなく、快適で、効率の良い、魅力ある建物を創出し、究極的には企業利益にすら高見できます。これがIAの目指すサスティナブルな対応なのです。


良好な作業環境に従業員も歓迎


 前記のInntellisyaを実践して、IAが見事に完成した代表的建物として、2001年に完成したハーマンミラー社のMarket Placeがあります。
 この建物は2004年1月、LEEDの認定でGOLDを獲得、また、American Institute of Architectsから2003年にGreen Building Awardも獲得しました。ここではこの建物の費用節約面から、その特徴を簡単に整理してみることにします。

 〃築費
 従来の建物よりも33%も節約が可能となりました。
 建物管理と光熱費
 従来の建物と比べて41%の節約を達成しました。
 2閥颪篝瀏器具の費用
 この費用も11%が節約されています。
 ご鏘颪箍閥颪琉榮阿箍装の費用
 多機能なデザインを駆使した結果、家具の移動などの人件費も66%節約となりました。
 シ築機関 
 Intellsyaの導入で、工期も10ヶ月と通常の工期よりも35%の短縮が実現しました。

 建物の大きな特徴は、空間の活用方法のアンケートから、個人、グループ、コミュニティー使用の要望にも応えられるようjに、9つの職場モデルを開発することで、ダイナミックなデザインを完成することに成功していることです。その結果、共同作業の空間が通常の建物が全体の空間の12%しかなかったのに比べ、ここでは33%にも増加しています。


 次に前記のような特徴がどのように職場で評価されているのか、1200人の従業員アンケートから見ることが出来ました。その結果は、以下に述べるようなものとなりました。

 ゞζ浦邏箸龍間の満足感じる人は16%。
 企業イメージの改善になると考える人が31%。
 仕事場空間利用の活用能力向上に寄与すると考える人が13%
 ぅ哀襦璽廚任虜邏噺率の向上があると感じる人が3%。
 ジ柩兮タ覆悗旅弩イあると考える人が36%。

 現在全米では1500以上もLEEDの認定を受けた建物がありますが、その多くは私の住むグランド・ラピッツに建てられています。私の大学では、建設が計画されている図書館と体育館はLEEDの認定を受けますが、IAが設計を担当しています。今後、サスティナブルビジネスがいよいよ常識となれば、建物はGreen Buildingであることは必然です。すでに設計士やエンジニア仲間では、LEEDの資格を取得することが常識となっています。






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