コスモスも揺れる

コスモスも揺れる　ゆっくり酔いつぶれる　　柴崎昭雄

03年12月句会宿題「絡む」

◆十二月句会　十二月十九日(於中央公民館)
出席　敬光、とも子、弘志、もとく、一竿、俊水、奈生美、秋子、美子、てつ子、昭雄、宏子、しん一
投句　穂峰、悠治、昭治、光子、雅男

宿題「絡む」　　　もとく　選
絡ませた小指男を逃がさない　　　悠治
晩酌に入れば絡む父の愚痴　　　奈生美
しがらみを避けて通れぬ三面鏡　　　雅男
絡ませた指にダイヤをねだられる　　　悠治
情実が絡み一票重くなる　　　悠治
絡ませた指がアダムとイブになる　　　敬光
ああ言えばこう言う妻の絡む癖　　　穂峰
欲望が絡んだ痰を吐き出せぬ　　　敬光
罪深い女に絡む弥陀の紐　　　秋子
少年の記憶にからむ夏帽子　　　　　昭雄
口出しをしてアンちゃんにからまれる　　　昭治
絡まれて愛が解けない糸車　　　穂峰
因習が絡んでダッシュできぬ足　　　しん一
絡ませた小指に悔いをまた重ね　　　一竿
マスコミが絡むと嘘が惚けてくる　　　敬光
遺産分け集う伜の目が絡む　　　一竿
イブの夜絡んだ小指いたみ出す　　　美子
五 客
損得が絡むと会議沸いて来る　　　俊水
絡まれて絡んで太る夫婦の樹　　　弘志
居酒屋ににんげん好きなハムレット　　　とも子
絡ませた小指に孫が念を押す　　　俊水
蜘蛛の糸もがけばもがくほど絡む　　　しん一
三 才
からむだけ絡むしがらみ柩まで　　　昭雄
青年の主義から絡み酒になる　　　弘志
ごめんねの言葉が喉に絡みつく　　　昭雄

04年1月残灯録（会員作品）

※毎月自由吟が五句掲載されます。

・てつ子
山あいに朝日が昇り手を合わす
お正月ちょっとおませな孫の顔
正月の笑いを置いて孫帰る
陽を浴びて少し優雅な七面鳥
埒もない夢から覚めぬかたつむり

・光子
初春の街往き交う人の声軽く
初夢を乗せて振る舞う祝い酒
減量のグラスは少し小さ目に
幼虫は落ち葉積み積み雑魚寝する
ヘビースモーカー隅々までも煙に巻く

・英子
履歴書を書け表彰をするという
スキーヤーやきもきさせて降らぬ雪
漬物はやっぱり母の手を借りる
大小の菰が並んだ冬囲い
不況から浮かび上がれず年が明け

・美子
天気図が狂い地上の人ぼやく
すっぽりと埋まる覚悟で冬を待つ
塩出しをした山菜を煮込む鍋
腹一杯食ってダイエットに気づく
日めくりをさわやかに剥ぐ初日の出

・奈生美
幾年も同じ枕で初の夢
年末も趣味は欠かせぬお気軽さ
良い年になれそクレープ皮綺麗
過ぎ去った昨日を今日は振り向かず
不況風止まれと命じても聞かぬ

・鈴夫
盃の底から友の愚痴が湧く
思い出の殻をむきつつ私小説
あまりにもワサビ効かせて子がぐれる
空回りしながら妻と暮らしてる
鴉来て千羽の鳥を暗くする

・俊水
紅白は演歌少なく物足らず
天気よく希望新たに初詣で
年一度一張羅着て初詣で
おみくじの大吉引いてまず安堵
子等帰りおかず四、五日同じ物

・悠治
回り道して言い訳を考える
片方の耳に格言ためておく
錆び釘の意地を人間もて余す
ジャガイモの芽が物置でのびてくる
あいまいな返事の裏に負のドラマ

・一竿
ゴム長で来ればよかった里の雪
降る雪に追われて昏れる北の街
嫁が来て与作寝不足多くなり
知恵袋だんだん軽くなる八十路
いいとこでばっさり切ったコマーシャル

・もとく
媚を売る捨て猫がいて駆け抜ける
今朝方の農婦が化けた披露宴
ＤＭの親展で来る女文字
熊ただで食ってるイクラ高すぎる
正月になっても年は数えない

・秋子
初詣で元日だけの一万歩
百薬の長には少し過ぎた酒
空回りばかりで知恵が浮かばない
少しずつ絡んだ蔓が断ち切れぬ
笑い皺他人に言えぬ苦悩秘め

・しん一
乗りやすい顔へ相談もちかける
よろこびの詰まった栓は派手に抜く
昼間では用の足りない家ばかり
口コミがもう届いてる路地の隅
過不足があって世の中面白い