「いただきまーす」

 長野県喬木(たかぎ)村立喬木第二小学校の6年生の教室。3月中旬の給食の時間、子どもたちが一斉に、かむ回数を数える機器「かみかみセンサー」をあごに装着した。養護教諭の安富和子さん(56)(3月末で退職)は、「よくかんで食べよう」「少し姿勢が悪いよ」などと声をかけて回った。

 この風変わりなセンサーは、あごの動きを感知し、かんだ回数を表示する。子どもの健康のため、かんだ回数を数える装置がほしいという安富さんの発案で開発された。

 この日は、同小が2年前から月2回実施している「かみかみデー」。子どもたちは、センサーで数えた回数をカードに記録した。目標は、「1口あたり30回。給食1食あたり1000回以上」だ。

 安富さんがかむことに注目したのは約10年前。子どもたちと給食を食べた時、硬い食べ物が嫌いな子や、なかなかのみ込めない子がいたのがきっかけだった。「かむ力が弱いのでは」と思い、子どもたちの咬合(こうごう)力を測定したところ、自分の体重とほぼ同じ力が必要と言われているが、体重より小さい子が1クラスに5人ほどいた。

 よくかんで食べるにはどうしたらいいか。安富さんは、給食の時間を使い、よくかまないと、胃腸の負担が大きくなる、唾液が出ず虫歯予防にならない、あごが弱くなり歯並びが悪くなる、など「かむ大切さ」を伝えた。こうした中、2005年に県立工業高校の教諭の協力を得てセンサーを開発し、かんだ回数を意識させる指導を始めた。

 効果は表れている。福沢栞さん(12)は「これまで何も考えずに食べていたなと気付いた」と話し、木下雄介君(12)は「よくかむようになったら、ご飯の甘さを感じるようになった」と笑顔を見せた。

 担任の友野淳司教諭(35)は「給食指導に対する意識が低かったと痛感した。事務をするため早く食べると、『よくかんで』と子どもたちに注意される」と苦笑い。かむことを意識するためか、どの学級も給食の時間がしっかり確保されるようになった。

 安富さんは4月から、飯田女子短期大学の准教授になった。「養護教諭の卵たちに、『給食は、子どもの将来の食に対する姿勢を育む教育の場』と教えたい」と話す。

 センサーは、07年から市販されている。正しい食習慣で健康管理ができるよう、養護教諭が進める食の教育が広がっている。

(2011年4月30日 読売新聞)