10年度の幼児健康度調査で、10年前(00年度)より夜更かしの子どもが大幅に減った。背景に何があるのか。【下桐実雅子】

 幼児健康度調査は全国の満1歳から7歳未満の未就学児が対象。日本小児保健協会が1980年度から10年ごとに実施し、今回で4回目だ。

 10年前の調査(00年度)では就寝時刻が「夜10時以降」の子どもが全年齢平均で50%を占めたが、今回は29%に減少。2歳児では59%もいたのが35%に激減、20年前(41%)よりも減った。

 起床時刻も早まる傾向がみられ、午前7時に起きる子どもの割合は変わらなかったが、午前6時に起きる割合が25%で、10年前(11%)より倍増した。

 なぜ「早寝早起き化」が進んだのか。調査研究の代表者、衛藤隆・日本子ども家庭総合研究所副所長(小児科医)は「今回の調査では、経済状況を反映してか、母親の就労割合が増えている。出勤時刻が決まっていれば親も夜遅くまで起きていられず、子どもも早く寝るようになったのでは」と推測する。

    ◇   ◇

 「皆さんは毎日何時に寝ますか」。今月7日、東京都荒川区立汐入東小(羽中田彩記子校長)で、東京ベイ・浦安市川医療センター長の神山潤さんが呼びかけた。眠りについて学ぶ授業に聴き入ったのは4~6年の児童と保護者たち。午後10時前後の子が多かったが、中には「0時過ぎ」に手を挙げる子もいた。

 神山さんは、日本の小学5年生の平均就寝時刻(06年)は午後10時10分なのに対し、米国の小学4年生は同8時35分、中国は同9時で、日本の子どもの宵っ張りぶりを指摘した。

 「ヒトは寝て食べて出して(排せつして)初めて元気が出る。寝たいな、食べたいな、という体の声をよく聞いてください」

 神山さんは医師や保育関係者らでつくる「子どもの早起きをすすめる会」の発起人。99年に自身が行ったアンケートや00年度の幼児健康度調査の結果に危機感を持ち、01年に活動を始めた。全国の幼稚園や学校などで睡眠の大切さを説いて回る。文部科学省も06年に「早寝早起き朝ごはん」運動を始めた。

 神山さんは夜更かしが減った調査について「一部の家庭ががんばった結果だと思う」と話す。「最近でも、幼稚園や保育園の先生に聞くと、子どもが午前中から疲れていたり、ボーッとしていると感じる人が増えている。保護者の長時間労働やテレビやゲームなどメディアの影響で、子どもが眠りにくい環境にあることに目を向けるべきです」

 鈴木みゆき・和洋女子大教授(保育学、睡眠学)も「規則正しい生活リズムが大切と考え実行する家庭と、意識の乏しい家庭に二極化している。生活するのがやっとの世帯もあり、経済格差の広がりが意識格差につながっている」と指摘する。鈴木さんが訪れた都心の高級住宅街にある幼稚園で、母親らに子どもの就寝時間を尋ねたところ、「午後8時」が9割を占めたという。

 「夜更かしがそんなに減ったとは」。東京都杉並区の区立保育園の所澤文江園長は調査結果を聞いて少し意外な感じがしたという。「確かに、少子化で保護者のお子さんへの関心が高まっていると感じる。例えば子どもの歯もきれいに磨かれていて、検診で歯科医にほめられる。健康へのこだわりが早寝早起きにつながったのでは」と推測。「朝早く登園する子が増えている。早朝に仕事や習い事をする朝活の影響か、親の出勤が早まって子も早起きになったのかも」とも話した。

 夜更かしはなぜよくないのか。夜間に長時間光を浴び続けたり、朝の光を十分に浴びないと、体内リズムが乱れる。心を穏やかにする脳内物質の分泌を抑えたり、性的成熟が早まる可能性もある。睡眠不足が肥満をもたらすという研究報告も増えている。鈴木教授は、こうした科学的裏付けが広まったことが、早寝早起きを浸透させた一因とみている。

 ◇各年齢で「午後9時」最多

 幼児健康度調査は自治体の乳幼児健診の会場で保護者が記入、10年度は5352人から回答があった。就寝時刻は午後9時が49%で、すべての年齢層で最も多く、午後8時は10年前より増えていた。

 毎日朝食を食べる子は93%。9時より前に起床する子どもでは95%が毎日朝食を食べていたが、9時以降だと60~70%と低かった。

 子どもの遊びの内容(2歳以上、複数回答)については「絵本」(56%)と「テレビ・ビデオ」(51%)が10年前よりほぼ倍増した。「自転車・三輪車」(43%)は10ポイント減少し、交通事情や外遊びが減った影響とも考えられるという。

 1日にテレビ・ビデオを見る時間は「2~3時間未満」(29%)が最も多く、「1~1時間半未満」(21%)が続いた。「3~4時間未満」は大幅に減り、視聴時間は短縮傾向が見られる。


(2011.10.18 毎日新聞から転載)

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