鬼ごっこ:体づくりで注目 簡単、誰でも夢中に/多彩な動き/運動量の調節も

大人ならだれもがかつて親しんだ「鬼ごっこ」。いま子どもの体づくりに最適の「プログラム」として注目されているという。外遊びの減少で子どもの体力、運動能力の低下が指摘されており、スポーツより参加しやすい鬼ごっこで体を動かそうと、授業に取り入れる学校もある。

 「鬼ごっこなんてその辺で誰でもやってるだろう」とあきれる向きもあるかもしれないが、実態は少し違う。ベネッセ次世代育成研究所が昨年、乳幼児を持つ母親を対象に行った調査によると、幼児(4~6歳)で鬼ごっこや缶けりをよくするのは35%にとどまった。福岡県が10年前に公園と小中学校の校庭計150カ所で専門調査員による観察調査をしたところ、鬼ごっこをしていたのはわずか2・5%だった。

 子どもの体力や遊びに詳しい山梨大学の中村和彦教授は「缶けりやゴム跳びも含め、伝承遊びはほぼ消滅した。体育で習うことはあっても、子どもの遊びではない」と話す。


 体力や運動能力の問題のみならず、骨折する児童も増えている。学校での事故の補償を扱う日本スポーツ振興センターによると、09年の骨折件数は9万910件で、1970年より約4万件多い。女子栄養大学の上西一弘教授は、骨密度が低いからではないという。「体の動かし方が下手。受け身を取れず、顔をけがする子も増えている」と解説する。



 骨密度はカルシウムなどミネラルが骨にどの程度詰まっているかを示す。18歳ごろ最大になり、その後は減る。骨を作るにはカルシウムの摂取だけでなく、運動で骨に刺激を与えるのが大事。運動不足で骨密度が落ちると、将来の骨粗しょう症のリスクにもなる。



 遊びと体づくりを長年研究してきた城西国際大学の羽崎泰男教授は、こうした問題の対策として「鬼ごっこに勝るものはない」と力説する。走る、自転車、縄跳びなども試したが、子どもは長続きしない。スポーツ競技は成長するほど楽しめる半面、運動の苦手な子はしなくなる。誰でも簡単で、夢中になるうちに体が動くという点で、鬼ごっこは最適というのだ。



 運動面からみた利点とは、走る▽止まる▽ターンする▽よけるなど多くの動きがあり、スピードや方向も多彩なことだ。種類も豊富で、遊ぶ場所や年齢に合わせて楽しめる。ルールを変えると動きも変わり、運動量を増やしたり減らしたりも簡単だ。



 羽崎教授は話す。「動かない女子は将来、骨が心配だ。思春期前に体を動かす習慣をつけないと」

 千葉県富里市立富里小学校では、昨年の市内の運動会でチーム戦の鬼ごっこに参加した子どもたちから「もっとやりたい」と声が上がったのを受け、始業前のスポーツ教室や体育の授業の体ほぐしに取り入れている。佐々木政光教諭は「今の子は鬼ごっこの種類も知らないし、高学年の遊びはゲーム主体。鬼ごっこは持久力、俊敏性がつき、頭も使う。全員が動くところもいい」と効果を語る。



 一方で、山梨大の中村教授は「鬼ごっこがいいと聞くとそればかりさせる大人も多い。それではサッカーだけ、野球だけをやるのと同じ。いろいろな遊びを伝え、多様な仕掛けを作り、時間や空間の制限を少なくして自由に遊ばせるのが大事。大人の枠内では、子どもはのめりこまない」と遊びの要素を失わないよう、注意を促す。



 ◇健康改善の教材に採用
 食品メーカーのネスレは子ども向け健康改善プログラムを開発し、教材に鬼ごっこを取り入れている。プログラムでは、「氷鬼」「バナナ鬼」(鬼につかまると氷やバナナとなって動けなくなり、友達がタッチすれば動ける)など四つの鬼ごっこを図解した児童向けシートを作った。鬼ごっこは、みんなでルールを考え、単なる追いかけっこ以上のコミュニケーションを学ぶ機会になると勧めている。



 教材の一部は「ネスレ ヘルシーキッズ プログラム」ホームページからダウンロードできるが、すべて取り込むには申し込みが必要。これまでに全国1200校以上の小学校から申請があり、無償で提供した。9月にはじゃんけんで陣地を広げる「じゃんけん鬼」などにアレンジを加えたオリジナル鬼ごっこを開発。高学年も楽しめる内容で、12年度用の教材に盛り込むという。




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 ■年齢別お薦め鬼ごっこ

 ◇幼児~小学校低学年→影踏み鬼
 何かの影に入ると鬼に捕まらない。低年齢にも分かりやすく、1対1でも可能。影の長さの違いで難易度も変化。

 ◇小学校中学年→助け鬼
 氷鬼、バナナ鬼など種類が豊富。鬼に捕まると動けなくなる。捕まった子をほかの子が助けるという鬼ごっこの大切な面を持つ。

 ◇小学校高学年→陣取り鬼
 スポーツに似ており対戦やチーム戦ができる。勝敗や戦略性があり、モチベーションが高まる。本格的なスポーツにも移行できる。

(2011.11.13 毎日新聞から転載)

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