横浜市の郊外にある認可保育所「川和保育園」には、木々が茂り、水が流れる、まるで森のような園庭がある。

 その一角にある石垣を、3歳の男の子が意を決したように登り始めた。慎重に手と足を運びながら、とうとう頂上にたどりつく。「やったー!」「初めて登ったねー」。上から見守っていた同じクラスの女の子たちが喜ぶと、男の子は笑顔を浮かべた。

 石垣の上には小さなログハウスがある。「あそこで自分も遊びたいと思うから頑張って登るんですよ」と主任保育士の宮里昌枝さん(52)。石垣には、突起が多く登りやすい初心者ルートと、ロープで登る上級者ルートがあり、園児らは年長児や上手な子の登り方を見て挑戦する。

 園庭は1000平方メートル。園児170人の規模として並はずれた広さではない。それでも奥行きや豊かさを感じさせるのは、ツリーハウスやつり橋、木製の大型遊具、水遊び場などが木々の間に配置され、多様な遊びが立体的に展開されているからだ。

 「ここも昔は普通の園庭でした」と寺田信太郎園長(68)。1971年に先代の母親から引き継いだ当時は、現在の倍の広さだったが、平らな運動場に鉄製遊具や砂場が置かれただけの空間だった。

 「夢中で遊びたくなる環境にしたい」と考えた寺田園長が、様々な木を植え、小山や水路、それにツリーハウスも作った。すると、園児の遊び方が変わり、保育士に頼らず子ども同士で「遊び込む」姿が見られるようになった。

 「簡単に高く上れるハシゴや階段はかえって危険だから付けない」「落ちる時はお尻からズルズルと落ちるよう教える」など工夫を重ね、子ども自身が危険を察知して身を守る力も育んできた。

 「ここでは『やっちゃダメ』とは言われないから、大人の顔色をうかがうことなく、やりたいことを見つけて主体的に遊ぶ。何度も失敗して挑戦する自由がある。子どもたちの表情が違います」と、別の公立園の勤務経験がある保育士(38)は言う。

保護者も協力

 挑戦を誘う仕掛けに富んだ園庭は、保護者の協力にも支えられている。7種類ある大型遊具の多くは、園児の父親たちが卒園記念に作り寄贈したもの。資金集めのためのバザーも盛んだ。

 寺田園長は入園前に園庭保育について説明し、「骨折までは許してほしい」と了解を求めている。最初は戸惑う親も、園庭でのキャンプや園外保育のサポートに参加し、遊びの中で力をつける園児を見て意識を変えていく。

 園庭が生きる力を育む舞台になっている。

五感育む外遊び

 園庭は、幼稚園では設置が義務付けられているが、保育所は近くに公園などの代替空間があれば免除される。このため、都市部では園庭なしの保育所が増えている。

 だが、子どもが狭い室内に長時間いると、ストレスからケンカやかみつきなどが増える。子どもの体力や運動能力を育てるためにも、外で遊べる環境は重要だ。

 青山学院大学非常勤講師(教育学)の青木久子さん(67)は「五感が優れた幼児は、自然に触れ、体験して学習する。外遊びの場所が地域からなくなる一方で、保育所で過ごす時間は長くなっており、自然環境と優れた遊具のある園庭について真剣に考える必要がある」と話している。

2012年7月6日  読売新聞から転載)

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