千葉県富津市の認可保育所「和光保育園」、5歳児クラスで保育士の佐藤瑞希(みずき)さん(26)はさりげなく桑の葉を触ったりしながら、園児がカイコの世話を忘れているのに気づくのを待っていた。

 園児の一人が気づいたのは50分後。その子はクラスメートを呼びに行き、どうしたら忘れないかを話し合った。「口笛で合図する?」「時間で決めよう」「長い針と短い針がまっすぐで分かりやすい9時15分がいいよ」。結論が出たのは20分後。園児たちは「もう忘れないようにしよう」と約束して桑の葉を広げた。

 鈴木眞廣(まひろ)園長(59)は「忘れてるよ、やりましょう、と誘うのが一番楽。でもそれは子どもの力をみくびっている。自分で解決できるんだから」と目を細める。担任の丸由紀子(まるゆきこ)保育士(47)は「予定があったら待てませんよ」と笑った。

 約30年前、1日の計画を保育士が決める一斉保育をやめ、子どもが思い思いに過ごす保育に変えた。現在は給食の時間さえ決まっておらず、遊び疲れておなかがすいたら自分で配膳し昼食を取る。

 保育士は子どもを指導するより、表情や視線に注意を払う。子どもが何かに興味を持ったら、その気持ちを尊重して「やってみよう」と促し、一緒に驚き、考えや結論がまとまるまで話を聞く。

 保育中は園児の様子を情報交換し、興味や関心を引き出す方法を考える。「園児を眺めて立ち話しているから、昔はほったらかし保育園と言われました」と鈴木園長。週1度の保育会議は深夜まで、園児の様子を話し合う。好奇心が育つ幼児クラスには国の基準の2倍の保育士を配し、普通の園なら乳児クラスに投入する余剰人員を幼児クラスに振り向ける。

 園児と一緒に「深い穴を掘ってアメリカへ行こう」と取り組んだこともある。その時は「帰りにどうやって穴をよじ登るか」が関心事となり、縄登りの苦手な子が必死に練習を始めた。砂鉄に興味を持った園児たちが、近くの製鉄所の力を借りて鉄を作る実験に挑戦したこともある。

 4人兄弟のうち2人を通わせた母親(43)は「この園で育った子はやりたいことを自分で見つけられる」と話す。

 東京大学の秋田喜代美教授は「地域の大人が子どもを見守る伝統的な子育てを、そのまま園の中に持ってきたことが素晴らしい。日本らしい保育と言える」と評している。(大広悠子)

 メモ 注意深い観察により子どもの気持ちをくみ取り、やりたいことをふくらませる保育手法は、欧米で関心が高い。例えば、世界的に注目されているニュージーランドの統一幼児教育カリキュラム「テファリキ」(マオリ語で織物の意味)では、保育環境を整える際に考慮するべき点として、「能力を引き出す」「家族・地域」「周囲との関係」などを掲げている。

(2012.7.12 読売新聞から転載)



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