保育所に入れない待機児童は約2万5000人にのぼる。その数をゼロに近づけるため、政府の有識者会議「子ども・子育て会議」は15年度から本格的に始める新たな子育て支援制度の具体化にとりかかった。新制度は昨年、税と社会保障の一体改革で骨格が決まっており、その柱は1兆円を投じて保育施設の定員枠を40万人分増やすとともに、保育の質の向上を図ることだ。ただし、「量と質の両立」は容易ではない。財源の手当てにも、あいまいさが残る。


◇幼稚園の参入は未知数

 同会議初日の26日、委員には新制度で市町村が保護者に「今後の保育・教育希望」を聞くためのアンケート例が配られた。対象が「子どものいる世帯」となっているのを見て、佐藤博樹東大大学院教授は「(出産に備え)母子手帳を取りにくる人のニーズも調査すべきだ」と注文した。

 これまで多くの市町村は親の入所申し込みを受けて初めて腰をあげてきた。補助金の負担を嫌い、門前払いする例もある。一方、申し込みに応じて保育所の定員を増やした結果、入所を諦めていた人の応募を誘い、待機児童が増えるという悪循環を繰り返してきた。

 その反省を踏まえ、新制度では市町村側から保護者の意向を聞く。潜在需要をつかみ、「想定外」の入所希望をなくすためだ。さらに市町村にはサービス量の見込みと確保の手段を記した計画策定を義務づける。定員20人未満の小規模保育や、保育士資格を持つ人らが自宅などで少人数の子どもを預かる「保育ママ」にも新たに国の補助金を支給する。

 厚生労働省保育課は「自治体が入所希望者を断れない制度」と胸を張る。

 しかし、サービス量の急増には約2万3700カ所ある認可保育所などの増加だけでなく、約1万3200園の幼稚園の参入も欠かせない。民主党政権の当初案では、幼稚園と保育所を原則、幼・保一体化施設「総合こども園」に移行させ、少子化で定員割れも多い幼稚園枠を活用する計画だった。それが一体化を嫌う一部幼稚園の意向に沿った自民党の働きかけで構想は頓挫。約1100カ所ある既存の幼・保同居施設「認定こども園」についても、幼稚園、保育所の移行義務づけは見送られた。

 「幼稚園は自由競争でやっている。公的責任を伴う、窮屈な制度にどのくらい入ってくるのか」。担当の内閣府幹部もそう漏らす。26日の会合で北條泰雅・全日本私立幼稚園連合会副会長は「(幼稚園の)緩やかな多様性を認める仕組みが改悪されるのではないか」と疑問を投げかけた。

 ベネッセ次世代育成研究所が昨年秋に実施したアンケートでは、「条件によっては認定こども園に移行してもよいと思う」と答えた私立幼稚園は36%。一方、「移行は考えていない」が26.7%、「詳しい内容がわからず判断できない」は22.4%。現時点で大幅に移行する道筋は見えない。


 ◇基準緩和に慎重論も

 新制度は保育の「質」向上もうたう。民間の場合、平均月額給与約21万円と全職種平均より約9万円低い保育士の待遇を改善したり、3歳児20人に保育士1人という人員配置基準を「15対1」程度へと引き上げたりするため、消費増税分から約3000億円を投入する。そうした中、安倍政権は19日、参院選をにらみ「待機児童解消加速化プラン」を打ち出した。待機児童解消を当初計画より2年早め、13~14年度に20万人分、17年度までに40万人分の保育施設をつくるものだ。

 プランは官邸主導で練られた。背後には、成長戦略に絡め、少ない保育士でより多くの子どもを預かることを提案する政府の規制改革会議の存在がある。同会議は規制を手放そうとしない厚労省への不信を募らせ、待機児童の多い地域の保育士数を基準の8~9割程度に緩和するよう迫る。

 これに対し厚労省は「詰めこみ保育」を懸念する。橋本泰宏保育課長は24日、記者団に「人員配置基準を緩める考えはありません」と断言した。だが、全国最悪だった待機児童をゼロにできる見通しが立った横浜市は、量の確保を優先したと指摘されている。

 規制緩和には待機児童を抱える親からも慎重論が出ている。子どもの保育所入所を求め東京都杉並区などに不服申し立てをした保護者の団体は17日、「規制緩和による待機児童解消は望まない」として安全な保育の拡大を求める意見書を規制改革会議に提出した。

 1歳の長女を今春、認可保育所に入れられず、認可外施設を利用する同区の会社員、増田宣佳(のぶか)さん(36)は、仕事復帰ぎりぎりまで預け先が決まらず、一時は夜間や宿泊を伴う保育をする認可外施設、ベビーホテルも考えた。一刻も早い待機児童対策を待ち望む一方、こう話す。「基準を緩めるのは反対。子どものことを考えたら、保育の質を保った認可保育所に預けたい」

 ◇3000億円分の財源未定

 11年度の子育て関連費用は4.7兆円。一体改革ではさらに1兆円程度必要とはじき、消費税率を10%に引き上げる15年度以降増税分から約7000億円を充てることが決まった。しかし、残る3000億円のメドは立っていない。

 さらに首相肝いりの待機児童解消加速化プランも、新制度を先取りする13~14年度分に関しては7万人分の受け皿、約1600億円しか確保できていない。想定の20万人分となれば別に約2000億円を要する。厚労省は追加の補正予算も検討するが、14年度の消費増税分をより多く獲得しないと不足しかねない。国の負担は所要額の半分。残りを負担するか否かは自治体に委ねられている。

 このほか、自民、公明両党は連立政権合意に「幼児教育無償化」も盛り込んでいる。来月にも具体策をまとめる意向だ。文部科学省の試算では3~5歳児を対象にした場合、7900億円が毎年必要となる。それなのに財源はまるで未定。厚労省の政務三役は「うちと文科省で消費増税分7000億円の奪い合いが起きる」と警戒感を隠さない。


 ◆新子育て支援制度骨子

・認定こども園、幼稚園、保育所に共通の給付(国の補助金)を創設

  就学前の子どもに対する教育や保育を財源面で一本化。小規模保育も新たに制度化し、国の補助金対象とする

・認定こども園制度の改善

  幼稚園と保育所の機能を併せ持つ認定こども園の認可・指導監督を内閣府に一本化

・地域の子ども・子育て支援の充実

  地域の子育て支援拠点や一時保育、放課後児童クラブなどの充実



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