2016年11月
2016年11月25日
どこが分かれ道? 英語好きになるか、英語嫌いになるか
グローバル化に対応するため、文部科学省は英語教育の充実を進めており、現行学習指導要領では小学校高学年に週1時間の「外国語活動」を実施しています。ところが、小学校でせっかく英語を学んでも、中学生になると英語嫌いが増えるという新たな問題が生じていることが、同省の「小学校外国語活動実施状況調査」で明らかになりました。
調査は、小学5・6年生と中学校1・2年生の児童生徒、外国語活動と英語を担当している教員を対象に実施しました。それによると、「英語が好き」(「好き」と「どちらかといえば好き」の合計)と回答した子どもの割合は、小5・6が70.9%、中1が61.6%、中2が50.3%でした。逆に「英語が嫌い」(「きらい」と「どちらかといえばきらい」の合計)は、小5・6が10.9%、中1が18.4%、中2が27.0%で、残りは「どちらともいえない」などでした。小5・6は7割以上が英語を好きなのに対して、小5から4年間英語を学習してきた中2になると約5割にまで減少し、しかも約3割が英語嫌いになっているということになります。
実際、英語の授業を理解しているかどうかを子どもにたずねたところ、小5・小6では65.2%、中1は57.0%、中2は48.9%と、学年を追うごとに授業を理解している子どもの割合が減っています。中学校で英語嫌いが増えるということは「第1回 中学校英語に関する基本調査報告書【教員調査・生徒調査】」(ベネッセ教育総合研究所)などで指摘されてきましたが、小学校で外国語活動が実施されても、その傾向は改善されていないようです。
小学校の外国語活動でもっと学習しておきたかったこととして、中1の約8割が英単語や英語の文章を書くこと、読むことを挙げています。「読む・書く・話す・聞く」の4技能のうち、小学校の外国語活動では英語に慣れることに重点を置き、「話す・聞く」を中心にしています。これに対して中学校では、4技能をバランスよく教えることになっています。どうやら、英語の「読む・書く」という学習が、小学校から中学校の間でうまくつながっていないことが、中学校での英語嫌いを増やしている大きな原因のようです。
2020(平成32)年度から小学校で実施予定の次期学習指導要領では、外国語活動を小3・4に前倒しして、小5・6では英語を教科とすることが予定されています。英語の「読む・書く・話す・聞く」の4技能をいかにバランスよく指導し、それを中学校でどう伸ばしていくのかが、今後の英語教育の大きな課題といえるでしょう。
ただし、小学校教員の英語の指導力がそれに追いつくかどうかを懸念する向きもあります。調査結果を見ても、小学校教員の67.3%が「英語が苦手」と回答しているほか、半数以上が課題として「教員の指導力」を挙げています。一方で、小学校教員の63.5%が外国語活動のための校外研修に「今年度は参加していない」というのが実情です。
文科省は2015(平成27)年度から小学校を含めた英語教員の指導力強化事業を開始していますが、次期学習指導要領の実施までに小学校教員などの英語の指導力をどれだけ向上させられるかが、これからの英語教育の成果を左右することになるかもしれません。
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2016年11月19日
年長児に育む3つの力が、自ら進んで学ぶ力になる!
「ベネッセ教育総合研究所」では、子どもをもつ母親544名を対象に、2015年3月に「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」を実施しました。
主な調査結果は、以下の通りです。
1.年長児期に《生活習慣》全般、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子ほど、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」傾向が強い
●小1の時点で、子どもの家庭学習の様子をたずねたところ、「大人に言われなくても自分から進んで勉強をする」と回答したのは全体の66.3%だった(「とてもあてはまる」と「まああてはまる」の合計)。(図1)
●年長児期の学習準備のどれが、小1で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」に影響するかを分析した。結果、《生活習慣》、《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』の力が高い群ほど、小1で「自分から進んで勉強する」比率が高い傾向がみられた。
2.年長児期に、親が子どものやりたい気持ちや考える行動を支えるほど、子どもの『がんばる力』や『言葉』は高まる
●年長児期、親が子どもの意欲を尊重する態度を3群に分け、子どもの『がんばる力』を比べた。結果、子どもの意欲を尊重する態度が高い群ほど、子どもの『がんばる力』は高い傾向がみられた(図2)。
●同様に、親が子どもの意欲を尊重する態度が高かったり、子どもの思考を促す関わり、学びの環境を整える関わりをしている群ほど、子どもの『言葉』の力は高い傾向がみられた。
3.家庭での子どもの成長プロセスでは、(1)《生活習慣》をベースに、(2)《学びに向かう力》、(3)《文字・数・思考》の成長へとつながっていく
●4年間の縦断データから、年少児までに《生活習慣》を身につけることが、年中児の《学びに向かう力》へつながること、そして、そこで養われた《学びに向かう力》が、年長児の《文字・数・思考》の力を育てることがわかった。その後、小1期には、《文字・数・思考》の力や《学びに向かう力》が学習態度を育てていく関係性が見えてきた。(図3)
幼稚園や保育園から小1の接続期は、幼児期から児童期に入り、学習生活が始まる重要な時期です。なかでも、年長児期に《生活習慣》や《学びに向かう力》の『がんばる力』、《文字・数・思考》の『言葉』が身についている子どもほど、小1で「自ら進んで学ぶ」傾向にあることがわかりました。年長児期において、保護者が子どもの意欲や自分で考える行動を支えることが、子ども自身が育つ力を支えるのに重要であることもわかりました。
さらに、4年間を通した縦断調査の結果、子どもの育ちには、《生活習慣》と《学びに向かう力》と《文字・数・思考》の育ちに順序がみられ、いずれも育つことが重要であると、今回の調査結果からみえてきました。早期から文字・数・思考の教育だけに力を入れるのではなく、子どもの育ちに沿いながら、幼児期の生活と遊びを通して、生活習慣と学びに向かう力を培うことの大切さを示すと思われます。
共働き世帯が増え、少子化などで保護者の子育て経験も減り、地域では子ども同士が触れ合う機会が限られるなど、幼児から小学校低学年の子どもが生活する環境は変化しています。その一方で、保護者は子育てや教育についてあふれるほどの情報に接しています。
子どもの育ちを支える保護者や園・小学校、地域や行政の方々が、今回の調査エビデンスを参考に子どもの育ちへの理解を深め、子どもたちが変わる環境に柔軟に対応し、学び続け、課題を解決できるよう育つことを願ってやみません。
(筆者:ベネッセ教育総合研究所)
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2016年11月12日
モンテッソーリに学ぶ1歳からのお手伝い
子どもはパパやママの行動のまねをしたり、親に喜んでもらったりすることが大好き。洗濯や食事の準備などの日常の家事をじっと見ていて「私(僕)もやりたい!」と主張することもあるかもしれません。そんなとき、共働きの慌ただしい生活リズムの中で、「一人で(片付けたほうが効率がいいから)大丈夫」「(もっと大事な)遊びや勉強を優先していていいよ」などと、知らないうちに子どものやる気の芽を摘んでしまっていませんか?
キャリア形成の大切さや社会の厳しさを肌身で感じているDUALファミリーだからこそ、習い事や学業など将来に困らないスキルに注力しがちになりますが、子どもの成長の基礎となるのは、やはり日常の生活環境。今回取材した幼児教育、食育、ビジネスそれぞれの第一人者は、専門分野は異なりますが「お手伝いを通じた家庭教育が、自己肯定感と高い人間力を育む」と口をそろえます。
家事参加の小さな積み重ねは、将来の子ども達にどう影響していくのか? お手伝いの効果を検証しつつ、家族の関わりをより豊かに、親子のコミュニケーションにも役立ててもらいたい、と日経DUALでは「お手伝いする子は脳と心が伸びる! 特集」を企画。第一回では、日本にモンテッソーリ教育がリバイバルした1960年代から、この教育の根拠や構造など理論的紹介を著書や講義・講演などで精力的に続けてきた相良敦子さんに、子どもの感性と脳の発達が飛躍的に伸びる1歳から6歳までの間にお手伝いをすることの大切さや、日常生活を通して子どもを上手に導く親の関わりかたについて聞いていきます。
■子どもの脳は『遊び』よりも『お仕事』を好むようにできている
「子どもというのはね、本来『遊び』よりも『仕事』が好きなんです。それが自然の法則なんですよ」と、優しくほほえむ相良敦子さん。この法則は、1960年代にフランスでモンテッソーリ教育を原理とした幼児教育を学び、その後50年以上、研究機関と幼児教育の現場双方の活動に真摯に携わってきた相良さんが数万人の子ども達の成長を見届ける中で、理論的な裏付けに加えて、成果としても実感していることだといいます。
「『遊び』と『仕事』の違いは何だと思いますか? それは、お仕事にはちゃんと始まりがあり、終わりがあることです。
人は誰でも自ら育とうとする力を持っており、子どもが自分から知りたいと思ったときの吸収力は、大人が計り知れないほどの強いエネルギーを持っています。自分でやりたいと選んだことを、困難を乗り越えて、最後までやり遂げる。そうすると、どんな小さな子どもでも心から満足そうな顔をします。達成した快感を味わうと、子どもは何度もそれを繰り返したいと思うものです」と相良さんはにっこり。
子どもには『自分の身の回りのことを自分でやりたい』という欲求が根底にあるので、親はその気持ちを促していけるような環境を整えてあげることが大切です。
「子どもが自ら活動を選び、“ひとりで達成していく力”を、大人が発達段階に応じた環境を整えることによって援助することは、とても有意義なことです。お手伝いはまさに、モンテッソーリ教育でいう成長の『仕事』の一つといえますね」
モンテッソーリ教育の生みの親、マリア・モンテッソーリ(1870年-1952年)は、もともと医学を志した医学博士。セガンの「生理学的教育学」を継承して障がい児教育に携わり、その後、健常児の幼児教育方法を開拓しました。それゆえ、彼女が開発したこの教育法はすべて科学的な根拠に基づいています。
「モンテッソーリ教育の一番の特徴は、『日常生活練習』を土台としていることです。モンテッソーリは、日常生活行動を教材化し、教育に活用したのです。子ども達が日常行うあらゆる活動を、自分自身のペースで行うことが、その後のあらゆる実力の重要な土台となるのです」と相良さん。
「例えば、夕飯の準備の忙しい時間帯に、いつも子どもにテレビを見せていたあるお母さんが、ある日お手伝いをさせたら、そのほうがずっと子どもが喜んだ、とおっしゃっていたことがあります。お母さん達は『子どもは日常生活の中で、ちょっと難易度の高いお仕事が好き』ということを実感として本当は分かっているのではないでしょうか?」
確かに日々の中で、「私にもやらせて」とキッチンから離れようとしないわが子が上手に卵を割れたときの顔を思い出せば、納得。でも、つい忙しい時間の中で、ゆっくりと付き合ってあげられていないこともあるな、と反省してしまいます。
「敏感期は、1~3歳と4~6歳とは異なります。1~3歳は、秩序が大好きで、いつも同じやり方をすると安定し、物分かりの良い子になります。4~6歳は、3歳までの秩序を土台として知性と手を働かせながら活動に集中します。いずれも親は『子どもが自ら育とう』とする力を活かすために、敏感期に対応して環境を整えてあげることが大切です」
次のページからは、幼少期の「脳」にどんな変化が起きているかについて相良さんの解説のもと、慌ただしい日常の中でも頭の片隅に留めておきたい「親の接しかた」について考えていきましょう。
■1~3歳のイヤイヤ期は「宝物期」 特有の“こだわり”はお手伝いの準備段階
「握る」「引っ張る」「挟む」「折る」「結ぶ」「通す」など、“手”を使った作業を大切にするモンテッソーリ教育。モンテッソーリが幼い子ども達にとって大切に考えた「お仕事」とは、ひもとけば、日常生活で手を動かすお手伝いの原型そのものです。そしてそうしたお仕事(お手伝い)に対して、湧き上がるような意欲が向くのは、まさに1歳から6歳の未就学期だと相良さんは言います。
「1歳から6歳の時期には、今、経験すべきことを環境の中から選ぶ感受性が非常に敏感になります。これは、自然界のすべての生物が幼少期に有する特別の感受性で、自分の成長にとって必要な経験をする対象物を外界から選ぶためのものです。この強烈な感受性によって選び出し、それに関わり、没頭し、集中するほどのエネルギーを発揮します。
この特別の時期を発見したのはド・フリースという生物学者で、『敏感期』と名づけました。人々は今まで、1~3歳をイヤイヤ期と呼んできましたが、本当は『宝物期』といっていいくらい大切な時期なのです。大人が、秩序感という重要な敏感期を知らず、適切に対応しないので、子どもは、イヤイヤと言うのです」
■3歳までの脳の中は、何よりも「秩序」が大事
この敏感期をあらかじめ理解し、未就学期を上手に導けば、お手伝いすることが好きになり、習慣としてお手伝いを継続できる子に育つ可能性が高くなります。3歳までは「秩序」が大好きだということを知っておく必要があります。例えば、1~3歳のお子さんに、こんな様子はありませんか?
●車やビーズなどを飽きずに並べている
●いつも決まった「順番」「道筋」じゃないと気が済まない
●家族の座る「場所」にこだわる
●自分の「所有物」に固執する
「1、2歳の時期は、『いつも同じ順序であってほしい』『いつも同じ場所にあってほしい』『いつも同じやり方であってほしい』『いつも同じ人であってほしい』という願望が強くなります。『順番・場所・所有物・習慣』などにこだわるのは、『秩序感』という敏感期のためです。
色や形が同じものを分類してお片づけを促したり、子ども専用の小さな雑巾などを用意してあげたりすると、2、3歳くらいの小さな子でも喜んで、繰り返し繰り返し、自分に与えられたお手伝いの練習をするようになります。
3歳くらいになると、それまでの秩序感で育ったものを土台として知性の働きが活発になります。知性の働きとは、一言で言うと『区別する』こと。この区別から始まって、『分けた』(分析)ものを『集める』(集合)→『合わせる』(対応)→『比べる』(比較)などの活動が発展的に展開していきます。このような知性の働きが伴うと子どもは自発的になります」
また、2~4歳になると「自分で思った通り動きたい」「誰かの役に立ちたい」という欲求が生まれてくることで、お手伝いを始めるのにとても大切な時期になると相良さんは解説します。
■五感を通じて前頭葉を活性化する2~4歳 「じーっと見る」ことが最大の学び
「モンテッソーリは、2~4歳を“随意筋肉運動の調節期”と呼んで、とても大切に考えています。“随意筋肉運動”とは、自分の意志によって動かすことができる筋肉のこと。つまり、胃や腸のようなひとりでに活動する筋肉ではなく、手や足など自分で動かそうと思って動かせる筋肉です」
2~4歳は、子どもは「自分が自分の行動の主人公」になることを強く求める時期。自分の意思通りに目的に向かって体を動かしたい、という願望を持ち、強烈なエネルギーを発揮するのが特徴なのだと相良さんは言います。
同時に、このころは、ありとあらゆる動き方を「正しく正確に」身に付けようとする情熱が燃え上がる時期でもあります。
「2~4歳ごろの子ども達って、お母さんが家事をしている様子をそばでじーっと真剣に見ているでしょう。人は『見る・聞く・嗅ぐ・触れる・味わう』という五感を敏感に使って、情報を脳に送ります。
子ども達は、『できるようになりたい』と思ったとき、そのやり方をじーっと『見る』のです。視覚から入った情報が、脳の前頭葉に伝わり、前頭連合野の46野である『ワーキングメモリ』にその動きを記憶し、それが運動野に伝わり、見た通りに『自分も動いてみよう』とします。テレビ画面をぼーっと受け身で見ているとき、前頭葉は動いていないという研究報告があります。よく見て、自分の意志で体を使うとき、脳が働くのです。
随意筋肉の調整期という一生のうちのわずか数年間に、自分の意志で目的にかなった動き方を身に着ける努力をしたか否かが、その後の人格形成に大きく影響するといわれています」
家庭の仕事に重要な、手や腕、指先など体を動かすことで、興味のあることをしっかりと学んでいきます。食い入るように、じーっとお母さんの動きを見ている姿があれば、それはお手伝い開始のチャンス! そのとき、親はどんな関わりかたをしていけばよいのでしょうか。
■お手伝いの本番は4~5歳から 責任感を持ち知性を働かせる仕掛けを
「お手伝いを始めるのに、最適なのは4~5歳」という相良さん。ちょうど、お稽古や習い事を始める人も多い時期ですが、この短い時期を逃さずに、むしろ家庭の中でお手伝いに取り組むことで、自分の存在を肯定的に捉え、思いやりの心を持ちつつ、たくましく生きていくために必要な力がしっかりと身に付いていきます。
「4~5歳は、ますます手をしっかりと使いたくなる時期。細かいことをしたり、物を作ったりするのも大好きですね。そして、同時に『人の役に立ちたい』と思うようになり、家事をしている、お母さん・お父さんの役に立ちたい、という気持ちが内側から強く出てきます。毎日繰り返し実行する家庭での仕事ができるように環境をつくってあげれば、子どもの意欲・能力は驚くほど伸びていきますよ」
「お手伝いは、責任を持たせることが大切です。『これはあなたの役目ね』と言って、責任を持たせることで、子どもは自分の頭で見通しを立てて、順序立てて行動することができるようになりますよ」(相良さん)
【まとめ】発達段階の特徴と関わりかたのポイント
■お手伝いに集中してやり遂げたら、子どもはぐんと「いい子」になる
もともと落ち着きのある性格の子はもちろん、集中力のない、気分にムラがあるという子も、自分が選んだ「お仕事」を主体的に最後まで成し遂げたことをきっかけに、生活の態度や積極性などの「人格」までもが著しく変化していくことも少なくない、という相良さん。その変化のプロセスは次のようなものです。
【より良い変化のプロセス】
<1> 自由選択
自分の意思で「やりたい!」と思ったことを始める
<2> 繰り返し
始めたことを何回も繰り返す
<3> 集中
繰り返しながら集中する
<4> 達成感・充実感
活動を自分で終え満足することによって、負のエネルギーが昇華。本来の素直でよりよい自分を表現する
「自分がやろうと決めたことを『やーめた』と途中で投げ出さず、最後までやり通したとき、子ども達はその達成感から、自己肯定感を高めていきます。そして、『よりよい自分になりたい』と自律する心が芽生えていくんですね。『できた!』と言って心の底から満足そうな顔をした後、お友達に優しくしたり、落ち着いた行動をしたりするようになった子をたくさん見てきました」
1歳から3歳までをお手伝いの「準備期間」、そして4、5歳からを「実践期間」として寄り添ってあげることは、その後の子どもの成長にも大きく関わってきます。
でも、結果が目に見えて現れてくるのは、実は時を経た小学4年生、10歳前後になってからだという相良さん。それは、なぜでしょうか?
2016.11.11 日経DUAL から転載
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2016年11月11日
英検熱、小学生に広がる 英語必修化が背景、申込者10年で1.6倍
■塾、対策コース次々
英検を実施する日本英語検定協会(東京都)によると、昨年度の小学生の申込者数(約24万1千人)は、2005年度の約14万6千人と比べ、約65%増えていた。小学5、6年で外国語活動が必修化された11年度と比べても約24%増えた。
難易度の高い級を受ける小学生も増加傾向だ。6月にあった英検で、大学レベルとされる準1級を受けた小学生は昨年同期比で約32%増。準2級も約18%増、3級も約17%増だった。同協会は「低学年や就学前からの英語学習が定着し、英検を活用する人が増えているのでは」とみる。
千葉県柏市の小4、山岡秀蘭(すらん)さん(10)も、7年前から塾などで英語を学ぶ。今年初めて英検を受け、5級に合格した。小学校卒業までに3級に合格するのが目標だ。母、要子さん(40)は「英語ができると人生の選択肢も増えると思う」。
20年度には外国語活動の開始が小3からになり、小5、小6では英語が正式な教科になる。これらを控え、英検を意識した塾のコースも人気を集めている。
東京都江東区の英語塾「まなびば」は9月、「英検対策クラス」を新設した。英会話レッスンに力を入れてきたが、英検を意識する生徒が増えたことを受け、「語彙(ごい)力の向上や英文法対策が必須と考えた」と江藤友光子(ゆみこ)・スクールマネージャーは話す。受講する小6の井石良平君(11)は「文法がよく分かるようになった」と話す。
全国で英会話教室を運営するイーオン(本社・東京都)は13年度から、小3~小6向けに英文法コースを開講。小3~小4で英検4、5級レベル、小5~小6で英検3、4級レベルの文法を学ぶ。受講者は毎年、2割程度増え続けているという。同社広報部は「将来を見据えた会話力や文法力を身につけさせたいという保護者が多く、結果として英検合格者も増えている」とみる。
今年6月にはイーオンに通う小学生約千人が英検を受け、4分の1程度が3級以上に挑戦。このうち6割近くが合格した。
学習塾「栄光ゼミナール」などを手がけるZEホールディングス(本社・静岡県)の英会話教室「シェーン英会話」も、5年ほど前に英検対策コースを設けた。英会話の授業に加えて受講する小学生は約950人で、増加傾向にあるという。
■合格者、入試で優遇も
日本英語検定協会の調査によると、15年度の中学入試で英検合格者を優遇する制度を持つ「英検優遇校」は、私立中を中心に全国で60校あった。
400点満点の試験で英検5級なら15点、4級以上なら20点を加点(広島県福山市の盈進〈えいしん〉中)▽「卓越した能力」を評価する特別枠入試の出願資格の一つが英検2級以上(東京都台東区の都立白鴎高校付属中)▽英検5級などの特技がある受験生の得点が合否のボーダー付近だった場合、合格とする例がある(名古屋市の愛知中)――などだ。
来年の入試から英語を選択できるようにする西武学園文理中(埼玉県狭山市)も、英検3級で5点、準2級で10点、2級以上で20点加点する。入試担当者は「グローバル教育に力を入れているので、小学生の時から英語を頑張っている子にもぜひ入学してもらいたい」と目的を説明する。
英検の検定料を補助する自治体もある。東京都品川区は昨年度、小5~中3を対象に検定料の全額補助を始めた。1年度に1回利用できる。小学生は昨年度、約420人が利用した。
茨城県稲敷市も昨年度、市内在住・在学の小中学生を対象に、1年度に2回まで検定料を全額補助する制度を導入した。(前田育穂、杉山麻里子)
◆キーワード
<実用英語技能検定(英検)> 年間約230万人が受ける国内最大級の英語検定試験。聞く、話す、読む、書くの4技能を筆記やリスニング、スピーキングのテストで測定する。5~3級が中学生、準2級と2級が高校、準1級と1級が大学レベルとされる。
2016.11.11 朝日新聞から転載
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2016年11月05日
我が子を国際派に!? 日本にも増えている「バカロレア教育」
グローバル化が進む昨今、教育にも「国際化」をのぞむ家庭が増えています。語学はもちろん、相手を尊重し、柔軟な考え方ができるコミュニケーション能力の高い子に育てたい。そんな風に考えるママを中心に注目されているのが3歳から19歳までの生徒を対象にした「国際バカロレア」という教育プログラムです。
© WavebreakmediaMicro - Fotolia.com
文部科学省も「国際バカロレア」の普及・拡大を推進しています。2018年までに、国内における国際バカロレア認定校を200校までに増加させる取りくみが進められているのだとか。
国際バカロレアって、一体どんな教育なのでしょうか?
■「国際バカロレア」が提唱する人物像
国際バカロレア(IB : International Baccalaureate)は、本部をジュネーブに置く、国際バカロレア機構が提供する教育プログラムです。
国際バカロレア教育のいちばんの目的は「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探求心、知識、思いやりに富んだ若者を育成する」こと。
そして、人が持つ違いを「違い」として理解し、自分と異なる考えの人々にも、それぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人を育成することだそうです。
具体的には、「IBの学習者像」として、以下の10の人物像が挙げられています。
・探求する人
・知識のある人
・考える人
・コミュニケーションができる人
・信念をもつ人
・心を開く人
・思いやりのある人
・挑戦する人
・バランスのとれた人
・振り返りができる人
出典:文部科学省/国際バカロレアについて
また、年齢に応じたプログラムが組まれています。
・プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)
3歳~12歳を対象。初等教育。
・ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)
11歳~16歳を対象。中等教育。
・ディプロマ・プログラム(DP)
16歳~19歳を対象。大学入試を目的としたもの。
・キャリア関連プログラム(CP)
16歳~19歳を対象。専門学校への進学や就職を目的としたもの。
IB認定校で「ディプロマ・プログラム」を取得すると、世界の大学の受験資格を得られるというメリットもあるのだそうです。日本でも、IBの成績を入試に取り入れる大学が増えているのだとか。
■自主的な学習を最重要視する「国際バカロレア」
ディプロマ・プログラムには、「コア」といわれる「課題論文(EE)」、「知の理論(TOK)」「創造性・活動・奉仕(CAS)」の3つの必修要件があり、普通の科目と並行して履修します。TOKは批判的思考などを養うための授業のため、毎回ディスカッションが行われるそうです。
先生が一方的に知識をたたきこむのではなく、自分たちで考え、取りくみ、自主的に行動することを重要視しているのです。また、それぞれのカリキュラムは、地域のニーズや文化的状況にも合わせて編成するようになっているようです。
認定校の初等部のカリキュラムを見てみると、国語、算数、理科、社会…と、一般の小学校とほぼ同じ教科が並んでいます。しかし、授業は外国人教員と日本人教員がどちらもいる状況で行われ、すべての教科において英語習得の機会となるため、初等部6年間のあいだに英語で自分の考えをディベートできるようになります。
インターネットの普及やその技術向上により、海外留学する人は年々減っているそうです。その一方で、世界がぐっと近くなり、国際的な視野が求められているのはいうまでもない事実。
国際バカロレア認定校は、玉川学園、東京学芸大学付属国際中等教育学校、東京都立国際高等など、全国に39校あります(2016年11月現在)。
正直、入学金や授業料が高額の学校もあります。しかし、留学と比べれば…ですし、安全な日本で国際的な教育が受けられることを考えると、検討してみる価値はありそうです。
(参考)
・文部科学省/国際バカロレアについて
ウーマンエキサイト 2016年11月04日
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