2018年10月

2018年10月11日

幼児の脳の発達、親の応援が重要…東大・中部大研究グループ



 東京大学大学院総合文化研究科の開一夫教授と中部大学人文学部心理学科の川本大史講師の研究グループは、親の応援が幼児の成功・失敗に対する認知処理を変えるという研究結果を発表した。良し悪しの判断や学習と関わる脳発達の理解促進に貢献することが期待される。

 今回の研究結果は、2018年10月9日に「Social Neuroscience電子版」に掲載された。

 外部からの成功・失敗などのフィードバックは、行動や学習に重要な役割を果たすことが知られている。これまでの研究から、大人は成功・失敗のフィードバックに対して区別した認知処理を行うことが明らかにされているが、幼児が成功・失敗を脳内で区別して認知処理できているかは明らかではなかった。

 同研究グループは、幼児に2つの状況で認知課題を行わせ、成功(○)・失敗(×)の対する脳活動を、脳波の一種である事象関連電位を用いて測定。1つは幼児が1人で課題を行い、もう1つは親が隣で応援しながら幼児が課題を行う2つの状況を設定した。


 認知課題には5歳児21名が参加。実験の結果、親が隣で応援しながら課題を行った場合は成功・失敗を区別して認知処理できたのに対して、幼児が1人で課題を行った場合は成功・失敗を区別して処理できないことが明らかになった。


 また、親の応援がある場合は成功に対する報酬陽性電位(報酬やポジティブなフィードバックに対して惹起される事象関連電位の成分)の振幅が1人で課題を行う時よりも大きく、同じ課題においても、1人で行う場合と親が応援してくれる場合では、子どもの成功・失敗の認知処理には違いがみられた。


 このことは幼児の脳の発達には親の応援が重要な影響を及ぼすことを示唆しており、親の応援は成功に対する報酬価値を高める役割を持つ可能性が示された。成功に対する認知処理は抑うつと関連することも知られているため、子どもの抑うつに対しても同研究成果は重要な意味を持つという。


 研究成果は、幼児の認知機能・脳発達の理解や、子どもの認知発達により良い環境を構築することに対して貢献することが期待される。今後は、親ではない大人が幼児を応援した場合や幼児の友達から応援されている場合でも同様の結果が得られるか、といった応援する対象に着目した検討や、ゲームが始まる前後どちらのタイミングで応援するのが効果的かなどを検討する予定だという。


リセマム 2018.10.11 から転載


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2018年10月03日

なぜお受験では「紺のスーツ一色」になるのか


新聞記者を辞めた後、会社員と女性活躍に関する発信活動とバリバリ働いてきた中野円佳さん。ところが2017年、夫の海外転勤により、思いがけず縁遠かった専業主婦生活にどっぷり浸かることに。教育社会学の大学院に所属し子育て意識の調査も手掛ける一方、自身が当事者になることから見えてきた「専業主婦」という存在、そして「専業主婦前提社会」の実態とそれへの疑問を問い掛けます。

共働き家庭にとっての「3歳の壁」について前回(予想外の「3歳の壁」に母たちが動揺するワケ)扱ったが、子どもが成長していった先には、「小1の壁」、学童がなくなる「小4の壁」、その後には中学受験が控えている。共働きゆえに早めに安心できる内部進学式の学校に入れてしまいたいという親もいる。

 しかし、お受験の世界は甘くない。政府が女性活躍を打ち出し、企業はダイバーシティ&インクルージョン(多様性と個の尊重・包摂)をうたう中、ここはさながらパラレルワールド。そんな動きはどこ吹く風で、まるで反対の価値観が根強く残っている。


■全身「紺」づくめ

 私の息子は、2歳で都内にある保育園を卒園した。その園は2歳児までしか預からない小規模保育園だったからだ。3歳から通える保育園を探したが、待機児童が多い地域であり、定員に空きがあるとは限らない。公立幼稚園は抽選で落ちたので、転園できる保育園が見つからない場合に備え、念のため、私立の幼稚園を受験しに行った。

 受験の日、試験会場の入口に足を踏み入れて、思わず、たじろいだ。受験しに来ていた母親たちが全員、紺色の服を着ていたのだ。父親も多数来ていて、全員黒っぽいスーツなのだが、母親は本当にびっくりするくらい、例外なく紺。黒やグレーもいない。慌ててどこかに服装の規定があったかと見直したが、特にない。子どもたちも紺色のお洋服に、白い靴下、黒い靴。わが家だけが私がグレーだったり子どもがトレーナーだったりと、浮いた格好で乗り込んでしまった。




 無事、その園からは合格の通知をもらったが、そのときのヒヤッとした気持ちは忘れられない。その幼稚園は子どもたちが泥んこになって遊ぶようなところで、普段の保護者の服装もかなりラフだったので、そこまでかしこまらなくてもいいと思った。実は私自身が国立附属の幼稚園出身で、私の母は大して対策もせずに行き、私自身は面接でずっと泣いていてそれでも受かったという話を聞いていたから大丈夫だろうという気持ちもあった。

 でも、実際に紺一色の景色を目の当たりにしてからは、「服装くらいで落とされる幼稚園なら行かなくていい」と強気でいたものの、内心落ちたらどうしようと合格発表が出るまでハラハラした。



 ある私立幼稚園園長先生がこう言っていたことが印象的だった。

 「この年齢の子なんて、どの子もすばらしくて、落とす理由がある子なんていないんです。でも定員はあるから、どうしても落とさないといけないときは、家がとても遠いお子さんはお断りするとか、そういう基準を作らないといけない」

 ましてや、定員に対して応募が3倍とか、学費が安い国立で倍率が7倍くらいある名門校の受験では、選抜はさらに熾烈だ。「落とす理由はたいしてない」のに、何か落とす理由を作らないといけないのかもしれない。

 こういう状態であれば、確かに園によっては、1組だけ紺のスーツを着ていない親子を落とすかもしれない。普段着を着てくる人はTPOをわきまえないタイプか、情報収集能力に欠けているように見えるかもしれない。そう考えると親としてはほかと違うことをするのが怖くなってしまって、無難な「紺」に合わせる。こうしてお受験界の「常識」が作られていくのだろう。実際には幼稚園側がそれを求めていないとしても。


■粒ぞろいを目指す名門親

 こうした熾烈な受験をくぐり抜けてでも名門幼稚園に行かせたいと考えるのはどのような親なのか。昨今の幼稚園お受験事情をのぞいてみよう。

 都内私立女子大の幼稚園に娘2人を通わせる専業主婦の女性は、娘を幼稚園受験させた理由について「粒がそろう、じゃないけど……」と語る。自身も国立附属の幼稚園出身だ。

 「善しあしだとは思うんですけど、幼稚園くらいの子どもって自分が見えた環境がすべてになっちゃうから、影響されやすいじゃないですか。そのときに(いろいろな環境を)端から端を見せる必要はなく、親の描くこの辺り(の環境で育ってほしい)っていうのがあるとすれば、その中で育ったほうが、親も子も安心していられるのかなって」



 私個人は、子どもの環境はできるだけ多様性があるほうがいいと思うタイプなので、「粒がそろう」という表現には若干ぎょっとした。彼女の話を聞いていると、“乱暴な子や下品な言動をする子がいると影響を受けるので、ある程度幼稚園側がスクリーニングをしてくれて、親も子もきちんとした家庭の子が来ている園がいい”ということのようだった。

 もちろん私立の学校なので、その園の方針が気に入る家庭が子息を入れればいいのであって、ある種の価値観が共有されたコミュニティができていくことは当然ではある。こうした均質性を好む家庭向けであり、選抜もそれに沿ったものになっているのだろう。

 もう1つの名門(附属系)幼稚園の魅力は、幼稚園にさえ入れてしまえば、高校や大学まで内部進学ができることだ。そこに魅力を感じる親も多い。

 「幼稚園受験だから子どもがここの園が好きとか、多少の主観はあるものの、結局、(その環境がいいかどうか)判断をするのは親じゃないですか。附属の学校に入れることで一定の環境は与えてあげて、子どもが(このレールから)出たいとかそういう意思を持つ年齢になったときは、子どもの責任で判断させてあげられればいいかなと。子どもの可能性を潰さないのが親の責任ではないかと夫婦で話して、幼稚園受験をさせようという話になったんです」

 ある程度の教育が受けられる環境を大学まで確保できる。それを魅力的に感じる親は少なくないだろう。加えて、「夫は子どもには何でもいいけどスポーツをやってほしいと思っていて、そのときに3年ごとに受験にとらわれると、中途半端になってしまうと言います」。つまり、スポーツなど別のことを優先させるために、中学受験、高校受験、大学受験を経験させたくないという理由もある。



■幼児教室でそろう足並み

 こうした名門校に入れるためには、受験のための幼児教室に通わせる親も多い。前述の2児の母親の場合は、長女は3カ月、次女は半年、幼児教室に通ったという。


「娘の通っている園の倍率は3倍くらいでした。幼稚園受験は親の受験とも言われて、教育方針とか、自分たちの子育ての考え方を面接で聞かれるので対策します。子どもが見られるのはしつけとか人とのかかわりとか常識的な範囲なので、対策しても(今後生きていくうえで)何も無駄はないんです」

 2歳児が通う幼児教室も取材をしたことがある。一見、子どもたちは楽しそうに遊んでいるだけで、保育園の風景とそう差は感じない。ただ、“どこの幼稚園も考査で子どもを親から離して自由遊びをさせてみて、きちんとほかの子と遊べるかどうかを見ている”とのことで、特に自宅で母親といる時間が長い子どもが、親から離れて遊ぶのに慣れる場所として利用している側面もあるのかもしれない。

 集団でやる体操などの時間もあり、前述の母親が言ったように低月齢の子は少し出遅れているように見えたが、先生たちが誉めたり手をつないで一緒に寄り添うことで、遊びや体操などといった基本的な動作に慣れていく。保育園と違うところがあるとすれば、先生たちが「できているかどうか」を逐一確認しているようにみえたこと。こうして、子どもの「できること」の足並みが揃っていくように思えた。

 この様相は、小学校受験では、はたからみるとさらに特殊な状態になっている。私の知り合いは娘が不合格になったのは「くまさん歩き」ができなかったからに違いない……と嘆いていた。実際にそれが不合格の要因だったのかはわからないのだが、筆者はそもそも「くまさん歩き」がなんであるか自体が怪しい。

 本来、幼稚園年長の子どもたちが全員「くまさん歩き」がなんであるかがわかって、それが指示どおりできないといけない、そんなことがあるはずがない。でもほかの子が全員できていたら?  典型的な出題に対して応じられるように皆が対策を始める。そしてそれがさらに、自己産出的に「できないといけない」ことになっていく可能性はある。

 幼稚園や小学校の受験では、多くが幼児教室などで「対策」をして挑む。選抜基準が不明確な中で、ここでの「言説」は親の一挙一動に影響する。ある国立大学附属の小学校受験を「ダメ元」で対策ゼロで受けに行った母親の話。


 「待合室に入ったら、何人かの親は太宰治の『人間失格』とか文学作品を開いているし、子どもたちは大抵あやとりしてるんですよ。塾で待合室での様子が評価されるから、文学作品を持っていくようにと言われたんですかね……」

 たまたま暇つぶしの本が太宰治だったのかもしれない。それでも、皆がしているから。「そんなこと」だからこそ、「そんなこと」で落とされたらいやだから。こうして、実際にそれが合格判定に使われているかどうかはさておいて、あるべき姿、規範となり、「全員が紺」「待合室では文学作品」の風景につながるのだろう。


■エスカレーター式は共働き家庭にも魅力

 こうした幼稚園受験組はほんの一部の層の話であり、さらに親の関与が大きいこともあり共働き家庭ではまず選択肢に上がらないのではと思っていた。しかし、取材していくと、共働きだと中学受験を親子で乗り越えるのが厳しいと考えるからこそ、エスカレーター式に内部進学できる名門幼稚園に行かせたいと考える親も確実にいる。

 ある女性は、自身が附属幼稚園からの女子校出身者。共働きの会社員だが、実家のサポートもあり、娘を受験させることにした。

 「母校に入れたかったのは、エスカレーターで上(高校や大学)まで行けるし、これからも共働きの生活が続くなか、中学受験のサポートができるか不安もあったから。私の母とも相談して、共働きだからこそ附属にいれるほうが、ある程度学校に(教育を)任せられると思ったんですよね。母校だったら勝手も知ってるから、母親の私もラクなんじゃないかと」

 ちなみに、こうしたケースを何人か取材したが、親のどちらかが名門幼稚園や小学校からエスカレーター式の学校に進んで、そのルートを本人の実家が誇りに思っている場合、実家が「自分の子どもの母校に孫が行くのであれば、全面的にサポートする」と言い出したという場合が多かった。

 そもそも、幼稚園受験は、このオンライン時代に願書受け取りも受験も平日昼間の決められた時間に現地に何回も出向かないといけない仕組みだったり、入園後も親の関与が多く、決して共働き向けではない。祖父母のサポートがないと共働き夫婦には立ち向かいにくい。

 しかし、その女性にとって、娘の母校受験は、共働きの慌ただしい日々の中で大きな負担となった。たとえば、娘が面接で聞かれる内容は「お母様のお料理で何が好きですか?」といった内容。当初娘は「鮭」と言っていたが、それはお受験でいえば「料理」ではないという。


 「ママは鮭そのままでは出さないで、お料理してるよね? 〇〇ちゃんが食べているのは、鮭の照り焼きだよ」と言語化する。

 とはいえ3歳前後の子どもはすぐ忘れてしまうので、毎週手料理を作るプロセスまで見せるなど、“対策”は日常に浸食する。

 第二子を妊娠し、育休中に長子の受験に備えようとする母親もいる。料理だけではなく、「お母様と何をして遊ぶのが好きですか?」も、パズルや積み木など関わり合いが求められる遊びを答えるのが「鉄板」だと言い、テレビやスマホで動画を見るなどもってのほか。もちろんお受験のためだけではなく、子どもにとって理想的なスケジュールに修正されるメリットもあるだろうが、普段寝る時間なども聞かれるため、生活全般をあたかも共働きでないようにさせて、立ち向かう必要があるのだという。

 加えて、この女性は幼児教室で「お母さんが働いていることは書かないほうがいいのではないでしょうか」と言われた。

 「どうして? ここ私の母校なんですよ、女性の経済的自立って言って育てられて、どうしてそれを書いちゃいけないの」と反発し、堂々と書いた。しかし、結局結果は不合格。「やっぱり共働きには厳しかった」と肩を落とす。



■「お母さんが働いているのはNG」の言説

 別のマスコミ勤務の女性も、自分の母親の母校である私立女子大附属幼稚園を母親の勧めとサポートで受けたが不合格。結局小学校受験もして「働いているお母さんもどうぞ」という方針の別の女子大附属小学校に行かせることにしたが、母親の母校については次のように憤る。

 「小学校でも幼稚園の面接でも、仕事しているママはだめなんですよね。仕事の話しか聞かれなくて子どもの話はいっさい聞かれなかったんです。悲しくなるくらい面接での門前払い感。お受験対策の幼児教室で、働いていることおっしゃらなくていいんじゃないですかって言われたんですけど、仮に入れたとしていずれ(働いてることは)ばれるし、願書とかにも書いちゃって。そしたら案の定……。うちの母も仕事していたし、母校も社会で活躍できる女性を育てるという名目のはずなのに、専業主婦をよしとする空気を感じる」



 医師や弁護士の母親は多くても、会社員の母親の子どもは採ってもらえないのではないかという疑心暗鬼もあったという。

 実際には、母親の仕事のせいで不合格になったのかどうかはわからない。共働き親が多く通う名門幼稚園もある。また、祖父母のサポートまでついている名門出身者の子どもばかりが簡単に名門に入れる=階層の再生産を、学校側が望んでいるとしたら、それが阻まれていることに何の問題もないのかもしれない。

 しかし、幼児教室には「働く母親であることは隠しなさい」と言われ、面接対策では家庭に時間を割く「理想のお母さん像」が浮き彫りになる。「女性の自立」と言われながら育った私立の女子校出身者にとっては、習ったとおりに生きてきた自分のあり方が歓迎されていないと感じる。「女性の自立」は実は建前であり、本音は“働くママはダメ”なの? ――と。

 共働き家庭は、保育園に行かせておけばいい。私立幼稚園が、特定の層の子どもを好むとして、それが気に食わないなら行かせなければいい。もちろん、基本的にはそうだろう。そもそも不合格になったところで、何かが劣っているということではなく、園の方針と合わなかったのだと思えば落ち込む必要もない。考え方が合わない園は保護者側も避けたほうがその後のためにもいいかもしれない。

 ただ、実際の幼稚園や小学校の選抜基準がどうであれ、うわさや憶測、幼児教室のアドバイスによる「無難に」を突き詰めていくと、母は働いていない(ことにした)ほうがよくなってしまうという世界は、まだまだある。女性活躍、個性伸張、ダイバーシティの時代……といいながら、日本社会のさまざまなところに真逆の方向に向かせる論理が埋め込まれている。

中野 円佳 :ジャーナリスト


東洋経済 2018.10.3 から転載


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