2012年09月02日

紙芝居で防災イメージ  教育ルネサンス

前橋市の私立二之宮保育園では、今年4月から紙芝居を使った防災教育に取り組み始めた。ただ、使う紙芝居は既製品ではない。5~6歳の年長組の園児たちと保育士たちが一緒にストーリーから考えた手作りの作品だ。

 副園長の村中照世さん(43)が言う。「大人が自分たちの思いを押しつけるだけでは、子どもはついてこない。『自分たちで作ったものだから、読んでほしい』と思ってもらいたいんです」

 紙芝居作りは、「地震が起きたらどうなるのかな?」といった保育士たちの園児たちへの問いかけから始まる。

 「地面にひびが入る」「何かが落ちてくる」……。中には、「遊園地のジェットコースターが落っこちる」といった幼児ならではのユニークな答えも飛び出した。

 保育士たちは、園児の答えや答えの背後にあるイメージを大切にしながら、紙芝居のストーリーを考え、自分の身を守るために「やるべきこと」を織り込んでいく。

 出来上がったのが四つの場面で構成された紙芝居。「小人(こびと)が、遊園地に行ったら地震で停電になった」「キョンシー(中国のお化け)が水族館に行ったら、水槽が割れて水が噴き出した」……。各場面ごとに災害前後でどう風景が変わるのかを2枚1組みの絵で表現し、状況に応じた避難方法をナレーションで語りかける。

 同保育園では、10年以上前から毎月抜き打ちの避難訓練を行ってきた。東日本大震災が起きた昨年3月11日には、前橋市内は震度5強の激しい揺れに襲われたが、園児たちは机の下に隠れて身を守り、スムーズに園庭に避難できた。

 しかし、災害は場所を選ばない。園側は、多様な状況に対応するためには、「想像力が不可欠」と判断、目をつけたのが本の力だ。保有する絵本や紙芝居は計2000冊。これまでにも読み聞かせ活動を通じて、大人の話を聞く姿勢や防災の心構えを説いてきた。今度は、頭で覚えた知識に加え、自分が大震災で体験したことも思い出しながら、紙芝居を作り、想像力の幅を広げてもらおうというのだ。

 紙芝居は8月末に完成し、9月から読み聞かせの教材として活用する予定だ。村中副園長が言う。「災害弱者でも、自分で身を守らなくてはならない時もある。体で覚え込ませるだけでなく、発達段階に応じた学びもできれば、生き抜く力はさらに伸びるはずです」(小寺以作)

 「話聞く態度」重点に

 東日本大震災発生から1年3か月後の今年6月、聖徳大の原本憲子教授が関東の幼稚園や保育所77か所の教諭、保育士に防災教育の重点項目を尋ねたところ、「話を聞く態度を身に着けさせる」(38%)が最も多かった。以下、「視聴覚教材で防災を指導」(35%)、「防災頭巾のかぶり方を指導」(29%)、「避難訓練の実施」(25%)など。原本教授は「幼児は年齢によって発達に大きな開きがある」としたうえで、「発達の度合いに応じて生活の中で危険を意識させることができれば、効果的な防災教育が可能だ」と話している。


2012年9月1日  読売新聞から転載)


jyukennews02 at 23:49│ 幼児教育