2016年11月12日

モンテッソーリに学ぶ1歳からのお手伝い


子どもはパパやママの行動のまねをしたり、親に喜んでもらったりすることが大好き。洗濯や食事の準備などの日常の家事をじっと見ていて「私(僕)もやりたい!」と主張することもあるかもしれません。そんなとき、共働きの慌ただしい生活リズムの中で、「一人で(片付けたほうが効率がいいから)大丈夫」「(もっと大事な)遊びや勉強を優先していていいよ」などと、知らないうちに子どものやる気の芽を摘んでしまっていませんか?

キャリア形成の大切さや社会の厳しさを肌身で感じているDUALファミリーだからこそ、習い事や学業など将来に困らないスキルに注力しがちになりますが、子どもの成長の基礎となるのは、やはり日常の生活環境。今回取材した幼児教育、食育、ビジネスそれぞれの第一人者は、専門分野は異なりますが「お手伝いを通じた家庭教育が、自己肯定感と高い人間力を育む」と口をそろえます。

家事参加の小さな積み重ねは、将来の子ども達にどう影響していくのか? お手伝いの効果を検証しつつ、家族の関わりをより豊かに、親子のコミュニケーションにも役立ててもらいたい、と日経DUALでは「お手伝いする子は脳と心が伸びる! 特集」を企画。第一回では、日本にモンテッソーリ教育がリバイバルした1960年代から、この教育の根拠や構造など理論的紹介を著書や講義・講演などで精力的に続けてきた相良敦子さんに、子どもの感性と脳の発達が飛躍的に伸びる1歳から6歳までの間にお手伝いをすることの大切さや、日常生活を通して子どもを上手に導く親の関わりかたについて聞いていきます。


■子どもの脳は『遊び』よりも『お仕事』を好むようにできている

 「子どもというのはね、本来『遊び』よりも『仕事』が好きなんです。それが自然の法則なんですよ」と、優しくほほえむ相良敦子さん。この法則は、1960年代にフランスでモンテッソーリ教育を原理とした幼児教育を学び、その後50年以上、研究機関と幼児教育の現場双方の活動に真摯に携わってきた相良さんが数万人の子ども達の成長を見届ける中で、理論的な裏付けに加えて、成果としても実感していることだといいます。



 「『遊び』と『仕事』の違いは何だと思いますか? それは、お仕事にはちゃんと始まりがあり、終わりがあることです。
 人は誰でも自ら育とうとする力を持っており、子どもが自分から知りたいと思ったときの吸収力は、大人が計り知れないほどの強いエネルギーを持っています。自分でやりたいと選んだことを、困難を乗り越えて、最後までやり遂げる。そうすると、どんな小さな子どもでも心から満足そうな顔をします。達成した快感を味わうと、子どもは何度もそれを繰り返したいと思うものです」と相良さんはにっこり。

 子どもには『自分の身の回りのことを自分でやりたい』という欲求が根底にあるので、親はその気持ちを促していけるような環境を整えてあげることが大切です。

 「子どもが自ら活動を選び、“ひとりで達成していく力”を、大人が発達段階に応じた環境を整えることによって援助することは、とても有意義なことです。お手伝いはまさに、モンテッソーリ教育でいう成長の『仕事』の一つといえますね」

 モンテッソーリ教育の生みの親、マリア・モンテッソーリ(1870年-1952年)は、もともと医学を志した医学博士。セガンの「生理学的教育学」を継承して障がい児教育に携わり、その後、健常児の幼児教育方法を開拓しました。それゆえ、彼女が開発したこの教育法はすべて科学的な根拠に基づいています。

 「モンテッソーリ教育の一番の特徴は、『日常生活練習』を土台としていることです。モンテッソーリは、日常生活行動を教材化し、教育に活用したのです。子ども達が日常行うあらゆる活動を、自分自身のペースで行うことが、その後のあらゆる実力の重要な土台となるのです」と相良さん。

 「例えば、夕飯の準備の忙しい時間帯に、いつも子どもにテレビを見せていたあるお母さんが、ある日お手伝いをさせたら、そのほうがずっと子どもが喜んだ、とおっしゃっていたことがあります。お母さん達は『子どもは日常生活の中で、ちょっと難易度の高いお仕事が好き』ということを実感として本当は分かっているのではないでしょうか?」

 確かに日々の中で、「私にもやらせて」とキッチンから離れようとしないわが子が上手に卵を割れたときの顔を思い出せば、納得。でも、つい忙しい時間の中で、ゆっくりと付き合ってあげられていないこともあるな、と反省してしまいます。

  「敏感期は、1~3歳と4~6歳とは異なります。1~3歳は、秩序が大好きで、いつも同じやり方をすると安定し、物分かりの良い子になります。4~6歳は、3歳までの秩序を土台として知性と手を働かせながら活動に集中します。いずれも親は『子どもが自ら育とう』とする力を活かすために、敏感期に対応して環境を整えてあげることが大切です」

 次のページからは、幼少期の「脳」にどんな変化が起きているかについて相良さんの解説のもと、慌ただしい日常の中でも頭の片隅に留めておきたい「親の接しかた」について考えていきましょう。


■1~3歳のイヤイヤ期は「宝物期」 特有の“こだわり”はお手伝いの準備段階

 「握る」「引っ張る」「挟む」「折る」「結ぶ」「通す」など、“手”を使った作業を大切にするモンテッソーリ教育。モンテッソーリが幼い子ども達にとって大切に考えた「お仕事」とは、ひもとけば、日常生活で手を動かすお手伝いの原型そのものです。そしてそうしたお仕事(お手伝い)に対して、湧き上がるような意欲が向くのは、まさに1歳から6歳の未就学期だと相良さんは言います。

 「1歳から6歳の時期には、今、経験すべきことを環境の中から選ぶ感受性が非常に敏感になります。これは、自然界のすべての生物が幼少期に有する特別の感受性で、自分の成長にとって必要な経験をする対象物を外界から選ぶためのものです。この強烈な感受性によって選び出し、それに関わり、没頭し、集中するほどのエネルギーを発揮します。

 この特別の時期を発見したのはド・フリースという生物学者で、『敏感期』と名づけました。人々は今まで、1~3歳をイヤイヤ期と呼んできましたが、本当は『宝物期』といっていいくらい大切な時期なのです。大人が、秩序感という重要な敏感期を知らず、適切に対応しないので、子どもは、イヤイヤと言うのです」


■3歳までの脳の中は、何よりも「秩序」が大事

 この敏感期をあらかじめ理解し、未就学期を上手に導けば、お手伝いすることが好きになり、習慣としてお手伝いを継続できる子に育つ可能性が高くなります。3歳までは「秩序」が大好きだということを知っておく必要があります。例えば、1~3歳のお子さんに、こんな様子はありませんか?


●車やビーズなどを飽きずに並べている
●いつも決まった「順番」「道筋」じゃないと気が済まない
●家族の座る「場所」にこだわる
●自分の「所有物」に固執する


 「1、2歳の時期は、『いつも同じ順序であってほしい』『いつも同じ場所にあってほしい』『いつも同じやり方であってほしい』『いつも同じ人であってほしい』という願望が強くなります。『順番・場所・所有物・習慣』などにこだわるのは、『秩序感』という敏感期のためです。

 色や形が同じものを分類してお片づけを促したり、子ども専用の小さな雑巾などを用意してあげたりすると、2、3歳くらいの小さな子でも喜んで、繰り返し繰り返し、自分に与えられたお手伝いの練習をするようになります。

  3歳くらいになると、それまでの秩序感で育ったものを土台として知性の働きが活発になります。知性の働きとは、一言で言うと『区別する』こと。この区別から始まって、『分けた』(分析)ものを『集める』(集合)→『合わせる』(対応)→『比べる』(比較)などの活動が発展的に展開していきます。このような知性の働きが伴うと子どもは自発的になります」

 また、2~4歳になると「自分で思った通り動きたい」「誰かの役に立ちたい」という欲求が生まれてくることで、お手伝いを始めるのにとても大切な時期になると相良さんは解説します。 


■五感を通じて前頭葉を活性化する2~4歳 「じーっと見る」ことが最大の学び

 「モンテッソーリは、2~4歳を“随意筋肉運動の調節期”と呼んで、とても大切に考えています。“随意筋肉運動”とは、自分の意志によって動かすことができる筋肉のこと。つまり、胃や腸のようなひとりでに活動する筋肉ではなく、手や足など自分で動かそうと思って動かせる筋肉です」

 2~4歳は、子どもは「自分が自分の行動の主人公」になることを強く求める時期。自分の意思通りに目的に向かって体を動かしたい、という願望を持ち、強烈なエネルギーを発揮するのが特徴なのだと相良さんは言います。

 同時に、このころは、ありとあらゆる動き方を「正しく正確に」身に付けようとする情熱が燃え上がる時期でもあります。

 「2~4歳ごろの子ども達って、お母さんが家事をしている様子をそばでじーっと真剣に見ているでしょう。人は『見る・聞く・嗅ぐ・触れる・味わう』という五感を敏感に使って、情報を脳に送ります。

 子ども達は、『できるようになりたい』と思ったとき、そのやり方をじーっと『見る』のです。視覚から入った情報が、脳の前頭葉に伝わり、前頭連合野の46野である『ワーキングメモリ』にその動きを記憶し、それが運動野に伝わり、見た通りに『自分も動いてみよう』とします。テレビ画面をぼーっと受け身で見ているとき、前頭葉は動いていないという研究報告があります。よく見て、自分の意志で体を使うとき、脳が働くのです。

 随意筋肉の調整期という一生のうちのわずか数年間に、自分の意志で目的にかなった動き方を身に着ける努力をしたか否かが、その後の人格形成に大きく影響するといわれています」



 家庭の仕事に重要な、手や腕、指先など体を動かすことで、興味のあることをしっかりと学んでいきます。食い入るように、じーっとお母さんの動きを見ている姿があれば、それはお手伝い開始のチャンス! そのとき、親はどんな関わりかたをしていけばよいのでしょうか。


■お手伝いの本番は4~5歳から 責任感を持ち知性を働かせる仕掛けを

 「お手伝いを始めるのに、最適なのは4~5歳」という相良さん。ちょうど、お稽古や習い事を始める人も多い時期ですが、この短い時期を逃さずに、むしろ家庭の中でお手伝いに取り組むことで、自分の存在を肯定的に捉え、思いやりの心を持ちつつ、たくましく生きていくために必要な力がしっかりと身に付いていきます。
 「4~5歳は、ますます手をしっかりと使いたくなる時期。細かいことをしたり、物を作ったりするのも大好きですね。そして、同時に『人の役に立ちたい』と思うようになり、家事をしている、お母さん・お父さんの役に立ちたい、という気持ちが内側から強く出てきます。毎日繰り返し実行する家庭での仕事ができるように環境をつくってあげれば、子どもの意欲・能力は驚くほど伸びていきますよ」

  「お手伝いは、責任を持たせることが大切です。『これはあなたの役目ね』と言って、責任を持たせることで、子どもは自分の頭で見通しを立てて、順序立てて行動することができるようになりますよ」(相良さん)

【まとめ】発達段階の特徴と関わりかたのポイント


■お手伝いに集中してやり遂げたら、子どもはぐんと「いい子」になる

 もともと落ち着きのある性格の子はもちろん、集中力のない、気分にムラがあるという子も、自分が選んだ「お仕事」を主体的に最後まで成し遂げたことをきっかけに、生活の態度や積極性などの「人格」までもが著しく変化していくことも少なくない、という相良さん。その変化のプロセスは次のようなものです。


【より良い変化のプロセス】

<1> 自由選択
自分の意思で「やりたい!」と思ったことを始める

<2> 繰り返し
始めたことを何回も繰り返す

<3> 集中
繰り返しながら集中する

<4> 達成感・充実感
活動を自分で終え満足することによって、負のエネルギーが昇華。本来の素直でよりよい自分を表現する


 「自分がやろうと決めたことを『やーめた』と途中で投げ出さず、最後までやり通したとき、子ども達はその達成感から、自己肯定感を高めていきます。そして、『よりよい自分になりたい』と自律する心が芽生えていくんですね。『できた!』と言って心の底から満足そうな顔をした後、お友達に優しくしたり、落ち着いた行動をしたりするようになった子をたくさん見てきました」

 1歳から3歳までをお手伝いの「準備期間」、そして4、5歳からを「実践期間」として寄り添ってあげることは、その後の子どもの成長にも大きく関わってきます。
 でも、結果が目に見えて現れてくるのは、実は時を経た小学4年生、10歳前後になってからだという相良さん。それは、なぜでしょうか?



2016.11.11   日経DUAL から転載





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