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2020年05月09日

もし「ADHD」を疑ったら…まずはセルフチェックを


自分の子どもが他の子どもと比べてじっとしていられなかったり、危険なことに対して注意できなかったりすると、「もしかしてうちの子、ADHDなのでは?」と心配になってしまう保護者もいるでしょう。


そのままでは、保護者もストレスがたまってしまいます。気になる場合は医療機関に相談するのが一番良いのですが、その前にセルフチェックをしてみてはいかがでしょうか。子どもの行動傾向について、あらためて発見することがあるかもしれません。ここでは、ADHDの特徴や原因、セルフチェックの方法などについて詳しくご紹介します。

 

 

子どものADHDとは?どんな特徴や症状があるの?

ADHDは多動性と衝動性、不注意の3つの症状を特徴とする、発達障害の1つです。学齢期の子どもの3~7%が発症すると言われています。ADHDの子どもは家庭や学校生活でさまざまな困難が発生します。また見た目にはわかりにくいため、周囲の正しい理解が重要となります。それでは、ADHDの概要や原因、メカニズムなどについて詳しくみていきましょう。

ADHDが医学的に注目を集めるようになったのは、1902年に、ロンドン・キングスカレッジ病院のジョージ・スティル医師の症例報告からだと言われています。その時発表された症例は現在のADHDと大きく変わらないものですが、スティル病、MBD(微細脳機能障害、微細脳損傷)など使用する病名が時代によって変化し、1980年代以降に現在のADHDと呼ばれるようになりました。

ADHDの症状は、大きく分けて多動性と衝動性、不注意に分類されます。それぞれの傾向を紹介していきます。

(1)多動性
他の子どもが座ってじっとしているような場面で座っていられなかったり、手足をそわそわ動かしたりします。また、急になにかに駆り立てられるように活動し始めることも特徴です。

(2)衝動性
自分の欲求を抑えられず、順番が回ってくるまで待てなかったり、質問の内容を最後まで聞かずに答えてしまったりします。また、他の子どもの遊びや勉強などのじゃまをしたり、行動をさえぎったりすることも特徴です。

(3)不注意
活動中に注意を継続することが難しかったり、やるべきことを頻繁に忘れたりします。また、集中が必要な課題を避けたり、与えられた役割を最後までやり遂げなかったりすることも特徴です。

どんな子どもでも、多かれ少なかれ似たような行動をすることはあると思います。ただ、上記のような気になる傾向が6ヵ月以上続いた場合は医療機関などに相談してみましょう。次に、ADHDとよく一緒にテレビや雑誌に取りあげられる、発達障害やアスペルガー症候群(AS)を紹介します。これらの症状は混同されがちなため、違いを確認しておきましょう。

 

 

ADHDとアスペルガー症候群は、どちらも発達障害の1つです。発達障害は分類の名称ではなく、ADHDやアスペルガー症候群、自閉症、突発的な発声や運動をくり返すチック障害、吃音(きつおん)などをすべて含めて発達障害といいます。発達障害の共通点は、脳の一部の機能に障害があることです。アスペルガー症候群は、ASD(自閉スペクトラム症)の1つに分類されます。ASDには、「対人関係の障害」、「興味と活動のパターン化」、「コミュニケーションの問題」という3つの特徴があります。このなかでも、アスペルガー症候群では「対人関係の障害」と「興味と活動のパターン化」がみられます。また、自閉症とは違い、言語発達の遅れがなく、知的発達の遅れがみられる人もほぼいないとされています。ADHDとは違い、多動性や衝動性などはみられません。ただし、ADHDとアスペルガー症候群は併発することがあります。その場合、それぞれの障害の特徴が重なりあうこともあるようです。

ADHDの児童の数は、増加の一途をたどっています。厚生労働省発行の「社会的養育の推進に向けて」によると、児童養護施設におけるADHDの児童の数は平成20年には791人、平成25年には1,384人と発表されています。つまり1.7倍も増加していることがわかりました。このように、ADHDの子どもの存在は決して珍しくないことがわかります。

 


ADHDの発症する原因については、詳しくはわかっていません。遺伝説や脳の機能障害説、環境的要因説などありますが、どのようにしてADHDの発症に至るのかは不明です。いくつかの説のうち、保護者が気になるのは遺伝説ではないでしょうか。ADHDは研究段階なため、遺伝説が正しいかどうかもわかりません。そのため、仮に自分がADHDであり、子どももADHDであっても、自分を責める必要はないのです。


原因がハッキリしていないように、ADHDを完治させる方法も現時点では見つかっておりません。ただ、薬での治療、環境への介入、行動への介入という3つの方法を組み合わせることで、ADHDの症状を抑えることができます。適切に対応すれば、ADHDの傾向がある子どもでも自分らしく生きていける方法がきっと見つかることでしょう。

 

 

もしかしてADHD・・・?と思ったらチェックしてみましょう!

子どもの行動について長期間気になることがある場合、セルフチェックをしてみることをおすすめします。以下は、文部科学省が平成11年7月の「学習障害児に対する指導について(報告)」などで示した、ADHDの判断基準です。該当する項目が多ければ多いほど、ADHDの傾向があると言えそうです。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)
以下の基準に該当する場合は,教育的,心理学的,医学的な観点からの詳細な調査が必要である。

A.以下の「不注意」「多動性」「衝動性」に関する設問に該当する項目が多く,少なくとも,その状態が 6 カ月以上続いている。


○ 不注意
・ 学校での勉強で,細かいところまで注意を払わなかったり,不注意な間違いをしたりする。
・ 課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。
・ 面と向かって話しかけられているのに,聞いていないようにみえる。
・ 指示に従えず,また仕事を最後までやり遂げない。
・ 学習などの課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
・ 気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避ける。
・ 学習などの課題や活動に必要な物をなくしてしまう。
・ 気が散りやすい。
・ 日々の活動で忘れっぽい。

 


○ 多動性
・ 手足をそわそわ動かしたり,着席していてもじもじしたりする。
・ 授業中や座っているべき時に席を離れてしまう。
・ きちんとしていなければならない時に,過度に走り回ったりよじ登ったりする。
・ 遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。
・ じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する。
・ 過度にしゃべる。

 


○ 衝動性
・ 質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
・ 順番を待つのが難しい。
・ 他の人がしていることをさえぎったり,じゃましたりする。


B.「不注意」「多動性」「衝動性」のうちのいくつかが 7 歳以前に存在し,社会生活や学校生活を営む上で支障がある。


C.著しい不適応が学校や家庭などの複数の場面で認められる。


D.知的障害(軽度を除く),自閉症などが認められない。

ADHDは診断が難しく、症状も個人によって様々です。よって、セルフチェックのみで自己判断することは禁物です。セルフチェックを確認し、ADHDの傾向があるのではないかと感じた場合は、専門家に相談することを考えてみましょう。

 

 

子どものADHDの症状を和らげるには

子どもがADHDだとわかった場合、自分の育て方やしつけが間違っていたのでは?と悩む保護者も多いと思われます。子どものADHDは、しつけや育て方が原因ではないので、自分を責めないようにしましょう。しかし、子どもの症状や学校でのトラブルなどにどうしても悩んでしまうという保護者もいます。ひとりで悩まずに、全国各地にある発達障害者支援センターや家族、友だちなど身近な人に早めに相談し、必要に応じて力を借りることが大切です。

また、ADHDは薬による治療を受けつつ、子どもと適切に向き合うことによって問題を解決に導ける可能性があります。その方法をご紹介します。

・薬での治療
ADHDの症状である多動性と衝動性、不注意を軽減できる可能性があるメチルフェニデートという薬を使います。また、新たにアトモキセチンという薬も処方可能になりました。いずれも、ADHDの治療を行う医療機関でしか処方できません。まずは、近くの小児科に相談して、ADHDの治療を行っている医療機関を紹介してもらいましょう。

・ADHDの子どもとの向き合い方
ADHDの多動性を無理に抑えることは、良い結果を生まないと考えられています。まずは、子どもが集中しやすい環境をつくりましょう。たとえば、教室での机の位置を変えたり、展示物を工夫したりします。また、授業時間が長いために子どもの集中力がもたないと考えられる場合には、集中力を維持できると考えられる短時間で細かく区切ることも有効とされています。また、子どもが好ましい行動をとった時にはごほうびを与え、好ましくない行動の時にはごほうびを与えないことで、好ましい行動が増える可能性があります。大切なことは、自分で多動性や衝動性などを抑えられた時に、しっかりとほめてあげることです。

またADHDの症状をうまくコントロールすることができるようになれば、思いもよらない才能が開花する場合があります。実際、世界中の芸能人や文化人の中にもADHDを公表している方々がたくさんいます。黒柳徹子さんはADHDに加え、読書障害や計算障害であることをカミングアウトしていますが、現在司会やエッセイスト、平和運動家など多方面で活躍されています。本人の努力、もしくは周囲の手助けがあれば、ADHDの多動性や衝動性も本人の強みとなってくれるのかもしれません。

 

 

専門機関や身近な人の助けを借りながら子どもと向き合おう

ADHDは、年齢と共に起こり得る問題が変わっていくため、その時に合わせた対応が重要です。無理に衝動性や多動性を抑え込むのではなく、学校や家族と協力して、子どもが暮らしやすい環境を整えてあげてください。また、ひとりで悩むことは大きなストレスになります。早い段階で専門機関や身近な人の力を借りつつ対応していきましょう。

 

 

プロフィール
監修:岩波 明 (いわなみ あきら)

1959年神奈川県生まれ。1985年、東京大学医学部医学科卒。医学博士、精神保健指定医。都立松沢病院、東京大学附属病院精神科、埼玉医科大学精神科などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授に。2015年より昭和大学附属烏山病院院長を兼任し、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能、司法精神医療、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。『心の病が職場を潰す』(新潮新書)、『大人のADHD もっとも身近な発達障害』(ちくま新書)、『発達障害』(文春新書)など、著書多数。

※この記事は「ベネッセ教育情報サイト」で過去に公開されたものです。

 

 

 

ベネッセ教育サイト 2020.5.9 転載



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jyukennews02 at 19:10│ 自閉症・ADHD 
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