2020年05月25日
9月入学「受験が公平に」「未就学児はデメリットだけ」 渦巻く賛否「いろんな人の声聞いて」
新型コロナウイルス感染拡大による休校で生じた学習の遅れや学校間格差の解消策として浮上した9月入学案に対し、京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに、賛否とともに数多くの意見が寄せられた。受験生や未就学の子どもがいる親、教員など、それぞれの立場で受け止め方は大きく異なる。集まった声の一部を紹介する。
京都府立高に通う長岡京市の高3女子(17)は「受験の公平性のためには9月入学が一番いい」とメッセージを寄せた。受験に化学を使う予定だが、授業は基礎が終わったところといい、夏休みを授業に充てても不安がある。「(9月入学ができないなら)試験の出題範囲を考慮するなど対策をして」と希望した。
埼玉県の高3女子(18)は、来年の受験が大学入試センター試験から大学入学共通テストに替わる節目であることを挙げ、「受験生の不安が大きい。次へ進む準備が十分にできる時間がほしい生徒は多いと思う」と9月入学の必要性を訴えた。京都市伏見区の会社員男性(47)も「部活や友だちとの時間、文化祭など、今しか経験できない時間を与えてあげたい」と賛意を示した。
秋入学が欧米で主流であることを踏まえた意見もあった。京都市左京区の主婦(70)は「わたしが海外駐在に子どもを伴った折、行った先と帰国した日本でどの学年に入れるか悩んだ」と振り返り、「今この時にできなければ永遠にできない」と実現を望んだ。
■反対の生徒もいる
一方、通信制高校に通いながら大学を目指す静岡県沼津市の高3女子は「9月入学に反対の生徒もいると知ってほしい」と書き送ってきた。「娯楽も特になく、ただひたすら課題や受験勉強の毎日。もう限界だよってくらいしている人もいると思う。それなのに受験を半年延ばすなんてつらい」と本音をつづった。
高3の子どもを持つ京都市北区の会社員女性(50)は「受験時期が延びた場合の授業料、塾代、予備校代は誰が支払うのか。冬に向けて逆算して勉強している子のメンタルはどうしてくれるのか」と問い掛けた。
就学前の子どもがいる親からも、9月入学は就学年齢が遅くなったり、1学年の人数が増えたりといった影響があるとして、複数の反対意見が寄せられた。愛知県に住む会社員女性(37)は「高校生にだけスポットライトを当てないでほしい。未就学児はデメリットしかない」と強調した。
看護専門学校の教員であるという女性(52)は、新型コロナへの対応で疲弊した看護師が大量退職する恐れがあるとして「(2月に行われる)看護師の国家試験が後送りになると、新人ナースは4月から勤務できない」と医療現場に与える影響の大きさを指摘。「もっといろんな人の声を伝えるべきだ」と訴えた。
京都市内の公立高に勤める50代の教員男性は、9月入学になると「インターハイや高校野球の甲子園などは、そのまま行うとするならば、卒業式が終わってからになる」と述べ、スポーツにかける生徒の思いも踏まえた議論を求めた。
政府は9月入学制の可否について、6月上旬にも一定の方針を示す考え。国民に与えるさまざまな利害や社会への影響を勘案し、判断を下すことが求められる。