June 03, 2018

今だからこそ、PSVitaのDRPGを振り返ってみよう(1) エクスペリエンス編

ソニー,Vita用ゲームカードの生産終了を発表(※国内生産は継続の模様)
5月中旬、4Gamer.netの系列サイトであるGamesIndustry.biz Japanに
上記のような記事が上がっていました。

「国内生産は継続」とは書いてありますが、
いろんなメーカーが「PSVitaはこれで最後」と明言していたり、
PSP→PSVitaと長く展開してきた大手乙女ゲーブランドが、
Switchへの展開に尽力することを明言したりと、
事実上、PSVitaのライフサイクルが終焉を迎えつつあるのは間違いないようです。

PSVitaは3DダンジョンRPGが数多く発売されたハードでもありますし、
ここでもう一度、その作品を振り返っておこう!と思いまして、
全3回に分けて、PSVitaのDRPGを振り返っていこうかと思います。

第1回は、エクスペリエンス社の作品について。


・デモンゲイズ
(発売:角川ゲームス 2013)

PSVitaの3DダンジョンRPGとして、
やはり真っ先に名が上がるのがこの作品でしょう。
3DダンジョンRPGを長らく手掛けてきたエクスペリエンス社と、
当時はまだ生まれたばかりの角川ゲームス社の協業作品で、
PSVitaのちょうど普及期に現れた作品です。

オートマッピングに加え目的地への自動移動や、
非常に高速なゲームテンポといった快適性、
「ジェム」を使ったトレジャーハンティングシステムや、
召喚獣「デモン」を活かした戦闘システム、
そして序盤から急転直下するストーリーなど、
DS系ハードで展開している『世界樹の迷宮』シリーズとは異なる、
そして『ウィザードリィ』『ダンジョンマスター』に代表されるような、
古典的な3DダンジョンRPGともまた一線を画す、
まさしくPVで謳われたような、
「次世代ダンジョンRPG」を見事に体現した作品でした。

なお、「DRPG」というジャンル名を初めて提起したのはこの作品であり
(正確にはエクスペリエンスと角川ゲームスの協業プロジェクト全体)、
そういった意味でも、エポックメイキングな作品だったと思います。


デモンゲイズ2
(発売:角川ゲームス 2016)

デモンゲイズの直接的な続編。
前作がやはり一般的なRPGと比較すると結構難易度が高かったこともあり、
その反省も込め、徹底的に「遊びやすさ」にこだわった作品になっています。

前作の操作性やテンポの良さはさらに強化されつつも、
DRPGでは昔から定番的な要素でありながら、
全くの未経験者には敷居の高かった
「キャラクターメイキング」を敢えて廃し、
その代わりに前作では召喚獣的な扱いであった「デモン」が
今作ではパーティメンバーとして共に戦うようになったのも特徴的な変更点。
デモンとの好感度や個別ENDも実装されるなど、
キャラクター性をより強めた作品となりました。

難易度面に関しても低難易度では全滅してもノーコストで復活でき、
しかしながら熟練者向けに全力で殺しに来る難易度も追加されるなど、
より遊びの幅が広くなりました。
いくつかの点で物足りなさを感じる点はありますが、
ゲーム全体としては前作の正統進化と言えるものかと思います。

とは言え、「前作より遊びやすくする」というコンセプトの割には、
クリア後要素は前作のダンジョンを舞台として、
ほぼ「前作を遊んだ」事が全体のストーリー展開が行われたり、
またそのストーリーを手掛けたのも、
古典的DRPGファンにしかピンとこないであろうベニー松山氏であったりと、
ややチグハグな部分があるかな…というのが個人的に正直な印象。
そんなところで「続編の難しさ」を感じてしまったタイトルですが、
3DダンジョンRPGとして良く出来ている作品なのは間違いないです。

海外版の要素を盛り込んだ「Global Edition」はPS4版も発売されているので、
こちらで遊んでみるのも悪くないかと。


東京新世録 オペレーションアビス
(発売:5pb. 2014)
東京新世録 オペレーションバベル
(発売:5pb. 2015)


エクスペリエンスの処女作となるPCゲーム、
Generation XTH』シリーズをリメイクした作品。
その前身となる『ウィザードリィエクス』から連綿と続く、
「3DダンジョンRPG×学園モノ」シリーズです。

『デモンゲイズ』を手掛けたイラストレーターを起用し、
また自動移動やダンジョン内メモ機能も実装されるなど、
同作で3DダンジョンRPGというジャンルに初めて触れた人でも、
無理なく入っていく事が出来るよう遊びやすさは向上しました。

『ウィザードリィ』を前身としている事もあり、
ダンジョン探索とアイテムハントの要素に重点が置かれた、
古典的DRPG色の強い作品ですが、その入り口としては良いゲームかと思います。
ストーリー面に関しても「現代日本の闇に潜む怪異」、
そして「未知なる侵略者との戦い」と、
ファンタジー世界とは一線を画す内容で、これもまた味かと。

原作『GenerationXTH』を遊んでいた方も、
リメイクによってまた新たな印象を受けるであろう(特に『バベル』)ので、
遊んでみる価値は充分にあると言っておきます。

オペレーションアビス』『オペレーションバベル』の2作は
Steamでも配信されてますので、PCで遊びたい方はこちらを。


迷宮クロスブラッド インフィニティ
(発売:サイバーフロント 2013)
迷宮クロスブラッド インフィニティUltimate
(発売:5pb. 2014)

こちらは『GenerationXTH』シリーズ4作目の移植作品。
元々シリーズの外伝作に近い扱いであったこともあって、
『オペレーションアビス』『バベル』とは違い、リメイクではありません。
(最近の表現で言えば「アビス・バベルとは世界線が違う」)

しかしながらキャラクターに2つのクラスを設定できる「クロスブラッド」や、
序盤から多くのダンジョンに挑戦でき、各地に巣食う強敵「手配異形」の討伐や、
ハイリスクハイリターンなアイテムハントに挑戦できる…といった自由度の高さは、
決して先述のリメイク作に劣らないものです。
(「手配異形」は『アビス・バベル』にも実装されていますが、
その数で言えばはるかに『迷宮クロスブラッド』の方が上)

エクスペリエンス作品の中でも古い作品にあたる事もあってか、
近年の作品に実装されている自動移動や高速ターンスキップがない、
キャラクターポートレートが無く、
アバターをモンタージュで作成する必要がある、
また、全体的に難易度がかなり難しい…など、
今見ると敷居の高い部分も多いですが、個人的にはこの作品は
「FC版ウィザードリィから続く、快適な操作性とアイテムハントと
 ダンジョン探索に特化したDRPGの到達点の1つ」
だと思っています。
3DダンジョンRPGを愛する方であれば、是非とも1度プレイして頂きたいところ。

…ただ、この作品のVita版移植にはサイバーフロント発売のバージョンと、
サイバーフロント倒産後に5pb.から再発売されたモノ(Ultimate)がありまして。
前者は操作性やゲームテンポの面で多数よろしくない部分があります。
一応、修正パッチがリリースされたものの(5pb.版は修正パッチ導入済み)、
現在はこの修正パッチの配信が終了しているため、
今からVita版を遊ぶのであれば、必ず5pb.版(Ultimate)を探すことを推奨します。



・剣の街の異邦人 黒の宮殿
(発売:エクスペリエンス、2015)
新釈・剣の街の異邦人
(発売:エクスペリエンス、2016)

『デモンゲイズ』と世界観を共有する作品でありながら、
こちらは「高難易度」「キャラクターロストあり」と、
より古典的DRPGを意識した作品です。

自動移動や高速戦闘といった快適さは他の作品同様ですが、
本作は一切容赦のない難易度が特徴。
異世界転生モノだけどチートで楽勝なんてのは幻想だった

「キャラクターが死亡するとLPを失う」
「蘇生・LP回復には療養期間か高額な費用が必要」
「LPが0になるとキャラクターロスト」
と、デスペナルティもかなり重く、
まさに隣り合わせの死と迷宮という、
古典的DRPGの緊張感と達成感を存分に味わえる作品。

…ですが、この難易度の高さには賛否あったようで、
2016年に調整版である『新釈・剣の街の異邦人』が発売されました。
こちらは「療養期間の短縮」「新規クラス・スキルの追加」
「防御に成功すると反撃+敵を気絶させるガードカウンターの追加」など、
全体的に難易度が下がりました。
またダンジョン数も増え、ボリュームもさらに増加しています。

『新釈』の方でも難易度が高いことに変わりはないため、
全く今までDRPGを遊んだことが無い方には向きませんが、
「快適な操作性」「ハック&スラッシュ要素」
「キャラクターメイキングと育成の楽しさ」といった、
今までのエクスペリエンス作品を構成する要素の
集大成と言える作品が『新釈・剣の街の異邦人』です。

やはりこちらも、DRPGを愛する人には一度遊んで頂きたいところ。

『デモンゲイズ』を遊んだことはあるけど、
こちらは遊んでいない…という方には、
「プロメスがドクロ様を探している理由が本作で解明される」
とだけ言っておきましょう。

Steamでも『剣の街の異邦人』は販売されていますが、
こちらはXbox版『白の王宮』の移植であり
(『黒の宮殿』と大筋は同じだが、一部の敵とダンジョンが異なる)、
『新釈』が遊べるのは(2018年6月時点では)PSVitaだけ!です。
この為だけに今からPSVitaを買うのもアリだと、筆者は主張します。


レイギガント
(発売:バンダイナムコエンターテイメント 2015)


エクスペリエンスのPSVita作品と言えば、こいつを忘れちゃいけねえ!

異形の存在「ギガント」によって、崩壊間際まで追い込まれた世界。
それに立ち向かうのは、寄生生物「ヨリガミ」をその身に宿した者たち。
人類と異形の戦いの先には、何が待つのか?

…といった感じの中二感溢れる世界設定に、
ウネウネアニメーションするモンスターと主人公、
それに「コンビニ」に代表される謎コマンドに、
必殺技を発動すると突然始まる音ゲーといった独特な戦闘システム、
ノベルゲームと見まがうばかりのテキスト量。

PVを一見すると「これが3DダンジョンRPG!?」と戸惑う感もあり、
実際、遊んだ人は相当少ないのではないか…と思われます。

はっきり言って、DRPGとして見ると粗が多いゲームなのは確かですが
(無理やりストーリーにねじ込まれてるダンジョンとか…)、
アニメーションを多用した戦闘演出、
最小限のコマンドでタンク、ダメージディーラー、ヒーラーの
ロール分担を果たすことができる戦闘システム、
そして圧倒的なテキスト量で描かれるストーリーなど、
「未だかつてない全く新しいDRPGの見せ方」をしているゲームでもあります。

『レイギガント』自体は評価が高いとは言えないゲームですが、
このゲームで培った「感情に訴えかけるノベル」、
「やたらヌルヌルと動くアニメーション」といった演出手法は、
現在エクスペリエンスが注力している『死印』などの
ホラーゲームに活きているのではないかな…と筆者は思っています。

積極的におススメするようなゲームではないですが、
全く新しいDRPGの形を見てみたいという方には一度遊んで頂きたい作品。

なお、『レイギガント』もSteam配信されてます。
こちらは価格もお手軽ですが、T.M.Revolutionの主題歌だけ削除されてるのが残念。


次回、ゼロディブ(アクワイア/コンパイルハート)編に続く。

jzunkodj4y at 23:59│Comments(0)clip!3DダンジョンRPG感想 

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