ミクロ経済学

2006年04月13日

外部不経済とコースの定理

当事者間の外部不経済の内部化を説明する理論に、「コースの定理」があります。

・権利が明確に規定されている
・取引費用がゼロである
ならば、常に資源配分は最適化される、とする定理です。

つまりは経済取引に当たって仮に外部性が存在していたとしても、民間の当事者たちが「費用をかけずに」資源の配分について交渉できるのであれば、自力または損害賠償制度などで外部性の問題を解決できることになります。

実社会では「費用をかけずに」という前提条件がまずクリアされませんので、コースの定理が示す当事者間による外部経済の内部化は、おおむね失敗することになるのですがxxxxx

k1996006 at 20:05|PermalinkComments(0)TrackBack(3)

外部経済・外部不経済

ある経済主体の経済行動が、他の経済主体の活動に対価なしで利益または不利益を与えることを外部効果といいます。
外部効果のうち、他の経済主体に対して有利な効果を与えることを外部経済、不利な効果を与えることを外部不経済といいます。

市場を経由するにもかかわらず発生する外部効果を金銭的外部経済・不経済といい、市場を経由しないで発生する外部効果を技術的外部経済・不経済といいます。

ある産業で技術革新が起こって生産能力が拡大し、その産業の生産物の価格が下がったとします。すると、その生産物を原材料とする産業で生産コストが低下して利潤が増加します。また、鉄道の敷設は周辺の地価を騰貴させます。このような例は金銭的外部経済の例です。

一方、市場化されない科学的知識や発明、騒音・悪臭・混雑等の消費公害、予防接種や消費の誇示効果、各種の産業公害などは、技術的外部経済・不経済の例です。

市場には外部経済を取り入れるメカニズムが(経済学上)ないために、外部経済もしくは外部不経済が発生する場合でも、それを含まない形で取引が行なわれます。その結果、外部効果を含めた場合に比べて社会的余剰はより小さいものになってしまうのです。



k1996006 at 19:27|PermalinkComments(2)TrackBack(2)

2006年02月26日

メラビアンの法則

メラビアンの法則という、名前だけが一人歩きしている法則があります。

 主に企業のプレゼンテーションや営業スキル、就職活動、さらには恋愛コンサルタントなどに登場してきます。

 メラビアンという心理学の博士が行った実験の結果なのですが、簡単にまとめますと・・・

話し手と聞き手のコミュニケーションにおいて、話し手が聞き手に与える影響がどのような要素で形成されているかというと・・・、

見た目・身だしなみ・しぐさ・表情など 55%

声の質(高低)・大きさ・テンポなど  38%

話す言葉の内容             7%


という結果でした。つまり、

コミュニケーションにおいて、一般的に大事だと思われている、話の内容は7%しか影響していない。→人対人のコミュニケーションでは、しぐさや表情などがとても大切です。

ということを示唆した法則です。わたしの勤める会社でも、プレゼンテーションスキルを向上させる研修で、もっともらしく紹介を受けました。

・・・では、単純な疑問。

人対人のコミュニケーションで、話す言葉の内容がわずか7%しか意味をなさないのなら、全く言葉を発しなくても、93%は意思が伝わるのでしょうか?

・・・そんな訳ないですね。

結論から申し上げますと、メラビアンの法則は、根拠の全くない都市伝説の類です。

とは言っても、メラビアンという心理学者は存在しており、先の55・38・7%という数字も存在しています。問題は、実験の内容と現在の扱われ方が全く異なるという点です。

メラビアン博士の実施した実験は、こういったものでした。

被験者は、ある写真を見せられながら、ある言葉を、ある声色で聞きます。そして、話者の感情をどう判断したかを調べます。

例えば、怒った顔をした人(写真)を見て、怒った声で、「I love you」と言ったとします。被験者は、「この人は怒っている」と感じたら、表情や声色の方が、言葉の内容よりも影響力がある、という判断をする試験です。

え〜と・・・

・・・そりゃあ、言葉の影響力が7%な訳だ

そもそも写真を見て判断するんだから、コミュニケーションですら無いじゃない。


 当のメラビアン博士本人は「この実験結果を日常のコミュニケーションに適用することはできない」「私の研究は誤解されている。コミュニケーションにおいて、言葉の伝達力がたったの7%だなんて馬鹿げたことがあるわけがない」と認めているにも関わらず、今日もどこかの研修会場で、さも真実であるかのように語り継がれてゆくことでしょう。

とかく経済学の「○○の法則」の類は、前提条件を踏み外すととんでもない結論になってしまいますので、使いどころが難しいです。
そういえば取引先で「今年度の方針は『比較優位』だ」と、でかでかと掲示してるところがありました。心意気は認めますけど、それ、マクロの用語ですけど、と、思わず突っ込みを入れたくなりましたね。


k1996006 at 01:35|PermalinkComments(0)TrackBack(2)

タバコの経済学

経済学は、人間が選択行為をする際に生じる「損得勘定」は全て、その範疇となります。例えばこんなものも・・・、と、紹介する意味で、タバコの経済学をご紹介いたします。

 タバコを吸う行為によるいい点(benefit)を考えますと、「心理的なリラックスが得られる」ということと、もし対象が若い年齢ですと、「不良っぽいカッコ良さ」が挙げられるかと思います。逆に、悪い点(defect)を考えますと、キリが無いのですが、例えば「健康が損なわれること」「人に迷惑(いろんな意味で)をかけること」などがあります。

 通常の選択行為ですと、いい点が悪い点を上回らない限りは、普通喫煙行為を選択しません。ところがタバコの場合、主に健康面ですが、「選択した後でタバコの悪い点に気が付く」という特徴があります。つまり、すぐに健康が害される訳ではないため、悪い点が過小評価されてしまい、タバコを吸うことが選択されやすくなってしまいます。

 「選択した後でタバコの悪い点に気が付く」ということは、それまで気付かなかった(無視していた)タバコを吸うことによって支払われる身体的コストを、いきなり認識するということを意味します。これを経済用語で「サプライズ(びっくり)・セオリー」と言います。

 さて、この後この対象の選択肢としては、「タバコの悪い点に気付いたのでタバコを止める」というものと「タバコの悪い点に気付いたけど、やっぱりタバコを止めない」というものがあります。多くの場合、後者が選択されます。その理由として、タバコの持つ身体的依存もありますが、それ以上に、「自分が決定したことを変更するコストのため」というものがあります。つまり、タバコの悪い点に気付いた上でタバコを止めるには、通常のいい点・悪い点の比較プラス、意志変更のコストが更に加味される訳です。

 さて、これが結論なんですけど、結局この経済モデルで言いたかったことは、「信念を変えることはなかなか難しいことだ」ということです。こんな当たり前のことを証明するために、経済学では上の言葉を式に表して微分したり、グラフに表したりします。なかなかご苦労な学問です。

 余談ですが、日本の場合、喫煙による身体的なコストについて、もっと啓蒙する必要があります。多くの人の認識では、「タバコによって肺ガンになって死んじゃう→どうせ何かの病気になって死ぬんだから、タバコ吸ってもいいじゃない」というものだと思います。ホントはもっと怖い(と、言うかタバコを吸っていたらかなりの確率で罹患する)病気があるのです。慢性気管支炎や肺気腫とかです。歳とって、鼻にチューブつけて携帯酸素をゴロゴロ引っぱるような生活は、誰だってヤだと思うんですけど・・・。

かく言う私も実は喫煙者です。周りのみんなにも迷惑かけてるし、禁煙しないとまずいよなぁ・・・そうは問屋がおろし金でしてxxxxxx


k1996006 at 01:24|PermalinkComments(0)TrackBack(2)
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