2006年12月25日

神の手・大山倍達  其の四

極真カラテに実在する人物を多数登場させ、さも物語の

すべてを事実のように読者に錯覚させる不朽の名作漫画

「空手バカ一代」。

ほとんどすべてが故・梶原一騎氏が作り出した嘘だが、

その中でも最大の嘘八百は、物語のクライマックスで

むかえる、李青鵬率いる香港カンフー軍団との対決だろう。

そもそも、大山倍達氏の最大のライバル・李青鵬なる人物

(漫画の中では大山氏以上に格好良く、超人の中の超人

として描かれていた)は実在したのだろうか?

答えは否である(あるいは李青鵬という名の拳法家は実在

したかもしれないが、漫画の中の李青鵬とは全くの別人)。

香港カンフーは、ブルース・リーの一連のカンフー映画に

よって、ある時期一時的に脚光を浴びただけで、しっかり

とした技術体系を持つ武術などではなく、達人と呼べる

ような強い人も存在しない。

香港カンフーをはじめとして、中国拳法には嘘やこけ脅しが

蔓延し、全く信頼が置けないのである。

(ブログ「嘘だらけの中国拳法」参照)

なるほど、中国拳法の発祥は古く歴史はあるはずなのだが、

実は義和団事変(1900年6月〜1901年9月)でその歴史は

一度途絶え、達人と呼ばれた強い人はほとんど死んで

しまっているのである。

したがって達人の持つ技や戦い方は、後世に伝承されること

は殆んど無く、今の中国拳法にも強い人は殆んどいないので

ある。

なのに何故、梶原氏は、大山氏率いる極真カラテ最大の

ライバルとして、香港カンフー(中国拳法)を選んだの

であろうか?

それは不世出の映画スターであるブルース・リーを強く

意識したからであろう。

銀幕の中のブルース・リーは強くて格好良く、彼の華麗で多彩

な足技やヌンチャク、ボディビルダーとは一味違う、研ぎ澄ま

された美しい体は、若者を虜にし、彼こそ最強の超人で、中国

拳法こそ最強の格闘技で習得する価値のあるものという、

笑ってしまう風潮が当時確かにあった。

それを梶原氏は覆したかったのだと私は思う。

その証拠に梶原氏は、極真カラテに所属したことなど全く無い

ブルース・リーを、漫画の中で勝手に、極真ハワイ支部の弟子

として登場させ、そこにブルース・オテナという師範代が存在

したことをよいことに、ブルース・リーの芸名は、ブルース・

オテナの強さに憧れたリーがオテナの名を貰って付けたとか、

リーが大山氏を慕って高価な太刀の贈り物をしたことがある

とか、もっともらしいエピソード(嘘八百)を並べ立て、

当時若者のカリスマだったブルース・リーを極真カラテの下に

置くことで、多くの読者に極真の優位性を印象付けている。


物語の中では、全米中継?されたことになっている極真VS

香港カンフーの世紀の対決に破れた李青鵬は諦めきれず、

エド・サリバンショーという人気番組に乱入、ゲストとして

生出演?していた大山氏に対戦を迫り、女子アナを人質に

取って立て籠もるが、そんな事をしたら李青鵬は間違いなく

懲役刑で、そんな面白い大事件が本当にあったら、今も語り草

となり、その時の映像が今でも頻繁にお茶の間に流されている

であろう。

これらはすべて梶原氏の作り話(嘘八百)で、大山氏に罪は

無いとも言えるが、大山氏もよくもこんな嘘八百を、漫画とは

いえ実名を使い、自叙伝的性格のこの作品に描くことを許した

ものだと、首を傾げざるを得ない。

武道家として恥ずかしいとは思わなかったのだろうか?


話は変わるが、「空手バカ一代」以外でも、大山氏を主人公や

モデルとした漫画で「三角跳び」あるいは「三角蹴り」なる

超人技(必殺技)が度々登場するが、漫画の中で描かれている

オリンピックの金メダルジャンパーでも絶対できない、あの

凄い超人技(鳥人技)を一度でもいいから見てみたいと思った

人は、かなり多いと思う。

実は、プロレスの試合などでしょっちゅう見ることができる

のである。

たぶんミル・マスカラスが、初めて日本に紹介した技だと

思うが、フライング・ボディアタックと命名された、一度

ロープやコーナーポストに跳んでから反転し体当たりする

技がそれで、体当たりするところを蹴りしたものが、ほぼ

「三角跳び=三角蹴り」と考えれば間違い無く、漫画の中

で描かれる、あの物凄い跳躍力のスーパー必殺技が実在

すると考えるのは、大間違いなのである。

大山氏は、どうしてあんな大袈裟な描写を許してしまった

のであろうか?

大山氏は実際に強い格闘家だった思っている私にとって、

梶原氏のおかげで大山氏の強さが逆に嘘っぽくなり、

大山氏の歩みや価値が、逆に下げられてしまったように

思えて残念でならない。




(其の五に続く)


k1prideheros at 00:31│Comments(7)TrackBack(0)clip!スポーツ | 格闘技

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この記事へのコメント

1. Posted by tyahan   2006年12月26日 09:49
義和団事件のことは、授業や、浅田次郎の小説でその概要は知っておりましたが、中国拳法家がその戦力となっていたことをはじめて知りました。

銃・大砲で装備した連合軍に対し、刀槍で立ち向かう中国拳法家たち、そこにヒロイズムを感じ、背筋さえ寒くなりますが、実際は悲惨な状況だったのでしょうね。

日々研鑽をつんできた達人が、1発の銃弾に倒れてしまう・・・これも空手バカ一代とはちがうところでしょうか。
2. Posted by ゴッドハンド   2006年12月26日 22:37
義和団事件は義和団の乱・義和団事変とも呼ばれ、義和拳を修練した義和団と称する秘密結社による排外運動で、生活苦に苦しむ農民や他流派の達人も多く参戦したようで、最新武装していた欧米列強軍+日本軍は大いに苦戦し、これに懲りて以後、武術弾圧を行ったようで、中国拳法は壊滅的打撃を受けたようである。
義和団事件で生き残った達人に師事したのが少林寺拳法の開祖・宗道臣氏という話もあるが、真偽の程は定かではない。
ただ、晩年の宗道臣氏が国賓待遇で中国に迎えられ、崇山・少林寺で武術指導を行った事は事実のようである。
3. Posted by 通りすがり   2010年06月07日 23:26
大山先生は、この嘘八百の物語に腹をたてて、二人の間に亀裂が入ったんじゃなかったっけ?
4. Posted by ミスター   2010年11月09日 03:05
現実の大山さんは劇画とは全く違う人物像だと思いますよ。
昔、空手選手権大会でMr.オリバーという小柄な外国人選手が瞬発力、脚力を生かし、かなりの上位まで勝ち進んでおりましたが、途中、残念ながら敗れてしまいました。(一本か判定かは忘れました。)彼が負けた時に大山氏は周囲の人間にに対して「何故、彼を負けさせたのだ。小柄な人間が大きい人間を倒す。これこそ絶好の大山空手の見せ場ではないか」と発言したらしいです。
地味に強さを追求するよりも、知名度向上意欲が高かったのですかね。
5. Posted by うぽぽ   2011年05月02日 01:46
うぽぽw
6. Posted by ともとも   2011年09月26日 20:07
李青鵬は架空の人物と言われてますが
僕が極真時代パワー空手という雑誌の中で
マス大山の正拳一撃という一般者からの
質問コーナーで李青鵬について答えてました。
彼は中国人とオーストラリア人のハーフで
強いというよりは上手かったと。
強さという点ではそれほどでもなかったと。
でマンガに書かれてるように空中回転したり
そんな秘技はなかったそうです。
そこは創作だそうです。
僕が読んだ時点で7,8年前に亡くなって
しまったとも書いていました。
詳しく知りたければ誰かバックナンバーを
読めば2回ほど李青鵬について語ってた
と思います。
7. Posted by 太郎   2014年02月07日 10:50
21性器になり、ネット社会の情報のフルコンタクト化になり、マス大山がボコボコにされまくってるよな

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