自宅失い妻自殺…「同じ被害者出さないため戦う」 不動産会社の詐欺認定されず 67歳男性、実質勝訴も苦渋の控訴

2015年4月3日

 「自宅を不動産会社にだまし取られた」として損害賠償を求めた男性(67)の裁判で昨年末、東京地裁(脇博人裁判長)は男性側の実質勝訴となる判決を言い渡した。

 しかし男性側は「判決は詐欺を認定していない」として控訴した。同社を被告とする訴訟は平成20年以降で少なくとも19件ある。家を失い妻に自殺された男性は「私のような被害者を出さないためにも戦う」と語る。(小野田雄一)

 被告は東京都千代田区の不動産会社「ゲッツ・インターナショナル」(今年1月にfuu’zに社名変更)と同社の役員、従業員ら。

 1審判決などによると、男性の妻は22年、知人女性(別の詐欺罪で有罪確定)から事業への出資を依頼され、「この話が止まると指詰めもの」と訴えた女性への同情もあり、女性から紹介された金融業者「ユニオン・フィナンシャル・サービス」に出資金の融資を依頼。ユニオンからゲッツを紹介された。両社は所在地や役員、従業員が重なり、実質的に一体とみられる。

 ゲッツは男性と妻に「契約上は自宅を買い取る形にするが、返済すれば名義は戻す」と口頭で約束。仲介した女性が「約束は録音する」と話したこともあり、夫妻は売買契約を結び、代金として1800万円をゲッツから受け取った。また自宅を月額84万円で借りる賃貸契約も結んだ。

 しかし、23年2月、ゲッツは「家賃が振り込まれない」として賃貸契約を解除。さらに、男性の自宅を抵当に自社の従業員から2500万円を借りたとする契約を締結。直後に従業員が抵当権を行使し、自宅は競売にかけられた。

 夫妻は女性に録音記録を出すよう求めたが、女性は「レコーダーが壊れた」と主張。自宅は1億1600万円で落札された。

 男性は23年12月、「組織的、計画的に自宅をだまし取られた」としてゲッツ側を提訴したが、妻は家を失ったことを苦に自殺した。

 昨年12月の判決は、「買い戻しは約束していない」とするゲッツ側の主張を覆す証拠がないことなどを指摘、「売買契約を詐欺的に締結させたとの事実は認めがたい」とした。

 その上で「ゲッツ側は当初から、自宅を競売にかけて利益を得ることをもくろんでいた」▽「ゲッツ側は競売で多額の利益を得ており、許容される限度を超える著しく不相当な取引」▽「自宅をわずか1800万円で取得した売買契約や高額家賃での賃貸契約は暴利行為で、公序良俗に反し無効」−と判断。請求額5千万円のうち4700万円を支払うよう被告に命じた。

 原告側弁護士によると、暴利行為で契約全体を無効とする判決は画期的だという。ただ、ゲッツの口座を差し押さえたところ残高は十数万円しかなく、男性は賠償金を手にできていない。22年度のゲッツの売上高は15億円あり、弁護士は「口座から現金が移された疑いが強い」としている。

 一方、ゲッツ側の弁護士は「判決は違法性を認定していない。控訴しており話せることはない」とした。

 男性は「妻も自宅も失った悔しさは消えない。ゲッツにより自宅を失った人は私だけでなく、裁判で表に出たのは氷山の一角のはずだ。彼らのためにも戦う」と話している。