2007年07月21日

BOSS バイパス音質の改善方法

[2013.02.06 アップデート]

さて、ギター用エフェクターの大定番といえばBOSSですが一方、
BOSSのエフェクターはエフェクトoff時のバイパス音が痩せる、
という評価が常にあるのも事実。

この為、最近はトゥルーバイパスというものが高級エフェクターでは普及していますが(当方はあまり評価しておりません)、やはりBOSSのスイッチの踏み易さ、およびON-OFF時にクリックノイズが発生しない、というメリットは
捨て難いものがあります。

◎では、そのバイパス時の音痩せは何に起因するのかという点と、
 その改善対策は何をどうすべきかという点は以下の通り。

▼以降はBOSSの 「SD-1 SUPER OVER DRIVE」 を例にしたもの

   ※参考:SD-1 回路図 全体 (外部リンク)

1)出力部の改善
まず、出力バッファ部分の電解コンデンサを交換するのが一番即効性があります。

Boss_SD1_output-stage














SD-1ほかBossの昔からある機種は、この箇所が1uFの電解コンデンサと100kΩ抵抗で構成されています。

これは1.6Hzあたりでカットされるハイパスフィルタ(=ローカット・フィルタ)を構成します。ギター音の最低音は82.4Hzですが、実際には意外と上の帯域まで効いています。

  ※参考:Takeda's HomePage - Easy Filter Works

この1u(図ではC10)を2.2uに交換してやると、ロー痩せ感がほぼ不満のないレベルまで解消されます。2.2uでまだ不満足な場合は3.3u〜10uの範囲で色々お試しを。ベース用エフェクタなら10u〜22uあたりで。

なお、台湾製になって以降のBossが純正で使用している電解コンデンサは低品質ですので、ケチらず良いやつに交換しましょう。質と値段はだいたい比例します。

MODではオーディオ用を選択する人が多いですが、非オーディオ用でも「低ESR」、「長寿命」、「105℃」 を謳っているものは概ね汎用電解よりは音質も良好です。オーディオ用はものによってはワイドレンジ過ぎるものもあります。(ギターに不要な帯域が出る場合あり)

スペースに余裕がない箇所ではタンタルコンデンサを使うと楽です。
電解とタンタルに関しては、いずれも国産品をお薦めしておきます。

Bossのバイパス痩せ云々はよく言われるところですが、70年代末〜80年代の
電子スイッチ時代のMaxon/Ibanezの方が痩せは酷かったですよ。
OD-808/TS9のバイパス音劣化はBoss以上に酷いものだと思います。


2)バイパス・ルート上の改善
バイパス・ライン上のコンデンサ(SD-1でいうとC9の0.047u)も交換必須です。

ここは1uFのものが良いですが、なるべくフィルム・コンデンサで。
入手不可能なら、これも良質な電解orタンタルで。

BD-2/OD-3といった比較的近年の機種は、ここに該当する箇所のコンデンサが10uになっていますが、これは純正電解の音質・レンジにやや難ありのための設計、というのが理由のひとつと推測します。良質なコンデンサであれば1uで充分です。


3)入力部の改善

SD1-1


















入力部は、0.047μFのコンデンサと470kΩの抵抗で構成されていますが、これは7.2HzでカットオフになるHPFを構成しています。

入力抵抗R2(=入力インピーダンス)が470kと、やや低いので、パッシヴ・ピックアップを直接インプットする場合、ギターではピックアップのインダクタンスと、受け側の入力インピーダンスの関係でわずかに高域をロスします。(参考)

とはいえ、これは実用上ほとんど問題のないレベルのものであり、また、前述の通り出力側とバイパスライン上の電解をグレードアップすると高域のロスが減ります。

出力&バイパスを整えた上で、なお高域が足りないと感じた場合には、入力抵抗を1MΩに変更すれば宜しいです。(フェンダー系シングルの場合、470kΩのままで充分です)

下図は入力部のコンデンサと抵抗を変えてみた場合の数値比較。

SD1-2














上記の様に、入力部のコンデンサと抵抗を変更するとレンジが広がるように見えますが、実際に行なってみると音が太くなるというより、もっさりした感じになりスピード感が落ちますので、入力コンデンサの値は0.047uのままの方がよろしいです。

Keeley Mod などでは、ここを0.1uに変更していますが、キーリーさんの場合、基板上の抵抗の殆どを金属皮膜抵抗に変えており、高域が出過ぎるのを緩和している、といったあたりが理由かと思われます。(抵抗すべてを金属皮膜抵抗にするのは過剰なワイドレンジ化につながるので、当方はお薦めしません。金皮化するなら入力R1と出力R16くらいで充分です)

  備考:BOSSのBD-2(BLUES DRIVER)、OD-3(OVER DRIVE)は
      入力部コンデンサ=0.047μF、入力抵抗:1MΩという組み合わせ。
       参考:BD-2 回路図


4)入出力トランジスタの交換
SD-1などに使用されている2SC732(ランクGR)というのは低雑音用途のシリコン・トランジスタとしてはごく初期のもののようで、データシートを見ると2SC1815と大差はなさそうです。

Boss入力部と同等のバッファ回路をブレッドボードに組んで、2SC732および
2SC1815(ランク別)の音質を比較してみました。

回路図
Bipolar_Transistor_Buffer


 ・2SC732単体の音色は2SC1815(GR)よりわずかにダーク。
  (相当注意深く聞かないと分らないレベルの違いですが)

 ・2SC1815のYランクとGRランクでは音色は殆ど変りなし。
 ・BLランクだとわずかに太い音になりました。
  (これも極端に違うものではなく、わずかな違いです)

このバッファの後ろに歪み系エフェクターをセットして音を聞き比べましたが
歪みとの相性はGRランクよりも、やはりBLランクの方が良いようです。
バイパス時の高域のキラキラ/パキパキを重視するならGRランクというところ。

現行SD-1はバッファ部トランジスタが2SC732ではなく、2SC2240(ややハイ上がりのキャラクター)だそうですが、いずれも2SC1815とそのまま差し替えが可能です。

なので、1)〜3)までを実施してみて、まだ音質に満足いかない場合は、入出力のトランジスタを2SC1815(BLランク)に差し替えてみるのも選択肢のひとつです。
<以上>

(備考1)
BossのOD-2/DS-2以降の機種では、入力部トランジスタがバイポーラ・トランジスタ(2SC732など)ではなく、J-FET(2SK117、2SK184など)が採用されています。

2SK117、2SK184はややハイ上がりのキャラクターなので、コンデンサ交換でレンジが広くなりすぎたと感じる場合、2SK170(太く、ややクセのある音色)に交換する、という手段があります。2SK30ATMだと音はやや丸くなりますが、音が弱くなったように聞こえるのでお薦めしません。

(備考2)
Boss OD-3/BD-2は入力抵抗(=インピーダンス)が1MΩ、入力Cが0.047uで、構成されています。これはカットオフ周波数が3.4Hzになる値です。

また、出力側の抵抗が100k、Cが10uとなっており、SD-1よりはワイドレンジ化の設計になっています。純正電解の品質が低いので、その恩恵はあまり感じられませんが。

(備考3)
Ibanez TS808の出力部は抵抗10kΩ、Cが10uという構成で、この低音側のカットオフ周波数は1.6Hzとなります。これはSD-1と同値ですが、出力抵抗10kは次につなぐものの入力インピーダンスと並列となりますので、例えば後に接続されるアンプなりエフェクターなりの受け抵抗(=入力インピーダンス)1MΩなら、10k//1Mの並列値=約9.9kΩとなります。

   ※参考:直列・並列抵抗 計算ツール

対しSD-1やTS9の出力抵抗100kでは、100k//1M=90.9kΩとなります。
これは、TS808はバイパス状態でもハイが落ちることを意味します。
TS808がTS9と微妙に違うと言われる最大の理由がこれです。

(備考4)
一般的に、トランジスタ/FETを使ったバッファは一般的に原音と同じ音量(電圧)が出力されると言われますが、厳密には僅かに音量が下がります。(これも音痩せとして感じられる現象の一因)

  公式:バッファの増幅率=μ÷ ( μ + 1 )

μ(ミュー)とは真空管の増幅率。コンデンサのμ(マイクロ)じゃないよ。
トランジスタでいうとhFE、FETでいうと「Yfs(gm)×ドレイン抵抗」。

例えば2SK30ATMは最大で増幅率が20倍程度といわれていますが、
この場合、「20÷(20+1)=0.95(倍)」 と案外音量が下がります。

2SC1815のように単体で200倍ほど増幅率が得られるトランジスタでは、
「200÷(200+1)=0.995」。
(注:実測すると計算値よりももう少し小さな値が出ます)

なお、出力インピーダンスの計算公式は、 = 1 ÷ gm。

つまりバッファには増幅率の大きいトランジスタ/FETを使った方が
音量落ちが少なく、出力インピーダンスも下がる、といえます。
(ランクはY/GRよりBLの方がよろしい、ということ)

 ※参考リンク:
   情熱の真空管 - 電圧増幅回路の設計と計算その5 (カソード・フォロワ回路)

バッファを入れて音量落ちを我慢するか、トゥルーバイパスでハイ落ちを我慢するか、悩みは尽きないところであります。私は 「トゥルーバイパスのハイ落ち」 よりも 「バッファの音量落ち」 の方がまだ我慢できますが、これも皆さん各々の好みと用途で適切なものを選んでいただきたいです。

OPアンプのバッファだと理論上、音量落ちは無いということだそうですが、OPアンプのバッファが一番最初に来ると、弾いていて何か気持ち良くないので、私は好みません。バッファに限らず、OPアンプで増幅なしor低増幅の回路を一番最初に繋ぐと何かが今ひとつに感じられます(例:フェイザー、OPアンプを使ったベース用プリアンプなど)。

Bossの回路図をみると、歪み系・コンプレッサー系といった一番前に繋ぐ用途の機種はほぼ全てトランジスタ/FETのバッファです。対しディレイ/コーラスといった後ろに繋ぐものはOPアンプのバッファが採用されているものが多いです。やはりこれはOPアンプ・バッファでは何かが失われるということではないかと。(ごく初期のOD-1はクワッドOPアンプにより入出力バッファが構成されていましたが、すぐトランジスタ・バッファに仕様変更されています。これも同様の理由ではないか)


◆関連エントリ
Boss OD-3 MOD
バイパス音の改善にも触れています。
電解コンデンサの総交換とバッファ部トランジスタの変更が効果あり。

SD-1はエフェクト側信号ライン上の電解コンデンサは1個だけですが、
近年のOD-3/BD-2などは多数の電解がエフェクト/バイパス両側に
配置されています。これの総交換はかなり効きます。

Boss BF-2 MOD
Bossエフェクタの一部では入出力バッファがトランジスタ/FETではなく
OPアンプで構成されているものもあります。この場合のバイパス音質を
改善する方法にも触れています。

自作1石プリアンプ
トゥルーバイパスだろうが、バッファード・バイパスだろうが、何か
エフェクタをつなげば音は変化・劣化するもの。それを最小限に
抑えるための簡単なプリアンプ。

自作1石オーバードライブ
タイトルの1石回路のほかに、OD-1/SD-1/TS9系回路からバッファを
撤去した回路にも触れています。

Boss CS-3 MOD

▼メモ
現在のBoss純正の電解コンデンサは台湾のJAMICON社製。 (公式Web)
グレードは「SS」という品。  SSデータシート  品種チャート

SSは高さが7mmと小型パッケージである以外、電気的・音質的には特になんの特徴もない汎用グレード。汎用グレードというのは即ちそのメーカーで一番安物ということ。Jamicon社製品でももっと優れたコンデンサはあるし、日本のコンデンサ・メーカーなら更に優良なコンデンサはいくらでも存在する。

こういう電子機器は製造原価のうち、部品費の占める割合は皆が思っているより相当低いもの(開発コストと組立コストの方が遥かに大きな割合を占める)。部品費のうち電解コンデンサ分の値段が倍になっても、おそらく上昇コストは数十円レベルのはず。

なお、Bossの音痩せ云々というのは1980年代末までは殆ど語られなかったこと。当方が所有する当時(日本製銀ねじ)の某機種ではマルコン製、サンヨー製などの電解が付いており、これは見るからに汎用グレード品でレンジも決して広くはないが、各帯域まんべんなく厚みのあるバランスのとれた音がする。(なお抵抗とフィルム・コンデンサは日本製も台湾製もあまり差はない)

Boss音痩せ云々が言われるようになったのは製造が台湾に移ってから(1990年代初頭以降)、つまり台湾製電解を使用するようになってからのこと。台湾製電解コンデンサというと、10年ほど前にPCマザーボードに使用された台湾製電解の故障が続発した事例がある。(参考)

パーツの良し悪しで音が変る、というのを技術者は認めたがらない傾向があるが、Bossコンパクトの場合、低品質の電解コンデンサが、せっかくの優れた回路設計のポテンシャルを充分引き出しきれていないのは歴然たる事実(ここにブティック・メーカーやモディファイ工房の付け入る隙がある)。わずかな部品コスト削減のために安物パーツを採用し、結果自社の評判を自ら貶めている点をRolandは反省すべき。

k_guncontrol at 18:22│Comments(1)TrackBack(0)clip!electronics 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by たぬき   2013年11月05日 17:31
かなり参考になりますね。
使いたいBOSS製ペダルは数あれど、クリーンを良く使う身として、BOSSを2台も繋げば、OFF時に音が丸くなってしまうので、シャキシャキな音を好むゆえ1台しか繋げずにいましたので、やてみる価値はありそうです。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔