2013年03月02日

見返り資金 再考

◎見返り資金とは

昭和20年代に、アメリカからの日本へ運び込まれた援助物資(穀物、資源
など)を日本国内で売却した代金を積み立てた資金のこと。

当初は「貿易資金特別会計」に集約されていたが、昭和24年(1949年)
4月以降、「米国対日援助見返り資金特別会計」となり、低利融資資金と
して使われた。

第008回国会 建設委員会 第4号 昭和25年9月29日
○理事(岩崎正三郎君) (略)見返資金の全体的な立場から説明を(経済安定本部から)伺いたいと思います。

○説明員(木村三男君:経済安定本部・財政金融局・財務課長) 
見返資金の全貌につきましてお話申上げたいと思います。
今年の見返資金の支出できる総額が1,581億(円)ございます。

これはアメリカからの対日援助の額、それから前年からの繰越などを合算して歳入の方が先ず決まるわけであります。(略)これは御承知のように余り殖やしたり減したりできない、いわば機械的に出る数字であります。

この1,581億の運用の内容でございますが、これを大きく分けまして、先ず第一に公企業という科目がございます。この中には国鉄とか電通(※電気通信事業)とか或いは固有林野などのようないわゆる公企業、それと公共事業、この二つが入るのでありまして、(略)これが予算上4百億円になつております。

第二の柱としましては債務償還費というものがございまするが、これは一般会計などで法律上やらなければならない債務償還の外に、新たに見返資金の方から余計な債務償還をするという金でありましてこれを5百億予定しております。

それから電力、海運その他の(略)私企業という柱がございますが、これが予算では4百億になつております。

それから尚この外にいわば予備費的な経費、これを予算上は経済再建安定費と呼んでおりますが、これが281億になつております。

(略)この中身を決めるのがいわゆる見返資金の運用計画を作るという仕事でありまして、これは経済再建の見地から安定本部が決めて行くという建前になつております。

そこで内訳の問題に更に帰りますが先ず公企業の方から見ますと、国有鉄道の建設勘定の方に40億ばかり持つて行きます。これは貸付でなく国鉄に国が投資するという関係で、御承知のように国鉄は余り黒字が出ませんから当分は利息が入つて來ないわけであります。つまり国鉄から見れは利息のつかない金が40億見返資金からそちらに行くということになります。

それから電気通信事業、これは特別会計になつておりますが、この方もやはり建設工事勘定に120億円割振つております。それから国有林野事業、やはりこれも建設的な仕事なんでありますが、この方に30億円。それから今年から始まりました住宅金融公庫に対する貸付、これが100億予備されております。

そうして残りました110億、これが公共事業の方に割振られることになつております。(略)公企業の方の大きな内容は以上のようなもので四百億ということになつているわけであります。

次に私企業(計400億円)の方に参ります(略)
電力、これは運営計画の予定では本年度分150億円。
それから海運、これはまあ造船とお考え下されば結構ですが135億円。
それからその他の重要産業鉄とか石炭などに対する分でありますが、
これが43億円。

それから金融機関の優先株を引受けるという運用の項目がございまして
これに60億引当てております。つまり興銀とか勧銀とか北海道拓殖銀行とかいうような特定の金融機関につきまして、見返資金で増資の優先株を引受ける(略)そういつた金融機関が余裕のある資力を以て必要な方面に金を貸せるという仕組を作るための運用なんであります。

  ※引用注:興銀経由で間接的に回った見返り資金が存在するということ。

それから特に問題の多い点でありますが、中小企業に対して金を廻すというので中小企業金融として12億円、(略)それを合計しまして丁度4百億になるわけであります。(略)

おしまいに経済再建安定費というのが281億ございますが、これは漠然とした予備費ではなくて、大体特色としては二つの意味を打つております。

一つは連合国関係で必要とする若干の仕事(※要は米軍関係工事費)があるのであります。(略)内容を二三申上げますと、例の連合国軍人の住宅建設の問題があります。枠としましては80億円ばかりリザーヴして置けということでありますし、実際もすでに69億くらいの支出の予定が付いておるのであります。
(略)

(その他のものを合計しても経済再建安定費281億円は)尚余るのでありますが、(略)この281億円の中の相当部分が現金收入がないことも予想されるということもありますのであまりこれには手を付けられない。

  ※引用注:見返り資金は、名目上の総額と実際のキャッシュ手持ち高に
         大きな差がある。 参考:白洲次郎とは何者だったのか(80)

(略)国鉄、電通、林野などはそれぞれ予算のときに特別会計として決つておりますから、いわば機械的に出て行くわけであります。

それから公共事業の関係(計110億円)なのでありますが、(略)建設省関係だけでなくて農林省関係とか運輸省関係などもありますから、その辺の割振りか事業別にどうなつているか(略)

これは全部が直轄事業でありますので見返資金の特別会計としては大蔵省が支出する、仕事は各省でするという関係になつておりますので(略)仕事に着手したが金が出ないというような問題が起つてはいけないというので、(略)大蔵省から見ますと支出を各省に委任する、各省で支出を委任されますと、今度は一々大蔵省に相談しなくても仕事の進捗状況に従つて小切手が切れるという仕組を作つてあります。(略)

  ※引用注:支出元は大蔵省だが、割り振りを決めるのは経済安定本部と
     いう建前。実際は大蔵省が主導権を握っているように見える。(参考)

それから私企業関係(400億円)につきましては(略)俄かに最後の線まで決まり難いというものがあるので出方の実績は余り芳しくないものがございます。

例としましては電力関係、先程150億と申上げましたが例の再編成の問題などとも関連しまして今のところ出ておりません。これは早晩手配しなければならん問題だと思つております。

(中略)

○石川榮一君 (略)GHQあたりの一部の方々の意見を聽きますと、例えばダムの建設にいたしましても、日本政府から出て行くところの見返資金に対する計画内容が非常に杜撰だ、例えで申しますれば、河川のダムを造る場合、本当にそこにダムを造つて水の統制をしたいというような單純な考えで放出を請求して来る、

そういうような雑駁なものでは出せないんで、植林とか砂防という面から十分に検討を加えてそのダムの維持年限等も相当考慮し、更に河川統制と同時に発電、灌漑そういうようなものも具体的に案を付して持つて来なければ困るというようなことを二三度言われておることもあるのですが(略)関係筋の方では出そうといたしましても日本政府の具体的な案の提出が関係方面に納得行かないという面が相当あつて出澁つておる点もあると聞いておるのであります(略)
<以上引用>

◆停滞していた各地のダム工事は、この昭和25年あたりから見返り資金の
 投入により一気に加速する。そして翌昭和26年、日本発送電は解体され
 現在のに至る9電力会社体制が出来上がる。

▼関連エントリ
電力再編における白洲次郎と三浦義一 (1)




k_guncontrol at 19:18│Comments(4)TrackBack(0)clip!昭和史(戦後史) 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by くれど   2013年03月02日 21:58
これを ひとつの企業の盛衰の中に どう取り入れ どう説明し そのなかでの人間悲喜劇を描くか なんですが

ところで ウリの空手で ムエタイなんか ボコボコにできましたっけ?
2. Posted by k_guncontrol改め瓜井目々太   2013年03月03日 02:26
公式には昭和39年が初対戦で2対1の勝利ということになってますが、さてその前に非公式な試合があってボロ負け、面子丸つぶれでしたなんてことが仮にあったとしても、あの国士先生見栄っ張りだから表には出てこないでしょうね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E5%B4%8E%E5%81%A5%E6%99%82
強い弱い意外に色々事情がありそうですよ。
 
3. Posted by k_guncontrol改め瓜井目々太   2013年03月03日 02:33
タイはマジでロアナプラだそうです。
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51767967.html
4. Posted by 海軍大佐安来拓海   2014年09月07日 21:04
なんの策もないまま戦争の泥沼にはまり込んでしまった大日本帝国ではなく、無条件降伏という屈辱からはじまる戦後日本でもない。
ふたつの時代にふれたからこそ、私の脳裏にうかぶ国がある。
四海に囲まれ独立し力に満ちたその国は間違いなく我々の眼前に存在する。それが黄金の国ジパングだ。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔