子供たちの家庭訪問の季節になると毎年思い出すのは、私が高校2年の時に担任の”モモタ先生” が頭と顔に包帯をぐるぐる巻いてミイラ男状態で学校に来た時の事です。
一体、先生に何が起こったのか?

この先生はかなりの酒好きだとの評判で、家庭訪問が近付いてくると生徒たちの間では、「モモタ先生が家に来たらお酒を出しておくと機嫌が良いらしいよ」 と噂になっていました。

当時私が通っていた高校は県立高校ですから教師は公務員、家庭訪問は当然公務中ですし何軒も回らなくてはなりませんからお酒を勧められて飲むはずもありません。 私は半信半疑でしたが家で先生の到着を待つ母親に面白半分に「先生はお酒を出すと機嫌が良いらしいよ」 と伝えておきました。
先生は車の免許を持っていなかったので家庭訪問は自転車(ママチャリ)で回っていました。私の家に到着した先生の顔がなんとなく赤らんでいるようにも見えて、先に行った家で酒を飲んだのか?それとも自転車で各家庭を回っているから日焼けなのか? そこは判りませんでしたが、私の母は用意していたお茶とお茶菓子の他にコップ一杯の日本酒を先生に出していました。
家庭訪問が終わり、次の家に向かう先生の自転車がふらついているように見えたのは私の気のせいでしょうか? しかし、コップの日本酒は綺麗に飲み干されていました。
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数日後、その日の家庭訪問先は学校から約20km離れた地区を含んでいましたが、モモタ先生は午前の授業を終えるとこの日も電車やバスなど利用せずにママチャリで学校を出発しました・・・。

そしてその翌日、朝のホームルームに現れた先生の腕や頭や顔には包帯が巻かれていたのでした。
クラスは騒然となり、先生が説明(釈明?)を始めました。
先生はその日の朝、目が覚めるとなぜか病院のベッドの上で、とにかく学校に遅刻しないように病院から直接出勤してきたのでした。

前日、先生が何軒かの生徒の家を訪問して最後の家庭訪問を終えたときにはすっかり暗くなっていて、先生は二十数キロ先の自宅を目指しママチャリでふらふらと走っていました。 なぜふらふら走っていたのかはクラスの皆の想像通り、行く先々の生徒の家で出される日本酒や洋酒など様々な酒を全て飲み干しながらの家庭訪問が原因なのでした。
先生の記憶はここで途切れています。
先生が病院で聞いた話によると、道路わきの側溝に自転車がはまり、その側に先生が頭から血を流して倒れていたので、通りかかった人が交通事故(ひき逃げ)だと通報して救急車で搬送されたのですが、どうやら自分で側溝に落ちて、酔っぱらっていたのでそのまま眠ってしまったようだと言っていました。
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当時は面白い先生だとしか思っていませんでしたが、現在だと大問題になりそうな事件です。

私が高校一年の時の担任のアベ先生と、二年の時の担任のモモタ先生は同じ高校と大学の同級生で、その二人が偶然同じ高校で同じ学年を担当していました。
既に二人とも定年を迎えていますがアベ先生の自宅は現在の私の職場の近くで、今でも時々姿を見かけます。
先日、買い物をしているアベ先生を見かけたので「こんにちは、元気そうですね。 モモタ先生も元気にしていますか」 と声をかけてみました。
すると、「モモタ君は定年直前に病気で亡くなったんだよ。 定年になった後に友人がいないと寂しいもんだね」 という返事が返ってきました。
個性的で生徒の人気者だったモモタ先生のご冥福をお祈りします。