魚屋を始める前、私が生まれるよりも前には漁師をしていた父が、以前こんな話をしていました。
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昔は漁港の辺りは遠浅の砂浜になっていたので、魚が獲れない時にはアサリやハマグリを掘って大分市内の市場に出荷していたのだけれど、ある日、別府市にある市場にハマグリを出荷してみたら大分市内の市場よりも遙かに高値で競り落とされた。
自動車はまだあまり普及していなくて別府への道も舗装などされていなかった時代の事なので、別府の市場は遠くに感じられたのだけれどこんなに高く買ってもらえるのなら行くだけの価値はある。
と、後日大きなものだけを選りすぐってハマグリを掘り、再び別府の市場に持ち込んだ。
前回は適当に掘ったまま持ち込んであんなに高く売れたのだから、労力を惜しまず大きなものだけを選別した今回はもっと高く売れるに違いないと意気込んでいたのに、驚くほど安く、大分市内の市場よりも安く買いたたかれてしまって、それっきり漁師をやめるまで別府の市場には二度と行かなかった。
ハマグリ

その後魚屋になって気付いたのだけれど・・・
別府は有名な観光地でたくさんのホテルや旅館関係者が市場に仕入れに来ていたので、ハマグリは汁物の椀に1~2個入れるのに使われることが多かったはず。
魚屋にそういった注文があれば大き過ぎるハマグリは不向きなので買わない、あの時の俺はわざわざ時間をかけて高く売れそうなハマグリを選り分けて海に捨ててしまっていた事になる。
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ハマグリを見ると時々思い出すこの親父の話しは、買う側の立場になって売り方を考えろというような教訓として胸に刻んでおりますが、これがなかなか難しいのです。