久しぶりにやって来た小料理屋のママさんが、店頭の鮎を10尾買うから鱗を取って頭も切って。
うるかを作るから腹は出さないで。(“うるか”については前回の記事を参照して下さい)
と言うので引き受けると、こんな愚痴を言い始めた。

「実はさっきあっちのスーパー○○で鮎の頭を取ってもらったら、うるかを作るからって言ったのに内蔵を全部捨てられてしまって、『内蔵を捨ててしまったらうるかを作れないでしょ! もういらない!』って突き返してこっちの魚屋に来たのよ」

その頃の相場では、かなり安い養殖鮎でも1尾が200円~300円くらいで売っていただろうから、スーパー○○の魚屋は10尾だと2千~3千円の損害になる。
鮎は本来頭を取ったりせずに焼いて食べるものだから、頭を取ってしまった鮎は半額でも売れないだろう、かわいそうに。

そもそも鮎のうるかを自分で作る魚屋はそう多くないし、私の店でもうるか用に鮎の頭取りを頼まれたのは初めて。
 頭取りを頼まれたら他の魚の頭取りと同じように内蔵を捨ててしまうのは容易に想像できるので、それで怒られた事には同情してしまう。
などと考え事をしながら鮎の頭を落としていると、ついうっかりいつもの調子で内蔵を掻き出しそうになっていた、あぶないあぶない。

「ついでだからヒレも落としときますね」と声をかけて尻尾や背ビレや腹ビレを切り落としてから渡すと、つい今しがたまで怒った様子で愚痴を言っていたママさんが笑顔で「ありがとう」と去っていった。