魚屋のたわごと、ざれごと、ひとりごと

たわごと(戯言)と、ざれごと(戯言)って同じ漢字ですね。

Category: 職場

開店と同時に入ってきて一目散に刺身を買い物かごに入れ、それからゆっくりと時間を掛けてスーパーの店内で買い物をして帰っていくお客様がいます。
もしかしたら朝一番に少しでも早く買う刺身が新鮮だと信じているのかもしれません。
そのような人を見かけると、私は刺身を切りながら「せめて買い物の最後に刺身を見に来てくれないかなあ」と思ってしまいます。
時には「買い物が終わる頃に来てくれれば他の刺身も出来てますよ」と声を掛けたり、「今すぐ作れるのは〇〇と〇〇の刺身ですけど何を作りましょうか?」と声を掛けたりもします。

早朝の市場で仕入れた生魚を店まで運んで搬入や仕分けをして、刺身を作るにはウロコを取り頭と内臓を取り除き、三枚におろして皮を剥ぎ小骨を取り除いてから一切れずつ切り分けて刺身に盛り付けるのですから手間と時間が掛かります。
少人数で作業している小さな魚屋が開店前までに刺身を作り終えてずらりと並べておくためには、開店時間の随分前から作り始める必要がありますが、刺身は時間の経過とともに劣化していきますから少しでもおいしい刺身を提供するためには出来る限り遅い時間に作り始めたいというジレンマもあります。
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(写真は開店直前の様子)
なので、1日に売る量の刺身を1度に作ってしまわずに少量ずつ何種類も造って並べ、作る順番も色が変化しにくい材料を優先して作っていきます。
そして午前中は昼食に刺身を食べて頂くことを頭に入れて作業していますから、遅くとも11時半頃までにはある程度の種類が出揃うように作業しているのです。
そして、家庭で刺身が一番消費されるのはやはり夕食時や夕食後の晩酌の時間帯となりますから、午後から作る刺身の種類は午前中よりも充実していますし、店舗によっては午前中はホンの少しだけしか刺身を作らず下処理だけをしておいて、殆どの刺身は午後から作っていたりもします。
お客様が多くて朝からどんどん刺身が売れるという店舗であれば回転率が良いので刺身を買いに行くタイミングはいつでも良いのかも知れませんが、出来れば刺身は少しでも遅い時間に買いに行った方が鮮度も品揃えも良いですし、食べた時の口当たりも良いのです。
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アジの刺身二種
アジの刺身が2つあります。
比較しやすいように同じ方向を向いたアジの身を使い、同じ容器に盛り付けて2つ並べて一緒に撮影したものです。
この2つの刺身を同じ価格で販売したのですが、どちらを買うと得か?

刺身を切るときには魚の大きさと容器の大きさを考えて、時には作業効率優先で切り方を変える事があります。
最初の写真では、左の刺身は平切り(平造り)という切り方で切っていて、右の刺身は削ぎ切り(そぎ造り)という切り方をしています。
左の刺身は8切れで右の刺身は9切れ、右のほうが1切れ多いです。
切った皮肌の幅を見ても右側の刺身の方が幅が広く見えるから、右のほうが大きなアジを使っている事が一目瞭然だと思えるのですが、切る前に2つのアジの身を並べて撮影した写真がこちらです。
アジの皮剥ぎ 
この写真も比較しやすいように2つ並べて1枚の写真に収めました。
上側の身が右の刺身、下側の身が左側の刺身の元の姿です。

ほぼ同じ大きさですが、どちらかと言えば下側の身の方が若干大きいくらいでした。
なのに、右側の刺身の方が幅広い上に一切れ余計に増えているのです。
とはいっても削ぎ切りは包丁を寝かせて斜めに切るので刺身の厚さが見た目よりも薄くなるために一切れ増えたように見えるだけなのですが。

というわけで、私は小さい魚を少し大きく見せたいときには刺身を削ぎ切りにするのです。
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随分前の出来事。
見慣れない男性が、陳列している鯛を見ながら「もう少し大きな天然鯛を予約したい」と、作業中の私に窓越しに話しかけてきた。
年齢は六十代後半くらいだろうか、もしかすると七十代なのかも知れない。白髪混じりの長髪と髭で、落ち着いたジャケットを着ていた。

「幾らになるかな?」と聞かれ、「これより大きいと3㎏ぐらいになるので、その日の入荷状況にもよるけれど 8,000円~9,000円になると思いますよ」、と私が答えると、「それは安いな。先日スーパー◯◯で買ったときには 12,000円以上だった。 明日必ず来るから用意しといてくれ」
と言うので、名前と電話番号(当時は携帯電話が今ほど普及していなかったので自宅の電話番号)と来店予定時刻をメモして予約を受けた。

するとその客が、「今、持ち合わせがなくて帰りのバス代が少し足りないので 500円貸してくれ、明日鯛の代金と一緒に払うから」と言い出した。
客との金銭の貸し借りは揉め事の原因になるので貸すつもりは全く無かったのだが以前読んだ本の影響からか、この人はどんな靴を履いているのだろう? 良く磨きあげられた革靴? 上着がスーツではないので薄汚れたスニーカー? サンダルかも。などと、彼の足元が気になった。

ぐるりと回り客の待つ売り場へと出て彼の足元を見ると、巾着のように足を覆った布の束を足首にまとめて紐で縛っている!? 靴なんて履いていなかった。
これには少し意表を突かれ驚いたが、平静を装い、客との金銭の貸し借りはできない決まりになっているので 500円だけと言われても貸すことは出来ませんとお断りすると。
「それなら紙と筆を貸してくれ、達磨の絵を描いてやる。わしの描く達磨の絵は 10,000円で売れるから、それを売ると良い」と言い出した。
どんな高名な絵師だか知らないが、文字通り足元を見られた後では説得力に欠ける。 達磨の絵を描かせてみたい気もしたが、それではバス賃を貸すのをOKしたことになるので丁重にお断りする。
このとき私の頭のなかではフォークソングデュオ『ふきのとう』の曲『達磨おやじの唄』が流れ始めていた。
~~♪色紙に墨で器用に今にも動き出しそうな♪恐い達磨を描いてる朝から晩まで♪~~
(街角で達磨の絵を描いて売っている名物おじさんの唄、以前はこのような人が日本のあちこちにいたらしい)

おじさんはバス代を諦め、何度か「鯛は必ず明日取りに来るから」と繰り返して帰っていった。

おじさんが帰るとすぐに、メモした連絡先に電話してみる。
誰か家族が出てくれれば今受けた注文内容を確認しておいた方が良さそうだと思ったからだ。
なかば誰も出ないだろうと思いながら電話をかけてみると、すぐに若い男性の声が電話に出た。
息子さんかと思ったのは一瞬のことで、電話の向こうの彼は「BE◯◯電器◯◯店の◯◯です」と、西日本一の電器店の名前を名乗ったが彼の息子という可能性も否定できないので、先程のおじさんの事を確認してみた。
すると彼は、「ああ、またですか。 連絡先にうちの(電器店の)電話番号を使うから困ってるんですよ」と言うので、「全く知らない人ですか?」と聞いてみると、「裏の公園に寝泊まりしてるみたいです」とのこと。

これは絶対に明日、鯛を受け取りには現れないだろうなと思ったが、一応注文として受けている以上、万が一ということも否定できない。

翌日、市場で注文通りの鯛を競り落とし、取り敢えず指定された時間まで保管しておいた。
時間が過ぎてから急いで捌き、全て刺身にして販売したが、大半が夕方からの値引き対象となってしまった。

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魚を取り扱う業者や魚料理をする人達の間では常識的な事なのですが、魚の身には上下があります。
カンパチの入った箱
上の写真は箱詰めされて市場に並べられたカンパチです。
良く見ると左側の列の二尾は腹が手前を向いていますが、右側の列の二尾は腹が上を向いています。これは全ての魚が同じ面を上に向けるように並べられているのです。

このように、魚を並べるときには頭を左側に向けたときに腹が手前に来るように並べます。
和食の盛り付けでも、同様に魚の頭が左側を向くように盛り付けます。
このとき上側になる身を上身(うわみ)、下側になる身を下身(したみ)と呼びます。
カンパチ上身と下身
この上の写真はカンパチを3枚下ろしにした腹の身の内側です。
写真の上が上身、下が下身ですが、拡大して良く見ると身の色が違うことに気付くはずです。
活き締めしたときの血抜きが充分に行われていなかったのだと思われますが、血液が魚体の下側に降りてくるので、このように下身に血が集まって上身よりも赤くなることがあるのです。

小さな市場では大きなマグロをいくつかに分割した状態で競る事がありますが、そのとき魚屋さん達は上身なのか下身なのかを気にして買値を上げ下げすることがあります。 魚の状態にもよりますが、マグロのような大きな魚の場合には体重の重さで下身が割れて(肉離れの状態になって)いたり、前記のカンパチのように血が集まって、場合によっては血栓ができていたりすることがあるからです。
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魚屋の店先で氷の上に並べられたりパック詰めされたりしている魚を観察すると、小さすぎる小魚やパック詰め時の見栄えを気にして敢えて逆向きの魚を混ぜている等の例外を除いて、ほとんどの魚が左向きに並べられています。
惣菜屋さんや、料理屋さんで頭の付いた魚料理が出されるときにも同じように必ず魚は左を向いているはずです。
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毎日のように同じ時間にやってきて鯛の刺身を買っていく年配のご婦人に「鯛の刺身ばかりで飽きませんか?」と声をかけてみると、「父のところに持って行くんですよ。 体調を崩している父に少しでも長生きしてもらいたくて、父はタイの刺身が好きだし、鯛は体に良いって言うでしょ?」との返事、その後も鯛の刺身を買いに来る姿を見かける日々が続いていました。

そんな彼女がある日、「お刺身の注文して良いですか? タイの姿造りをお願いしたいのですが・・」と声をかけてきました。
私が「お父さん元気になったのですか?」と聞くと、「先日亡くなったんですよ。父は鯛の刺身が好きだったので、初七日の法要の時に豪華な鯛の姿造りをみんなで食べようかと思って」と言うのです。
普通なら良い話ですねと返しそうなところですが、私は「それなら鯛の姿造りはやめておいた方がいいですよ」と言いました。
タイ姿造り

訳が判らないという風で、驚いた顔をしている彼女に、「鯛の姿造りは鯛の尾頭(おかしら)付きになるので、特別おめでたい時に作るものなのですよ。初七日に集まるのがご兄弟だけなら構わないかも知れないけれど、お父さんが亡くなったばかりだし、親戚の叔父さんや叔母さん達も集まるのなら変な風に思う人がいるかも知れないからやめておいたほうが無難ですよ」
と私が言うと、彼女はせっかく良い事を思いついたのにまさか魚屋さんで否定されるとは思ってもみなかったという様子で、どうすればいいの?という顔を私に向けている。
そこで「鯛の刺身が好きだったお父さんのために、鯛を多めに入れて豪華な感じになるように刺身の盛り合わせを作るので、それでどうでしょう?」と提案して了解を得たのでした。

それから数年経った今でも彼女は毎日のようにやってきて魚を買い物かごに入れると、こちらにに軽く会釈をして帰っていくのです。


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エソミンチ
エソのミンチは卵や小麦粉などのつなぎを使わなくても適当な量を手に取りギュっと握るだけで簡単に固まって、そのままお吸い物や煮物や天ぷら等、どんな魚料理にも使えるのでとても便利です。
最初にほんの少量の塩を混ぜ込んでおくと一層味が良くなります。

もちろん他の魚のミンチのように小麦粉やパン粉や卵などと混ぜてもおいしいですし、つなぎや野菜を混ぜ込む事でそのまま使うよりも柔らかくしたり さつま揚げ風にしたりも出来ます。
エソ
エソという魚は味の良い白身なのですが、そのままの姿で店頭販売したり刺身用で販売することはほとんどありません。

理由は二つあります。
まず最初に、細い沢山の小骨が身の中にあることが挙げられます。
そのままでは刺身に切ったり、煮たり焼いたりすると小骨が気になって美味しく食べることが出来ないので手っ取り早くミンチにして売ることが多いのです。
開いてハモのように骨切りをしてフライ用にしたり、うまく小骨を抜いて刺身にする店もありますが、そういう細かい作業をしてくれる店は貴重だと言えます。

もう一つの理由は、腹の内容物が痛むのが早い事です。
エソはかなり大きな魚を丸飲みにするので腹を捌くと溶けかかった魚が出てきます。 これが時間の経過とともに腐敗(発酵?)してその匂いがエソの身に移ってしまうので、市場から店に持ち込んだエソは出来るだけ早く頭を落として内臓を取り除く必要がありますから、そのままの姿で店頭に並べることはほとんどありません。
特に夏は、獲れたての新鮮なエソを市場で仕入れた時に氷にまぶしていなかった場合、店に持ち帰って捌くと既に腹の中が臭くなり始めている事があるほどですから、そのままパック詰めして店頭に並べれば夕方までには腹が臭くなってしまうのです。

私の店では、以前は新鮮なエソを三枚に下ろして皮を剥ぎ、細かく刻んでから包丁の刃でトントンと叩いて生食用のエソのたたきを作って売っていました。 ワサビ醤油で刺身と同じように酒の肴にしたり、ご飯の上に乗せて食べるとおいしいのです。
しかし、近年は昔よりも食品衛生の管理に神経を使う上に、前述のようにエソの腹の中は非常に傷みやすいので生食用の販売は自主的にやめてしまいました。

それでも以前はエソのミンチを売っていると「生で食べてもいいの?」とお客様から聞かれることが度々あり、そういうお客様には「今日のエソは特別新鮮だったので生食しても大丈夫ですよ」と教えてあげていました。 たたきにするよりも食感が多少落ちますが、小骨に関してはミンチの方が全く気にならないし味は同じですから。
そうは言ってもミンチにする時には沢山のエソをまとめてミンチにしますし、一匹でも鮮度の怪しいエソが混じっている場合には生食は出来ませんのでエソのミンチは全て加熱用として販売します。

ここ数年で「エソミンチを生食できるの?」と言う人は減ってしまい、最近はほとんど聞かれることがなくなってしまいました。
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魚市場をうろついていて見かけたサメの様子がいつもと違うことに気付いた。
あれ?サメってこんなかわいい顔してたっけ?
ツノザメ
目がくりくりと丸いし鼻先も丸くて、なんだかヌイグルミで作ったような造形に見えるんだけど色合いはいつもと同じ・・・?
いつも見ているサメはどんなだったっけと探して比較してみる。
シロザメ
こちらは普段よく見かけるシロザメ。 質感や色合いは同じように見えるけど、顔つきがこれぞサメって感じで全く違う。

顔つきの他に違いはないかと最初のサメをもう一度よく観察すると、背びれの前方に大きめのトゲ?がある。
ツノザメの角1
サメの背びれは二つあるのでもう一つの方の背びれを見ると、こちらにも同じようにトゲがある。
ツノザメの角2
このトゲと鼻先が短いことを頼りにネットで検索すると、ツノザメ(ツマリツノザメ?)らしい。

ツノザメ
それにしても、なんだか ちょっとかわいい。

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