風水渙
2019年03月03日
梅が満開に咲いていました。
冬の終わりと、春の訪れを告げる、「かつて」と「これから」を繋ぐ花。
僕は、この梅の花が好きだ。
この美しき花の名を配した易がある。
「梅花心易(ばいかしんえき)」という。
筮竹(ぜいちく)や硬貨、サイコロなどの道具を使わず、目に見えるもの、聞こえるものなど自然現象そのものを占機と捉え、卦を立てるもの。
決して再現性のない連続した時の流れの中で、その"瞬間"を切り取る、まるで居合のような易だ。
先日、易講座の受講生の女性が、窓の外の雨と風を見つめながら、ふと、呟いたのを聴いた。
「・・風水渙(ふうすいかん)」。
たった三文字の風雅。
これほどまでに洗練された、美しい詩があるだろうか。
易経59「風水渙」
渙は亨る。
王、有廟に仮る。
大川を渉るに利ろし。
貞に利ろし。
なんだか、折に触れて僕は、この卦と縁があるようだ。
イギリスへ一人旅に行った時にも、この卦が示唆をくれた。
ある人がふと詠んだ、短い詩をたまたま僕が聴いて、それが、僕にとっての、問いの応えとなる。
そこに確かに感じられる、内と外の世界の、秘められたつながり。
・・外応。
この宇宙は、乱雑なカオスではなく、秩序あるコスモスなのだと、そっと、腑に落ちる。
易は、その瞬間に立ち会える、物語だ。
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k_toshi444 at 01:16
2018年04月22日
先々週ですが・・
イギリスへ行ってきました。
ドイツに続く、人生二回目の海外旅行。
今回も相変わらずのひとり旅。
※搭乗口が「111」、なんとなく幸先の良いスタート!?
ドイツでは入国審査で荷物全部調べられる事件が起きたけど・・、
(しかも人生初海外旅行での洗礼。。)
イギリスはすんなり入国させてくれました。(たぶん当り前です)
団体ツアーでもなんでもなく、ひとり旅なのは、自分の世界を広げるため。
僕にとって自分の世界を広げるというのは、自分の中にある「怖い」を克服すること。
予定が決められた、守られた旅行ではなくて、チャレンジをしたかった。
ドイツひとり旅の時にも書いたけど、40歳を過ぎてから初めての海外旅行って、学生時代からいろんな国に旅行に行ってる人からは、きっと笑われるかもしれない。
でも、僕にとっては、気持ち的にも、経済的にも、今だからこそできたって、そう思える。
僕はずっと、小さい頃から、怖いことに対してとても臆病に生きてきた。
人間関係、仕事、恋愛、すべてにおいてそうだった。
息が止まるような大胆な行動をしたのは、7年前の独立の時だけだ。
もう、止むに止まれず、僕の人生はこんなもんじゃないって、心の深奥に猛り狂う、強烈な自己獲得への意志。
それだけで、何のツテもない東京へ飛び出してきた。
そして、仕事を辞めて、独立して、自分の中の「怖い」に向き合っていくたびに、それに比例して、人間関係も、仕事も、収入も、自分の人生が大きく広がって、自由になっていくことを経験した。
40歳になる時、今まで行ったことのなかった海外に行ってみようって思った。
若い時に海外に行きたくても行けなかったのは、主に経済的な理由。それとやっぱり、言語が通じない、文化もまったく違う、未知の世界への怖さだった。
なんでイギリスなの?なんでひとり旅なの?って、いろんな人に聴かれたけど、理由は海外というものに慣れたい。極論すると、それに尽きる。
雑誌じゃなくて、テレビじゃなくて、世界をこの目で見たかった。世界をこの足で歩いてみたかった。
自分で働いたお金で、自分の意思で、「怖い」をやってみること。経験すること。
それには、コンダクターに守られていてはいけない。
それには、恐怖を分割できる頼れる友人がそばにいてはいけない。
だから、ひとりで行こうって思った。
そのはじめは、仕事が東洋思想だから、真逆の「西洋」って思ってた。
その橋頭堡が、一番興味があったドイツ。
次が、このイギリスだった。
だって、きっとビールが美味しいから・・。
(どんな理由だ)
イギリスに着いて、バーに入ってみようと思った。
ドイツの時でも、バーはなんとなく勇気がなくて入れなかった。
バーに入ろうとするだけで、入り口に立つだけで、怖くて心臓がドキドキした。
何回も、入り口を行ったり来たりした。
日本で言えば、例えるなら、ガストの入り口で「どうしよう、やばい、こわい、」って言いながらドアを開けたり閉めたりしているあやしい人だろう。(完全に不審者です・・。)
でも、足を少しづつ前に出して、勇気を振り絞って入った。
バーの中は、六本木より外国人ばかりだった。(当たり前の意味不明です)
入ってみたはいいけど、どうしていいのかわからず・・、とりあえず空いているテーブルに座った。
そして、テーブルに置いてあるメニューが暗号で戦慄・・。(・・。)
恐る恐る手をあげたら、店員の金髪の女性が来てくれて、笑顔で注文を聞いてくれた。
なんだかそれだけで、とても安心した。
僕「・・ビール、プリーズ。」
店員「エール?ラガー?×××?×××?」(「×××」は全く聞き取れず・・。。)
僕「エール・・、プ、リーズ。」
しばらくして、店員がビールを持ってきてくれた。
コーラでもなく、ワインでもなく、お願いした通りのビールだった。(当たり前です)
僕はイギリスのバーに入って、ひとりでビールを頼んで、飲むことができたんだ。
きっと世間的には笑われるほどしょぼいことだけど、でも、僕にとってこれは大きなチャレンジだったんだ。
そのビールの、美味しかったこと。
英語も喋れないし、注文の仕方もわからないし、チップとかルール知らないし、お店の前をあんなに行ったり来たりしたけど、入ってみたらなんてことない。
中は、おしゃれな英語のガストじゃないか。(じゃないやろ)
※調子に乗って二杯目。(笑)
この経験値から、僕はどんなお店にも怖がらずに入ることができるようになった。
カフェ、バー、レストラン。
そして、お店の人とも笑顔で片言でお話しした。
いろんな乗り物にもチャレンジした。
地下鉄、タクシー、高速列車。
僕はこれまで、海外のタクシーは必ずナイフを突きつけられてぼったくられるシステムだと思ってた。(どんなシステムだ)
だから、ドイツでも乗らなかった。
でも、勇気を出して乗ってみたら、これもなんてことない。
料金は適正で、運転手さんもマフィアじゃなかった。(当たり前です)
ツアーじゃないので、イギリスでの行き先は決まってないから、毎日易で卦を立てて、それを参考に行くところを決めてた。(笑)
時空が決める行き先に行く。
ドイツでもそれをやって、導かれたのがケルンだった。
※ケルン大聖堂。
イギリスで、この日の朝立てた卦は易経59番目の卦「風水渙(ふうすいかん)」。
なんと、ドイツの時に立った卦と同じ。
卦辞
渙は亨(とお)る。王、有廟(ゆうびょう)にいたる。大川を渉(わた)るに利(よ)ろし。貞(てい)に利ろし。
「有廟」は先祖を祀る荘厳な建物。
イギリスで有廟のイメージに合う建物といえば教会しかない。
時空はどれだけ僕を教会へ行かせたいのだろう?(ルーツがあるのか!?笑)
「大川を渉るに利ろし」だから、テムズ川を渡ってみる。笑
たしかに昨日までは天気が不安定で雨が降ってた。だから近場だったんだけど、でも、この日は快晴でまさに遠出日和!
という訳で、テムズ川を渡り、ロンドンから少し電車で遠征してカンタベリーへ。
イングランド国教会の総本山、カンタベリー大聖堂がある場所。
※イギリスの高速列車「Javelin」
Javelinの切符の買い方がわからなかったので、それと英会話に自信がなかったので、紙に行き先を書いて、切符売り場の方に渡すと、ちゃんと気持ちを理解してくれて、カンタベリー行きの高速特急券を渡してくれた。
駅が広くて乗り場がわからず、通行人の老夫婦をつかまえて、チケットを見せながら身振り手振りでダンサーのように聞いた。
老夫婦も僕の質問を理解してくれて、ゲートの行き先を指差してくれた。
しゃべれないなら書く。
書けないなら踊る。(意味は不明)
それでなんとかなると知った。
でも、席が指定なのか自由なのかもわからず、空いてる席にずーっと不安そうに乗ってた。(・・。)
誰も来なかったので、きっと自由席だったんだ・・と信じよう。。(・・。)
Javelinに乗って遠征したカンタベリー。
のどかな田舎町。
街を歩き・・
路地を抜け・・
カンタベリー大聖堂へ。
内部装飾の美しさに言葉を失う・・。
信仰の凄まじさを思い知らされる。
西洋すごいって思った。
・・東洋がんばれ。(おいっ)
※イギリスで出会った素敵な樹木たち。
恐怖は、自分の妄想の中で勝手に増幅しているもの。
やってみたら、飛び込んでみたら、いがいとなんてことない。
怖れは、五行では「水」、八卦では「坎」。
「水」は裂け目、穴、落ちる、という通過儀礼であり、産道のメタファーである。
五行の生成順 水⇒火⇒木⇒金⇒土。
「水」という恐怖を通り抜けると、そこから初めて、物語は始まる。
六十四卦でいうと「水雷屯(すいらいちゅん)」。
以前書いたブログの抜粋。
易経六十四卦の配列は、
「人生の雛形」を表していると言われる。
まず、
1、乾為天(けんいてん)全てが陽で構成される卦
2、坤為地(こんいち)全てが陰で構成される卦
この純陽、純陰の「乾坤」の働きから生まれる最初の卦が、
3、水雷屯(すいらいちゅん)。
「水」は五行では黒(闇)、恐れの感情であり、険難を表し、
「雷」は衝撃、そして光。
生命は母親のお腹の中で水(羊水)に浮かんでおり、
何も心配なんてなくて、
全てに愛されていて、
宇宙とひとつだった。
しかし、
それがいつか子宮の収縮が起こり、
赤子は暗闇の細いトンネルへと押し出される。
小さな命が初めて抱く恐怖、バーストラウマ。
そして、
暗闇のトンネル(水)を抜けて
この世に生み落とされた瞬間、
その目に飛び込んでくるのは、光(雷)。
水雷屯は、
生まれ出ずる苦しみを表す卦。
しかし、
生まれたことを讃えるかのように四徳を備える、
神聖な卦でもある。
こうして、
64の"時"のストーリーが幕を開ける。
万物を形づくったはじまりの力。
そこに生まれた意識というものの覚醒。
その意識全てが共有している、
巨大な沈黙の場というべきもの、
その"始まりの意図"への畏怖と接近。
一生をかけて向き合っていくだけの、
壮大な物語の神秘とロマンが、
この「易経」という古典にはある。
・・きっと、僕の魂は、ずっと待っててくれてた。
いつ新しい物語がスタートしてもいいように、僕の魂はいつもスタンバイしてくれていたんだ。
恐怖で宇宙をしぼませ、壁を作り、閉じ込めるのではなく。
誰とも比較せず、自分のペースで、一つづつ「怖い」を越えていけばいい、と。
怖れへの挑戦の、その偉大な一歩を。
新しい物語のスタートを。
生まれた瞬間から、きっと、ずっと、待っててくれたんだよね。
何歳になってからでも、物語は始められる。
耳をすませば、その水雷屯の無垢なる鼓動が、きっと感じられるはず。
自分という小宇宙が、どれだけ広くて、そして、どれだけ自由で、そして、どれだけ美しいかを知った旅。
世界は、とても優しかった。
そして、世界は、とても広くて、そして、とても美しかった。
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k_toshi444 at 08:48