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大会名:UCI U23 Road World Championships
開催場所:アメリカ・リッチモンド
開催日:9月25日
カテゴリー:U23
コース:16.2km×10周=162km
天候:曇り時々雨
出走人数:169人
リザルト:45位+0:48(完走130人)

とうとうやってきたこの舞台。
長い月日をかけこの日のために準備してきた。コンディショニングもうまくいき、シーズンを通して一番調子が良いと感じていた。
不安がなかったと言えば嘘になるが、世界各国の強豪国に肩を並べて戦ってやろうという強い挑戦の気持ちが僕たちナショナルチームにはあった。

レースは街、そして郊外を通る周回コース16.2kmを10周の162km。
コー ス前半は3車線の広い道を緩く上りながら直進。道は荒いタイルで出来ていて自転車は思うように進まない。その先でUターンで折り返し再び同じ路面の道を下 る。途中直角コーナーを幾つか通過しそのメインストリートから逸れながらも再び元の直線に戻る。戻ってすぐにまた郊外へ向けて下っていく。ここの下りは道 も悪く、穴もある上にハイスピード。道幅が減少しながら一気にブレーキングで直角コーナー。一旦道幅が一車線半程になり再び直角コーナーで線路沿いの二車 線道路へ。途中首都高速のC1環状のような中央分離帯なども挟みながら高速のヘアピンコーナーへ。
そしてヘアピンコーナーを抜けるとダラダラでもキツい上りが始まりいよいよリビーヒルパークの石畳み登坂へ。
石畳みが終わると僅かな平坦を挟み一気に下り直角コーナー。直角コーナーを3つ曲がると再び石畳み23番通りの上りへ。
それを越えるとすぐに下りへ。
直角コーナー二つ抜けると最後の上りガヴァナー通り。ここも見た目以上に路面が重く、尚且つビルの間から吹き抜ける風が厳しい。
そして一見上り終えたように見えるがダラダラと上りながらゴールライン、という周回コースだ。

今回の作戦はあらかじめ言われていた通り、小石選手をエース・軸にして動く作戦。
近 年のU23のネイションズカップなどに多い『前に逃げている少人数のグループを集団で捕まえてしまうのではなく、レース終盤のキツいポイントで強い選手だ けが力で前に抜け出し前グループに合流。そのまま最後まで逃げ切ってしまう』という展開を想定しての作戦だ。この一番重要な勝負どころでしっかりチームで 動き、最終局面ペースアップしキツイところから抜け出すトップ選手の中に小石選手を送り込むのが僕らアシスト陣の役割。
もちろんそれまでにも小石選手が極力脚を使わないようにチームで固まって動き、アシストすることが必要になる。
今回のレースは残り3周に入る前のリビーヒルの上りからが勝負所だと読み、レース前のミーティングで確認した。また浅田監督からは石畳み区間は後ろにいると落車ストップなどに巻き込まれるので特に前半は集団前方で上るように言われた。

ジュニアのオランダ以来3年ぶりに立つこの大舞台。

会場の設備、実況、撮影、雰囲気全てが今シーズンの中で間違いなく最高のものだった。

観客の熱狂的な声援を受けスタート。
スタートすると同時に鳥肌が立つのを感じた。
その時に初めて今自分は世界の舞台に立っているのだという事実をリアルに感じた。
やってやろう!そう改めて思いながらのスタートだった。

最初の1周目はかなりピリピリとしたムード。
位置取り争いも激しく集団も安定しない。
落 車に繋がる大きなアクションや、実際に落車が発生するなど非常に危険な雰囲気であった。僕は皆を引き連れて先頭まで上がったつもりだったが実際には単独に なってしまった。危険回避のためにもなるべく前を維持し、リビーヒル前では集団端からスピードを上げ先頭で石畳み区間に入る事ができた。
先頭で石畳みに入ると思ったより楽に感じた。試走の時より何倍もうまく石畳みを走れているし、何しろ自分の好きなラインで駆け抜けられるのは非常に心地が良かった。
そのまま二つ目の石畳み、23番通りの上りも前方で通過。決して楽ではないが想像していたよりも楽であった。
ゴール前のガヴァナー通りの上りは比較的速いペースだったが前方の先頭が見える位置で通過。2周目に入る。
逃げたい国がアタックを繰り返し集団のスピードは依然落ちていないが、雰囲気はだいぶ落ち着きを取り戻した。
2周目の石畳み区間も集団前方で入る事が出来、問題がなかった。
しかしやはり後ろで入るとキツいのだろう。周回を増す毎に最初の石畳み区間、リビーヒルパークの上り口での争いが激しくなった。
ペース・雰囲気はというとだが、主要国は脚をなるべく残す動きをしており、弱小国のみの数人が逃げればスルー。そこにライバル主要国が入ろうとすれば全力で阻止、というような動きをしていた。スピードの強弱はあるもののそこまで速いペースではなかった。

3周目に入るところで少しスピードが上がる。
フランスとベルギーが逃げに乗せようという動きをし、この動きにより集団にも火がつく。
リビーヒルパークの上り口の位置取り争いは何とか前で切り抜けたが一周目の時程の余裕はなくなってきた。
速いペースのまま4周目へ。

位置取り争いも激しくなり、中々先頭で位置取るのは難しくなってきた。こうなれば尚更チームで動くメリットが出てくるのだが日本チームのメンバーが周りに見えない。
なぜだ?どうしてだ?という疑念が心の中でモヤモヤし始める。
リビーヒルパークの直前ではなんとか岡選手と巡り会い、共に協力しかなり前方に位置取れていたのだが集団の大きな動きにより落車が発生。僕もその影響を受けてしまい集団最後尾で石畳みに入ってしまう。
最後尾には小石選手、面手選手、徳田選手が見えた。しかも運が悪い事に次の23番通りの石畳みでは落車渋滞が発生。
僕 を含めなんとジャパンチーム全員が集団最後尾で足止めをくらい、大きなタイムロスをしてしまう。僕は落車が見えた瞬間に上りに入るのをやめ、渋滞解消のタ イミングを見計らってスピードをつけてから石畳みへ突入。自転車を押して上っている人たちをかわし、やっとの思いで石畳みを越え、下りに入る。
集団の前方は依然ペースは上がったままで縦長に伸びている。遥かか彼方まで伸びた集団を目指してひたすら耐える。

5周目に入るホームストレートも一列棒状。
ビルの間から吹き付ける風が横風に変わり、僕らを苦しめる。
かなりキツさを感じたが身体は調子が良い。
何とか追いついたところで集団もチョロ逃げを吸収しペースダウン。
序盤から出来ていた逃げにドイツ、イタリアが送り込まれたようで集団はひと段落、安定を取り戻す。
ここで改めて周りを見渡すと日本チーム5人全員が後ろで集結してしまっている。
こんなことではダメだ。
エースの小石選手は比較的集団後方で走り、要所要所大事なところで気付くと前に上がっていてヒョイっと勝ち逃げに乗っているという独特な彼にしか出来ない走り方をする。
今までのレースでそれを見ていてすごいなあと驚嘆していたが今日のレースに限って言えば戦法を変える事が得策に思えた。
現に今脚を使ってしまったし、他の周回を比較的前で走っていたので如何に前が楽かも僕はわかる。
小石選手には今このゆっくりになっているタイミングでみんなで前に上がって上り口を前で位置取るように話を持ちかけるが、小石選手は前に上がる事を断わられてしまった。
それでは小石選手のアシスト出来ればと思い後ろで石畳みに入ってみるもののやはり後ろはトラブルなどでストップし引き伸ばされて苦しめられることの繰り返しであった。
このままでは今の僕の力ではゴールまで持たないし、最終局面まで残らなければ小石選手の助けることすら出来ないと思い再び前で走りその前方の位置で待ち小石選手が上がってくるタイミングで何か手助けしようと決めた。

6周目に入り再び前に上がる。
この周回の石畳みは先頭では入れず集団中程でこなした。やはりもっともっと前方の位置方が楽である。
7周目に入り次の周回の石畳みでそろそろやばいのでは(ペースアップがあるのでは)ないかと思いより一層気合を入れる。
前で手を挙げて日本チームに前に上がるように指示を出すが誰も上がってきてくれない。
このままもし集団が石畳みなどで割れてしまえば強豪国のみが前に残り日本チームが後ろにゴッソリ取り残されてしまう危険性がある。そうなれば4周目の上りの失敗の再来である。
僕は何を目的として後ろに居るのかわからずその疑問をぶつけたかったが、一旦後ろに下がって話しに行く程の余裕がない。
そのまま前で待機。
7周目の石畳みが始まる。
かなり前方で上ることができ、そのまま二個目23番通りの石畳みへ。
ガヴァナー通りの上りではペースが落ち着き淡々と上る。やはり前に居ると楽にレースの流れに乗っていくことができる。
8周目に入り次は嫌でも勝負どころになる。
依然位置は下げずに前で位置取る。
次の石畳みは絶対に後ろで入ってはいけない。ここでも日本チームが上がってくることなく結果僕一人で位置取ることに。
もっと日本チームのために貢献したい!その気持ちはあるものの後ろに居られてしまっては助けようにも助けることが出来ない。
依然アシストというアシストが出来ていないということに変な罪悪感を感じながらひたすら上がって来てくれることを願う。
次は勝負どころな"はず"なのだが…
結局単独で集団10番手あたりでリビーヒルパークの上りに進入。いい位置でこなすことが出来た。そして23番通りの上りも通過。
やはりペースは上がり、次のガヴァナー通りの上りも速いペースで通過する。
しかしあくまで組織的ペースアップであって、いつものネイションズカップの時のような後ろを引きちぎって自分達だけが前に追いついてやろうという意思はトップチームから感じられない。これはもしかすると集団一団でゴール向かう展開なのか?と思いながらラスト2周回に入る。
ここで小石選手が不運の不運にもスローパンク。既に戦えない状態にあり、今集団に残っているのは僕と面手選手だけであるということを面手選手から告げられた。
結局何のアシストも出来なかったが、切り替えて次は自分が戦う事を考えなければならない。


気合いを入れ直し、頭をシフトさせる。


話し合った結果、次の上りはお互い好きな走り方で脚を溜め、最終周の石畳み前で面手選手に全力を出し切って前に引き上げてもらいそこから僕が単独でゴール勝負へという作戦に。この作戦であれば良い成績が狙える自信があった。
リビーヒルパークの上り口が近づく。
皆殺気立っており、上り口向かっての位置取りが今までで一番に激しい。
横一線の誰一人譲らない状況でリビーヒルパークの石畳みに突っ込んでいく。
上り口はまさにカオス。
戦争のようにお互いを蹴散らしあいながら上っていく。必死に踏むがそれでも集団真ん中あたり。
次の23番通りの上りは余力がなく踏めなくなる選手が出始め進路を塞がれる。
そういった事もあり集団は中切れ多発。
僕も集団後方の中切れに遭ってしまい自分で埋めるしかなくなってしまう。
ローテーションを回し、なんとかガヴァナーの上り中腹で集団復帰。
しかし集団もアタックし抜け出そうとする選手でスピードが上がっており一列棒状。ラスト一周の鐘の音はとんでもなくキツい横風に必死に耐えているところで辛うじて聞こえた。

あとちょっと あとちょっと耐えたら緩む
あとちょっと あとちょっとだ
あとちょっとーーーー

そう反芻し耐えつづけた。
なんとか耐えしのぎ残った先頭集団。
完全に次の勝負どころ(言わずとも石畳み区間)に備え今か今かと発車するのを待っているようだった。
Uターンをし下り始めたあたりからチームでの位置取りが激しくなりスピードも上がり始める。

いよいよゴールまでのカウントダウンが始まる。

ここで面手選手とも連帯を取り始め、前に上がる。僕が後ろから指示を出し、面手選手が言われた方向に動く。
スペインの遠征で練習し、経験した事がしっかりと活かせていた。
デンマーク・ノルウェー・フランス・イタリアの後ろに位置取る事に成功。
うまくいっている。
ここまでパラついていた雨も少し雨足を強めてきた。最終周の一番危ない時だと言うのに…

ハイスピードな下り区間を過ぎフルブレーキングで右直角コーナー。
明らかに殺気立った集団は密集度を変えずにコーナーに突っ込む。
ここで面手選手とはぐれてしまうが、線路沿いの二車線道路で少しずつ前にいる面手選手に再度接近。スピードはドンドン上がっている。なんとか後ろにつき直し
「面手さんつき直しました!!!」
と叫ぶ。
左端から荒い位置取りで前に上がる。
不運にもこのタイミングで集団に少し乱れが生じ前に他国の選手に入られてしまう。
はぐれた事に気づかずに面手選手は上がっていったため、自力で先頭まで上がるほかなくなった。もがいて面手選手の前に出る。
先頭はデンマーク、フランス。
ここの横に並ぶ。
前にヘアピンが見えてくる。
左端からさらにチェコが被せてきた。
チェコの後ろにつき、 ヘアピンに入る。
し かし雨足が強まり濡れた路面は驚くほどに滑った。先頭を牽いていたデンマークのTT世界チャンピオンが落車。ここに巻き込まれそうになり足止めを食らって しまう。後ろでも落車が発生しここに唯一のアシストの面手選手も巻き込まれてしまう。このタイミングで先頭の選手はアタック。
スピードが更に上がる。
失速した僕はまた何とか集団に後ろにつき直し、冷静に状況を見る。
リビーヒルの上り口まで残り数百メートル。
それまでに先頭に上がれなければ間違いなく可能性はない。
ここがゴールだと思え!ここがゴールでスプリントするつもりで前で入るんだ!そう自分に言い聞かせ冷静に必死に隙間を探す。
フランスの選手が隙間から上がるそぶりを見せた。
そこだ!!!
すぐに後ろにつき
「Go!!!!!!!!!!!!」
と叫ぶ。
そのままその選手が加速したところを交わし前に入り集団の10番手あたりで石畳みに進入。
雨で濡れた石畳みは今までとは全く違う地獄に変わっていた。

先頭で入ったベルギーの選手が加速の際に後輪を滑らせ落車。
それを見た後ろのニュージーランド選手がパニックブレーキで落車。ここに僕も絡まってしまう。
せっかく前で入ったものの、混乱をうまく避けることが出来なかった。

再乗車しても後輪がマウンテンバイクのレースのように滑って進まない。
集団はまさにパニック状態のカオス。
何 とかリビーヒルを抜けた頃には集団は縦一列。下りに入る前には中切れでブチブチのバラバラ。大きく3分割した集団は23番通りの上り口で一つになったが再 び石畳みで3分割。最後の石畳みは歯を食いしばって粘ったがここで既に僕は第3集団。
必死に遅れた数人でもがくが前には届かず第2集団から少し離れた位 置、45位でゴール。

今回世界選手権という最高峰の舞台の最終局面で少なからずチームとして動けたという部分は今まで出来なかった事が出来た非常に大きな進歩だと思った。それでも世界という壁は大きく、たらればを抜かせばやはり力及ばずという部分が浮き彫りになった。

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また来年のチャンスに向けて、まずは、アジア選手権に向けてまた練習計画を立てていこうと思います。

使用機材
フレーム:RIDLEY NOAH SL(サイズ:xxs)
ペダル:speedplay ZERO ステンレスシャフト
ハンドル: CONTROL TECH FUEGO HMS
アイウエア:CORAZZA-II
ヘルメット:OGK KABUTO MS-2
スポーツネックレス:CHRIO インパルスネックレス