◇相談とセットで解決図る
景気後退が鮮明になり、生活は厳しさを増す。債務を抱えていればなおさらだ。政府は昨年、多重債務問題改善プログラムを策定、これに沿って自治体などで相談と併せたセーフティーネット貸付制度が作られた。ただ、実施地域は少なく、制度拡充を求める声が強まっている。【亀田早苗】
この制度は(1)生活困窮者が多重債務に陥るのを防ぐ生活資金(2)債務整理資金(3)債務整理後に借金できなくなった人の生活再生資金−−を低利で貸し付ける仕組み。金融庁によると、都道府県単位の実施は東京都と岩手、福岡両県のみだ。東京都は今年3月、民間組織「生活サポート基金」に委託し、都内在住の多重債務者に、生活再生資金貸し付け事業を始めた。基金で相談を受け、債務整理が必要なら弁護士を紹介し、解決を図る。返済能力があれば中央労働金庫の融資をあっせんする。年利3・5%で、限度額は200万円。返済期間は6年以内だ。
会社員の男性(57)は5月に170万円を借り、月3万円ずつ返済している。男性は85年からリゾート開発会社に勤めたが、バブル崩壊で年収が400万円台に転落。2人の娘の教育費などをまかなうため消費者金融などから金策した。5年前、借金が計約350万円に膨らみ、初めて妻に相談したが理解は得られず男性は家を出た。債務は任意整理し月約5万円を返済している。しかし、妻子と自分の2軒分の家賃は計約20万円。妻子宅は家賃が滞り、強制退去させられた。男性は滞納家賃などを工面したが、債務整理後に借金できるのはヤミ金融しかなかった。万策尽きかけ、駆け込んだ区役所で同基金の存在を知った。
面談で収支バランスの悪さを指摘され、男性はアルバイトを決意。転職先の不動産会社で午前9時半~午後8時、午後9時~翌午前2時は書店で働く。収入約35万円のうち離婚した妻に月6万円、借金返済に計8万円が消えるが来夏には支払いが終わる予定だ。
「一時的に金があれば乗り切れるのに、多重債務者は相手にされない。相談先がなければ、自殺していたかもしれない」
東京都のモデルは、岩手県消費者信用生活協同組合が89年に始めた「消費者救済資金貸付制度」(スイッチローン)。県内の全自治体が預託金を出し、昨年度は5037件の相談があった。「グリーンコープ生協ふくおか」(本部・福岡)は06年8月に生活再生相談室を設置。今年4月から県との協働事業となった。
◇低所得者向け、各地社協でも
厚生労働省が都道府県の社会福祉協議会に委託し、低所得者や高齢者らに、生活資金を低利で貸し付ける「生活福祉資金貸付」もセーフティーネット貸付制度の一つ。各社協で所得制限など条件が異なるが、緊急に生活が困難になった世帯向けの「緊急小口資金」(10万円以内、年利3%)や、失業者世帯向けの「離職者支援資金」(月20万円以内、同)などが設けられている。
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■主なセーフティーネット貸し付けの連絡先
生活サポート基金 03・5565・1190
岩手県消費者信用生協 019・653・0001
グリーンコープ生協ふくおか 092・482・7788
グリーンコープ生協やまぐち 083・229・2955
グリーンコープ生協くまもと 096・243・2100
グリーンコープ生協おおいた 097・535・7777
*生活サポート基金は原則都民が対象。各生協は原則的に組合員が対象。加入には2000円以上の出資金が必要。グリーンコープ生協ふくおかは、非組合員向け貸し付けも実施。相談は無料。
毎日新聞 2008年11月20日 東京朝刊
景気後退が鮮明になり、生活は厳しさを増す。債務を抱えていればなおさらだ。政府は昨年、多重債務問題改善プログラムを策定、これに沿って自治体などで相談と併せたセーフティーネット貸付制度が作られた。ただ、実施地域は少なく、制度拡充を求める声が強まっている。【亀田早苗】
この制度は(1)生活困窮者が多重債務に陥るのを防ぐ生活資金(2)債務整理資金(3)債務整理後に借金できなくなった人の生活再生資金−−を低利で貸し付ける仕組み。金融庁によると、都道府県単位の実施は東京都と岩手、福岡両県のみだ。東京都は今年3月、民間組織「生活サポート基金」に委託し、都内在住の多重債務者に、生活再生資金貸し付け事業を始めた。基金で相談を受け、債務整理が必要なら弁護士を紹介し、解決を図る。返済能力があれば中央労働金庫の融資をあっせんする。年利3・5%で、限度額は200万円。返済期間は6年以内だ。
会社員の男性(57)は5月に170万円を借り、月3万円ずつ返済している。男性は85年からリゾート開発会社に勤めたが、バブル崩壊で年収が400万円台に転落。2人の娘の教育費などをまかなうため消費者金融などから金策した。5年前、借金が計約350万円に膨らみ、初めて妻に相談したが理解は得られず男性は家を出た。債務は任意整理し月約5万円を返済している。しかし、妻子と自分の2軒分の家賃は計約20万円。妻子宅は家賃が滞り、強制退去させられた。男性は滞納家賃などを工面したが、債務整理後に借金できるのはヤミ金融しかなかった。万策尽きかけ、駆け込んだ区役所で同基金の存在を知った。
面談で収支バランスの悪さを指摘され、男性はアルバイトを決意。転職先の不動産会社で午前9時半~午後8時、午後9時~翌午前2時は書店で働く。収入約35万円のうち離婚した妻に月6万円、借金返済に計8万円が消えるが来夏には支払いが終わる予定だ。
「一時的に金があれば乗り切れるのに、多重債務者は相手にされない。相談先がなければ、自殺していたかもしれない」
東京都のモデルは、岩手県消費者信用生活協同組合が89年に始めた「消費者救済資金貸付制度」(スイッチローン)。県内の全自治体が預託金を出し、昨年度は5037件の相談があった。「グリーンコープ生協ふくおか」(本部・福岡)は06年8月に生活再生相談室を設置。今年4月から県との協働事業となった。
◇低所得者向け、各地社協でも
厚生労働省が都道府県の社会福祉協議会に委託し、低所得者や高齢者らに、生活資金を低利で貸し付ける「生活福祉資金貸付」もセーフティーネット貸付制度の一つ。各社協で所得制限など条件が異なるが、緊急に生活が困難になった世帯向けの「緊急小口資金」(10万円以内、年利3%)や、失業者世帯向けの「離職者支援資金」(月20万円以内、同)などが設けられている。
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■主なセーフティーネット貸し付けの連絡先
生活サポート基金 03・5565・1190
岩手県消費者信用生協 019・653・0001
グリーンコープ生協ふくおか 092・482・7788
グリーンコープ生協やまぐち 083・229・2955
グリーンコープ生協くまもと 096・243・2100
グリーンコープ生協おおいた 097・535・7777
*生活サポート基金は原則都民が対象。各生協は原則的に組合員が対象。加入には2000円以上の出資金が必要。グリーンコープ生協ふくおかは、非組合員向け貸し付けも実施。相談は無料。
毎日新聞 2008年11月20日 東京朝刊