株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

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株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版のeBook「株式需給の達人 基礎編と投資家編」を出版しました。
需給を制する者は投資を制す!

数式を使わないリスクの話

数式を使わないリスクの話(5 テールリスク)

数式を使わないリスクの話、今回はテールリスクを考えてみたい。
テールリスクは予測不能で起きる確率は非常に低いが、一旦起きたときの衝撃が大きい事象を指す。
少し前ブラックスワン(=テールリスク)という言葉が流行ったが、当時はリーマンショックの反省をもとに金融システミックリスクが議論されたいた頃だったのでみんなテールリスクに敏感じゃった。
テールイベントは、一般的には地震・津波や火山爆発などの予知できない自然災害、
国際情勢に影響を与える政権交代や戦争・紛争・大規模なテロ攻撃、金融システムを揺るがす債務危機や巨額損失事件などだが・・・ワシャ、運用者としてどこまで意識すべきかは疑問が多いと思う。

いくつかの例を振り返ってみよう。
2001年に起こったNYでの9.11のテロ。
大型飛行機が高層ビルに突っ込むという衝撃的な映像が流され全世界が震撼した。
アメリカ政治の方向を変えた大事件だったが、株価的にはすでに下落相場の途中だったため大きな影響はなかった。

1990年代、ヘッジファンド業界を席巻したロングターム・キャピタル・マネージメント。
言わずと知れたメリウェザーの作ったヘッジファンドだが、急成長し資産5兆円に25倍のレバレッジをかけ125兆円のポジションを運用しておった。
ところが、1997年のアジア通貨危機とそのあおりを受けたロシア危機でポジションがマタ裂きになり、破たん。
100兆円をこえる巨額なレバレッジ資金が焦げ付き、世界が一瞬凍り付いた。
しかし、株価的にはアジア危機からすでに大きく下落していたので大きな問題とはならなかった。

2011年の3.11東北大地震。
東北地方を襲った大地震、巨大津波で多くの家が一瞬にして流される衝撃的映像が世界を凍り付かせた。
東北地方に生産・物流・開発拠点を持つ多くの企業は生産中止を余儀なくされ、サプライチェーン全体がフリーズしてしまった。
完成品を被害地域の工場で作っている企業だけでなく、部品を被害地域で作り中国やアジアで完成品にして輸出しているような企業、物流拠点を被害地域に持っている企業など、多くの企業のサプライチェーンが分断され生産停止に追い込まれた。
しかし、そこは日本企業、わずか2-3か月で被害地域以外でサプライチェーンを復活させ、通常生産に戻った。
日本企業の迅速な対応で株価は一瞬2割ほど下げた程度で終わり、徐々に回復していったんじゃ。

その他、台風(ハリケーン)はよく起こるし、株式市場が致命的な暴落を記録したこともない。
アメリカのハリケーン被害は数億ドルに及んだが、ファンダメンタルをぶっ壊すほどではなかったためだ。

これらの例から言えることは、テールイベントでまず大切なことはあたふたしないことじゃ。
世界を震撼とさせた映像であったり、びっくりするような巨額な破たんであったり・・・と、真っ青になるような出来事が起こった時、いかに冷静にいられるかが運用者や投資家として最も重要なことじゃ。
もちろん、テールリスクを管理する方法もある。
VIX指数の先物を買ったり、行使価格の低いプットオプションを買ったりできる。
でも、常時やっているとコストがかかり、リターンを引き下げる。
テールリスクを管理したいなら、ワシが勧めるのは毎年の投資収益の10%程度を別途積立てておく方法だ。
これだったら、コストをかからないし再投資収益を少し引き下げるだけですむからじゃ。



数式を使わないリスクの話(4 リスク対リターン)

数式を使わないリスクの話(3)で書いたが、リスクは単に減らせばいいというものではなく、リスクに見合うリターンを上げているかが重要なのじゃ。
というわけで今回はリスク当たりのリターンを取り上げてみよう。

リスク当たりリターンの考え方は2つある。
一つは超過リターンをトラッキングエラーで割り算するという考え方。
3年あるいは5年程度の期間を使い、評価基準(ベンチマーク)である株価指数を上回った超過リターンをトラッキングエラーで割ったもので、この数値を情報レシオ、インフォメーションレシオを呼ぶ。
これは、ファンドマネージャーがどれだけのベンチマークリスクを取ってどれだけのリターンを上げたかを示す、ファンドマネージャーの成績表でもある。
通常、5年程度の期間というと、景気が良くなったり悪くなったり、金利が上がったり下がったり、いろいろ起こる時間の長さだ。
だから、情報レシオが1を越える成績はファンドマネージャーの合格ラインじゃな。
0.5以上1以下でも悪くはないが、0.5以下はクビ候補じゃ。

もう一つはリターン(細かく言うと無リスク資産のリターンを上回った分)をリスク(リターンのバラツキ)で割り算するという考え方。
これはシャープさんの考えたレシオで、シャープレシオと呼ばれている。
現在、無リスク資産のリターンはほぼゼロなので、リターンをリスクで割り算するだけなので計算も簡単じゃ。
簡単なので、いろんな資産の評価を横比較できるし、個人投資家には使いやすいものだろう。
たとえば、日本債券(リターン1.5%、リスク2%)でシャープレシオ0.75、日本株(5%、18%)で0.28、外国債券(2.5%、10%)で0.25、(外国株5%、20%)で0.25・・・と計算できる。
比較が簡単なことからどの資産を買おうかと考える基礎的な数字として使える。

ただし、情報レシオで1以上という好成績を続けるのは想像以上にむずかしい。
昔、情報レシオ1以上を10年以上続けたスーパーなファンドマネージャーがいた。
思えば2015年にドイツ証券のアナリストが決算前の未公表数字をもとに営業していた事実がバレて、金融庁が公表前取材を取り締まる通達を出したが、これが大きな変化の始まりだった。
それまでは予想より上か下かぐらいの感触だったらインサイダーを問われることがなかったが、これを境に一気に厳しくなった。
ほとんどの証券会社は決算前取材をやめた。


その辺からこのスーパーなファンドマネージャーもリターンが落ちてしまった。
こうした短期情報を使い、決算に向けたトレーディングで超過リターンを上げてきたからだろう。
スーパーなファンドマネージャーはたいていどこかにリターンを上げる裏技を持っているものだが、それがうまくいかなくなると・・・いかにスーパーファンドマネージャーでも苦戦するものなのじゃ。
このファンドマネージャーは環境変化に対応して再び高いリターンを上げ始めたが・・・特に外人ファンドマネージャーの中には日本企業のインサイダー情報でリターンを上げ、巨額ボーナスをもらっていた奴が多くいたが、彼らは全滅した。
この手の輩はだんだん市場から一掃されてきている。


数式を使わないリスクの話(3 分散投資)

今回は分散投資を考えてみたいのじゃ。
よく「卵は一つのカゴに盛るな」と言われる。
複数のカゴに入れておけば、一つのカゴを落として卵を割ってしまっても、他のカゴの卵は大丈夫だというわけじゃ。
しかし、この例はリスク管理という点では正確じゃない。
カゴ自体が同じところに置いてあれば、すべてのカゴが落ち、すべての卵が割れてしまうかもしれない。
現在では市場間の連動性が高くなってきているので、別の市場に入れてもすべて同時に下落してしまう可能性がでてきているからじゃ。

株式の保有銘柄数を増やしていくと、たしかにトラッキングエラーは低下していく。
しかし、リターンも株価指数にどんどん近くなっていってしまい、アクティブ運用の効果がなくなる。
たとえば、円高に強い内需株と円安に強い外需株の両方を保有すれば、円高のときは内需株がリターンを上げ、円安のときは外需株がリターンを上げる、どちらでも儲かるポジションといえるか?
答えはNOで、「円高でも円安でもたいして儲からないポジションになる」じゃ。
むやみにリスクを減らしていくと、リターンも減ってしまい、何のために運用しているのか訳わからなくなってしまう。
株式投資は、最後的に、自分がイケると判断した銘柄に集中的投資することじゃ。
ワシの経験ではそれがもっとも良いリスク対リターンになる。

リスクを管理するとは、単にリスクを減らせばいいという問題ではないのじゃ。
もっとも重要なことは、取ったリスクに対して十分なリターンを上げられるかどうかじゃ。
ワシが一般投資家に勧めるのは、リスクの3分散投資だ。
まず、投資資金を3等分して、最初の三分の一は高配当+低ボラの銘柄から選ぶ。
主に高配当銘柄やREITなどが対象になる。
次の三分の一は株価指数に入っているような業績安定した大型株から有望銘柄を選ぶ。
最後の三分の一は株価指数に入っていないボラの高い小型株から有望銘柄を選ぶ。

こうしたリスク水準を分散したポートフォリオは、株価指数の暴落場面では高配当部分がリターンの悪化を抑えてくれるし、急上昇場面でもある程度株価指数に追随することが可能だ。
それぞれのリスク水準で、リスクに応じたリターンを上げる銘柄選択できれば、投資効果は上がる。


数式を使わないリスクの話(2 トラッキングエラー)

トラッキングエラーという言葉、聞いたことあるじゃろか?
これは、ある株式ファンドのリターンが株式指数(日経平均やTOPIXのインデックス)のリターンからどのぐらいズレているかを示すものじゃ。
だから、インデックスファンドのトラッキングエラーは通常1%以下と極めて小さいし、ファンドマネジャーが運用するアクティブファンドのトラッキングエラーは2-10%と高い。
これでファンドのリスクの取り方がわかるのじゃ。

ボラが価格のバラツキ、リスクがリターンのバラツキであるのに対し、トラッキングエラーは株価指数のリターンからのバラツキを示すものじゃな。
でも、多くの投資家にとっては株価指数がどうなろうが自分のファンドが儲かればいいわけで、じゃ何故こんなモノを使うのか?
株価指数を上回るリターンを目標とするファンドマネージャーにとっては、株価指数のリターンは自分でコントロールできないモノで運用目標とはならない。
だから、ファンドのリターンから株価指数のリターンを差し引いた超過収益が目標だし、リスクに関しても株価指数からのバラツキ(トラッキングエラー)が重要なのじゃな。

ここ数年、多くのファンドでトラッキングエラーの数値が大きく低下してきている。
この数値の低下で、ファンドマネージャーはリスクを取った運用をしていないと顧客からお叱りを受けることも増えてきた。
ワシャ、これは、インデックス運用が巨額資金を集め巨大化すると同時に、個別銘柄がみんな同じように動くケースが多くなってきたからじゃと思う。
もしすべての銘柄が株価指数と同じ動きをすれば、どの銘柄を選ぼうが同じリターンとなり、トラッキングエラーはゼロになる。
これはアクティブ運用の死と呼べる状態じゃ。
では、アクティブ運用は死に向かっているのじゃろうか?

ワシャ、その反対じゃと考えておる。
世界中でインデックス運用は人気になり、日本でも浅知恵の評論家がコストの安いインデックス運用を勧めている。
そして、巨大なインデックスファンドが良い銘柄も悪い銘柄も関係なくすべて買い上げてしまった結果、個別銘柄の格差が小さくなり、トラッキングエラーが全体的に低下してきたんじゃ。
でも、ワシャ、ここに大きな問題があると睨んでおる。
インデックスファンドへの資金流入が限界にきた時、この状態は大きく変わり、個別銘柄の格差が急激に拡大し始めると読む。
その時は、良い銘柄と悪い銘柄の格差が一気に広がり、アクティブ運用が復活するはずじゃ。




数式を使わないリスクの話(1 リスクとボラティリティ)

ワシャ、統計とかこねくり回された数字をそんなに信用してない。
経験上数字に表れないところに重要なことが隠されている場合が多いからじゃな。
ということでな、今日取り上げるのはリスクじゃ。
リスクというと数式・統計の固まりのようなモノじゃが、数式を使わないで考えてみよう。

簡単に言うと、リスクはリターン(投資成果)のバラツキじゃ。
リスクが高い商品とは、大きく儲かったり、大きく損したりする場合が多いというのは本当だろうか?
同じ平均と分散(同じバラツキの度合い)でも、大きめのバラツキが恒常的に起こる場合とたまたま一回だけ大きく動いたためバラツキを大きくしてしまう場合もあるし、分布の中心がプラスのリターンの方に偏っていたり逆にマイナスの方に偏っている場合もある。
専門的にはリターン分布の尖度とか歪度の話じゃが、経験の長い投資家は「リスクが高いから大きく儲かる/損するというわけではない」ことを過去の体験でよく理解している。
表面上の分散や標準偏差の数字だけでなく、その裏にある特徴を経験的にとらえることが重要なのじゃ。

もう一つよく使う数字はボラ(ボラティリティ、変動性)だが、これはリスクと違いリターンのではなく、価格のバラツキのことじゃ。
つい最近のNY株の暴落時にも、このボラが急に高まったためボラの調整のため株売りが出たという相場解説もよく聞いた。
これはリスクパリティと呼ばれる株と債券など複数商品を組入れたバランス運用で、ボラが上がるとリスクを一定に保つため、ボラの高い株を売り/ボラの低い債券を買ったため株の下落が加速したという解説だ。
ボラの変動が様々な売買を誘発し、株の下落に拍車をかけたということじゃ。

でもボラは多くの評論家、投資家、専門家に誤解されている。
ある著名な年金コンサルタントは2月7日のHPに「ボラティリティというものは、上下動すると上がるもので、一本調子な上昇や、一本調子な下落では、ボラティリティは上がりませんと書いている。
しかしこれは全くの事実誤認で、実践経験のない机上の評論家だと自ら告白しているようなものじゃ。
なぜなら、ボラは価格が下落時に上昇し、価格の上昇時に低下するものだからじゃ。
これは人間の心理特性で、儲かる(上昇)時は落ち着いているが、損する(下落)時はあわてまくるのでこうしたボラの特性が出るということじゃ。
だからこそボラティリティ・インデックス(VIX)を恐怖指数と呼ぶ。

このボラの特性は、ボラが大きな変動要素の一つであるオプションによく表れる。
オプションをトレードした経験がある人は理解できるだろうが、コールオプション(買う権利)をロング(買い持ち)するプロはいないという事実だ。
プロは基本的にオプションをロングにしないが、強いていうとプットオプション(売る権利)ロング/現物ロング(プロテクティブプット)という戦略はありえる。
一般的にボラが上がるとオプション価値が高まりオプション価格が上昇する。
上昇時はボラの低下がオプション価値にはマイナスに働く一方、下落時はプラスに働く。
つまり、下落時しかボラは上がらないのでコール(買う権利)をロング(買う)する意味は全くないのじゃ。


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