株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版のeBook「株式需給の達人 基礎編と投資家編」を出版しました。
需給を制する者は投資を制す!

ソフトバンクの話

米ファンドにロックオンされたソフトバンク

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米投資会社のエリオットがソフトバンクに投資し、1~2兆円の自社株買いを提案しているというニュースでソフトバンク株が急伸した。
また、ウォールストリートジャーナルがソフトバンクのビジョンファンド2号は投資家が集まらず、規模を想定の半分に減額しソフトバンク自社の資金のみでスタートすると報じた。
さらに米国の訴訟でT-モバイルとスプリントの合併が認められる方向となった。
そして、決算説明会の席上で、孫さんが「潮目が変わった」と高らかに宣言した。

確かにソフトバンクは次のステージに入りつつあるという感じがする。
次のステージとは「エグジット(EXIT 出口)」だ。

まず第一のエグジットはT-モバイルとの合併が承認されそうなスプリント。
ソフトバンクが2018年4月にHPで乗せているが、合併比率がスプリント1株に対してT-モバイル0.10256株とすると、合併後の新会社をソフトバンクが27%を保有すると時価で単純に計算すると320億ドルとなる。
しかし、2年も前の話なので条件が変わってくるかもしれない・・・T-モバイルの株主ドイツテレコムは条件交渉を要求しているらしい。
合併後、ソフトバンクにとってはスプリントが持ち分対象から外れるので、バランスシートから切り離せる・・・あとは、いつ売却するかということになる。

第二のエグジットがビジョンファンドだ。
ビジョンファンド1号は昨年9月に投資期間を終了し、存続期間2029年までに償還する。
「88銘柄保有し、半分は利益、半分は損失」と孫さんは言っているが、2/3を保有する外部投資家からすればサッサと現金化してくれ!!ということだろう。
現金化を進めれば若干のプラスで逃げられるからだ・・・逆に長期に引っ張ったからと言ってリターンが増えるとは限らない・・・ファンドの外部投資家から見れば「たまらん」という感じだ。

第三のエグジットが通信のソフトバンクだ。
親子上場の強い批判を受けても行った子会社上場だったが・・・孫さん自身が「ソフトバンクは投資会社」と宣言している通りで、通信には興味がない、本体から切り離すという意味だ。
スプリントやソフトバンクなどの通信会社を保有するメリットを孫さんは感じていない・・・両方とも上場しているし、いつでも市場で売却できる・・・エグジットするだろう。

エグジット金額は合計で・・・ザっと・・・スプリントおよそ3兆円、ビジョンファンド3兆円弱(未実現損失7273億円+実現益146億円+投資額およそ3兆円強)、通信ソフトバンクの持ち分4兆円で・・・およそ9兆円程度の現金化が可能だ。

これを米ファンドが狙っている。
エリオットがソフトバンク株を3%保有していると報道されているが、3%程度の保有ではなんの権利もない・・・帳簿閲覧権がある程度で、株主総会も通せないし、普通決議の拒否権もない。
でも、エリオットだけじゃないかもしれない・・・米ファンド連中はこのエグジットの現金を狙うだろう。
すでに2兆円規模の自社株買いを要求しているが、数%づつ株を保有する米ファンドが徒党を組んで圧力を掛けてくるとワシは想像している。
この9兆円レベルのエグジット現金をぶん取ろうとするのは、十分に合理的な投資理由だ・・・株主の正当な要求だ。
しかし、米ファンドの要求にそって数兆円規模の自社株買いを実施すれば株価は上昇するかもしれないが、その後には膨大な有利子負債が残る。
現在、流動負債の中の有利子負債が3.5兆円、非流動負債の中の有利子負債が13.7兆円、合計17兆円・・・一部はスプリントの負債で、合併後なくなるかもしれないが・・・
米ファンドにとっては巨額の自社株買いに自分の保有株をぶつければいいだけなので、簡単に大きな収益を実現できる。

米ファンドはソフトバンクにロックオンしたと見る。



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意外だったアリババの急騰

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アリババが香港市場に上場し、大人気で急騰劇を演じている。
でも、これは新しい企業の上場=IPOではなく、NY市場に上場していた銘柄の重複上場=POなので、アリババ株を買いたい投資家はいつでもNY市場で買える状況での香港市場への上場だった。
なので、グローバル投資家にとっては強いて香港市場で買う必要がない・・・つまり、グローバル投資家が大挙して香港でアリババ株を買い漁るということは考えにくく、ワシはそんなに注目をしていなかった。
しかし、結果はPO(公募)での応札倍率が7倍となり、上場日にいきなり7.7%の上昇し、NY市場の換算価格を大きく上回った・・・しかも翌日のNY市場でアリババ株がさらに上昇し、次の日の香港市場でもアリババ株が一段と上昇した・・・正直、こんなに人気化するとはまるで読めでいなかった。
これはどういうことなのだろうか?

仮説としてはいくつか考えられる・・・
第一に、POの段階では香港での価格が176香港ドルでNY価格を2.9%下回る価格だったこと・・・これで割安な香港価格で買おうとする投資家が多く、公募の応札倍率の高さにつながり、上場後も人気化した。
第二に、将来の香港ー上海コネクトを通じて中国本土投資家が買ってくることを見越して香港や他の地域の投資家の買いが入った可能性だ・・・中国本土でもオフショア口座を香港に持っている富裕層は買いに入っているかもしれない。
第三に、アリババが調達した1.2兆円の公募資金が中国本土で投資されることで、北京政府がアリババ株を後押ししたかもしれにない。
第四に、アリババなどの海外上場の中国企業を中国市場へ戻す動きを加速化させるために北京政府が強いメッセージとしてアリババ株の急騰を意図した。

どれも推測にすぎない・・・でも、言えることは、投資理論や投資価値をあまり考える必要がない投資家が買ったということだ。
アリババ株は今回の急騰でPERが57.4倍にまで上昇した・・・同じ中国市場の巨大IT企業であるテンセント株はほとんど上昇していないのでPERは35.2倍にとどまっている・・・同じ業態のジャイアント企業なのにPERに大きな格差ができている。
また、世界のIT巨大企業であるグーグルのPERは28.1倍、アップルのPERは22.5倍とさらに低い。
アリババはNY上場だったのでGAFA企業のバリュエーションと比較されてきた・・・しかし、この香港上場によってGAFAとの比較感から自由になった・・・そして、ライバル企業と想定されたテンセントのPERを大きく上回ってしまった。
この大幅な割高感がありながら、ガンガン買われ急騰を続けるアリババ・・・投資価値をあまり考えない投資家が買っているのは間違いない・・・その背後に誰がいるのか?

アリババの収益構成を見ると・・・
中核リテール(Eコーマス、小売りや卸売りプラットフォームなど)は四半期の利益320億元と黒字だが、デジタル・メディア・エンターテイメント32億元の赤字、イノベーション事業30億元の赤字、クラウド事業19億元の赤字・・・中核リテールの利益が他の将来事業の赤字を支えている構図だ。
アマゾン(AWS)とマイクロソフトが牛耳っているクラウドベースのソフトウェア事業に照準を合わせ中国市場で事業を推進するとアリババは表明した・・・これはおそらく北京政府と一体的に推進されていく国家事業なっていくのではないだろうか・・・これを感じた中国の投資家が上場とともにアリババ株が買ったということも考えられる。
いずれにしてもアリババは北京政府と一体化していく・・・これを反映したのが今回の株高だったのではないだろうか?

アリババ株の議決権で30%保有するソフトバンクだが、孫さんの頭の中は複雑なのでフォワード契約などでヘッジしている可能性もある。


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サウジアラムコの国内上場とグローバル投資家

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サウジの皇太子、ムハンマド・ビン・サルマン(以下MBS)氏が方向転換し、世界最大の石油会社サウジアラムコのグローバルIPO予定を変更し、サウジ国内市場に上場する。
サウジアラムコの時価総額は当初2兆ドルと想定されていたが、より現実的に1..6~1.7兆ドルをややバリュエーションを引き下げた。
しかも、サウジ国内IPOで上場される株式数は、全株式のわずか1.5%にとどまると言う・・・当初のグローバルIPOでは5%程度の1000億ドル以上を想定していたので、250億ドルのIPO規模は当初グローバルIPOの四分の一以下の規模でしかない。
12月5日に最終条件が明らかになる・・・その後すぐに、おそらく12月上旬には上場するだろう。

この大型上場に対してグローバル投資家がどう反応するかは、12月の市場需給に大きく影響する。
なにせ、世界最大のオイル企業であり、想定より低いとはいえ時価総額はアップルを大幅に抜く・・・しかも、IPO規模としても250億ドルとアリババ並みの大型上場だ。
インデックス投資が主流のグローバル投資家にとっては、無視できない存在となるのは間違いない。
しかし、サウジ国内上場で通貨はリアル、しかも取引の難易度が高い・・・となると、MSCIに組み入れられるには時間がかかるかもしれない・・・組入れのタイミングを見て、サウジアラムコ買い/エクソンなど石油大手売りを仕掛けてくる。
そのインデックス組入れのタイミングが問題だが、サウジ市場のローカル上場でありしかも市場での流通株式が発行株数の1.5%しかないのでしばらく時間がかかると想定できる。
大きな需給イベントにはなりにくいかもしれない。

また、MBSは、何故、このタイミングでサウジの「虎の子」であるアラムコの国内上場に踏み切ったのだろうか・・・しかも当初よりも低い価格で流動性の低いサウジ国内上場を選んだのだろうか?
まず、考えられるのはサウジ財政が悪化している可能性だ。
原油価格はなんとか50~60ドル/バレルを維持し、サウジにとっては採算に見合うレベルだ。
しかし、ここ数年、ずっと減産してきているため石油収入が伸び悩んでいるかもしれない。
第二に、特にイランを中心に不安定化する中東アラビア半島で、軍備増強が財政を圧迫していることだ・・・2か月前にもドローン爆撃でサウジアラムコの施設が攻撃され炎上したが、この地域は極めて不安定で、サウジ政府も軍事的プレゼンスの確保が最重要課題になっているはずだ。

おそらくMBS氏は、このサウジアラムコの資金250億ドル(約3兆円)が「喉から手が出るほど」欲しかった・・・そういう意味では、MBS氏は傘下のPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)を通じて430億ドルをソフトバンクのビジョンファンドに投資しているが、この資金も早めに回収に入る可能性もある。
ここは注意を要する・・・サウジの財政状態とグローバルな資産ポジションには注意しておきたい。
MBS氏はあらゆる手段を通じて軍事増強と対イラン戦略を進めており、その過程でサウジの財政ポジションが悪化する・・・さらなる資産の現金化が必要になってくると予想される。
だとしたら、サウジの動きに注意が必要とともに、中東アラビア半島は来年もキナ臭い状態が続くのかもしれない。

原油トレーダーの一部には、今回のアラムコ上場で原油価格が上昇すると予想している筋がいる・・・アラムコ上場で資金を手にしたサウジが減産を強化するという思惑で原油先物が上昇すると見ているわけだ。
でも、やや思惑先行かもしれない。


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ウィークリー雑感(9/29 ユニコーンIPOの懸念)

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WeWorkの上場延期問題などから、ユニコーンのIPOについて問題点が浮きぼりになってきたような気がする。
一般論だが・・・スタートアップ企業は、まず、ビジネスアイデアと製品のプロトタイプを作り、出資を募り事業化する・・・この最初の資金調達がシードラウンドと呼ばれるものだ。
そして、実際に顧客が付きビジネスモデルができる段階シリーズAの資金調達、ビジネスをスケールアップさせ成長が加速化していく段階シリーズBの資金調達、経営が安定し上場を意識する段階シリーズCの資金調達と会社の成長に合わせて資金調達されていく。

問題となるのはスタートアップ企業の評価額だ・・・過去の例を見ていると、資金調達の合計額+負債による調達額=バランスシートの右側の金額に何倍かのマルティプルをかけた評価額になっている。
資本と負債によって調達した資金を事業に投じて、その数倍の企業価値を生み出しているというわけだ。
ユニコーンのIPOではいずれもこの資金調達額の何倍もの企業価値評価が行われている現状では、IPO直前の出資であっても上場時に大きな利益を上げることができた・・・しかも資金調達額が大きければ大きいほど時価総額が大きくなる。

たとえば、下の表でWeWorkの資金調達額と企業評価額を比べてみた。
2015/9の資金調達で9.69億ドルを調達して、企業評価額が50億ドルから100億円と50億ドル増加した・・・つまり、マルティプルは5倍だ。
ソフトバンクが30億ドルを出資した今年1月の資金調達では、企業評価額が200億ドルから470億ドルへと270億ドル増加し、マルティプルは9倍だ。
こんな高いマルティプルが続く限り、ベンチャー投資家は大儲けできる・・・ここに着目したのが孫正義氏であり、ソフトバンクのビジョンファンドということだろう。
でも、この資金調達額と企業評価額の関係が変わり始めているという疑問が出てきているのではないかと思う。
そうなると、ユニコーンIPOは必ず儲かる「打ち出の小槌」ではなくなってしまう。
WeWorkのゴタゴタで感じるのは、こうした強欲なベンチャー投資家が慌てふためいている構図だ。

今年1月にソフトバンクが30億ドルをWeWorkに出資し、110ドルで株式購入できるワラントを得た。
その他にソフトバンクのビジョンファンドが44億ドル出資している・・・いずれもIPOが視野に入っている時期だった。
しかし、その後、WeWorkの想定時価総額470億ドル=1株当たり株価75ドルから、現在の想定株価は50ドル台に低下しているようだ・・・フィデリティ、Tロウプライスなども想定株価を52~54ドル程度とした。
これだけの想定株価の違いがあると、安値上場よりはIPOを延期した方がいい。
しかし、ニューマンCEOが個人的なゴタゴタで退任し、シェアオフィス市場も飽和状態に近く、当初の見込みの市場規模3兆ドルは過大に見積り過ぎていたかもしれないなど問題続出で、来年に延期といってもIPOスケジュールはよく読めない。

より大きな問題は出資者には「打ち出の小槌」だったユニコーンIPOの時代が終わりそうな事だろう。
すでにビジョンファンドの出資者には第二ファンドへの出資を見直す投資家がで始めているし、ビジョンファンドから資金を引き上げる動きもある。
さらに、すでに上場したウーバーなどのユニコーン企業やGAFA系プラットフォーマーなどの高PER企業のバリュエーションを引き下げる可能性もある。
WeWorkだけでなく、他のユニコーンIPOへの波及に注目を怠れない。

WeWorkの資金調達と企業評価額(単位:億ドル)
  資金調達額   企業評価額
Sep-14 3.55   50
Sep-15 9.69   100
Mar-16 4.3   160
Mar-17 3 SBG  
Jun-17 17.6   200
Jan-19 30 SBG 470


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SBビジョンファンド、社員の出資は愚策

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ソフトバンクがビジョンファンド出資を従業員から受ける目的で、200億ドルを従業員に融資すると発表した。
孫さんの言いたいことは、「こんなに儲かるビジョンファンド投資ならば、従業員にもチャンスを与えたい」ということだろう。
ところが、従業員にとってはいたって迷惑な話で、孫さんの愚策としか思えない。

第一に、従業員が会社の一部門であるビジョンファンドに出資するという、会社全体の自社株を買う従業員持ち株会よりも高リスクな従業員投資会の一種となることだ。
これは従業員の自社株持ち株に似ているが・・・ソフトバンクGの中でも通信子会社やスプリントなどに比べビジョンファンドは突出してリスクが高いので、この部門のみに投資するというのは従業員にとってさらにリスクが高い投資となる。
従業員は「会社の存続」と「自分の雇用確保」さらに「個人資産」を単一のリスクにさらすことになる・・・もし失敗したら、勤める会社が倒産し、自分も当然失職し、さらに自分の個人資産も失うという三つの災難が同時に襲ってくる・・・つまり、通常の投資の3倍のリスクだ。
従業員にとっては高すぎるリスクなので、孫さんに騙されない限り投資する従業員がいるとは考えにくい。

第二に、従業員が融資、つまりレバレッジを賭けて、新興企業のビジョンファンドに投資することだ。
レバレッジを賭けているので、失敗したらビジョンファンドの投資が損失になるだけでなく、しかも、会社から融資を受けている従業員は、仮に会社が倒産したとしても返済しなければならない(融資は、株式とは違い、有限責任ではない)。
そうなると、従業員の投資損失だけでは済まないし、失業したうえで借金だけが残るという悲惨な結果になる可能性もゼロではない。


第三に、200億ドルの融資のうち半分を孫さんが個人で貸すというのが従業員向け投資スキームとして異常なことだ。
この場合、会社の融資と社長個人の融資では利害が衝突する可能性がある・・・孫さんに忖度し返済を優先する社員がいるかもしれないからだ。
いずれにしても利益相反の問題が生じる可能性があり、この従業員向けの融資に社長が個人的に貸し出すというのは問題がありそうだ。
また、孫さんからすればビジョンファンドが失敗し会社が傾いても、孫さん個人は自分の融資した分100億ドルは確実に回収できる・・・つまり、自分の投資のインシュアランスとなる。

ビジョンファンド2にはサウジアラビアを始めとする金持ち国が出資を拒んでいるし、思惑とは違い出資集めが順調ではないのかもしれない・・・1000億ドルを集めきれなければ、孫さんの影響力の低下と見られてしまう。
そんな事で資金集めの必死なのは理解できるが、それが融資付きの従業員出資で乗り切ろうというのは安直すぎるだろう。
孫さんの愚策として、今後の動きを関心を持って見ていきたい。


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ソフトバンク、ビジョンファンドのIPO

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WSJがソフトバンクが傘下のビジョンファンドのIPOを検討していると報じた。
ファンドの上場は日本ではあまり馴染みがないが、会社型ファンドが多い海外市場ではよくみかけるものだ。
ファンドのIPOは日本でいえば不動産投信REITの上場のようなもので、ファンドの出資者がファンドの持ち分を所有する会社型ファンドを上場し、誰でも簡単に市場で売買できるようにする。
ソフトバンクの場合、ビジョンファンドはソフトバンクの一部門だが、他人の資金が入っているので分離されて会計処理されているはずであり、ビジョンファンドをスピンオフして上場することは可能だ。

では、ソフトバンクが傘下のビジョンファンドを上場すると何が変わるのか?
(1)IPOによって新規資金を集めることができる。
上場時に新規資金を集めて上場したり(IPO、公募)、既存の出資者の持ち分(売出し)を市場で売却したりすることで、市場に流通性を供給する。
ビジョンファンドはIPOによりさらに資金を集め、投資することができる。

(2)ファンドの出資者が簡単に換金したり、全額現金化したりできること。
現在、ビジョンファンドにはソフトバンクの自己資金、サウジや中東系資金、その他巨大年金の資金が入っていると思われるが、現状では出資分を換金するとしたら、ソフトバンクに買い取ってもらうか、新たな出資者を探して売却することになる。
上場したら、出資者は自分の都合で市場で出資分を売却することが簡単にできるようになる。

(3)その他、ファンドの価格が市場で評価され、情報開示が義務付けられること。
未上場ファンドの評価はNAV(ネット・アセット・バリュー)だが、上場すると市場での時価評価になり、ファンド価格の変動が激しくなる。
また、未上場の場合はファンド出資者に運用結果が報告されるだけだが、上場すれば基準に合わせた情報(投資先、パフォーマンス、その他)が開示され、一般投資家にもよく分かるようになる。

それでは、ソフトバンクのファンドIPOの狙いはなんだろうか?
ここからは想像だが、まず考えられることはNY市場の流動性が高いうちにファンドを上場させ、新規資金を集めておきたいということだ。
おそらく、孫さんは2020年以降は量的緩和による過剰流動性が徐々に回収されていくと見ているのではないだろう・・・そのために早めにIPOを行い資金を獲得したというのが狙いかもしれない・・・この点は気を付けておきたい。
また、中東系かどうか分からんが、ファンドの出資者に利食いし換金したい出資者がいるのかもしれない・・・上場すれば、市場での売却が簡単になる。
そして、ソフトバンク自体もファンド出資の一部を売出しによって現金化したいのかもしれない・・・バランスシートにある15兆円の借入金を減らす目的も考えられる。
いずれにしても、新規資金を集める最後のチャンスかもしれないし、出資者の換金性も高められるし、ソフトバンク自体の債務リストラも可能になるし、一石三鳥のIPOになるだろう。
ただし、通信子会社のIPOと同じでソフトバンク側の有利になるようにIPOされるので、反対に投資家には不利が多いかもしれない・・・いつもの孫さんのやり方だ。



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ソフトバンクの光と影

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ソフトバンクの決算説明を読んだ・・・そこに書いてある事は長年様々な会社の決算を見てきた人からでさえ、感動的な数字も連続だった。
孫さんがもはやソフトバンクは投資ファンドだと宣言しているとおり、通信のソフトバンク(IPO済)とスプリント、ヤフー事業を完全に切り離す処理をしている・・・連結対象だが、部門として整理され、いつでも切り離せる状態になっている。

投資ファンドとしてみると、一番の問題になるのは有利子負債とキャッシュ・フローのバランスだ。
有利子負債は流動負債8兆5472億円、長期借入金5兆2272億円、社債6兆7785億円。
その他の負債にはビジョンファンドの外部投資家持ち分やデリバティブ負債があるが、リアルな負債は流動負債+長期借入金+社債の約20兆円だ。
これに対して、投資先の評価益をいろいろ計上し営業利益は膨らんでいるが、問題はこれらの評価益がキャッシュフローではないことだ。
今期4-12月の営業利益は1兆8590億円(∔7102億円)と大幅な増加だが、営業キャッシュフローが9112億円だ。
その他、投資キャッシュフローはー2兆7109億円(ファンドの投資など)、財務キャッシュフローは3兆1138億円(社債発行、外部投資家のファンドへの払い込み、通信子会社株の売却など)。
つまり、負債20兆円に対して営業キャッシュフローは1兆円弱と、キャッシュフローを丸々返済に回しても20年もかかる借金を抱えているということだ。
もし、世界景気の後退などがあれば、通信子会社やスプリント、ヤフー、アリババの資産売却に追い込まれるかもしれない。

一方、孫さんが天才的だと思うのは、株式市場の変動に対して極めて冷静で合理的な対応をしていることだ。
エヌビディア株をデリバティブでヘッジしていたことで、昨年秋からの市場下落を全く損失を出さなかったことは当ブログでも「孫さんのエヌビディア魔法」として取り上げた。
決算では株価下落による評価益の減少が2995億円に対してデリバティブ利益が2495億円と開示された。
でも、これだけではなく、アリババ株についても同様で株価が上昇していた時期に「カラー取引」で値上がり益をしっかりヘッジし固定化している。
アリババ株の持ち分投資利益の減少が621億円、デリバティブ利益が3659億円で今期についてはデリバティブ利益が大きく上回った。
「シンギュラリティに向けた長期投資」というお題目ながら、「長期投資だから市場が上がろうが下がろうが投資を続ける」というような甘い相場観による投資はしていない。
市場は上がれば下がるもので、その市場変動に合わせてデリバティブを駆使して値上がり益をしっかりと固定していくという極めて合理的な戦略を持っている。
長い間株式市場を観察しそこで活躍する人たちを見てきたが、孫さんはどこのヘッジファンドマネージャーよりも損益を厳しく管理している。
一見「シンギュラリティの夢を追いかけている人」に見えるが、実は感動的な冷徹な投資を実践している。

今後、気になる点は、ファンドで投資している未上場株はおそらく自己資本ベースでの評価なのだろうが、その評価単価が最近のFANGの下落に影響されず上昇を続けていることだ。
上場株の下落はデリバティブでヘッジできるが、未上場株はできないし、その評価もやや過大なのかもしれない。
さらに世界的な景気停滞に落ち込むと、ソフトバンクはその負債の大きさとリアルなキャッシュフローの小ささから厳しい局面も考えられることも今後の不安材料だ。
孫さんならなんとかしてしまうかもしれないと思わせるような決算だったが・・・。



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孫さんのエヌビディア魔法(後編)

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孫さんのエヌビディア魔法の後編だが、今回はこのゼロ・コスト・オプション取引がエヌビディアの株価をどう影響してきたか、さらにこの取引を解消するとどう影響するのかについて話てみたい。

この30億ドルという巨額のオプション取引は世界でもトップクラスの証券会社しか相手にできない規模だ。
残念ながら、野村でも大和でも日系証券には扱える規模ではなく、たぶん、ゴールドマンかJPモルガンあたりだろうと想像できる。
まず、ソフトバンクが30億ドルのエヌビディア株を買う・・・そして、株価が上昇してきた所で証券会社とオプション取引を行う・・・すると、何が起こるのだろうか?

ソフトバンクには30億ドルの現物株式、プットオプションの買い、コールオプションの売りというポジションができる。
このポジションの損益だが・・・株価がさらに上昇すると、現物株で利益が上がるが、プットオプションの買いがオプション料の損失になり、コールオプションの売りは損失となる・・・というわけだ。
では、この取引を受けた証券会社のポジションはどうなるか?
ソフトバンクの反対で、プットオプションの売り、コールオプションの買いとなるが、さらに、この取引のヘッジのためにエヌビディア株を空売りする必要がある。
オプションだけでは、プットオプションの売りが株価下落時に大きく損失を出してしまう・・・だから、その損失をヘッジするためにエヌビディア株を空売りしなければならない。
つまり、ソフトバンクが株価上昇時でこの取引を行うと、相手の証券会社がエヌビディア株を空売りすることになる・・・株価上昇時ではこの取引によって空売りが増加し、株価の上昇を抑えていくことになる。
ただし、ここで個人投資家は空売りが増えたからといって買ってはいけない・・・この空売りは市場で買い戻しが出てくるような話ではないからだ。
空売り残の急増にだまされてはいけない。

では、もしソフトバンクがこの取引を解消したら、何が起こるのか?
このポジションを解消していくと、逆のことが起こる。
ソフトバンクはエヌビディア株を売却し、プットオプションの買いを売り戻し、コールオプションの売りを買い戻すことになる。
また、相手の証券会社はエヌビディア株の空売りを買い戻し、プットオプションの売りを買い戻し、コールオプションの買いを売り戻すという反対の動きをする。
これが相対で行われるので、お互いのポジションを相殺するだけのことだ・・・だから、市場への影響は中立になる。
結論的にいえるのは、ソフトバンクが保有する30億ドルのエヌビディア株を売却しても、株価にはほとんど影響しないということだ。
ブルームバーグのニュースを見た人が、エヌビディア株を第4位の株主であるソフトバンクが売却すると大変な事になると考え自分の持ち株を売却する、というのは大きな間違いだということになる。



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孫さんのエヌビディア魔法(前編)

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ブルームバーグは、ソフトバンクがエヌビディア株を売却する計画だと報じている。
・・・「米中貿易摩擦のほか半導体メーカーの需要や成長見通しの悪化でエヌビディア株は10月のピークから48%下落している。株価急落でソフトバンクは持ち株を手放す方向に傾いた。」
・・・「ソフトバンクは2017年前半にエヌビディア株の保有を30億ドルに積み上げ、4位の株主となった。持ち株はビジョンファンドに移管された。」
・・・「持ち株を積み増しながら株価下落をヘッジできる「カラー取引」を行い、この取引で30億ドルの利益を上げるだろう。」

ソフトバンクがエヌビディアに投資したのは、確か株価が140ドルの頃だったはずで、その後株価2倍以上の大幅上昇し292ドルを付けた。
現在の株価は150ドル台とほぼ「往って来い」という状態で、現物株では10%程度、30億ドルの投資ならば3億ドルの利益にすぎない。
なぜ、孫さんは株価の「往って来い」にもかかわらず、大幅な利益を上げることができるのか?
これはどういうことだろうか?
これが孫さんのエヌビディア魔法で、ブルームバーグのニュースでも出てくる「カラー取引」だ。

カラー取引というのは金利の取引で、キャップ(上限金利)とフロアー(下限金利)を取引するものだ。
変動金利が上限を超えると困る人がキャップ料を支払い、相手が変動金利が上限を上回った分を払うというような取引で、株式のオプション取引に似ている。
これからは想像だが、おそらく株式オプション取引でいう「ゼロ・コスト・オプション」を使ったのではないかと思う。

簡単に言うと・・・
オプションを買うということは、オプション料を支払い(買い、または売りの)権利を買うわけだが、ゼロ・コスト・オプションはこのコストであるオプション料をゼロにする取引だ。
オプションを買うとオプション料というコストを支払い、オプションを売るとオプション料を受け取ることになるので、オプションの買いとオプションの売りを組み合わせればオプション料を払わなくて済むことになる。

現物株であるエヌビディア株を保有しているソフトバンクなので、株価下落をヘッジするオプション取引は、プットオプションの買い+コールオプションの売りという組み合わせになる。
これでオプション料の支払いはなくゼロ・コスト・オプションになるし、株価の下落をヘッジできる。
つまり、株価が下落すると現物株には損失が出るがプットオプションの買いがあるので収益が上がる、一方、株価が上昇するとプットオプションの買いが損失となるが現物株の利益がオプションの損失をカバーするという取引だ。
このゼロ・コスト・オプションをエヌビディア株の上昇に合わせて、証券会社と相対で取引していったと想像できる。
こうすれば、エヌビディア株が「往って来い」になったとしても、株価が高い時にこのオプション取引を積み上げていけば、株価が下落しても利益を上げることができる。
これが孫さんのエヌビディア魔法の正体だろう。

でも、不思議なのは孫さんは「2040年のシンギュラリティ」を目指す長期投資としてビジョンファンドを作ったはずで、なぜ、短期的な株価ヘッジをしたのかという点だ。
ビジョンファンドは単なる儲けるためのファンドに変質していくのかもしれない。
次回、30億ドルという巨額な相対取引がどのようにエヌビディア株の変動に影響したかを考えてみたい。




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ソフトバンクの親子上場はカオス(2)

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まず、ソフトバンクのファンダメンタルを今4-6月期で確認しておこう。
営業利益は7150億円のうち、通信のソフトバンク事業が2218億円、ビジョンファンドのSVF事業が2399億円、スプリント事業が981億円、ヤフー事業388億円という状況だ。
通信のソフトバンクがキャッシュフローを稼ぐキャッシュカウ(安定的なキャッシュを生み出す牛)で、ビジョンファンドのSVFはソフトバンクの将来成長のカギを握るというファンダメンタル構造を持っている。
しかし、通信のソフトバンク事業は孫さんは伸びていると主張しているが、国内のスマホ市場も成熟化し、今後、政府主導で通信料の低下が行われると減益になる可能性もあるだろう。
ヤフー事業は今回の子会社上場に紛れ込ませる形で通信ソフトバンク事業に株式を移し、事業再編を行っている。
スプリント事業は黒字化を達成しているが、売上の伸びがマイナスで今後の利益成長期待はない。
総じてこれらの通信・国内ネット事業部門はそれほどの成長は期待できないと思われる。

一方、ビジョンファンドのSVF部門は営業利益の33%の2399億円を計上し順調に伸びているが、孫さんはそのずっと先を見ている。
孫さんの考え方は、シンギュラリティ(技術的特異点)、AIによって機械が人間を越えていく時代に向けた投資を一段と積極化させるということだ。
その時代の中心に、ARMのAI化されたチップが、さらにNVIDIAのクラウドのAI化が地球のインテリジェント化、スマート化を実現するとしている。
ARMのチップ出荷量は+17%の55億個、シェアリングのWeworkやDIDI、ロボットのボストンダイナミックスなどビジョンファンドが出資している会社はたしかに伸び盛りだ。
しかし、NDIDIAの3割以上の下落に見られるように期待が先行しているだけに株価のボラは高い。

こうしてファンダメンタルを見ていると、今回の通信子会社の上場には二つの意味があると思われる。
一つは子会社上場で調達した資金を成長性の高いビジョンファンド部門へ回し、成長性の低い部門から高い部門に資金をシフトさせさらに成長を追求するという意味だ。
ビジョンファンド2号の設立も視野に入っており、ソフトバンクの群戦略(強いコミットメントで完全買収するのではなく、筆頭株主として自由な経営を支援する)を進めていくだろう。

もう一つは流動負債8兆2000億円、長期借入金5兆3000億円、社債7兆2000億円という負債を減らし、財務基盤を改善させようということだ。
ソフトバンクの借入金の大きさは金利上昇局面に入ると問題が多い。
したがって、通信子会社を上場させ、キャッシュを得ることで借入金を減らせることがグループ全体のプラスになるという判断だろう。

しかしながら、通信ソフトバンクの上場はキャッシュカウを部分的にでも手放すことで、ソフトバンクの借金だらけの経営リスクは高まる。
ビジョンファンドも投資先がかなり期待先行であり、金融情勢の悪化(長期金利の上昇=割引き率の上昇)とともに株価の現在価値も低下しやすく不安定化する。
ソフトバンクの親子上場はカオスとしかいえない。




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ソフトバンクの親子上場はカオス(1)

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ソフトバンクが通信子会社の上場計画を進めている。
親子上場は安易な資金調達方法として多くの企業グループが使ってきた「打ち出の小槌」だった。
子会社を上場させて株式の部分売却で資金を調達でき、しかも、50%以上の株式保有で連結対象となり、子会社の利益をグループ利益にフルに連結できる。
上場して資金調達ができて、しかも決算にフルに貢献できる安易な資本政策で人気だったが、コーポレート・ガバナンスの観点からは少数株主の存在が様々な論点を含んでいる。
今回は主に親子上場の問題点からソフトバンクをどう考えるかを、そして次回ソフトバンクの経営戦略の中で親子上場をどう考えるかを話してみたい。

まず、東証の上場基準や特別決議の株式保有比率のしばりがあり、品薄株となること。
東証の上場基準では、親会社や特定の大株主がその上場企業を保有する特定保有比率が85%以下と規定されている。
つまり、子会社を上場させる場合、親会社の持ち株比率を85%以下にする、要は15%以上は子会社上場時に売却しなければならない。
と同時に商法の規定で、連結子会社にするには子会社を50%以上保有する必要があり、さらに、資本政策で(会社合併や分割など)特別決議を必要とする場合66%以上の賛成が必要で、上場後の子会社を完全な支配下におくためにはおくためには、親会社はおよそ70-80%の子会社株式を保有することになる。
つまり、わずか、20-30%程度の株式を上場させるにすぎない。
そして、そのわずかな上場株式が市場で取引され株価を決定してしまうことになる。
ソフトバンクの通信子会社株は相当に品薄株となり、市場での株価変動が大きくなるだろうし、これが親会社のソフトバンク株にも影響するだろう。

もう一つは最近のコーポレート・ガバナンス・コードで少数株主の権利を尊重せざるをえないことだ。
ガバナンス・コードは「株主の権利」「株主以外の利害関係者との協働」「適切な開示」「取締役の責務」「株主との対話」など5項目を定め、上場企業の行動指針をしているものだ。
子会社の上場はこうしたガバナンスコードから大株主である親会社の勝手な振る舞いを制限する。
ソフトバンクのような戦略的な企業には少数株主の尊重は通信子会社の経営スピードに影響する問題となる。
おそらく孫さんの興味はすでに通信ビジネスにはなく、シンギュラリティ(技術的特異点)に向けたグループ戦略に神経集中しているのだろう。
そうなると、さらに子会社上場が裏目に出る可能性があろう。

業界環境は菅官房長官の「日本の通信費は高すぎる」発言以降、厳しさを増している。
確かに通信費を国際比較してみると日本の通信キャリアーの高さが明確なので、通信費引き下げの圧力は今後さらに強まることも予想される。
通信キャリアー全体の収益悪化が予想される環境の下で、通信子会社を上場させるのはいかがなものかと思う。
IPO価格は今後決定されるだろうが、今回のIPOが少数株式の売り出しであり、しかも収益環境の悪化が見込まれる中で、子会社上場に大きな期待を持つ投資家は限られるのではないだろうかという疑問を払拭できない。
やっぱり、この親子上場はカオスだと思う。
次回は、ソフトバンクのファンダメンタルを検討し、孫さんのグループ戦略の中でこの親子上場の持つ意味を考えてみたい。 




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ESG投資とソフトバンク

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サウジの体制批判記者をトルコのサウジ総領事館で殺害した事件で、トルコのエルドアン大統領が会見し計画的なものだと断定した。
先にも書いた通り国家間の問題として原油市場に大きく影響することはないだろうと思われるが、民間企業にとってはとても厄介な問題となりそうなことがある。
それは最近流行のESGだ。

ESG投資とは、欧米の年金では昔から社会的責任投資(SRI)の大きな柱となってきた考え方で、欧米の年金基金や国連などの国際機関の年金で採用されてきた実例がある。
国連では責任投資原則(PRI)を定めていて、国連の資金を運用する運用会社はこのPRIに署名し、毎年、この原則にそった情報開示が求められる。
最近は日本の年金、GPIFでも採用され、ESGの原則にそった運用を運用会社に求めるようになってきた。

そもそもESGは、E(環境)、S(社会的責任)、G(企業のガバナンス)の意味だが、東芝などの粉飾決算、自動車各社の排ガス・燃費の改ざん、スルガ銀行の不正融資・・・などなど多くの日本企業はESG原則のうちGの企業バンナンス問題でアウト!!となってきた。
でも、今回のサウジ記者殺害事件は、Sの社会的責任でアウト!!となる可能性がある。

社会的責任はかなり広範囲で捉えられる問題で、人権は特にセンシティブな問題だ。
過去には、海外の生産拠点で児童に強制労働をさせたとか、輸出した電子部品が海外企業の兵器生産に使われたとか、などなどで日本企業が引っかかる事例もあった。
そして、今回はサウジのジャーナリストという言論の自由の中心にいる人物を、法律に基づかない不法なやり方で殺害したという事件で、S(企業の社会的責任)の観点からすればサウジに関係している企業には投資が困難になる場合もありえる。
すでに欧米企業では、リチャード・ブランソンのバージングループが、同社の宇宙事業に対するサウジからの10億ドルの出資をキャンセルしたと報じられたが、シリコンバレーなどでサウジとの関係を見直す企業も今後増えてくるはずだ。
日本ではサウジのMBS(皇太子)から巨額の出資を受けているソフトバンクのビジョンファンドが大きな焦点となってこよう。
数兆円単位でサウジが出資した1号ファンドだけでなく、10兆円規模でスタートする2号ファンドもサウジの巨額出資がすでに計画されている。
こうしたファンド出資はサウジに直接の利益を与えるものとしてESG原則に抵触してくる可能性もありそうだ。
今後の成行きには注目が集まるだろう。
サウジでの国際会議での講演をキャンセルようだが・・・・孫さん、どうするの?



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