株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版のeBook「株式需給の達人 基礎編と投資家編」を出版しました。
需給を制する者は投資を制す!

株式評論家に騙されるな

MiFIDⅡが変える運用ビジネス(2)

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「アンバンドリング」と「コミッション・シェアリング」を基本とするMiFIDⅡという規制が欧州から米国へ、そしてアジアへと広がってきたら、日本の証券会社や運用会社の形を変える大きな変化が来ると予想される。

今まで日本の金融グループは「ワンストップ」金融サービスを目指してきた・・・たとえば・・・
ある顧客が銀行預金100万円を持つとする・・・
(1)従来の銀行業務だったら、その預金を融資に回し利ザヤを稼ぐ・・・もし利ザヤが1%とすれば、100万円の顧客預金から1万円の収益を上げる。
(2)この100万円の預金で投信を買ってもらうと、100万円の3%=3万円の販売手数料が銀行に入る・・・さらに運用報酬として株式投信なら2%弱が販売した銀行と系列の投信会社に毎年入る・・・通常半々で分配するので、銀行にはさらに1万円、投信会社にも1万円が入る。
(3)投信会社が株式の売買するので系列の証券会社に売買手数料が入る・・・100万円の投信で年間3回転すると300万円の売買が生じ、手数料0.1%としても収益3000円が系列証券に入ることになる。

つまり、従来の銀行業務から「ワンストップ」の証券サービスになると、従来の利ザヤ1万円だけの収益から、系列会社を含めて販売手数料3万円+運用報酬2万円+売買手数料3000円の合計5.3万円の収益へと5倍に膨れ上がる。
これが系列内の「ワンストップ」金融サービスの「うま味」だ。
しかし、金融のアンバンドリングが進むと、それぞれのサービスが評価を受けて行われるので、単純に系列だからといって、馴れ合いの「持ちつ持たれつ」な関係は維持できくなる。

特に投信会社とグループ内の証券会社は馴れ合いの関係ではいられない・・・リサーチや執行などのそれぞれのサービスをきちんと評価し、他系列のリサーチや独立系のリサーチと比較して手数料配分を決めなければならない。
「ワンストップ」金融サービスのようにすべてをグループ内で提供し、すべての収益をグループ内で上げるというわけにはいかなくなる。
今でも形の上では、投信会社は親会社も含めて受けた調査や売買執行のサービスを評価して売買発注シェアを決めているが、現実には社長や役員が親会社から天下りしているので、人事権を持つ親会社の言いなりざるを得ない。。

こうした意味で日本の金融グループのあり方、そのものを変えていく契機になるかもしれない。
独立したユニークな調査をする会社が伸びてくると、株式市場も変わる。
投資家の意識も変わり、くだらない評論家が排除されていく。
その時日本の証券ビジネスも投資家・顧客本位に変わり、市場も新たな時代を迎えるのだろう。


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MiFIDⅡが変える運用ビジネス(1)

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昔の英国はソフトダラー天国だった・・・ソフトダラーとは、たとえば、証券会社が運用会社にブルームバーグ端末を提供して、その分を売買手数料で受け取るというような「持ちつ持たれつ」契約のことだ。
こうした運用会社と証券会社の馴れ合い関係は自由な競争を阻害し、結局は運用会社のファンドのパフォーマンスを落とし、一般の投資家が損失を被るということになる・・・だから、90年代に英国はこの運用会社と証券会社の馴れ合い「持ちつ持たれつな」関係を一掃しようとした。

その一つが「アンバンドリング」・・・売買手数料とリサーチ・その他のサービスを完全に分ける・・・そして、「売買執行」は証券会社の執行能力によって手数料の配分を決め、「リサーチ」は調査の良し悪しを評価してそれに見合うリサーチ料を手数料として払う・・・という仕組みだ。
この「アンバンドリング」によって「売買執行」と「リサーチ」のそれぞれで競争が起こり、激しい競争の結果、よりクオリティが上がっていくことを目指した。

もう一つは「コミッション・シェアリング」・・・証券会社が「リサーチ」と「売買執行」の両方を提供するという固定的なビジネスをやめ、運用会社が独立系調査会社の優れたリサーチを評価した場合、売買手数料の中からその独立系会社へリサーチ料を支払うことができるようにする仕組みだ。
これによって、リサーチの優れた会社はリサーチに特化し、運用会社から証券会社に支払う売買手数料の一部をリサーチ代として受け取ることができるようになった。

問題のMiFIDⅡは英国の規制で、この二つの仕組み「アンバンドリング」と「コミッション・シェアリング」が取り入れて2018年から実際に欧州でスタートした。
でも、これが世界の市場に広がろうとしている・・・特に、米国は独自の仕組みを持つ証券・運用大国だが、欧州・米国年金などの巨大な顧客がこのMiFID Ⅱを高く評価しているので、米国の証券市場にもこのMiFID Ⅱが適用される方向が明確になってきた。
世界で起きていることをモノマネする日本でも遅かれ早かれ、この規制が導入されてくるだろう。

そうなると、何が起こるか?
まず、売買執行に注力する会社と、リサーチに特化する会社が出てくる・・・そして、リサーチの弱い会社間の売買執行の競争で売買手数料がどんどん低下する。
そして、独立系のユニークなリサーチが伸びていく一方で、あたりまえのような調査やコメントしかできない評論家や証券会社は落ちぶれていくことになる。
結果として証券会社は売買手数料で収益を上げることが困難になり、結局、「ゼロ手数料」に近くディスカウントをすることになる・・・流通市場のビジネスは収益が上がらない。

もう一つは、リサーチの質が競争により急速に上がることだ。
独立系調査会社のニッチな調査もレベルが上昇していくだろうし、マクロや市場分析もそれに特化した会社が登場することでクオリティが上がっていく。
でもそうなると、あたりまえのような調査やコメントしかできない評論家は不要の存在になる。
今のレベルの低い評論家やコメンテーターが淘汰される、ちょっと大変な世界が目の前に来ている。

次に運用会社、証券会社、アナリストやストラテジストに与える影響を考えてみたい。


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極左、極右が好まれる時代

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トランプが米国大統領に選ばれた2016年、運用会社の運用責任者としてそれこそ様々な人達と議論をした・・・多くのエコノミストやストラテジストに一貫していた意見は、ヒラリーもいいとは思わないが・・・「トランプはない」だった。
株式評論家は全員「大ハズレ」となった。
「メキシコ国境に壁を作る」「不法移民を国外に出す」「対米貿易黒字を許さない」・・・などなど、あまりに過激な考え方に付いていけなかった。
しかし、トランプが当選し、その後、メキシコの壁は完成していないが、TPPからは抜け、NAFTAの見直し、対中国関税引き上げ・・・と過激に突き進んでいったのは衆知の通り。

インターネット時代の政治のキーワードは分断だ。
富裕層と大衆層による分断、イスラム教など宗教のよる分断、古くからの住民と移民の分断・・・ヘイト発言やフェイクニュースも含めてインターネットで過激な発言が拡散し集合体が作られる。
あたりまえの平均的な中庸な意見はインターネットでは埋没してしまい、誰の目にも止まらない・・・過激な意見ばかりが注目を浴びていく。
人々は過激な意見に影響され、結果、政治的に先鋭化する・・・その方向は穏健な中道ではなく、極右から極左の両極端な意見に集約されてしまう。
選挙でも同様の傾向が見られる・・・常に極右か極左に先鋭化する・・・穏健な知識人はほとんど付いていけない。
こうしたインターネットの時代には極右や極左の極端な意見が拡散してしまう傾向がある。

アイオワ州から大統領選がスタートする。
現状では、穏健な中道派であるバイデン氏が優勢と伝えられている・・・極左のサンダース氏も猛追しているという報道もある。
党員集会の結果が遅れて混乱したが、暫定結果だが、第一位が中道派で若いブティジェッジ氏、第二位がサンダース氏。
もちろんまだ始まったばかりで、ブティジェッジ氏は若さでアピールできたということかもしれない・・・しかし、どう動いていくかは分からない。
なんとなく、今の政治の流れから考えると、極端な意見に世論が集まっていくのではないかと感じがしている。

いずれにしろ懸念されるのは過激な意見に投票が流れ、さらに過激になるという構図で、最終的にはサンダースとウォーレンが極左連合を組む可能性さえあるだろう。
右の過激派トランプ氏と、左の過激派サンダーズとウォーレン連合となると、大統領選はアメリカの分断を加速させる・・・見ている方としては面白くなるが・・・。
トランプもこれに反応して、さらに極右政策、対中国、対アジア、対欧州で過激な外交政策に走るかもしれない。

そうなると動向が株式市場にも影響するだろう。


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ゴールドマンサックス証券のTOPIX先物大量売り

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年初からゴールドマン・サックス証券が大量のTOPIX先物を売っているという・・・ここ数日は毎日1000億円以上の売り越しを記録しており、日経CNBCの計算では年初からのTOPIX売り枚数は合計で2万7000枚に上るとしていた。
2万7000枚というと、売り値段がよく分からないにしても金額で4000億円~5000億円以上になるだろう。
残念ながら、株式評論家諸氏はこのGSの大量売りに思考停止し、まともなコメントは一つもなかった・・・・残念。
これだけの大量売りであり、その背後には何か大きな動きがあるのだろう。

経験的には・・・いくつかポイントがある。
まず第一に、アウトライトの売り(他の買いを組み合わせず、単純に先物だけを売る)ではないことだ・・・もし、単純なアウトライトの売りだったとしたら、TOPIXの現物指数にも大きなインパクトを与え、市場が不安定化していたはずだからだ。
ここ数日1000億円以上の先物売りを出しても、市場は平穏で大きな動きがなかった・・・つまり、TOPIX先物売りとともに現物に買いが入れていた可能性が髙い。

第二に、CTAやヘッジファンドが先物を売買する時は指数インパクトの大きい日経225先物を使うのが普通だ・・・逆にTOPIX先物を使うのは年金や海外の大手機関投資家の場合が多い。
おそらく、海外の機関投資家がなんらかの取引を行っている可能性が髙い。

第三に、海外の機関投資家が大口の先物を取引する時はいくつかの典型的な場合がある。
一つは海外の日本株ファンドの解約が出ている場合で、GSが現物ポートフォリオを機関投資家から買い取り、そのヘッジとしてTOPIX先物を売っているというような場合だ。
この場合、両建てといっても、どんなにうまく処理しようが株価にはマイナスの影響が出てしまう。
TOPIXも上昇しているものの、日経平均に比べ上昇が鈍いので、日本株の大口解約が出ている可能性はゼロではないが・・・可能性はそれほど高くないかも。

もう一つは海外の機関投資家の間でトランジションが行われている場合だろう。
SWFや巨大年金が運用マネジャーを変更する場合、トランジションマネージャー(証券会社)を使い、現物ポートフォリオを一旦トランジションマネージャーに移管し、トランジションマネージャーが先物でヘッジすると同時にポートフォリオを組み替え、その後、新しい運用マネージャーにポジションを渡す。
これはポートフォリオの移管に伴うもので、市場に与える影響は基本的に中立だ。

他にも考えられるケースはある・・・たとえば、アクティブ運用からパッシブ運用へのファンド変更などもありえるかもしれない。
この場合も、アクティブ・ポートフォリオを移管した後、一旦先物でヘッジをしながら、パッシブファンドに組み替えていくことになる。

何が起こっているのか確証はないが、市場へのインパクトが限定的だったので、トランジッション、あるいは、なにかしらのファンド間の変更やファンドの移管だと推測している・・・この場合、市場へのインパクトが小さい。
しかし、まだまだ分からない事が多く推測の域を出ない・・・


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元ZOZOの前沢友作氏に騙されるな

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元ZOZOの前沢氏が館山市に巨額の寄付を行ったと話題になっている・・・しかし、情報はきちんと読むべきだ。
そもそも、前沢氏はユーチューブで「1000億円、普通預金に記帳しました」とアップし、話題を集めた時、こう言った。

(売却益の約1500億円が)入ってきたんですが、報道の通り、僕は多額の借金がありますので、すぐにその一部は返済に充てました。額が約500億円程度。残っているのが1000億近く」

ZOZOの株式売却益が1500億円あること、返済した借金も500億円程度あること(借金の全額は不明)を明らかにしている。
株式売却益には20%の申告分離課税がかかり、その金額は300億円程度になるだろう。
前沢氏は確定申告で300億円の税金を支払うことが分かっていたので、それに先駆けて「ふるさと納税」をしただけなのだろう。
でも、別に慈善意識から寄付したわけではなく、自然災害からの復興を支援しているわけでもなく、単に支払う税金の一部を「ふるさと納税」として寄付しただけだ。
つまり、本人的には支払う税金額は何も変わっていない・・・しかし、20億円の寄付は世間的に大きな話題になる・・・ユーチューブでも大きな閲覧回数になり、そっちでも収益を得られる・・・一石二鳥を狙ったものだ。

おそらく、1000億円を銀行口座にいれたのも税金を支払うためだろうし、寄付も話題作りだけだとすると、なんか、しっかりしている奴・・・エグイ奴としか見えない。




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カネ余りは永遠なのか?

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評論家の平野憲一氏がテレビの株式番組で言い放った・・・「カネ余りが続いている中で株価が上がらないわけがない。スケールの大きな壮大な需給相場だ!!!」
需給相場とは何か? 壮大なスケールとはどうやって観測するのか?・・全く根拠を示していないが、スケールの大きな相場だから買いだという。
でも、この評論家氏の言う通り、継続する金融緩和、カネ余りが永遠の株高を約束するものなのだろうか?
カネ余り現象とは何か? その限界は何か? もう一度、基本に戻って考えてみたい。

カネ余り現象とは中央銀行による資金供給の増加=中央銀行のバランスシートの拡大であり、金融が緩み貸出条件が緩和されて必要な人が簡単に資金を手に入れやすくなり、事業やその他の資産に投資しやすくなる。
事業資金を借入れて、投資を活発化させ、人材を雇用し売上を増やす・・・経済全体が好循環に入っていく・・・という教科書のレベルの話だ。
しかし、金融緩和を続ければ景気が無制限に拡大し、みんなが金持ちになれるというわけではない。
カネ余り現象には限界があるからだ。

まず第一の限界が政府の政策変更だ。
景気が過熱する状況になれば、中銀が過熱を抑えるために引締めを実施する・・・米国で言えば、イエレン氏がFED議長にいた頃は漸進的な引締めを実行した・・・中銀が金融引き締めをして余剰資金を回収すれば、その結果、市場の資金が吸い上げられて資産価格が不安定化する・・・カネ余りは蒸発してしまう。
さらに金融緩和しても景気が回復しなければ財政政策を出動する。
政府が財政支出を増加させ有効需要を生み出す・・・これが景気刺激策となるわけだが、一方、その財政支出のファイナンスのために国債発行を増額する・・・すると、市場の余剰資金を吸い上げることになり、カネ余りは蒸発してしまう。
金融の引き締め、あるいは、財政の積極化、どちらにしても市場の余剰資金を吸い上げ、カネ余りが消えてしまう。

第二の限界が、金融緩和で借金が簡単にできるので、新規参入が容易になり、企業間の競争が激化する、その結果、業界全体の収益率が低下してしまうことだ。
たとえばWeWorkが問題化しているが、その背後にはオフィス賃貸事業自体の競争激化や収益率の低下による市場の飽和状態がある。
シェアオフィスという新しい名前の賃貸事業だが、要はオフィスの小口レンタルで誰でも参入できる。だから業者間の過当競争に陥りやすい・・・小ぎれいな執務室、共有部分のアメニティ、カッコいいオフィスがコスト増加を招き、収益率が低下すると借入金の返済が困難になってしまう。
オフィス賃貸だけでなく様々なビジネス分野で同じように競争激化が起きているだろう・・・それによる収益率の低下が信用問題に繋がってくると、明らかに金融緩和の限界となる。

第三の限界が、
金融緩和により過大な投資をした企業が行き詰る、つまり、事業の失敗だ。
金融緩和で資金調達が楽になると企業は投資を行う・・・でも、投資した事業から収益を上げられなければ、事業の縮小や廃業・倒産につながる。
こうした投資の失敗により、損失が出て投資を中心にした資金循環が止まり、一気にカネ余りは逆転してしまう。
リーマン危機の時は、サブプライムローンから派生したABSやMBSへの過大な投資が焦げ付き、金融システムリスクから多くの金融機関や事業会社が資金ショートに陥った。
事業投資の失敗がカウンターパーティ・リスクや企業クレジットに影響を与え、カネ余り相場が限界に達する・・・確率は低いが、こうなるとクレジット・クランチで株価は暴落する。

金融・量的緩和を続ければ永遠に経済が好調になり、株価が永遠に上昇するわけではない。
金融緩和自体にその限界点が内包されている・・・どこかで金融緩和しても実態経済が悪化するというジレンマに突き当たる。
グローバルな金融緩和でグローバルに企業や個人の債務が増えている現在・・・経済が順調に拡大している時は良いが、経済が減速し、企業の収益率が低下してくると、不良債権が増加し銀行経営を圧迫し、カネ余り現象は一気にしぼんでしまう。
欧州で検討されている財政政策、企業の収益率の低下、借入金依存度の上昇、信用格付けの引き下げ、さらにファンドや事業の失敗による混乱・・・いろんな状況をきちんと見ていく必要があるだろう。
・・・評論家に騙されるな。


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中間配当のアノマリー、評論家に騙されるな

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今年も中間配当を受け取る時期、今週から12月10日にかけて順次配当の支払いが起こる。
今年の中間配当は4兆3000億円にも上るということで、株式評論家はこの中間配当を受け取った投資家が再投資をしてくるので株価が上がると言う。
確かにこの時期は米国の感謝祭~ブラックフライデー~クリスマス商戦と話題が多く、過去「11月最終週は高い」というアノマリーがある・・・でも、配当の再投資の話はウソだろう?

まず、機関投資家だが・・・
プロの運用会社は、9月末に配当落ちした時に指数先物を買い建て、配当落ちにより組入れウェートが下がった分を先物でカバーする・・・パッシブでもアクティブ(注)でも同じだ。
そして、実際に配当を受け取ると、受け取った分だけ現物株式を買い、買い建てた先物を売っていく。
この現物買い/先物売りによって株式のエクスポージャーは維持され、パフォーマンスへの影響を中立化できる。
したがって、中間配当を受け取るから機関投資家が株式を買い増し、市場は上昇する・・・というのは都市伝説にすぎない。

注)アクティブ運用では先物買い建てのルールがあるわけではないが、多くのファンドマネジャーは配当落ち分を未収配当として計上し、その分の組み入れ率を維持するために先物を買い建てている・・・そうしないと、特に上昇局面ではインデックス(ベンチマーク)に負けてしまうからだ。

次に、大口の投資家(企業オーナーなど)、たとえば、SBGを保有する孫さん・・・etc。
彼らは株式を買い増しすると財務省に保有報告書を提出しなければならない・・・買い増ししたかどうかはすぐに分かる仕組みになっている。
しかし、過去分を見ても、大口投資家が配当を再投資して保有株を増やしたという記憶はない。

次に、一般の投資家だが・・・
一般投資家についてはいろいろだ・・・人によっては配当の再投資をする場合もあるだろう。
しかし、人によっては配当で自分の好きな物を買う、旅行をする、美味しいレストランに行くなど、様々だ・・・ちなみにワシは配当を生活費にしているが・・・

というわけで、中間配当を受け取るから株高になるという理屈は確認できない。
でも、いつまでたっても、証券マンや株式評論家はセールス・トークに「配当の再投資株高説」に固執している。
ある意味、「裁定売残がたまっているから株高になる」というのと同じかもしれない。
これも因果関係が逆で、先物が買われ現物価格を上回るから裁定買いが出る・・・その結果、裁定売り残が減少するのにすぎない。
裁定売残の踏み上げで株高につながるというわけではなく、株高で先物が上昇するから裁定買いが入り売残が減少する・・・全く、根拠のないのにこれに固執する評論家が多い。
それより、クリスマス商戦期待の方がありえる話だ。



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相場の上げ下げを米中のせいにするな!!

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最近、株式番組を見ていて本当に呆れるのが、株式解説者のコメントだ。
相場が上昇すると「米中摩擦の緩和期待」と説明し、相場が下落すると「米中摩擦の懸念」となる。
ちょっと前までは、これらの評論家氏は「円安で株価が上昇」あるいは、「円高で株価が下落した」という説明ばかりしていた・・・為替が動かないものだから、米中に宗旨替えしたわけだ。
でも、こんなインチキなコメントがありえるのだろうか?
相場の上げ下げを為替にせいにしたり、米中摩擦のせいにしているだけなら、高給取りの解説者はいらない、誰でもできる。
もういい加減にしてほしい。

でも、ほとんどの解説者とは違い、独自の見方を提示する評論家もいる。
山口真弘氏、SMBC信託プレスティア。
言っていることは至極まともだ。
中国の3か月物金利の上昇と人民元安からの変化を見て、米中協議の進展を市場が期待しているが、その期待に反して12月の第4次関税引き上げが延期される可能性を見ている。
VIX先物の低下とネット売りポジションの増加で、市場の低ボラ戦略が急拡大している・・・市場はじり高を織り込んでいるわけだが・・・市場のボラが上昇してこのネット売りが逆転する時、相場は急落する可能性を指摘している。

江守哲氏、エモリキャピタル。
やや精神分裂的で強気なのか弱気なのか分からないが、ユニークな指摘をする。
2015年からの世界のPMIが1.5年のサイクルで動いた来たので(わずか4年間の検証で1.5年のサイクルろ言うのは短すぎる)、今年夏にボトム、来年にかけて循環的な回復に入ると言う。
その反面・・・VIXの低水準と売りポジションの大きさから急落もする(これは上の山口氏と同様)とも言う。
日本株に関しては、NT倍率(日経平均/TOPIX)の上昇の行きすぎから反転すれば日経平均が下落し、日本株が売られる・・さらにドル建て日経平均が200ドルを越えたため外人売りが出やすく、日本株は下落するとしている。
強気なのか弱気なのか不明なところがイマイチかな。

エミン・ユルマズ氏、複眼経済塾。
世界のGDP予測は7月から10月にかけて一段と悪化していている・・・世界全体で0.2%の下方修正、米国と日本はー0.1%だが、ドイツはー0.6%、インド・ブラジルー0.3%と大きい下方修正だ。
以前として、米国が最も強く世界の資金を引き付けているが、先進国ー米国ー大型株という流れで、逆に新興国ー小型株は低迷・・・これは景気の停滞を示す。
まだまだ、株式市場は警戒すべきだと指摘している。
ところが、「日経平均は30万円になる」という本を出版したと宣伝していた・・・これまた神出鬼没な評論家だ。

一般的な評論家、特に証券会社の市場部長などはほとんど役に立たないが、一部の独立系のコメンテーターはユニークな見方は面白い。


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株式評論家に騙されるな(3)

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有名なテンプルトンの言葉だが、「相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔感の中で死んでいく」・・・Bull markets are born on pessimism, grow on skepticism, mature on optimism, and die on euphoria
景気サイクルの心理と株式市場のサイクルを見事に言い表している。
評論家の平野憲一氏は・・・9月末に「相場は懐疑の中で育つ」とコメントし、今の相場は悲観の中で生まれ懐疑の中で育っているところで、日経平均が高値を取れば、疑う人たちが減り、成熟化に向かい一段高すると主張した。
このケイ・アセットの評論家、平野憲一氏が今回の「株式評論家に騙されるな(3)」のテーマだ。

まずは、このテンプルトン格言の意味を考えてみよう。
悲観(ペシミズム)とは、不景気で巷には失業者があふれ、企業は赤字で苦しみ、多くの工場や会社が倒産というような経済状態だ・・・こうした不景気の中で株式相場は底打ちをする。
そして、懐疑(スケプティシズム)とは、景気が底打ちし少しづつ回復に入っているが、多くの人たちの生活は苦しく、景気回復を疑っている状態だ・・・その中、株価は値上がりしていく。
さらに、楽観(オプティミズム)とは、景気が回復し、企業業績が向上し、賃金も増加、人々の生活も良くなっている状態・・・株式相場は高値を付け成熟化する。
陶酔(ユーフォリア)とは、企業業績も絶好調で、人々は給料が上がり生活に満足している・・・しかしその時には株式相場はピークアウトして下落する。

でも、この平野氏は景気サイクルではなく、「投資家が相場に悲観=弱気な状態、投資家が相場を疑っている状態・・・」とテンプルトンを矮小化してしまった。
平野氏が言うのは「市場内の雰囲気の悲観、懐疑、楽観、陶酔・・・」であり、壮大な世の中の景気サイクルと切り離してしまった。
これでは単なる市場内の強気・弱気と株価というだけの話だ。
信用売り残が増加し、市場心理が売りに傾く・・・そして、行きすぎて売り残が買い戻しに入り、市場が戻りに入る・・・というだけの小さい話を、壮大なテンプルトンの格言に結びつけてしまった。
これは耐えがたいほどのテンプルトンへの侮辱だ!!!

テンプルトンの意図にそって、この10年の株式市場を振り返ってみよう。
2008年リーマン危機以降で考えれば、リーマン倒産から世界景気が低迷し悲観にくれた2009年の相場は底打ちし、相場が生まれた
2010年から2013年まで世界的に金融緩和=量的緩和政策が取られ・・・懐疑の中で相場が育っていったのがこの時期だ。
そして、2014年にアベノミクス、さらに米国トランプ大統領の大幅な減税政策が登場し、政策的株高が演出されていった・・・楽観の中で相場は成熟し、NYダウは2万7000ドル台まで上昇。
そして、米中摩擦が拡大した2018年から今年、今まで大幅に儲けた人たちの余韻で高値圏での往来相場を作り・・・このユーフォリア(陶酔感)の中で相場は死んでいくのか、はたまた、延長戦に入るのかというのが、現在の局面だ。

平野氏の言うように投資家が弱気から変わるかもしれないが、少なくともずっと好景気が続いているのでテンプルトンの格言になるようなペシミズム=不景気から立ち上がる局面ではない。
こうした自分勝手なテンプルトンの解釈で、自分の都合の良い相場観測をする。
自画自賛はいいけど、個人投資家には迷惑な話だ。


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株式評論家に騙されるな(2)

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9月9日に「内藤忍氏の理解不能なアゴラ記事」というブログを書いた。
あまりにひどすぎるコメントだったから、これを読む個人投資家が騙されないようにしたいという思いからだった。
でも、日本の株式評論家に何かしらの意図があったかはよく分からないが、事実や常識と違うコメントが多い。
このブログでは変だと思ったことを実名を上げて指摘していきたい・・・コメンテーターに騙されるな!

まずは、マネックス証券のチーフストラテジスト、広木隆氏。
ちょっと前に、米国の製造業PMIが発表された時、「米国経済ではサービス産業のウェートが圧倒的に高く、製造業の景気判断である製造業PMIを見ても意味がない」とコメントした。
たしかに先進国では30年前から経済のソフト化・サービス化が進み、日本でも経済の3分の2はサービス産業だ。
でも、そんな経済の中で、何故、製造業PMIが注目されてきたかというと、サービス産業は景気変動が小さくしかも遅れるので、景気の先行きを見るには景気に敏感な製造業PMIを見ることが重要だからだ。
製造業は確かに米国経済では1~2割のウェートしかないが、景気に敏感に反応するので多くのエコノミストが注目している。
その点をきちんと説明すべきだろう。

次に独立系コメンテーターの江守哲氏。
彼はOECDのコンポジット・リーディング・インディケーター(CLI)を時々使う。
これはOECDのHPを見れば、先進国全体、あるいは各国の景気先行指標が一覧で見られ、誰でも入手可能なものだ。
でも、彼は言う「おそらく、この数字を見ているのは日本で私だけだ」
残念ながら、このOECDのCLIは多くのエコノミストも使っているが、しかもちょっと使いにくいところもある数字だ。
それは数字の発表が2か月遅れであり、今だと7月の数字が最新データになる・・・他の指標、PMIなどは9月データが発表になってくる時期なので、OECDのCLIの遅さが目立ってしまう。
こうした説明もなく、自分勝手に数字を使うって、フェアじゃない。

株式市場ではいろんな意見があっていいし、その意見の違いがある方がむしろ投資家の判断には良いことかもしれない。
しかし、基本的なデータに関することは間違えてもらっては困る。
数字やデータに対しては個人的な論理の誘導や自分勝手な使い方は許されない。
・・・というわけで厳しく見ていきたいと思う。


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株式評論家に騙されるな(1)

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今、株式評論家がいろいろと話題にしているのが、「TOPIXの配当の再投資」だ。
配当をもらえる権利付き最終日の株価から、配当落ちする日に配当分だけ株価が理論的に下がる。
これを補うための、このスケジュール化された先物買いが、インデックスファンドや年金ファンドなどから3月末と9月末に入る・・・これが「配当の再投資」だ。
特にTOPIX(配当込み指数)をベンチマークとしている機関投資家の資金運用には大きな影響がある。

たとえば100億円のインデックスファンドだったら、年間配当2%の半分に相当する1億円の配当分が落ちる・・・時価は100億円から1億円低下し99億円になる・・・そして、3か月後に1億円の配当を受取り、ファンドの時価は99億円から100億円に戻る。
しかし、困った事に配当落ちから配当受取りまでの期間、ファンドの時価総額は1%の配当分だけ小さくなってしまい、この間にTOPIXが大きく変動すると、この配当分だけ連動しなくなってしまう。
これを避けるために、配当落ち前後に、この落ちる配当分を先物の買いで補っておくという必要がある。
これが「配当の再投資」で、おそらく、市場全体では今週末の配当落ち前後で5000億円相当の配当分の先物買いが出てくるというわけだ。

このスケジュール化されている機関投資家の先物買いをめぐって思惑が出る。
この先物買いで株価指数が上昇しやすい状況になる。
だから、先物価格が持ち上げられた所で先物を売れば利益を上げやすい・・・多くの評論家が個人投資家を煽っている。
でも、実際は全くの無駄という事を頭に入れておくべきだ。
「配当の再投資」の先物買いは、立会外で証券自己を引け値を基準とした相対取引で行われるからだ。
機関投資家の先物買いに対して、証券自己が先物ショートで対当する・・・だが、証券自己はあらかじめ、当日の引け値に向かってロングを作っておいたり対応しているので、必ずしも市場で買い戻すことはわけではない。
そもそもこうしたスケジュール化された先物売買は、機関投資家と証券自己が事前交渉で決まっている。

さらに株式評論家の間で話題なのが、「日経ダブルインバース」の純資産の急増だ。
これは日経の逆張りツールで、日経が下がるとダブルで儲かるETFだ。
この資金流入で、コメンテーターは「日経ダブルインバースの資産急増後、一段と日経が上昇するれば、大きな踏み上げ相場が期待できる」と言う。
でも、「安い時に買って、高い時に売る」のは相場の王道で、踏み上げを期待して高い時に買うのは問題も含む。
売り方は資金に余裕があれば、日経平均が下落するまでポジションを引っ張ることもできる。
「日経ダブルインバース」への大きな資金流入があったからといって、すぐに「踏み上げ」を期待するのは早計ではないだろうか。
多くのコメンテーターの好きな言葉は「踏み上げ」だが、現代の株式市場では死語かもしれない。
事実、「日経ダブルインバース」の残高が大きく増加している場面では、その後に日経平均が下落することの方が多い。
株式評論家に騙されない方がいい。


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内藤忍氏の理解不能なアゴラ記事

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内藤忍という評論家の「12年ぶりの高値でもREITに投資しない理由」というアゴラでのコメントだが、何回読み返しても理解できなかった。
この中で三つの根拠が示されている・・・(1)高値で購入する構造的な仕組み、(2)レバレッジを考えると高利回りではない、(3)税制メリットが現物不動産より小さい・・・という三つだ。
それぞれ検討してみよう。

まず、(1)高値で購入する構造的な仕組み・・・内藤氏に何か大きな理解違いがあるのか、全く理解できなかった。
内藤氏は言う・・・REIT価格が上昇すると、資金流入が起こり、その流入資金で高値の物件を買うことになる・・・だから、REITの物件購入は構造的に高値での購入になる。
確かに、REITに資金流入するとREIT価格は上昇するが、この資金流入で高値物件を買うわけではない・・・市場で交換されているREIT価格が上昇しているだけで、物件購入とは関係がない・・・読者は何回読んでも理解できない。

REITの物件購入は、RIEITの運用会社が物件の購入リストを投資家に提示して、PO(公募増資)を実施し資金を集めて行われる・・・保有キャッシュや借金で新規物件投資が実施される場合もあるが、通常、大規模な物件投資は、そのリターンや今後の収益予想を提示しPOを実施して行われる。
株式のPOとは違い、REITの場合、新規物件を組み入れた後の収益をほぼ正確に予想できるので、POの規模とともにEPSの予想、分配金の予想を提示して一般投資家から集めることができる。
しかもREITはスポンサーから有利な条件で物件購入することができる。
これはスポンサーとの優先購入権契約で、一般には市場に出ない物件を、オークションでは買えない価格で買える。
つまり、REITはPOで資金を集め、優先購入権を使って有利に物件を組み入れているわけで、内藤氏の言う事は基本から間違っている。

(2)の点だが、レバレッジをどう理解しているのが分からないが、通常、不動産投資は借入金でレバレッジをかけている。
個人であれ、法人であれ、不動産投資を手持ちキャッシュだけで行う方が異例だ。
個人の住宅投資は、普通、住宅ローンを組んで行われるし、法人の不動産投資も同様だ。
レバレッジ後の利回りは、原資産である不動産物件のCAPレートにレバレッジをかけたものになる。
多くのREITが総資産の40%程度の借入金をかけているが、基本的に保守的なレバレッジだ。
これをもって、レバレッジをかけている割にリターンが低いと言っているのかもしれないが、保守的なレバレッジは悪い事ではない。

実物投資とリターンを比較しているが、個人の実物投資はワンルームマンション中心なのに対し、REITならば六本木ヒルズに投資できるし、巨大物流施設や巨大ショッピングモールにも投資できる・・・個人投資家には自分では不可能な投資先にも投資できる便利なツールがREITだ。
内藤氏は単にワンルームマンションとREITを比較しているだけなので、どうしても論点がズレてしまう。

さらに(3)の税制メリットについても誤解があるかもしれない。
いきなり、相続税では実物不動産の方が有利だと言う。
おそらく「少規模住宅等の特例」の話をしているのだろうが、確かにこれはメリットがある・・・でも、運用の話をしているのに、いきなり、相続税の話にぶっとぶのはいただけない。

減価償却についても誤解が多い・・・REITの会計でも減価償却は行われているし、減価償却の範囲で現状維持の修繕やバリューアップ投資などが行われている。
不動産(建物)の減価償却は毎年、物件価値が減少していく分を利益から差し引く(利益が増える)もので、減価償却分を再投資していかなければ、長期的に物件価値が低下してしまう。
個人は減価償却分の再投資をしないかもしれないが、10~20年に一度、マンションの大規模修繕があり住民が負担している。
この費用を別に考えれば・・・個人の実物投資は減価償却分の利益が増えるということが内藤氏の考えだろう。
だが、基本的には減価償却は利益の増加ではなく、物件価値の低下分だ・・・会計をちょっと勉強すればわかる事だ。

内藤氏は言う・・・REITを全部売却して中古マンションを保有している・・・不動産市場で、今、もっとも問題なのが、都心周辺の高層タワーマンションの過熱感で、現実に契約率が低下し売れ残りが急増している。
こんな時期に個人投資家にマンション投資を勧めるなんて、大丈夫だろうか?・・・心配になる。


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