昨日から検証を行っている、三井化学(4183)および三井物産(8031)による本州化学工業(41159)に対する公開買付け(TOB)開始の予定に再訂して開示された資料中の株式価値算定書におけるDCF法評価について、本日は投下資本の推定を行うとともにDCF法計算過程の再検討を行いました。

 初めにお詫びになりますが、昨日中の記事において「非事業性資産-負債」を算出する際に足し合わせるべき「非支配株主持分(簿価)」について差し引く誤りを犯しておりました。こちらについては先ほど訂正を行っておりますので、ご了承願います。

 投下資本等について検証行ったシートがこちらです。本州化学工業においては直近の期まで毎年14億円~15億円程度の減価償却費が生じていたところ、DCF法評価で用いられた財務予測最終年度では26億円以上の減価償却費が想定されていることから、財務予測期間に多額の設備投資がなされるという前提がなされていると考えることができます。今回、これらの設備投資はすべて機械装置などの償却性資産に対するものと仮定し、設備投資金額及び投下資本の計算を行いました。

 また、売上原価と販売費及び一般管理費については概ね過去の傾向が継続しており不適切とは言えないことも確認しました。

 設備投資金額と運転資産の増減を含めて管理人が推定したフリー・キャッシュ・フローに対して、財務予測で用いられたフリー・キャッシュ・フローの金額は、財務予測で用いられたもののほうが予測期間中で約29億円ほど管理人の推定したものを上回っており、差異が大きいことは気になりますが、評価額を低くする方向には調整されていないように考えられます。

 投下資本利益率(ROICまたはRONIC)については継続期間において9%を超えており、DCF法評価で用いられている割引率9.20%~10.20%の数値は投下資本利益率との対比においては決して高すぎるとは言えないということになります。もっとも、本州化学産業の属する化学セクターの業種別ベータ値に関しては企業価値評価の参考書である「新版 企業価値評価の実務」114ページでは0.75~1.00のカテゴリーに同業種が入っており、「企業価値とオプション評価のロジックと実務」55ページではD/Eレシオ0.27でレバードベータ0.84とされています。Damodaran Onlineにあるデータでは1よりも少し高いベータ値になると考えられますが、いずれにせよ化学産業全般の割引利が9%もの数値になるとは考えにくく、本州化学工業の高い投下資本利益率は本州化学工業に固有の超過収益によるものと考えるのが自然だと考えます。

 また、フリー・キャッシュ・フローに対する株主還元の実績値は過去5期合計で17%程度と、かなり低いものと考えられます。

 つぎに、昨日行ったDCF法の計算過程についても再検討を行いました。昨日は予測最終年度のフリー・キャッシュ・フローを固定して計算を行いましたが、今回はより厳密に、財務予測期間最終年度の営業利益4,274百万円から実効税率として30.62%を想定しこれを控除した2,965百万円から、永久成長率に応じた投下資本の増加を考慮した継続期間フリー・キャッシュ・フローから財務予測最終年度の投下資産について推定を行いました。その結果がこちらです。推定された投下資産は220億円となり、先ほどの投下資本利益率を検証したシートでの推定結果よりも少ない金額となりました。また、この場合は非事業性資産と負債の差額がマイナス4億円程度となってしまい過少な金額な気もします。