先日から当ブログで取り上げている三井化学(4183)および三井物産(8031)による本州化学工業(4115)に対する公開買付け(TOB)でなされたDCF法評価についてですが、前回の記事である管理人によるDCF法評価を行った前回の記事で検証を一区切りしたいと思います。今後別の株式価値算定書が開示された場合は追加的な検証を行うことになりますが、今回は今回の検証において発見された検討事項について列挙します。

・子会社から生じるキャッシュ・フローはフリー・キャッシュ・フローと言えるのか

 本州化学工業は企業集団としての収益の多くを連結子会社であるハイビス社からの収益に依っているが、その所有割合は55%に過ぎず、DCF法評価の前提である、経営者はキャッシュ・フローの全てを自由に処分できるという前提が適合するかは必ずしも明らかでない。

・子会社にかかる非支配株主持分の簿価

 同ハイビス社の非支配株主持分はDCF法評価で株式価値を算定するにあたって企業価値から差し引く必要があるが、管理人が簡便に行ったようにその簿価を差し引くのではなく、ハイビス社単体をDCF法評価した場合の価値を差し引くのでなければ、本当はいけない。

 ・財務予測期間中の減価償却費について

 管理人の推定では財務予測期間中の減価償却費から算出される総合償却率として直近の期の総合償却率を延長して使用しているが、機械装置など定率法で償却される資産を財務予測期間中に大量に取得すると想定した場合、総合償却率はより高い数値とならなければならないはずである。

 ・継続期間中の減価償却費について

 従って、財務予測最終年度の減価償却費は上記の理由からかなり高い金額となっているはずである。しかしながら、継続期間にその高い総合償却率に基づいた減価償却費を延長してはならない。

 ・市場株価について

 本州化学工業はフリー・キャッシュ・フローに対する配当性向が過去5年実績で2割以下と極めて低い水準であり、市場株価は実態よりも引く水準にとどまっていた可能性がある。他のTOB案件で採用されたプレミアムとの比較を行ういわゆるプレミアム分析は本州化学工業株式の公正価値を求めるにあたっては過小評価してしまう可能性が高く有効でないと考えられる。