本日、双日(2768)の完全子会社である双日プラネットがプラマテルズ(2714)の完全子会社化を目的とした株式公開買付け(TOB)を開始することが発表されました。公開買付価格は770円とプラマテルズの1株当たり純資産額である1,240円をかなり下回っており、一見するとあまりにも低い価格に見受けられます。本件に係る開示資料においては算定機関2社のうち1社の株式価値算定書におけるDCF法評価の概要が開示されているので、これに基づいてDCF法評価の内容及び公開買付価格が適切なものであったか、検証してみたいと思います。

算定機関がDCF法評価で採用した財務予測(単位:百万円)
2021年3月期
(6ヵ月)
2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 29,101 60,003 61,665 63,935
営業利益 417 1,010 1,147 1,262
EBITDA 483 1,130 1,267 1,382
フリー・キャッシュ・フロー 135 454 572 597
「プラマテルズ株式会社株券(証券コード 2714)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」21ページより

DCF法評価額:642円から848円

割引率:8.41%から8.91%

継続価値の算定法:永久成長率法

永久成長率:0.0%から1.0%

 初めに、割引率について検証を行います。算定機関がどのような手法で割引率8.41%~8.91%を算出したのかは明らかではありませんが、当ブログにおいては割引率として一般的に用いられている加重平均資本コスト(WACC)を一般的な方法を用いて推定して算定機関によるDCF法で採用された数値と比較するとともに、WACCの算出過程でプラマテルズと同じ業種のベータ値を用いた場合の割引率や投下資本利益率(ROIC)との比較を行いました。その結果がこちらです。

 管理人が一般的な方法で算出した割引率は3%程度でした。また、商社・流通業の業種ベータを用いた場合でも3.5%となりました。さらに、簡便な方法で算出したROICは7%程度で、本来WACC<ROICでなければならないところWACC>ROICとなってしまっています。以上のことから、算定機関が採用した8.41%~8.91%という割引率は不適切なものであり、プラマテルズ株式のDCF法評価においては使用すべきではないと結論できます。

 次に、継続期間のフリー・キャッシュ・フローについて推定を行います。こちらのシートがその結果です。算定機関が用いた継続価値の算出方法は永久成長法で、その永久成長率を0.0%~1.0%としています。この場合、投下資産の変動、すなわち永久成長率が1.0%の場合であれば投下資産の1.0%相当額差し引いて算出された継続期間のフリー・キャッシュ・フローを用いるか否かが問題となります。管理人が数値を検証したところ、投下資産の変動を考慮した場合に評価額が異常値となってしまったことから、DCF方法評価においては投下資産の変動は考慮されていないとみられます(そのため、シート中の投下資産の数値は0となっています。)。事業価値と株主価値の評価額レンジが等しくなる継続期間のフリー・キャッシュ・フローを逆算すると918(百万円)となり、これはDCF法評価で採用された財務予測最終年度の営業利益1,262×(1-実効税率30.62%)=876(百万円)を上回っており、継続期間のフリー・キャッシュ・フローは適切なものと言えます。また、同時に算定された純負債(非事業性資産-負債)は3,981(百万円)となりました。

 純負債についても検証を行います(こちらのシートです。)。プラマテルズにおいては多額の必要運転資金が必要と考えられるため、余剰現金はないものと仮定します。DCF法評価において一般的に負債として扱われる科目を合計したところ5,065(百万円)となりました。先ほど推定された金額よりも1,084(百万円)少ない金額であることから、純負債については適切に計上されているものと考えられます。