昨日の記事で取り上げた双日(2768)の完全子会社である双日プラネットによるプラマテルズ(2714)に対する公開買付け(TOB)において開示されたDCF法評価が適切であるかどうか、今回の記事ではDCF法評価における各種金額を推定した上で、管理人によるプラマテルズ株式のDCF法評価を試みたいと思います。

 本題に入る前に、本日EDINETを通じて開示されたもう1つの算定機関により作成された株式価値算定書におけるDCF法評価についても、一言だけ触れておきます。この株式価値算定書は算定の前提となった財務予測の記載がないなど最低限の内容のものです。公開買付届出書に添付されている株式価値算定書にはこのようなものが多いのが実情なのですが、株式価値算定書の添付が義務付けらた理由に照らすとこのような簡易な算定書ではよくないと考えられます。また、この株式価値算定書のDCF法評価においては継続価値の算定にマルチプル法のみを利用し、永久成長率法は用いられていません。従って、この株式価値算定書のDCF法評価額は本件TOBに反対する株主に認めるべき公正価値としては相応しくないといえます。

 本題のDCF法評価における各種金額の推定の結果はこちらです、先日のDCF法評価過程の検証において逆算された継続期間のフリー・キャッシュ・フローは918(百万円)でしたが、この金額を用いた場合には予測期間中に経常的に生じる営業外損益や減価償却費が異常値となってしまいました。そこで、これらが自然な金額となるように継続期間のフリー・キャッシュ・フローの金額を設定すると890(百万円)となりましたので、ここからはこの金額を用いることにします。

 売上原価や販売費及び一般管理費についてはほぼ過去の傾向と一致した金額となりました。運転資産の変動については管理人の計算では2021年度下期に季節要因により運転資産が増加するためフリー・キャッシュ・フローが大幅にマイナスになりますが、算定機関の採用した財務予測ではこの期間のフリー・キャッシュ・フローがプラスの金額となっていること以外は管理人と類似したフリー・キャッシュ・フローが推定されました。

 投下資本利益率の推定に当たっては、当ブログで取り上げた他の企業については非上場株式と土地について含み益を推定していますが、プラマテルズについては子会社が土地を保有していますが、複数の事業所にある土地の面積が合算されて表記されており含み益の算出が困難であること、非上場株式については最後に確認できる有価証券明細表により国内非上場株式としてチッソ1,297,000株、簿価10,376(千円)が確認できますが、直近の株主コミュニティでの約定価格7円を前提とすると時価9,079(千円)となり金額的に重要ではないので今回は考慮しないこととしました。そのうえで推定された投下資本利益率(ROIC)は約6%でした。また、フリー・キャッシュ・フローに対する配当性向は過去5年実績で約40%でやや低い印象です。プレミアム分析の観点からは他企業に対してなされた過去のTOBのプレミアムよりも大きいプレミアムが上乗せされるべきでしょう。

 管理人による推定フリー・キャッシュ・フローや推定割引率を用いるなどした場合のDCF法評価結果はこちらです。1株当たり1,152円~2,285円の評価額が得られました。少し評価額レンジが広すぎると感じる場合は、かなり保守的な評価になりますが、割引率を5.5%まで上げると1,059円~1,207円の評価額になります(こちらです。)。

 結論として、算定機関のDCF法評価は割引率が不適切であり採用すべきでない。割引率を自然な数値とした場合のDCF法評価を参考にするとプラマテルズのTOB価格は1,000円以上の金額であって然るべきだと管理人は感じます。