当ブログでは株式併合などに際しての株式買取請求権の行使方法について解説してきました。今回は、協議期間について取り上げます。

 この協議期間は株式併合などの効力発生日から30日以内と定められています。ここで当事者間で価格の協議が調わなかった場合、協議期間の満了日から30日以内が裁判所への株式買取価格決定の申立期間ということになります。

 では、協議期間には具体的にどのようなことを行えばよいのでしょうか?実のところ、どのようなことをすればよいのか、具体的に記した資料は管理人には見当たりません。少なくとも、インターネット上にはこの点についてまともに解説したものはない気がします。

 管理人が知る限りの実例では、元株主の側が純資産評価額等を主張→会社側の代理人弁護士が適法に履践された株式併合手続に基づいているので価格は適正と主張(+仮払金の振込先記入用紙を返送するよう要請)→元株主が価格は後回しにして株式併合できるようになっているからこそ株式買取請求権制度があるはずと反論→元株主の意見は無視して株式価値算定書を送付し、これを正しい価格の根拠と主張→(書類の送付に各1週間程度かかったため)30日を超過し裁判手続へ、といったものがあります。これでは一体何のために協議期間が設けられているのか分かりませんから、協議期間に行うべきことに関するガイドラインのようなものがあってもよい気がします。

 このように、協議期間にどのようなことをすべきか、管理人においても正しい解説を行うことができないのですが、協議期間に関連して管理人が考えていることがいくつかあるのでここに記したいと思います。

・協議期間中は元株主側から働きかけて協議を行うべき

 協議期間中は何もしなかった、というケースも聞いたことがありますが何らかのアクションは起こすべきです。これは協議期間以降の裁判手続きで決定される価格は、決定がなされるまでの間の期間に応じて利息が加算されるため、協議期間中に何もしないといった行動をとった元株主は手続きを長引かせて利息を稼得しようとする濫用的申立人と裁判所に判断される恐れがあるためです。従って、元株主の側としては会社に協議を申し入れる書面を送付する程度のことは少なくとも行うべきだと思います。

・株式買取請求権で請求できる価格は「公正な価格」である

 会社法の条文に「公正な価格で買い取ることを請求することができる」(会社法第182条の4ほか)と記されているので、協議期間に協議すべき価格も「公正な価格」ということになります。この「公正な価格」は価格決定の裁判において核心となる概念で、事件ごとに固有の事情を考慮した上で決定されるものであり、一律にどのような価格が「公正な価格」となるといえるものではありません。

 しかし、「公正な価格」とは概ね次のような性質を持っていると考えて差し支えないと考えます。一つは客観性の高い価格であること、つまり株価の算定に用いる金額、数値などは市場で形成されているものを利用すべきであるということです。二つ目は株主の経済的平等に適うものであること、つまり個々の株主の精神的苦痛など株主間で平等とならない概念を考慮してはならないということです。三つめは規範的な価格であるということです。例えば、配当還元方式で当該株式の価格を決定するのであれば、ある会社が無配だから株式の価値は無価値というのではなく、現実に配当可能な額が分かればその額を用いて評価すべきということです。四つめはシナジー効果を含んでいるということです。会社法施行前の商法においてはこのような場合の価格は「ナカリセバ価格」と言ってシナジー効果を反映しない価格だったところ、会社法ではこれが「公正な価格」となりました。そして、この「公正な価格」はシナジー効果を反映したものと解されています。

・秘密保持について

 協議の開始に当たって秘密保持の誓約書を差し入れるよう、会社側の代理人弁護士から提案される場合があります。常識的な内容のものであれば署名あるいは記名捺印して返送しても良いと考えますが、秘密保持期限の定めがないなど若干会社側寄りな内容となっている場合が見受けられます。元株主側に少しだけ不利だな、と感じる場合は修正したものを返送するといった対応も考えられます。

・振込先口座

 株式買取請求権が行使された株式については、効力発生日から60日以降について法定利息が発生します。そのため、会社側は利息の支払を回避する目的で振込先口座を聞いてきます。ここで振込先指定用紙を返送しないなどの対応をとった場合、法務局に仮払金を供託されてしまい、仮払金を法務局まで受け取りに行かなければならなくなります。従って、振込先口座は素直に通知したほうが良いといえます。なお、会社側が仮払金を支払うのは管理人が知る限り効力発生日から60日の直前です。早めに受領したい事情がある場合はその旨説明し、自ら振込先指定用紙を作成、送付するといった方法も考えられます。