「あなたはご本人様でいらっしゃいますか」 福岡伸一 GignoSystem(13/08)

■書評

 「あなたは本人であることを証明できますか?」

 「動的平衡」の著者、分子生物学者の福岡伸一先生の特別公開授業
を載録した電子書籍版新書。

 「私たちのこの世界のなかに不変なものは、実は何もない。だから
こそ、何か不変なものを心の拠り所にして、私たちは生きていく。
 つまり、いろんなことは変わりうるんだ、変えてもいいんだ、とい
うのはひとつの希望だともいえると思うんですね」

 本質的な質問と、的確な回答で、生命の不思議を、分かりやすく解
説されています。

 「動的平衡」から、「希望」につながる結論は、心地よい。


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■目次■

一時限 あなたは何人で何人種?
二時限 あなたは、ご本人様ですか?
三時限 私という存在を決めるもの。


■ポイント■

◆「人種の「種」は生物学的な意味の「種」ではない」
 ・「ネアンデルタール」は、「人類」とDNAが異なる

◆「日本の歴史の中で一番長く続いていたのは旧石器時代」
 ・「旧石器時代」の人、「縄文時代」の人、「弥生時代」の人

◆「自分が自分であるという思い込みは幻想か」
 ・「10年前の私と今日の私は生物学的には全く別のもの」
 ・「自己同一性を、自分の記憶の中でしか担保できない」

◆「真実は、関係性の中にこそある」
 ・「何になるかは予め決められているのではなく、周囲との
   関係性の中でできていく」

◆「関係性の中で規定される存在〜動的平衡で考える」
 ・「要素に意味があるのではなく、要素と要素の関係性に、
   いろんなことが含まれている」:「相補性」

◆「生命の特徴は常に過剰さを与えて、その後、環境の中で
  どのようにそれが刈り取られていくかによって、その人
  が作られていく」

◆「関係性が絶え間なく変わっているということは、非常に
  頼りないことであると同時に、逆にある種の希望でもある」