2009年10月03日

亡くなったひと・別れるひと

店が引けてから、高遠は野笹の「信濃屋中米商店」にまめやの豆腐を取りに行く。帰りがてら、クルマの窓からは仲秋の名月が黒い雲のあいだを行き来していて、少しセンチメンタルな気分になった。センチメンタルな気分になると、なぜかいつも亡くなった芸人のことが思い浮かぶ。そして、浮かんできたのは、春日三球・照代の照代さんの笑顔であった。そういえば、このあいだまで読んでいた、世間ではショーもない本と無視されているだろうが、掃苔録としては良くできている『青空うれしのおもしろお墓百話(展転社)』のなかに、春日照代のことが出ていた、と思って引っ張り出してみた。ちなみに、青空うれしは昭和10年生まれ、低俗番組として有名な「テレビ三面記事 ウィークエンダー」のレポーター、と言えば、顔が思い浮かぶ人もいるだろうか(私は思い浮かばないが)。青空うれしは、有名人の墓めぐり・墓探しが趣味のようで、調べたら、この『青空うれしのおもしろお墓百話』も、出版社を替えて、続編が二冊も出ている。単に、私が無知だっただけのようだ。認める人は、きちんと認めていたのであった。

この本によれば、春日三球は、照代さんと夫婦で漫才を組む前は、クリトモ一休・三休の名で、男同士のコンビを組んでいた。しかし、相方の一休が、「三河島事故」(本文には三島事故とあるが、脱字か)で死亡、ひとりになってしまう。その後、芸名を「三休」から「三球」に変えた。仕事にはあまり恵まれず、北池袋のアパートで、芸人仲間と麻雀に明け暮れていたが、そのひとりが照代であった。ある日、徹夜麻雀が終わった朝、仲間がみな帰って行くなか、照代だけが残り、そのまま居着いてしまった、というのは有名な話。春日三球・照代を語るときに、必ずこのエピソードが引き合いに出されるのは、何か人の気持ちをホノボノとさせるものがあるからだろう。ちなみに、照代は姉の純子(この本では純子だが、淳子とする記述もある)と子どもの頃からステージに立っていたそうで、芸のうえでは三球より先輩である。

春日照代が亡くなったのは、昭和62年というから、もう二十年以上の歳月が流れた。死因はクモ膜下出血。それにしても、三球は相方をよく亡くす人である。しかし、亡くなったのが四月一日というのも、何か三球の相方らしくて、微笑ましい。ネタを残して亡くなるなんて、さすが芸人である。
その後、三球は一時期若手の女性芸人と組んで、テレビ出演していたが、これは見る方にとってつらかった。あまり好評ではなかったようで、現在はピンの芸人として活躍している。

春日照代の墓は、埼玉県東松山市の「むさしの浄苑」に「春日三球・照代之墓」と刻まれて建つ。三球の刻字には、もちろん朱が入っているが、つまり三球とはそういう人なのだ。戒名は、照代の方が「春日院照誉節操大姉」、三球の方が「春日院三楽球演居士」。

話はがらりと変わるが、「爆笑問題」の田中某(小さい方)が離婚したそうだ。これには、少しヨロッときた。大きなお世話だろうが、残念である。爆笑問題は、二人とも離婚してはいけない。なぜなら、彼らの芸は、家庭円満の上に成り立つ芸だからだ。いわばお釈迦様の掌の上に乗っていればこそ、暴れられる芸風である。本人たちが吐き出す毒も、そうした約束事のうえに成り立っている。そこが彼らが、昔の芸人の文脈とは違ったところで成功した所以だと思う。
離婚の原因などには全く興味がないが、聞くところによれば、田中某は事務所があったビルの一階に入っていた花屋の女の子を見初めて一緒になったそうではないか。なかなかいいエピソードだったのに。


kaguradon at 23:08コメント(6)トラックバック(0) 

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コメント一覧

1. Posted by ブラ汁   2009年10月05日 00:07
ご主人も、伊那で良い伴侶を見つけてください。
伊那の女性は情に厚いですよ(w


件のジャズバーのマスターのお言葉ですが
「伊那の衆は余所者の知恵を借りて生きて来た。
余所者を大事にする」
だそうです。


私もその罠にはまりましたよ(w
2. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年10月05日 13:31
ブラ汁さん、どうもです。私の文章は何か物欲しげでしょうか。気を付けようっと(笑)
夫婦漫才というのは、(私にとって)夫婦の理想像ですね、たとえ、その後うまくいかなくなっても。思い付くままにあげると、ミヤコ蝶々・南都雄二、鳳啓助・京唄子、春日三球・照代、、正司敏江・玲児、林家ペー・パー子、みんな好き
3. Posted by きったちゃ   2009年10月06日 09:43
僕は地元出身だから、40歳になった今も大事にされないのか(笑)ところで芸能人の離婚の理由に「お互いのすれ違い」というのが多いと思うのですが。元々夫婦って他人が巡り会っての縁のはず。すれ違いは当たり前な気がするのですが・・・
そういえば海外に夫婦漫才みたいな夫婦でする芸ってあるのですか?今すぐに思い浮かばないのですが・・・
4. Posted by 蛇の道   2009年10月06日 09:54
床の上で、四十八手を見せる夫婦芸は世界中で行われています。・・・・真似すると足がつります。
5. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年10月07日 22:49
きったちゃさん、どうもです。
海外の例というのはよくわかりませんが、マジシャンとアシスタントというのは、夫婦が多いのじゃありませんかね。呼吸が合って、かつ信頼関係があるという。でも、よくある「胴体切り」のマジックなんて、夫婦喧嘩のあとでは、本当に切りたくなったりして・・・。「すれ違い」ならぬ「切り違い」(笑)
6. Posted by 管理人(書肆月影)   2009年10月07日 22:58
蛇の道さん、そういうお下劣なフリをされると、目を「白黒」させてしまうではありませんか。もうお年なんだから、あまり無理はなさいませぬよう

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